ブロックチェーン技術の発展とともに、スマートコントラクトの概念が急速に広がりを見せています。
しかし、スマートコントラクトとは何かわからないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、スマートコントラクトとは何かやその仕組み、実装事例、開発方法などを解説します。スマートコントラクトに興味があるという方はぜひ最後までお読みください。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
スマートコントラクトとは
スマートコントラクトとは、ブロックチェーン技術を利用したデジタル上の自動化された契約のことです。
普通の契約は、人と人の間で「こうしよう」と決めますが、スマートコントラクトはコンピューターが契約を覚えて、自動的に実行してくれます。
このスマートコントラクトは、ブロックチェーンという特別な技術を使っています。ブロックチェーンは、たくさんのコンピューターでデータを共有する仕組みで、一度記録したデータは簡単には変えられません。
そのため、契約の内容を後から勝手に変更することができないのです。
スマートコントラクトの仕組み
スマートコントラクトの仕組みはどのようになっているのでしょうか。
スマートコントラクトはコードによって条件と実行内容が規定されており、中央管理者なしに信頼性の高い自動実行が可能になっています。ブロックチェーン技術の分散型台帳と一緒に活用されることで、安全で透明性の高い取引を実現します。
1. コントラクトのコーディング
最初にスマートコントラクトの内容と条件をプログラミング言語(SolidityやVyperなど)で記述します。これがコントラクト(契約内容)のロジックとなります。
2. コントラクトのデプロイ
作成したコントラクトのコードをブロックチェーンネットワーク上にデプロイします。これによりそのコードがブロックチェーン上に永続的に記録されます。
3. コントラクトの実行
コントラクトの条件が満たされると、自動的にコントラクトが実行されます。例えば、仮想通貨の支払い条件が満たされれば、自動的に支払いが行われます。
4. ステータスの確認
コントラクトの実行ステータスは、ブロックチェーン上で誰もが確認することができます。
5. 改ざん防止
一度ブロックチェーンに記録されたコントラクトは、ネットワーク内の過半数のノードが承認しない限り改ざんできません。
スマートコントラクト機能を持つブロックチェーン基盤・プラットフォーム
スマートコントラクトはブロックチェーン基盤を使用して開発します。ここでは、スマートコントラクト機能を持つブロックチェーンプラットフォームを紹介します。
基盤 | コンセンサス | スケーラビリティ対策 | スループット | ガバナンス | 主な用途 |
Ethereum | PoW(PoSへ移行予定) | シャーディング、レイヤー2 | 中程度 | オープン | DeFi、NFT、DApp |
BSC | PoSA | – | 高 | 集中型 | DeFiアプリ |
Polygon | PoS | レイヤー2 | 高 | オープン | Etherumスケーリング |
Solana | PoH+PoS | 並列実行 | 非常に高 | オープン | DeFi、DApp、Web3 |
Symbol | PoA+PoS | クラスター | 高 | ハイブリッド | エンタープライズ |
Ripple | 独自コンセンサス | – | 高 | 集中型 | 決済、送金 |
Corda | 独自コンセンサス | – | 中程度 | 権限型 | 金融、エンタープライズ |
GoQuorum | raft-IBFTハイブリッド | シャーディング、PoA | 中程度 | 権限型 | コンソーシアム |
Fabric | PBFT | チャネル分割 | 中程度 | 権限型 | エンタープライズ、コンソーシアム |
Ethereum、BSC、Polygon、Solanaは主に公開ブロックチェーンとしてDeFi、DApp、NFTなどに適しています。
Symbol、Rippleはユーティリティ重視、Corda、GoQuorum、Fabricはプライバシー保護を重視したエンタープライズ向け基盤です。
また、それぞれの独自仮想通貨もあるので、もし仮想通貨を活用したビジネスを考えているならばユーザ数やその使いやすさも考慮しましょう。
スケーラビリティ、プライバシー、ガバナンスなど、プロジェクトの目的に合わせて使い分ける必要があります。
スマートコントラクトの開発方法
スマートコントラクトを実装するためには、以下の順序で進めることが一般的です。
自分で開発する
自分でスマートコントラクトを開発する場合、以下のようなプログラミング言語の知識が必要になります。
プログラミング言語 | ブロックチェーン基盤 |
Solidity | EthereumやPolygon向け |
Vyper | Ethereum向け |
Rust | Solana向け |
Go | Hyperledger Fabric向け |
スマートコントラクトの開発には、ブロックチェーン基盤を使用したプログラミングスキルが必要です。
スマートコントラクトの開発には、デバッグやエラー処理、セキュリティの確保など、十分な知識と経験が求められます。
開発コミュニティやオンラインリソースを活用しながら、スマートコントラクトを効果的に開発する方法を学ぶことが重要です。
開発ツールを使う
スマートコントラクト開発を支援するツールも多数あります。例えば、以下のようなツールが役立ちます。
- Truffle (開発フレームワーク)
- Remix IDE (ブラウザ上の統合開発環境)
- OpenZeppelin (再利用可能なコントラクトライブラリ)
- Ganache(ローカル開発用のブロックチェーンエミュレータ)
- Hardhat (タスクランナーとテスティングフレームワーク)
いずれにせよ、プログラミング言語と同様に知識が必要なツールばかりです。ノーコードやローコードで簡単に開発できるツールはないというのが現状です。
委託開発する
自社でスマートコントラクトの開発が難しい場合は、専門のブロックチェーン開発会社に委託することを検討しましょう。委託する際は以下の点に注意が必要です。
- 開発会社の実績やレビューを確認する
- 秘密鍵の取り扱いやセキュリティ対策を確認する
- スマートコントラクトのテスト体制を確認する
- 継続的なメンテナンスやアップデートの体制を確認する
スマートコントラクトの開発は高度な技術力が必要です。自社の状況に合わせて最適な方法を選びましょう。
スマートコントラクトの実装例
スマートコントラクトは、さまざまなビジネス領域で利用されており、契約やトランザクションの自動化に大きな効果をもたらしています。
DeFi(分散型金融)
DeFiとは「Decentralized Finance」の略称です。従来の中央集権型金融システムに代わる、ブロックチェーンに基づく分散型の金融システムを指します。
貸借、取引、投資などの金融サービスが中央機関によらず、スマートコントラクトによって完全に分散化されています。
代表的な例はcompoundが挙げられます。暗号資産の賃金の貸し出し・借り入れをしており、利息で利益を得るビジネスモデルです。
Defiはコードベースで動作するため、手数料が安く、包括的で公平なシステムを実現できると期待されています。一方で、セキュリティ面での課題や規制面での懸念もあり、今後の発展が注目されています。
GameFi
GameFiとは「Game」と「Finance」を組み合わせた造語で、ブロックチェーン技術を活用したゲームの金融モデルのことを指します。
キャラクター、アイテム、土地などの資産が、NFTやトークンとして発行されます。そのゲーム内資産をブロックチェーンを介して外部で売買する仕組みです。
有名なゲームはアクシー・インフィニティー(AXS)です。
ペットモンスター「Axie」を育てて戦わせる、NFTベースの戦略的なトレーディングカードゲームで、イーサリアム上で動作する大規模なブロックチェーンゲームとして知られています。
GameFiはゲームの収益モデルを大きく変革するとして、今後の展開に注目が集まっています。
投票
スマートコントラクトを活用すれば、不正投票を防止することができます。投票内容をブロックチェーン上に記録することで改ざんや不正な変更を防ぐことが可能になるからです。
そのため、透明性が高く信頼できる投票結果を得られるようになります。
実際、つくば市では「つくばSociety 5.0社会実装トライアル支援事業」として、スマートコントラクトを応用した電子投票を実施しました。
ブロックチェーン、マイナンバーカード、顔認証技術を駆使し、自宅からの投票も実現。スマートコントラクトは自治体業務のDX化と行政の透明性の向上にも活用することができるのです。
不動産
不動産市場においても、スマートコントラクトの活用が期待されています。
不動産業界におけるスマートコントラクトの実用化は、不動産トークン化による分割投資や手数料の削減、手続きミスの防止など、さまざまなメリットがあります。
住友商事ではbitFlyer Blockchainと協業し、不動産賃貸契約プラットフォーム「スマート契約」を開始しています。
これはスマートコントラクト機能を備えたブロックチェーン「miyabi」を活用した不動産賃貸契約プラットフォームです。
同社では不動産の賃貸分野だけではなく、分譲・売買分野への展開も考えています。
スマートコントラクトの課題点
スマートコントラクトは便利である一方、課題も存在します。どのような課題があるのか紹介します。
セキュリティリスクがある
スマートコントラクトで1番の懸念はセキュリティリスクがあることです。
スマートコントラクトのコード自体に不備があると、資金の損失につながるリスクがあります。そして、一度デプロイされたコードは原則として変更できないため、セキュリティホールが残り続けることになります。
また、スマートコントラクトを悪用した不正な行為が発生する可能性もあります。
法規制の整備が整っていない
スマートコントラクトは全世界的に活用できる技術です。しかし、スマートコントラクトに関する法制度が各国で統一されておらず、グレーゾーンが存在することも事実です。
契約の法的拘束力や責任の所在など、契約内容の解釈に曖昧さが残るため、契約内容の定義は慎重に行わなければなりません。
また、既存の法律とスマートコントラクトの整合性を保つことが難しく、大きな課題として残っています。
開発者不足や技術的な課題も多い
スマートコントラクト開発には特殊なプログラミング言語の習得が求められます。特に、コードの検証やテストに高い専門性が必要で、一般の企業や個人がスマートコントラクトを開発することは簡単ではありません。
また、ブロックチェーンのスループット制約からスマートコントラクトの処理能力に限界があるため、大量のトランザクションが発生すると処理が遅延するというデメリットもあります、
これには、レイヤー2スケーリングやシャーディング、オフチェーン計算など様々な研究がされていますが、根本的な解決にはなっていません。
分散型の特徴を保ちながらもスケーラビリティを確保することは非常に大きな課題になっています。
まとめ:スマートコントラクトで従来のシステムを革新
今後も様々な分野でスマートコントラクトが活用される時代になり、中小企業においても、スマートコントラクトの活用が期待されています。
業務効率化やコスト削減、新しいビジネスモデルの構築など、スマートコントラクトの活用によるメリットは大きいです。しかし、ハードルも高く導入には課題があります。今後は法整備の動向や、よりアクセシビリティの高いスマートコントラクトの登場が期待されています。
スマートコントラクトに関する開発を検討している方、また開発全般に関するお悩みがありましたらぜひJitera社へ気軽にお問合せください。