「固定資産管理とは何か」「どんな業務があるのか」とお悩みの方へ、固定資産管理の基本知識から種類、固定資産管理に役立つツールの紹介や成功させるポイントまで解説します。
固定資産管理を始めたいけど何から始めたらいいのか分からないという方は、ぜひ最後まで読んでください。
制御系システムや自動化システムの新規開発を中心に、15年以上の開発経験を持つ現役エンジニアです。『デジタルは人と人をつなぐもの』という言葉が好きです。デジタルの世界をわかりやすく伝えていきます。
固定資産管理とは

固定資産とは、企業が長期間にわたって保有し、業務活動を支えるために使用する資産を指します。これには、建物や機械、車両、土地などの有形資産だけでなく、特許や商標といった無形資産も含まれます。
固定資産の管理は、資産の正確な把握、定期的な評価、適切な保守と管理、そして必要に応じた更新を通じて行われます。これにより、企業は財務の透明性を確保し、経営の安定を維持することができ、長期的な成長と競争力の強化に寄与します。
各要素が連携することで、企業の資産を最大限に活用することが可能になり、企業の財務の透明性と経営の安定を支える重要なプロセスとなります。
固定資産管理の目的・理由

固定資産管理は資産の保全、減価償却の適正化、固定資産税の適切な納税など、企業経営における様々な側面で重要な役割を担っています。
本章では具体的に、固定資産管理の必要性を解説します。
財務報告の正確性を確保するため
企業の財務報告において、固定資産の価値は重大な影響を与えます。正確な固定資産管理は、財務報告の信頼性を高めるために欠かせません。
- 資産の正確な評価と記録
- 減価償却の正確な計算
- 財務諸表への正しい反映
これにより、投資家や利害関係者に対してクリアで信頼できる情報を提供できます。
法令順守のため
固定資産の管理は、関係法令の遵守を確実にするために重要です。法令への適合を怠ると、罰金やその他のペナルティを受けるリスクがあります。
- 固定資産の登録と正確な記録保持
- 税務申告の適正化
- 定期的な監査とレビュー
これにより、法的リスクを最小限に抑えることができます。
経営戦略や意思決定をサポートするため
固定資産は企業の経営戦略に直結します。適切な管理により、正確なデータに基づいた意思決定が可能になります。
- 資産取得と処分の適時な判断
- 投資の優先順位付け
- 長期的な戦略計画
これらの活動を通じて、企業は競争力を維持し、成長を促進します。
資産の効率的な運用とコスト最適化のため
効果的な管理は、資産の運用効率を高め、コストを最適化します。資産の余剰や不足の見極めが重要です。
- 資産の使用状況の確認と最適配置
- コスト削減と資源配分の最適化
- 資産のライフサイクル管理
これにより、資産の無駄を削減し、企業の収益性を向上させることができます。
リスクの管理と資産保全のため
資産の保全はあらゆるリスクを管理し、企業の安定を保つために重要です。
- セキュリティ対策の強化
- 保険の適切な選択
- 資産の状態監視とメンテナンス
これにより、予期しない損失を防ぎます。
業務効率と生産性を向上させるため
最後に、固定資産管理は業務効率の改善と生産性の向上に寄与します。このため、資産を最大限に活用することが重要です。
- 自動化ツールやシステムの活用
- 作業プロセスの最適化
- スタッフトレーニングの実施
これによって、企業全体のパフォーマンスが向上します。
【部門別】固定資産管理業務の内容

固定資産管理は企業全体の効率的な運営に欠かせない業務です。企業の各部門がそれぞれの役割を果たすことによって、資産管理の精度と効率が向上します。
各部門がそれぞれの役割を効率的に果たすことで、全体の資産管理が強化され、企業経営が一層安定していきます。
本章では各部門別の固定資産管理業務の内容を説明します。
企業:資産台帳の作成・維持をする
企業全体で、資産台帳を正確に作成し、維持することは、全ての固定資産管理の基盤です。資産の全体像を把握するために重要です。
- 資産の取得と登録
- 資産の情報更新
- 台帳の定期レビューと更新
| 業務ステップ | 内容 |
| 資産取得 | 資産を購入し、登録する |
| 資産台帳の作成 | 資産の情報を台帳に記録する |
| 定期レビュー | 台帳の内容を定期的に見直す |
資産台帳の正確性は、企業の財務健全性に直接影響を与えます。
管理部門:定期的な実地棚卸を実施する
管理部門は、資産の実物と台帳の情報を確認するために、定期的な実地棚卸を行います。
- 棚卸の計画と実施
- 棚卸結果の台帳への反映
- 不一致事項の調査
| 業務ステップ | 内容 |
| 棚卸計画の策定 | 棚卸のスケジュールを計画する |
| 実地棚卸の実施 | 資産の現物を確認する |
| 棚卸結果の確認 | 実地結果を台帳に反映し、不一致を調査 |
実地棚卸は資産の存在を確認し、盗難や紛失を防ぐのに役立ちます。
経理部門:減価償却を計算・記録する
経理部門の役割は、資産の減価償却を正確に計算し、記録することです。これにより、財務報告の正確性が確保されます。
- 減価償却のスケジュール設定
- 計算と記録
- 財務諸表への反映
| 業務ステップ | 内容 |
| 減価償却スケジュール | 償却の期間と方法を計画する |
| 減価償却の計算 | 資産ごとの償却費を算出する |
| 仕訳の記録 | 減価償却を会計システムに入力する |
減価償却の適切な管理は、企業財務の透明性を高めます。
保守部門:資産の保守・修繕を追跡する
保守部門は、固定資産の状態を監視し、必要に応じて保守や修繕を計画します。
- 資産状態のモニタリング
- 修繕計画の立案
- 修繕履歴の管理
| 業務ステップ | 内容 |
| 状態モニタリング | 定期的に資産の状態をチェックする |
| 修繕計画の作成 | 必要な修繕作業を計画する |
| 修繕履歴の記録 | 修繕作業の詳細を記録する |
保守活動は、資産の寿命を延ばし、運用コストを削減します。
資産管理部門:資産の追加・処分を管理する
資産管理部門は、固定資産の追加と処分を適切に管理します。
- 資産追加の申請と承認
- 資産廃棄の計画と実施
- 資産処分の記録
| 業務ステップ | 内容 |
| 追加申請と承認 | 新しい資産の取得を承認する |
| 廃棄計画の策定 | 不要資産の廃棄計画を立てる |
| 廃棄手続きの実施 | 資産を適切に処分する |
この管理により、資金の効率的な運用が可能になります。
IT部門:資産管理システムを導入・運用する
IT部門は、資産管理を効率化するためのシステムを導入し、運用します。
- システム設計と導入
- システム運用とメンテナンス
- ユーザーサポートとトレーニング
| 業務ステップ | 内容 |
| システム設計 | 資産管理に適したシステムを構築する |
| システムの導入 | システムを企業全体に導入する |
| 運用とサポート | システムの維持管理とユーザー支援 |
資産管理システムの活用は、業務効率を大幅に向上させることができます。
固定資産管理業務に役立つツール

固定資産管理業務を効率的に行うためには、適切なツールの導入が不可欠です。それにより、企業は時間とコストを節約でき、情報の正確さと透明性を向上させられます。
本章では、固定資産管理に役立つ主なツールについて説明します。
固定資産管理システム
固定資産管理システムは、企業が所有する資産を一元的に管理できるソフトウェアです。このツールは、資産の追跡から報告まで多岐にわたる機能を提供します。
- 資産の一覧作成と更新
- 減価償却の計算と自動化
- 資産のライフサイクル管理
このシステムを導入することで、資産関連データの精度が向上し、負担を減らすことができます。
バーコード・RFIDスキャナー
バーコードとRFIDスキャナーは、物理資産を効率的に追跡するために用いられるデバイスです。これらは資産管理のプロセスを大きく簡素化します。
- 資産の即時確認と記録
- 資産の移動や使用状況の追跡
- 定期的な棚卸にかかる時間の短縮
これらのスキャナーを使用することで、手動エラーを減少させ、棚卸の精度とスピードを向上させることができます。
データ分析ツール
データ分析ツールは、資産データを効果的に活用するために必要不可欠です。このツールにより、資産のパフォーマンスやトレンドを分析できます。
- 資産使用率やコストの分析
- メンテナンスや修繕の予測
- 資産の最適利用に関するインサイトの提供
データ分析ツールを使うことで、戦略的な意思決定をサポートし、資産管理の効率をさらに高められます。
これらのツールを効果的に組み合わせることで、企業はその資産管理を最適化し、経営効率を大幅に向上させることが可能になります。
固定資産管理業務が難しいと言われる理由

固定資産管理は、企業の運営において重要な要素であると同時に、非常に難しい業務とされています。
資産の多様性、法規制の変化、データ管理の複雑さ、組織内での連携不足が原因で生じやすく、しっかりとした管理体制の構築が不可欠です。
本章では、その理由を具体的に説明します。
資産管理は複雑で長期管理が難しいから
固定資産は、多様な種類と長い利用期間を持つため、管理が複雑になります。鉱工業プラントや製造機械など、長期にわたり利用される資産は、日々の使用状況の監視が必要です。

例えば、製造機械の定期的なメンテナンスの計画や、耐用年数に応じた更新計画を立てることが必要です。これが疎かになると、効率や安全性に影響を及ぼします。
法規制と会計基準への対応が必要だから
固定資産管理には、税法や会計基準など、さまざまな法規制に適合する必要があります。企業が日々活動する中で、税制改革や会計基準の変更が頻繁に発生します。

例えば、減価償却方法の変更は財務諸表に大きな影響を与えるため、調整作業が求められます。これらの法令は各国ごとに異なるため、グローバル企業にとって特に挑戦的です。
データ管理とシステム運用が難しいから
固定資産の情報は大量かつ複雑であり、これを正確に管理するには高度なシステムが必要です。資産の取得から廃棄までのライフサイクル全体を一貫して追跡するには、適切なデータベースと管理システムが不可欠です。

例えば、大規模な製造企業であれば、工場内のすべての設備を追跡・管理し続けるシステムを運用しなければなりません。データが一貫していないと、資産の誤用や無駄なコストを引き起こします。
組織全体との連携や専門知識が必要だから
固定資産管理は、組織の複数の部門にまたがる業務であり、各部門間の連携が必要です。経理、運用、監査など、多くの部署が関わります。また、高度な専門知識が求められるため、適切な人材が必要です。

例えば、新しい製造ラインの立ち上げ時には、設備設計チーム、財務チーム、工場運営チームが一体となってプロジェクトを推進しなければなりません。連携が不足すると、プロジェクトの遅延やコストの超過につながります。
固定資産管理を成功させるポイント

固定資産管理は、しっかりとした管理体制を構築し、各プロセスを適切に行うことで、資産の効率的な運用が可能になります。
本章では、固定資産管理を成功させるための重要なポイントをまとめました。
正確な資産台帳の維持と定期的な棚卸しを行う
資産管理の基礎となるのは、正確な資産台帳の作成と維持です。また、資産の物理的な存在を定期的に確認する棚卸しも欠かせません。これにより、資産の状態を常に把握し、適切に管理することができます。
| ポイント | 説明 |
| 資産台帳の正確性 | 資産情報を詳細に記録し、リアルタイムで更新する |
| 定期的な棚卸し | 四半期ごとまたは年度末に物理的な在庫を確認し、台帳と一致を確認する |
正確な台帳と定期的な棚卸しは、資産の実態把握に不可欠です。
適切な減価償却と評価を実施する
資産は時間とともに価値が変わります。そのため、適切な減価償却を実施し、必要に応じて再評価することが大切です。これにより、財務報告の正確性を高め、税務コンプライアンスを確保します。
| ポイント | 説明 |
| 減価償却の適正化 | 資産の寿命と使用法に基づき、適切な減価償却方法を選択し、定期的に見直す |
| 資産の定期評価 | 定期的に資産価値を評価し、減損損失や倒産のリスクを低減する |
正しい減価償却と評価は、財務活動の透明性を維持します。
コンプライアンスと内部統制を強化させる
法令遵守と内部統制の強化は、不正や誤りを防ぎ、企業の信頼性を高める重要な要素です。社員教育や監査体制も整える必要があります。
| ポイント | 説明 |
| 法令遵守の徹底 | 最新の会計基準や税法を常に把握し、社内ポリシーを更新 |
| 内部監査と職務分掌の強化 | 定期的な監査を行い、業務の透明性を確保し、不正を未然に防ぐ |
しっかりとしたコンプライアンスと統制は、企業のリスクを軽減します。
どんなものが含まれる?固定資産の例やルール

固定資産とは、企業が長期間にわたって保有し、使用することで業務活動を支える資産のことです。これらの資産は、通常、企業のバランスシートに記載され、その価値は時間とともに変動します。
以下に、固定資産の主な種類について具体例を挙げて説明します。
固定資産管理が必要なものの条件
会社で購入する備品は、以下の2つの条件を満たす場合、原則として固定資産として管理する必要があります。
- 1年以上使用できるもの
- 購入金額が10万円を超えるもの
ただし、中小企業には固定資産管理に関する特例があります。
それは、30万円未満の備品(机や椅子、パソコンなど)であれば、年間300万円までは購入した年度内に全額を経費として計上できることです。
この特例により、固定資産として長期管理する必要がなくなり、会計処理がとても簡単になります。
有形固定資産
有形固定資産は、物理的な形状を持ち、直接的に使用される資産です。これには、さまざまな設備やインフラが含まれます。
【具体例】
- 建物(オフィスビル、工場など)
- 機械設備(生産機器、印刷機など)
- 車両(営業車、トラックなど)
- 土地
- 家具および備品(オフィス家具、コンピュータ)
これらは実際の業務運営に欠かせない資産です。
無形固定資産
無形固定資産は、物理的な存在がないが、企業に重要な価値をもたらす資産です。
【具体例】
- 特許権
- 商標権
- 著作権
- ソフトウェア(自社開発も含む)
- 顧客リスト
これらはブランド力や技術的優位性を支える資産です。
投資関連のその他の資産
これには、将来の利益を生むことが期待される投資に関連する資産が含まれます。
【具体例】
- 持分法適用会社株式
- 長期投資としての不動産
- 長期債権
これらの資産は、企業の戦略的投資として位置付けられます。
リース資産
リースによって利用される資産も、一定の条件を満たすと固定資産として認識されます。
【具体例】
- リース車両
- リースオフィス設備
- リース生産機器
リース資産は、使用期間中に企業の運用に寄与します。
建設仮勘定
建設中の資産で、まだ完成していないものですが、完成後は固定資産として扱われます。
【具体例】
- 工場の建設中の建物
- 生産ラインの設置中の機器
- 新社屋建設中
建設仮勘定は、プロジェクトが完了すると固定資産に移管されます。
まとめ:固定資産管理は企業活動において重要な業務のひとつ

固定資産管理は、企業の成長と財務の透明性を維持するために重要です。資産の正確な把握と適切な管理、評価、保守、更新を行うことで、企業の財務健全性と経営の安定が保たれます。
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