MVP(Minimum Viable Product)開発は、製品開発初期段階で最小限(Minimum)の機能(Viable)を持つ製品やサービス(Product)を作り、市場へ投入することで早期にユーザーの反応を確認する手法です。
具体的にMVPとは一体なんなのか。
メリットやデメリット、具体的な開発プロセス。導入の際の注意点から成功事例まで、新規事業や新規サービスの立ち上げに欠かせなくなったMVPについて詳しく紹介します。
国立の情報系大学院で情報工学、主にUI/UXを学んだあと、NTT子会社に勤務。 退社後はフリーランスとして、中小規模事業者様のIT化、業務自動化を支援しています。 DX推進の提案やPythonなどを用いた専用RPAツール開発のほか、市営動物園の周年企画などにもITエンジニアとして参画させていただきました。
MVPとは何か?

MVPとは「Minimum Viable Product」の略称で、必要な機能を最小限に抑えた製品・サービス、またはその開発手法の名称です。
斬新なアイデアを製品化する過程で、「本当にユーザーに必要とされるものなのか?」という疑問が必ず浮かんできます。
そこで重要となるのが、MVPです。開発初期に最小限の機能を備えた初期バージョンを作成し、ユーザーの反応をいち早く検証します。
この初期バージョンこそがMVPであり、ユーザーからのフィードバックを得ることで開発の方向性を最適化が可能です。。
MVP開発の魅力は以下の3点です。
- 早い段階でユーザーからのフィードバックを得られる
- 市場投入を迅速化できる
- 開発効率を向上できる
MVP開発は、ユーザー目線に立った効率的な製品開発を実現する手法と言えます。
MVPとプロトタイプの違い

MVPの概要だけを聞くと、誰もがこう思うはずです。
「それはプロトタイプと何が違うの?」と。
実際MVPとプロトタイプは多くの点が似通っており、混同されやすいです。
簡単に言えば、MVPは最小限ではありますが単体で必要なシステムが機能する初期モデルであり、プロトタイプはアイディアを具体的な形にした試作モデルです。
しかし、この説明だけだとイマイチ違いが見えてきません。
MVPとプロトタイプの違いについて、以下の表に纏めました。
| 使う人 | 目的 | 形態 | |
| MVP | 将来ターゲットにしたい顧客 | いち早く、市場の反応やユーザーからのフィードバックを得ること | 実際に課題を解決する様子を実感してもらえる「実行できるもの」 |
| プロトタイプ | アイディアを共有する開発チームやステークホルダー | 開発するプロダクトの認識を共有すること | 共有したいイメージが伝わるのであれば、紙に書いたメモでも何でも良い |
同じ「開発サイクルの最初期に作る初期モデル」ではありますが、その意義や目的には大きな違いがあります。
MVPのメリット

では、MVPを用いた開発手法には具体的にどんなメリットがあるでしょうか。
最小限のプロダクトから始めるMVPには多くの利点が存在します。
- コストの削減
- ユーザーの反応の早期確認
- 市場での立ち位置をいち早く確保すること
- 失敗リスクの低減
それぞれについて、MVP開発を導入するメリットを詳しく説明します。
開発期間とコストを削減できる
MVP開発は必要最小限の機能の開発が終われば即座に市場へリリースするため、スタートダッシュ時のコストや時間を節約することが可能です。
また、MVPは複雑な機能を排除した単純な形から開発を始めるため、進捗管理の負担も大きく減らすことができます。
絶対に動かせない「必要最低限の機能」と「追加した機能」が明確に別れているため、
- 開発サイクル全体が明確になり、開発スピードの低下を回避できる
- 初期段階で不要な機能を省ける
など、開発期間やコストの最適化が期待できます。
市場ニーズを早期に検証できる
ビジネスにおいて新規事業やサービスの立ち上げには、PMF(プロダクトマーケットフィット)の確認、すなわち「そのプロダクトは市場のニーズと適合しているか。ターゲット層が抱えている課題を解決できるのか」の確認がとても重要になっています。
迅速にユーザーの反応を確認できるMVP開発は、このPMFの課題を市場の反応を早期に検証することで解決することができます。
斬新なアイディアや既存の常識から外れたプロダクトは、それがどれだけ素晴らしくても、しばしば「誰にも使ってもらえない」ことがあります。
MVPによって「その製品やサービスが市場に受け入れてもらえるのか」を事前に確認できれば、開発の初期段階からPMFを見据えた最適化が可能です。
また、MVP開発によっていち早く市場へ先行投入できるため、他社に先駆けて独自性の強い製品やサービスをユーザーに向けて提案することができる点も大きな魅力です。
競争が激しく独自性を求められる現代のビジネス環境において、いち早く市場に参入できることは何物にも代えがたいメリットなのです。
失敗リスクを軽減できる
そもそもスタートアップの際に「無駄な寄り道」や「失敗するリスク」を省きたいならば、「そのアイデアが果たして本当にユーザーが求めているものなのか」を検証することが重要です。
特に「スタートアップの際には、無駄な作業は可能な限り省いて、本当に顧客を満足させる製品やサービスの核心部分をいち早く発信するべきである」というリーンスタートアップは、スタートアップ時のリスクを減らす重要な考え方です。
そして、MVP開発はリーンスタートアップの核心部分であるといえます。
最初にMVPを開発して市場に投入し、ユーザーや市場の反応を見ながら製品の改良を行うことで、失敗リスクの軽減と開発コストの最適化を行います。
MVPからユーザーフィードバックを得ることで、無駄なステップを省きながら効率的にアイディアを「市場価値」に変換できます。
ユーザーの要望を早期に知ることができる
MVPは早期にアイディアを製品としてユーザーに使ってもらうことで、ユーザーの反応をいち早く収集することができます。
ユーザーの反応次第ではプロジェクトの方針をいち早く転換することができるため、よりニーズに最適化した製品やサービスを開発していくことが可能です。
ユーザーの要望をいち早く知ることで、ニーズが少ない機能の開発優先度を下げ、より求められている機能に絞ることができるため、開発コストを抑え重要な機能に絞って開発していくことが可能です。
ユーザーとの密接なコミュニケーションが取れる
MVPはユーザーの反応に対応するカタチで継続的な改良を行うため、ユーザーとの密接なコミュニケーションを取ることができます。
ファンコミュニティが醸造されることで、より多くのフィードバックが得られるようになります。
また、早期に密接なコミュニティを築くことは、ユーザーの本質的なニーズを取り込むことに繋がります。
そもそも、フィードバックを取り入れた製品やサービスが本当に顧客ニーズを満足させるようになるかといえば、そう単純では有りません。殆どの場合、ユーザーは自身の本当の要望をそもそも理解していません。
MVP開発を導入することで、その製品やサービスに対してユーザーが感じた、生の反応や要望、不満や期待がフィードバックとして集まります。
製品の成長とともに変質するフィードバックを集める過程で、開発側がよりサービスの核心となる魅力に気がつくことも多いです。
この記事の最後に、サービスの核心がコミュニティからのフィードバックによって変わっていった成功事例を紹介していますのでぜひ参考にしてみてください。
MVP開発とアジャイル開発の違い

MVP開発とアジャイル開発は、どちらもソフトウェア開発において効率的で迅速なリリースを目指すアプローチであり、両者は基本的に併用します。
ですが、それぞれ異なる目的と方法論を持っています。
具体的には、以下のような違いがあります。
| MVP開発 | アジャイル開発 | |
| 目的 | 早期の市場調査とユーザーフィードバックの収集 | 開発スパンを1サイクルに纏め、何度もリリースと改良を繰り返すことで柔軟性を維持したまま開発期間を短縮する |
| 特徴 |
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| プロセス |
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| 活用シーン | スタートアップや機能の市場投入時に、最小限の機能を持つ製品をいち早くリリース | 開発プロジェクト全体で、反復的なサイクルでプロジェクトを進行により柔軟性と継続的な改良工程の確保 |
開発モデル
開発モデルの違いとしては、以下のような点が特徴となります。
MVP開発
MVP開発は最小限の機能を持ったモデルで必須の機能だけを実装し、早期のリリースを目指します。フィードバックを重視し実際のユーザーからフィードバックを集め、反応を基に改良方針を決めていく方法です。
大規模なリソースを投入する前に市場の反応を確認できるため、リスクを最小限に抑えられることが特徴です。
アジャイル開発
アジャイル開発はリリースと改良を繰り返すインクリメンタルな開発です。小さなリリースサイクル(スプリント)を繰り返し、継続的に改善していく手法です。
顧客要望を重視し、顧客やステークホルダーとの密なコミュニケーションを重視し、スプリント中に顧客の追加要望を取り入れていきます。
スプリントごとに改良を重ねることで急な要件変更に迅速に対応できるので、柔軟性と適応性を持った開発であることが特徴です。
開発プロセス
開発プロセスは多くの場合は双方が絡み合って進行します。あえて分離するとすれば以下のようになります。
MVP開発
- アイデアの検証
- 最小限の機能の特定
- プロダクトの開発とリリース
- フィードバックの収集と分析
- プロダクトの改良と再リリース(※再リリース後はアジャイル開発手法へ移行することも多いです。)
アジャイル開発
- 目標や指標設定(プロダクトバックログ作成)
- スプリントの計画
- スプリント実行(※通常は長くても4週間以内にリリースまで行います。)
- スプリントレビューとレトロスペクティブ(ふりかえり)
- レビュー結果を踏まえ顧客と相談しながら次のスプリント計画へ(※顧客からの要望変更が大きければプロダクトバックログを見直します。)
目的や適用場面
MVP開発はスタートアップ時のいち早い市場検証を目的とし、アジャイル開発は開発工程の柔軟性を目的とします。
| 目的 | 適用場面 | |
| MVP開発 | 市場検証やユーザーフィードバックを重視し、プロダクトの基本概念の有効性を早期に検証することで無駄な開発を避ける | スタートアップ時や、製品をリリースする前のアイディア検証時 |
| アジャイル開発 | プロセスの柔軟性と継続的な改良に重点を置き、顧客満足度を高めながら継続的なリリースを行う | 開発プロセス全体で効率化を行う場合 |
MVP開発の手順

MVPの意義は「いち早くユーザーにアイディアを触ってもらってフィードバックをもらうこと」なので、場合によってはより単純な開発から始めることもあり、必ずしもしっかりした手順を取る訳では有りません。
例えば後述する成功事例では、「3分動画を公開する」「床にマットを敷く」といった単純なことから始めて大成功を納めたサービスを紹介しています。
とはいえ、一般的に成功しやすいMVP開発の手順は存在し、下記サイクルを何度も繰り返すことが多いです。
- アイデアや仮説を検討する
- 市場に合わせて、コンセプトを伝えるために必要な機能を絞り込む
- 絞り込んだ機能をもとにMVPの設計する
- MVPに寄せられたフィードバックを収集し、改修する
各ステップについて具体的に解説します。
仮説の設定
まずはどのようなプロダクトにするのかを明確にします。
様々な情報を整理して、「どんな製品やサービスが必要とされているのか」という仮説を設定しましょう。
- 練り上げたアイデア
- 作りたい製品やサービスのコンセプト
- 市場の現状と抱えている問題
といったアイディアや仮説から
- 解決しようとしている問題
- ターゲットとなる顧客層
- 市場のニーズ
- そのプロダクトがどのように市場を変えるのか
といった点を明確に定義しましょう。
最小機能セットの策定
つぎは、MVPの絞り込み、つまり「製品やサービスが提供する主要な価値を実現するために、どんな機能が最低限必要なのか」を特定するプロセスです。
仮説を明確に立てていれば、プロダクトに必要な機能も自ずと明確になります。
「最も重要な最小機能セット」が何になるかを洗い出し、絞り込みましょう。
重要なのは、仮説で明確にしたコンセプトや解決すべき課題を忘れないことです。
必要な機能をリストアップし、それらの優先度を順位付けしましょう。
MVPの構築
機能の絞り込みが終わったら、ようやくMVPの構築に移ります。
「最小機能セットの策定」でリストアップした表を元に、最小限実行可能なプロダクトを構築します。
このステップでは、初期バージョンを実際に開発する工程はもちろん、「MVP単体でユーザーに価値を提供できているか」を確認する工程も含みます。
システム開発に注力することはもちろん大事ですが、コンセプトが瓦解していないかを確かめるのを忘れないようにしましょう。
あくまでMVPは、「製品やサービスの基本的なアイデアが具現化し、それが機能していること」が大前提です。
市場での検証とフィードバックの収集
最後に、MVPを市場に投入し、ユーザーからのフィードバックを収集します。
フィードバックの収集方法は様々ですが、代表的な例としては以下の方法があげられます。
レビューの確認
オンラインストアやレビューサイトに書き込まれたユーザーの意見・感想や体験エピソードを集めます。使用者目線からの多様なフィードバックが得られます。
ユーザーへのインタビュー
使用したユーザーを集めて、直接感想や意見を聞きます。リアルタイムにより深掘りした意見を聞くことができます。
ネットアンケートと調査
開発者が知りたいことなど、特定の質問をアンケートにすることで、焦点を絞った意見が収集できます。
ユーザーによるテスト
実際に目の前でユーザーに製品やサービスを使用してもらい、その過程を観察することで、使いやすさや機能性などの体感的なフィードバックを得ることができます。
SNSの監視
SNSに発信されているユーザーの意見や感想を追跡することで、市場の反応をリアルタイムに把握可能です。
その後収集したフィードバックは整理・検証を行い、プロダクトの改善や最終的な方向性の調整に役立てます。
場合によっては気が付いていなかった需要を発見したり、リストアップした機能の順位付けを変更したりすることもあるでしょう。
フィードバックを元に早期に改修すべき機能や、次のサイクルで実装すべき追加機能を定め、再度開発に戻ります。
そして何度も開発サイクルを回していくことになります。
MVP開発の注意点

ここまでにお伝えしたようにMVP開発は強力な開発手法です。しかし、MVPを効果的に利用するためにはいくつか注意すべき点があります。
プロジェクトを成功に導くためにも、MVP開発について知っておくべきポイントや、避けるべき落とし穴を知っておきましょう。
よくあるMVP開発の注意点について紹介します。
機能を過不足なく実装する
MVPは最初に実装する機能を取捨選択し最小限に絞り込みますが、その際に「本当は重要だった機能」さえも捨ててしまう可能性があります。
かといって、すべてを一度に実装しようとすると開発期間や開発コストが増え、MVPのメリットが無くなります。
MVPを導入する際には、最も重要な機能や特性が何なのかを明確にしておき、リリース時にも「本当に必要な機能は過不足無く揃っているか」を確認するべきです。
また、いくらMVPが「最小限の機能」で良いといえども、UI/UXを適当にするのは失敗の元です。
ユーザーからの良質なフィードバックを得るためにも、製品の魅力に気づいてもらえるように使いやすさは意識しましょう。
ユーザーからのフィードバックを重視する
MVPは市場やユーザーにいち早くアイディアの有効性を問うという目的のもと行います。
そのため、
- 早期にユーザーと積極的にコミュニケーションを取る
- ユーザーを巻き込んだ開発を行う
ことを意識し、ユーザーからのフィードバックを重視して開発します。
MVPの強みを活かすためにも、ユーザーニーズの正確な理解が欠かせませんし、そのためにもコミュニティとの信頼関係がとても重要となります。
- ユーザーの求める最低限とはどの範囲か
- ユーザーの現状と理想のギャップはどこにあるのか
- ユーザーが声に出す「顕在しているニーズ」と、声には出さない「潜在しているニーズ」は何なのか
など、ユーザーへの向き合い方がプロジェクトの成功に直結することを忘れないようにしましょう。
ユーザーからのフィードバックに真摯に向き合うことが成功の秘訣です。
例えば、万一欠陥品を生み出してしまったとしても、ユーザーの反応から早期に発見し、素早く対処すれば逆に市場からの信頼を獲得できることもあります。
ただし、必ずしもユーザーの反応が正しいとは限らないことにも注意しましょう。
MVP自体は、最小限かつ不完全な製品であるという事実を忘れてはいけません。
むしろ初期のバージョンでは不親切なUIや機能の物足りなさが目立ってしまうことが多いため、ユーザーからのフィードバックの質も低くなる可能性が高いです。
フィードバックに対してはただ受け身になるのではなく、ユーザーへ適切な質問を行うなどの双方向コミュニケーションを行なうことが求められます。
開発期間を短く設定する
MVPを活用するならば、
- プロジェクトはスモールスタート
- 開発期間は短く設定
- 開発手法は何度も開発とリリースを短期間で繰り返すアジャイル開発を採用
することが大前提です。
長期間の開発を行うと、機能を無駄にあれこれと詰め込みすぎてMVPの利点は早々に崩壊してしまいます。
リリースを何度も行ってそのたびにフィードバックを集め、早期にユーザーの需要を理解し、最適な方向へ舵を変更し続けることこそがMVPの意義だからです。
逆に言えば、大原則として、スモールスタートかつアジャイルでの開発を採用できないならばMVPの採用は見送るべきです。
MVPを採用したということは、「万全で完璧である」ことよりも「不完全で変化していく」ことを選んだのです。
完璧であるよりも完了することを目指しましょう。
バグを何度も乗り越え、何度もバージョンアップを繰り返し、ユーザーとともに前へ進み続けることがプロジェクトの成功への近道です。
密にコミュニケーションを取る
MVPは必要最低限の機能しか提供しません。
これはユーザー側から見れば、不完全で不親切な製品やサービスであるとも言えます。
そのため「第一印象でがっかりされ、プロジェクト自体の信頼性を損なう」という危険性が存在します。
また、MVPは最終的な規模感が曖昧なままスタートします。
これは開発スタッフから見れば、ゴールが見えないまま走り続けることになるため、モチベーションの低下を招きます。
頻繁に繰り返される改修作業は、ともすればプロジェクトに対する開発チームの意欲を奪いかねません。
そのため、MVP開発では、開発側とユーザー側が密にコミュニケーションを取り、一緒にプロジェクトを成功させることが重要になります。
ユーザー側には製品の魅力や改善に取り組む姿勢をアピールし、開発スタッフにはユーザーの反応やプロジェクトの進行具合を可視化しましょう。
コミュニケーションを深くすることで、双方のプロジェクトに対する興味を持続させることができます。
経緯や成果を記録する
MVPを導入する際には、経緯や成果を記録し、開発チーム内で明確に共有することが重要です。
- ユーザーからの要望など次の開発を行うに至った経緯の共有
- 今まで解決した問題と解決方法の共有
- 改良後のユーザーの反応やタスクの達成度の可視化
など、現状と次への展望が明確になることでプロジェクトの全体像を見失うことなく開発を進めることができます。
また「継続的な改善」を行う上でも、経緯の記録が重要となります。
MVPでは頻繁にフィードバックを集め製品に何度も改修を施しますが、改修の目的が曖昧な状態ではまともな改善は行えません。
問題が起こった経緯を開発チーム全体が共有しておくことで、改修の目的を見失わずに次の改善につなげることが可能です。
MVPの開発成功事例

これまでにMVPの特徴や様々なメリット、デメリットについて紹介してきました。
最後に具体的なMVP成功事例を紹介し、そこから学べるMVP活用の秘訣、すなわち「あれこれ準備するよりも、まずはやってみる」ことを紹介したいと思います。
Dropboxの事例

MVPの成功事例として有名なのが、Dropboxが行なったスモークテストの事例です。
「リーンスタートアップ」を提唱したエリック・リースも、自身の著書でその取組を取り上げて有効性を語っています。
Dorpboxの開発者たちは市場のニーズを掴むために、まず高度なネットワークの構築より先に、自分たちの提案するユーザー体験が実際にユーザーにどう思われるのかを知ることが重要だと判断しました。
サーバー構築の計画、可用性の検証、レイテンシー問題の解決、常時接続するネットワークの構築。
数多くの問題がある中で、まずは「建物の外に出て聞いて回る」ことから始めたのです。
MVPとして「Dropboxが提供するユーザー体験を詰め込んだ3分の解説動画」を作り、ソーシャルメディアに公開したところ、ベータ版にアクセスが殺到。
翌日には、サービスの利用希望者が5,000人から75,000人に増加しました。
MVPの構築に関して、第一歩目に必ずしも難しいことを行う必要はありません。
Dropboxの創設者も、「必ずしもソースコードを書かなくてもいい。とにかくユーザーの手に何かを渡して、いち早くフィードバックを得るべきだ。」と語っています。
X(旧Twitter)の事例

X(旧Twitter)の始まりが、Podcastコンテンツ会社Odeoの社内ツールであることはご存知でしょうか。
Odeoの4人の経営陣はある日、「少人数でコミュニケーションが出来るSMSが必要なんじゃないか」という、当時としては非常に斬新な仮説を打ち出しました。
そして、社内ユーザー向けに、他の従業員にメッセージを送信し、少人数グループ内で閲覧し合う小さなソフトウェアを設計しました。
その後、社員から寄せられた様々なフィードバックを元に仮説を検証し続け、知らない人同士が緩やかなつながりを持てるSNSへと姿を変えていきます。
「Twitter」として一般公開されたあとも、多くの改修がなされ大人気SNSへと成長していきました。
- 140文字の小さなメッセージ
- 緩やかに少人数グループが繋がっていく相互交流システム
- 様々な話題が共有され拡散・伝播していく、画像やニュースリンクの共有機能
人気を博しているSNSも、かつてはただの社内ツールだったわけです。
似ている例として、ゲーム会社の社内ツールが有名なチームコミュニケーションツール「Slack」へと成長した事例もあります。
初めは社内で使うための小さなエコシステムであったものが、大人気サービスへと成長していく。
これもまた、MVPをうまく活用した成功例です。
その他の事例

その他にも様々な形でMVPを利用したプロジェクト成功例があります。
中でも民泊仲介プラットフォーム「Airbnb, Inc.」の成功はなかなかドラマティックな事例でしょう。
サンフランシスコの高い家賃に悩む二人の実業家が、家の近所でよくカンファレンスが開かれていることを知り、「見知らぬ人間に金を払ってでも屋根の下で寝たいホテル難民が必ずいるはずだ」と仮説を立てました。
そして彼らは自分の家のリビングにエアマットレスを敷くことから始めたのです。
御存知の通り、Airbnbは今や国際的な民泊仲介サービスへと成長しました。
リビングに敷かれたたった一枚のマットレスが、彼らにとってはかけがえのないMVPだったのです。
まとめ:MVPとは必須機能を実装したミニマムな製品

MVPとは、アイディアの根幹となる必須機能だけを実装した必要最小限の製品のことです。
新しい製品やサービスのスタートアップを行なう際に、MVPをいち早く市場に投入することで効率的にフィードバックが得られ、コスト効果の高い製品開発を行えます。
斬新な仮説や課題解決のアイディアを具体化する際にはぜひMVP開発を検討してみてはいかがでしょうか。
しかし一方で、MVPの不完全さは様々なリスクを孕んでいることも紹介しました。
無計画にMVPの方法論を導入しても、逆に開発コストが増加する恐れもあるのです。
株式会社Jiteraでは、ITシステムの導入に悩む事業者様へ導入のサポートや提案をさせていただいています。
プロジェクトに適した開発手法をお探しならば、まずはプロの力を借りてみるのも良いのではないでしょうか。
ITシステム開発・導入にお悩みの際は株式会社Jiteraへお問い合わせください。
