Amazon Web Services(AWS)は、Amazon.com社が提供するクラウドコンピューティングサービスであり、クラウドコンピューティング市場をリードするサービスの一つです。その技術力とサービスの多様性から、多くの企業や個人がAWSを活用しています。
AWSでは、2024年5月現在10種類の認定資格を提供しており、「AWSクラウドプラクティショナー」は、その入り口に位置する資格です。AWSの基礎知識を有していることを証明するもので、クラウドコンピューティングの基本概念や、AWSのコアサービス、セキュリティ、料金体系などについての理解度を問われます。
本記事では、AWSクラウドプラクティショナーの概要やメリット、試験内容など詳しく解説します。
制御系システムや自動化システムの新規開発を中心に、15年以上の開発経験を持つ現役エンジニアです。『デジタルは人と人をつなぐもの』という言葉が好きです。デジタルの世界をわかりやすく伝えていきます。
AWSクラウドプラクティショナー(CLF-C02)とは?

AWSクラウドプラクティショナー(CLF-C02)は、Amazon Web Services(AWS)が提供するクラウドコンピューティングの基礎知識を証明する基礎レベルの認定資格です。
AWSのサービスやその基本的な使い方、クラウドの主要な概念、セキュリティ、アーキテクチャ、料金モデルなどについての理解度を評価します。
主な特徴は以下の通りです。
- クラウド初心者向けの入門的な資格
- AWSの基本的な知識やサービスの理解を証明
- クラウドコンピューティングの主要な概念をカバー
- AWSのサービスを使ったソリューション設計の基礎を学べる
AWSについての知識やスキルをアピールでき、クラウドに関連する仕事やプロジェクトで活躍する機会を広げることができます。
AWSの認定資格
AWS認定資格は、AWSクラウドに関する知識と技能を証明するための資格制度です。現在、AWS認定資格には全部で10種類の資格が用意されています。
資格のレベルは大きく分けて3つあり、「基礎レベル」「アソシエイト」「プロフェッショナル」に分類されます。さらに、「専門知識」として特定の分野に特化した3種類の資格があります。
AWS認定資格の有効期間は、「取得から3年間」です。資格を維持するためには、有効期限までに再認定試験に合格するか、より上位の資格を取得する必要があります。
基礎
基礎レベルの資格は、AWSクラウドの基礎知識を問う資格です。
| 資格名 | 概要 |
| AWS Certified Cloud Practitioner (クラウドプラクティショナー) |
AWSクラウドの基本的な知識と理解を証明する資格 |
アソシエイト
アソシエイトレベルの資格は、専門分野ごとに4つの資格が用意されています。
| 資格名 | 概要 |
| AWS Certified Sysops Administrator – Associate (アドミニストレーター) |
AWSを使用したワークロードのデプロイ、管理、運用の経験を証明する資格 |
| AWS Certified Solutions Architect – Associate(ソリューションアーキテクト ) | AWSを使用したアプリケーションの設計と開発に関する知識と技能を証明する資格 |
| AWS Certified Developer – Associate (デベロッパー ) |
クラウドベースのアプリケーションで書き込みおよびデプロイを行う能力を証明する資格 |
| AWS Certified Data Engineer – Associate (データエンジニア) |
データパイプラインを実装し、AWS でコストとパフォーマンスを最適化するスキルと知識を証明する資格 |
プロフェッショナル
プロフェッショナルレベルの資格は、専門分野ごとに2つの資格が用意されています。
| 資格 | 概要 |
| AWS Certified Solutions Architect – Professional (ソリューションアーキテクト) |
複雑なAWSシステムの設計、移行、デプロイ、トラブルシューティングに関する高度な知識と技能を証明する資格 |
| AWS Certified DevOps Engineer – Professional (DevOpsエンジニア) |
AWSを使用したDevOpsプラクティスの実装、自動化、および継続的デリバリーに関する高度な知識と技能を証明する資格 |
専門知識
専門知識の資格は、特定の分野に特化した3つの資格が用意されています。
| 資格 | 概要 |
| AWS Certified Advanced Networking – Specialty (アドバンスドネットワーキング ) |
AWS環境におけるネットワークの設計、開発、トラブルシューティングに関する専門的な知識と技能を証明する資格 |
| AWS Certified Security – Specialty (セキュリティ) |
AWSのセキュリティ機能、ベストプラクティス、セキュリティ設計原則に関する専門的な知識と技能を証明する資格 |
| AWS Certified Machine Learning – Specialty (機械学習) |
AWSを使用した機械学習とディープラーニングのデザイン、実装、デプロイ、保守に関する専門的な知識と技能を証明する資格 |
※2024年4月に、AWS Certified Data Analytics – Specialty (DAS)、AWS Certified Database – Specialty (DBS)、AWS Certified: SAP on AWS – Specialty (PAS) の3つのAWS認定が廃止されました。詳しくはAWS公式サイトの『AWS 認定の廃止と開始のお知らせ』を参照ください。
クラウドプラクティショナーの内容
AWSクラウドプラクティショナーは、AWSクラウドコンピューティングの基礎知識を習得し、AWSのサービスと機能について理解することを目的とした資格です。
AWSクラウドの基本概念、セキュリティ、アーキテクチャ、料金と請求、サポートサービスなどについて学び、AWSの主要なサービス(EC2、S3、RDS、VPC、IAMなど)の概要と使用方法を理解します。
AWSクラウドを活用してビジネス課題を解決したい非技術系の方や、AWSの基礎知識を必要とする技術者にとって最適であり、クラウドソリューションの設計と導入に関する知識を身につけることができます。
AWSクラウドプラクティショナー資格取得がおすすめの人
AWSクラウドプラクティショナーは、幅広い人々にとって有益な資格です。
技術的な詳細よりもクラウドコンピューティングの基本的な概念と原則に焦点を当てているため、幅広いバックグラウンドの方々にとって取り組みやすい資格となっています。
この資格を取得することで、AWSクラウドに関する知識を証明し、クラウドを活用したビジネス戦略の立案や意思決定に役立てることができるでしょう。
AWSクラウドプラクティショナーの試験概要

AWSクラウドプラクティショナーの試験は、自分で計画を立てて勉強を進めることが重要です。効果的な学習のために、AWS公式の『AWS Certified Cloud Practitioner (CLF-C02) 試験ガイド』と「AWS 認定クラウドプラクティショナー」の資料を活用しましょう。
学習計画を立てる際は、試験の出題範囲を確認し、自身の知識レベルを評価することが大切です。弱点となる分野を重点的に学習し、練習問題で知識の定着度を確認しながら、着実に学習を進めていきましょう。
本章では、上記資料を参考に試験概要についてまとめました。
受験会場
AWSクラウドプラクティショナーの試験は、全国のテストセンターまたは、自宅等でのオンライン受験から選択することができます。
| 試験場所 | 詳細・特徴 |
| テストセンター (ピアソンVUE) |
・全国各地のテストセンターで受験可能 ・専門の試験監督官が監視 ・静かで集中できる環境 ・テストセンターの開館時間に制限あり |
| オンライン受験 | ・自宅やオフィスなど、インターネット接続がある場所であれば受験可能 ・Webカメラとマイクを使用した監視付き ・24時間365日いつでも受験可能 ・受験前にシステム要件を満たすことが必要 ・試験中は監視官とチャットでコミュニケーション |
受験方法は、受験者の都合や好みに応じて選択できます。テストセンターは静かで集中できる環境ですが、オンライン受験は時間と場所の柔軟性に優れています。
受験申込スケジュール
AWSクラウドプラクティショナーの受験申込スケジュールは、AWS認定試験のWebサイトから開始します。
受験料を支払った後、受験日を選択。オンライン受験は24時間365日可能で、テストセンターは空き状況に応じて選べます。予約は受験日の24時間前まで可能ですが、混雑状況によっては制限があります。
受験日が近づいたら、日時と場所を再確認し、必要な準備を行います。オンライン受験の場合はシステム要件を確認し、どちらの場合も身分証明書を用意します。
試験当日は指定時間までに受験場所に到着し、本人確認後に試験を開始します。このプロセスを通じて、スムーズな受験が可能となります。
科目と出題割合
クラウドプラクティショナー試験は大きく4種類の分野から出題されます。
| 分野 | 割合 | 内容 |
| クラウドのコンセプト | 24% | AWSクラウドの利点、設計原則、移行戦略、クラウドエコノミクスなど |
| セキュリティとコンプライアンス | 30% | 責任共有モデル、セキュリティ/ガバナンス/コンプライアンスの概念、アクセス管理など |
| クラウドテクノロジーとサービス | 34% | デプロイ/運用方法、グローバルインフラ、コンピューティング/ストレージ/ネットワーク/DB/AI/MLサービスなど |
| 請求、料金、サポート | 12% | 料金モデル、請求/予算/コスト管理リソース、AWSの技術リソースとサポートオプションなど |
試験の重点は、クラウドコンセプトの理解と、セキュリティやAWSの主要サービスの知識にあります。請求関連の比重は相対的に低めです。
試験に合格するには、AWSクラウドの基本的な特徴や利点、設計原則から、具体的なサービスの役割や使い分けまで、幅広い知識が求められると言えます。出題範囲は広いものの、各分野のポイントを押さえておけば対策は十分可能です。
出題形式
AWS クラウドプラクティショナー試験には2種類の問題形式があります。
択一選択問題 (Multiple Choice)
- 4つの選択肢から1つの正解を選ぶ形式です。
- 3つの不正解選択肢は、知識不足の受験者が選びそうなもっともらしい内容になっています。
複数選択問題 (Multiple Response)
- 5つ以上の選択肢から、2つ以上の正解を選ぶ形式です。
- 選択肢の中に複数の正解が含まれており、それらを全て選ぶ必要があります。
試験結果は100~1,000点のスケールスコアで示され、合格ラインは700点です。問題ごとの配点は公開されていませんが、各分野の重み付けに応じて配分されていると考えられます。
AWSクラウドプラクティショナー資格取得のメリット

クラウドコンピューティングの中でも、AWSは最も人気のあるプラットフォームの一つです。AWSを使いこなせるスキルは、IT業界で大変重宝されています。
AWSの基礎知識を体系的に学べる入門資格で、クラウド初心者に最適と言われています。なぜなら、AWS公式でも「事前の経験が必要ない」とされている唯一の資格がAWSクラウドプラクティショナーなのです。
では、AWSクラウドプラクティショナー資格を取得するメリットについて詳しく見ていきましょう。
AWSを活用するための正しい知識を体系的に習得できる
繰り返しになりますが、AWSクラウドプラクティショナー資格は、AWSを使い始めたばかりの初心者にぴったりです。
AWSの主要なサービスや、クラウドがどんな仕組みで動いているのか、セキュリティや料金のことなどを、わかりやすく学べます。
この資格の勉強を通することで、AWSを使えるようになるための基礎が身につきます。また、クラウドコンピューティング全体の姿を把握することで、AWSをビジネスにどう役立てられるかを考えるきっかけにもなります。
AWSに関する知識を常にアップデートできる
AWSは常に進化していて、新しいサービスや機能がどんどん登場します。AWSクラウドプラクティショナー資格を取った後も、AWSが用意している学習リソースを活用して、最新の知識を得ることが大切です。
初心者でも、オンラインセミナーに参加したり、ドキュメントを読んだりして、AWSについて継続的に学べます。また、AWSのコミュニティに参加すれば、他のユーザーと情報交換したり、ノウハウを共有したりできます。
対外的にAWSのスキルを証明
AWSクラウドプラクティショナー資格を取ることで、クラウド初心者でもAWSの基本的な知識があることを証明できます。
今、社会全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進んでいて、IT業界だけでなく、いろんな分野でクラウドスキルを持った人材が求められています。資格を取っておくと、就職や転職の際にアピールできて、有利に働くことも多いでしょう。
さらに、この資格があれば、社内のクラウドプロジェクトにも積極的に関われるようになり、自分の存在価値を高められます。
将来性の高いエンジニアになれる・収入UPに繋がる
クラウド技術は今後もますます重要になっていくでしょう。初心者のうちからAWSクラウドプラクティショナー資格を取っておくと、将来のキャリアに役立つスキルが身につきます。
AWSの知識を持つエンジニアは需要が高く、収入アップのチャンスにも恵まれています。この資格を取って、将来のキャリアの可能性を広げましょう。さらに、AWSの知識を活かして、自分でサービスを開発したり、フリーランスとして活躍したりすることもできます。
AWSクラウドプラクティショナーの勉強方法

AWSクラウドプラクティショナーの試験に合格するためには、戦略的な勉強方法を取り入れることが大切です。
クラウドコンピューティングの基本概念やAWSの主要サービスについて理解を深めるには、信頼できる学習リソースを活用し、体系的に学習を進めていきましょう。
AWS公式サイトでは無料で利用できる学習コースも充実。初心者の方でも、適切な勉強方法を選べば、十分に試験に合格することができます。
公式の学習ガイドを読む

(出典:AWS 初心者向け資料|AWS)
AWSクラウドプラクティショナーの公式学習ガイドは、試験の内容を理解するための最初の一歩です。
幸いにもAWS認証の試験は世界的に認知されていて、勉強するための教材やリソースが豊富にあります。
テーマ別にAWSの基礎を学ぶことができます。また、AWS の最新の情報がアップデートされているので、信頼性の高い情報源といえます。
まずは、最初に読んでおきたいのが、AWS公式の『AWS 初心者向け資料』です。
オンラインコースを受講する

(出典:AWS クラウドプラクティショナーの基礎知識 (第 2 版)|AWS)
AWSクラウドプラクティショナーのオンラインコースは、AWS公式を含め充実しています。
『AWS クラウドプラクティショナーの基礎知識 (第 2 版)』は、AWS認定試験の最新動向に対応した公式学習教材です。
クラウドの基礎からAWSの主要サービスまでを体系的に学べ、豊富な図解とサンプルで理解を深められます。初心者にもわかりやすく、認定試験合格に向けて効率的に学習できる教材です。
※AWS公式以外では、Udemy、Coursera などのオンライン学習プラットフォームでは、AWS認定クラウドプラクティショナーの学習コースを提供しています。
AWS クラウドプラクティショナーの基礎知識 (第 2 版)
模擬試験を受ける

(出典:AWS Certified Cloud Practitioner Official Practice Question Set (CLF-C02- Japanese)|AWS)
AWSクラウドプラクティショナーの試験に合格するには、模擬試験を受けてCBT形式の試験に慣れておくことはとても大切です。本番の試験と同じような問題が出題されるので、自分の理解度をチェックできます。
AWS公式の『AWS Certified Cloud Practitioner Official Practice Question Set (CLF-C02-Japanese)』は、AWS認定クラウドプラクティショナー試験の日本語版公式練習問題セットです。この問題セットは、実際の試験と同様の形式と難易度で作成されており、試験準備に役立ちます。
※AWS公式の模擬試験を受けるためには、「AWS SKILL BUILDER」に登録する必要があります。
AWSトレーニングを受ける

(出典:AWS トレーニングと認定|AWS)
AWSクラウドプラクティショナーの資格取得を目指す初心者の方には、AWSの公式トレーニングがおすすめです。
初心者から上級者まで、様々なレベルのユーザーを対象としたコースが用意されており、AWSクラウドの基礎知識だけでなく、実際にサービスを使ったハンズオン演習も行うので、実践的なスキルが身につきます。
AWSクラウドプラクティショナーのまとめ

AWSクラウドプラクティショナーの資格は、クラウドコンピューティングの基礎知識を証明するだけでなく、IT業界全体の変革と発展に大きく貢献しています。
現在、クラウド技術はデジタルトランスフォーメーション(DX)の原動力となっており、この資格を取得することで、自分の可能性を広げ、セキュリティ対策やグローバルビジネスの展開にも役立てることがでるでしょう。
つまり、この資格は個人のキャリア形成だけでなく、企業のデジタル化、セキュリティ対策、グローバル展開、そして継続的な学習と成長において、重要な意義を持っているのです。
AWS認定試験やAWSクラウドプラクティショナーの資格についての質問やご相談は、株式会社Jiteraにお問い合わせください。



