業務効率化を進めるのは、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。
しかし、何も見当をつけずに手探りのまま業務改善を進めていっても、企業や社員へ恩恵があるまでに至らず、最終的には労力のムダ遣いにもなりかねません。
手当たり次第に進めるのではなく、まずは他社の業務効率化に成功した事例について調べてみるのはいかがでしょうか。成功事例を読み解けば、必ず御社にも活用できるヒントが見つかるでしょう。
今回は、業務効率化の成功事例やメリット、業務効率化を成功させるためのコツ、そして業務効率化に役立つツールについて紹介します。

現役のシステムエンジニアとして10年程度のキャリアがあります。 Webシステム開発を中心に、バックエンドからフロントエンドまで幅広く対応してきました。 最近はAIやノーコードツールも触っています。
業務効率化と生産性向上の違いとは?
まずは、業務効率化の意味を再認識しておきましょう。
業務効率化とは、業務におけるワークフロー(手順)に潜む「ムリ・ムダ・ムラ」を洗い出してから省き、業務の生産性を高める取り組みです。
業務改善の方法は多岐にわたり、単純に業務フローや人員配置を見直すだけで改善された事例もあれば、業務効率化に役立つツールを導入して改善する場合もあります。
いずれにしても、今まさに業務で発生中の課題を見える化するのが業務改善の第一歩です。
業務効率化に取り組む際には、対象業務の業務フローや人員配置の確認から始めてみましょう。
そして、業務効率化とよく混同して取り上げられるのが、「生産性向上」です。
「業務効率化」と「生産性向上」は似て非なるものであり、それぞれの言葉を使う場面は異なります。
- 業務効率化:業務のムダ・ムリ・ムラを洗い出して省く
- 生産性向上:より少ない資源(リソース)だけで、これまで以上の成果を得る
つまり、「生産性向上するために」「業務効率化を行う」のであり、業務における不要なモノを取り除く業務効率化は生産性向上のために行う施策の一つです。
ここで言う資源(リソース)とは、人や設備、そしてその業務に割り当てられる時間なども含まれます。
いかに資源の投入を抑えつつ、最大の成果を得るかが生産性向上において重要なポイントといえるでしょう。
業務効率化のメリット
業務効率化を計画している企業や部署は多いですが、業務効率化を行う具体的なメリットを意識していない組織も多いです。
もちろん、業務効率化を目指すのは悪いものではありません。良い方向にさえ転べば、業務効率化は企業にとって何もデメリットがないのです。
しかし、立場によって業務効率化で受けられるメリットは変わる可能性がある点に注意しましょう。
ここでは、業務効率化を行うメリットについていくつか紹介します。
無駄な時間やコストを削減
業務効率化が成功すれば、これまで発生していた無駄な時間やコストを削減できます。
「業務効率化」によって得られるメリットとして、一般的によくイメージされているものではないでしょうか。
無駄な時間が省かれた結果、従業員は残業や休日出勤などが必要なくなり、企業側にとっても時間外手当などのコストの抑制が可能となります。
このメリットを享受するためには、正確に現在の業務を洗い出さなければなりません。
今の業務フローにおいて無駄な工程はないか、もっと短縮できる部分がないか、まとめられる手順はないかなど、その業務に関わるメンバー全員で見直しを行ってみましょう。
従業員のモチベーション向上
業務効率化を行った結果として無駄な作業が無くなったり、職場環境が良くなると、従業員モチベーションが向上するという副次的なメリットも見込めます。
特に、誰もが潜在的に不満を感じていた部分をすこし直すだけでも、目に見えてモチベーションが向上するでしょう。
また、労働時間が短縮されること、そして短縮に向けて常に取り組みを行うという企業側の姿勢を従業員へ見せると、従業員の満足度や定着率が向上し、長い目で見ると企業側へ多くのメリットとして返ってくるはずです。
生産性の向上によって利益が増大
企業にとって利益の確保は、ビジネスを存続させるために必要不可欠なものであり、常に何らかの方策を考える必要がある最重要課題の1つでもあります。
無駄な時間の削減とも繋がりますが、業務効率化によって生産性が上がれば、従来と同じ作業時間しかかけていないのに、企業は従来よりも多くの収入が見込めるようになるでしょう。
無駄な時間を省いた結果、新しい何かへ使える時間が増えるため、従来の業務の生産性を上げるも良し、これまでとは異なる新しい事業を始めて利益増大を狙うも良しなど、企業にとっては様々な方向から利益の増大を狙えることもあるでしょう。
業務効率化が成功すると、自然と生産性も向上してくる傾向にあるため、まずは業務効率化を成功させるのが第一です。
多様な働き方への対応
クラウドサービスやIT技術の発展に伴い、必ずしも会社のデスクに座って仕事をしなくてはならない時代では無くなりました。
業務効率化を行って、リモート作業として家にいながらでも業務を行えるようにすれば、既存の働き方に囚われず、多様な働き方へ対応できている「現代にマッチした企業」として評価されるでしょう。
もちろん対外的な評価だけでなく、交通費の支給が不要になるといったコスト削減効果や、多様な働き方を求めていた優秀な人材の定着・確保に繋がるなど、様々なメリットを享受できるはずです。
現代において、場所や時間を選ばない働き方はもはや必須といえます。
少しずつでもいいので、業務効率化を行い、新しく多様な働き方へ対応できる企業を目指してみませんか。
業務効率化の進め方
業務効率化を進めるにおいて、「どうやって進めていくのか」は非常に重要なポイントです。
しかし、実際は何から手を付けたらいいかハッキリしない方も多いのではないでしょうか。
業務効率化は、適切な手順で一歩ずつ進めていくのが肝心です。正しくない順序で無理やり進めていったとしても、良い結果へ結びつくことはまずありません。
ここでは、業務効率化の具体的な進め方を確認しておきましょう。
現状の業務の把握
まずは、現状の業務で改善すべきなのはどの部分か、何が課題となってしまっているのかを把握する必要があります。
そのためには、対象となる業務の担当部署や担当者へヒアリングを行い、業務の流れや必要とされる作業時間、問題となっている業務の発生頻度など、業務の実態を確認しておきましょう。
課題点が想像以上に根深いものだったとしても、部署や担当者を深く追求するのは控えるべきです。
本質的な問題点(本音)を引き出すためにも、ヒアリングは丁寧に行いましょう。
問題点・課題の洗い出し
ヒアリングが完了したら、洗い出された問題点・課題点を整理します。
問題点・課題点を整理することで、どの部分から効率化に着手するべきかが可視化され、自ずと取り組む優先順位も見えてくるはずです。
「人手(マンパワー)が足りない」「特定の人に業務が偏っている」など、課題点を分類ごとに分けておけば、業務改善策も検討しやすくなります。
スケジュール立案
どの問題点・課題から取り組むべきか優先順位が決まったら、具体的な改善スケジュールを立案しましょう。
一般的に、業務効率化は達成までに時間がかかる取り組みであり、長期的なスケジュールになると見込んでおく必要があります。
スケジュールに余裕が無い場合は、企業として優先すべきものや、業務改善による効果が大きいと見込まれるものを中心に計画を立てるのがおすすめです。
徐々にでも効果が実感できるようになると、担当部署や担当者のモチベーションアップの効果が期待できます。
業務改善策の実施
具体的な改善スケジュールを立案できたら、実際に業務改善策の実施へ移ります。
業務改善へ取り組むチームや担当部門と認識の齟齬を発生させないためにも、スケジュールと統合した「業務改善計画書」を作成するのがおすすめです。
また、改善案は1つだけではなく複数用意しておきましょう。
改善案を1つしか準備していないと、何かしらの要因でその案を進められなくなった場合、プロジェクト全体が停滞してしまうからです。
改善案はできるだけ複数準備しておきましょう。
効果の検証
計画書を基に業務改善を進めていった後は、計画完了後、もしくは、節目ごとに改善効果の検証を行います。
特にプロジェクトが長期に渡る場合は、一定期間ごとに検証期間を設けるよう、あらかじめスケジュールへ組み込んでおくといいでしょう。
効果の検証を行えば、改善案を定めた計画が間違っていなかったか、方針転換は必要ないかを確認できます。
また、一旦プロジェクトが完了した後でも、担当部署や担当者へその後の経過についてヒアリングするのもおすすめです。
当初見込んだ改善効果があったか答え合わせができ、次回以降の新しい業務効率化プロジェクトへ繋げられます。
業務改善の成功事例
ここからは、他社が実際に取り組んで改善効果があった事例をいくつか紹介します。
こちらで紹介する改善成功事例の企業は、業態や規模も様々です。
抱えている課題点や改善案も異なりますが、どの企業にも該当する課題点があり、きっと貴社にも当てはまる事例が見つかりますのでぜひ参考にしてみてください。
ヨネックス株式会社
ヨネックス株式会社(以下ヨネックス社)は、テニスやバトミントンなどを中心とした様々なスポーツ用品の製造・販売を行っている企業です。
ヨネックス社では業務プロセスをデジタル化できるツールを導入し、業務改善に成功しました。
キーポイントとなったのが、デジタル化の中心を情報システム部門任せにせず、現場主体で取り組ませた点です。現場の業務を一番良く分かっている現場に業務フローの見直しを命じ、デジタル化できる業務の洗い出しを行わせました。
その結果、①業務フローにフィットしたデジタル化②自分たちで作り上げたので新しいツール操作を短期間で習得という二つの効果を得ることに成功したのです。
どうやればいいかを当事者たちに考えさせ、業務効率化へ繋げたヨネックス社の事例でした。
きずな綜合会計事務所
きずな綜合会計事務所は、東京に事務所を構え中小企業を中心とした税務関連サービスを提供している会計事務所です。
会計事務所という業態であるため、様々な企業(クライアント)と日々打ち合わせを行い、チームで動くプロジェクトの進捗状況を共有しにくいといった課題を抱えていました。
議事録などをWordで作成・保管していたため、目的の文書を探し出す時間が無駄だと感じ、業務効率化を本格的に開始。
「Stock」という情報共有ツールを導入し、手軽に情報共有ができるようになり、業務効率化に成功しました。
煩雑だった情報共有やタスク管理を、最適なツールを導入して改善した事例です。
株式会社カクヤス
株式会社カクヤスは、東京23区を中心とした酒類の販売がメインの企業です。業務用販売と家庭用販売のどちらも行っており、受注から提供までをワンストップで提供しています。
元々導入していた勤務管理システムの契約満了に伴いバージョンアップを検討していたところ、カクヤス社の要望に合わせて大幅にカスタマイズされた既存システムからのバージョンアップが非常に困難となり、新たなシステムを検討していました。
カクヤス社が以前から抱えていた課題である「打刻漏れ」や「勤怠エラー」を解消するため、カスタマイズなしでも法改正対応が可能となる新たなシステムを導入して業務効率化に至った事例です。
自社の課題を正確に把握し、どの部分を解決すれば今の課題点の大半が解決できるのかを考え、適切なシステムを導入した事例となります。
東日本電信電話株式会社
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)は、目標としていたワークライフバランスの実現や、労働環境を整備することで、貴重な人材がずっと仕事を続けられるように「働き方改革」を実現する方法を模索していました。
具体的には以下の取り組みを実施しています。
- 在宅勤務制を導入(モバイルワークの活用)
- Web 会議や会議のペーパーレス化
- 勤務時間内に会議を設定
- 仕事への意欲と活力を高めるために新たな休暇を新設
何か新しいシステムなどを導入したのではなく、企業内の制度や勤務スタイルの見直しを行い、業務効率化や社員の満足度向上へ繋げた事例となります。
株式会社電力サポート中国
株式会社電力サポート中国は、中国地方を対象とした電力事業の関連業務や発電所用器材などの販売を行っている会社です。
各エリア内に拠点が複数存在しており、申込みに対する対応や、電話応対から発注までのワークフローが拠点ごとに違うといった経営上の課題点を抱えていました。
クラウドサービスであるSalesforceとAWSを導入、さらにサポート窓口を一本化することによって、拠点の集約化やオペレーターの負担を軽減させ、業務の効率化を実現しています。
既存の仕組みや業務フローの中で、無駄となっていた所や集約できる部分を洗い出し、それらをシステム導入を機に統合させ、業務効率化とコスト削減を図った事例です。
アルバック・クライオ株式会社
アルバック・クライオ株式会社は、神奈川県茅ヶ崎市に本社と工場を構え、真空ポンプの製造・販売を行っている企業です。
アルバック・クライオ社にある技術部門と製造部門では、案件や改善案をExcelに記入するだけに留まっており、二次活用や案件の進捗管理まで至っていないという課題を抱えており、また、定期的に実施する会議も長時間化してしまうのが常態化していました。
これらの課題に対する対策として、タスク・プロジェクト管理ツールを導入してプロジェクトに関する情報や進捗状況を一元管理できるようになり、必要な情報が発見しやすくなって、会議時間が大幅に短縮できたという事例です。
業務効率化のまとめ
この記事では、他社が実践した業務効率化の事例をもとに、業務効率化がもたらすメリットについて解説しました。
業務効率化に本気で取り組むには、担当部署や担当者はもちろん、業務効率化を提案して進めていく責任者にも大きな負担がかかるプロジェクトです。
労力や時間がかかり、入念な準備をしていても、改善結果はフタを開けてみないと分からない取り組みでもあります。
しかし、その労力をかけた分だけ改善効果が目に見えたときは、担当部署、そして企業にとって大きなメリットになり得るでしょう。
業務効率化を実現する方法は多岐にわたるため、まずは効率化を行いたい業務の洗い出し、そして改善計画を立ててみるのをおすすめします。
もし業務効率化に関しての疑問点や、上手くいかないといった悩みを抱えているのであれば、ぜひ株式会社Jiteraへご相談ください。
Jiteraは、業務効率化に関する豊富な経験とノウハウを持っています。無料相談も実施しているので、お気軽にご連絡ください。