ビジネスの成功やブルーオーシャンの発見という課題において、最先端の技術や研究プロジェクトについての学術論文の存在がとても重要になります。
ビジネスという巨大な大海原の中で舵を取るとき、研究論文はまるで羅針盤のように道筋を示し、航海図のようにビジネスが暗礁に乗り上げるリスクを事前に教えてくれ、星座や灯台のように進むべき道を照らしてくれます。
世界中では毎日のように様々な研究が行われ、日々新しい知見が発表されています。
その発表された膨大な文献を的確に利用できれば、まだ見ぬブルーオーシャンへの海流が見つかるかもしれません。
とはいえ、求める情報の粒度に対して探すべき論文の数はあまりにも膨大です。
従来はGoogle ScholarやJ-Globalのような学術情報検索エンジンを使い、時間をかけて調査しなくてはいけませんでした。
ですが、大規模言語モデル(LLM)の発展とともに、「自然な文章で検索を行う」というAI活用が現実のものとなりました。
検索エンジンを使って1つずつ既存研究を調べるリサーチ方法は、時代遅れになりつつあります。
この記事では、関連文献を効率的に探し出すAIリサーチアシスタントツール「Elicit」について紹介します。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
Elicitの基本
従来、既存研究から知見を得るためには自社の目指すビジョンに沿った関連論文のリサーチ作業には、
- 論文の要約
- 引用の追跡
- データの抽出と検証
- 研究結果や別論文との統合
- 資料の用意やチーム内に共有するためのFAQの準備
といった、多くの雑多なタスクをこなす必要があり、非常に時間がかかっていました。
ですが、LLMの発展によってコンピュータが自然言語で応答できるようになったため、今までの「論文を探す時間」をコンピュータに代わってもらえるようになりました。
このAIの発展によって、これまで莫大なコストがかかっていた既存研究のリサーチというタスクを自動化できるようになったのです。
ElicitもそうしたAIリサーチアシスタントツールの1つです。
Elicitは、その知識を既存の公開されている研究論文に基づき、正確な情報と引用元となる論文を提供してくれる研究アシスタントAIです。
2億件以上にのぼる研究結果を元に、利用者は「引用元が提示されるAIとの対話」や「関連研究に関するブレインストーミング」が可能になります。
Elicitとは
Elicitは、自身のテーマと関連している既存の学術論文をAIが自動で分析・要約してくれるツールです。
他にも、アップロードされた論文を解釈したうえで、様々な質問に自動回答してくれる分析機能も備えています。
Elicitとはもともと「(情報を)引き出す」という意味を持つ英単語です。
その名前の通りこのAIツールは、既存の論文をユーザーの代わりに読むことで、
- 関連する複数の論文を検索し、要約して出力する
- ユーザーの質問に対して、論文内容を踏まえた回答や引用元の照会を行う
- 論文内の関連データの抽出や研究結果の統合、メタアナリシスを行う
といった機能を提供し、これまで多くの時間を要した学術研究調査作業を強力に支援してくれます。
これまで関連研究を行うためには、多くの既存論文を読む必要があり、その作業は非常に多くの労力と時間が掛かっていました。
しかしLLMの発展により、「大量に研究論文を取り込んだAI」がユーザーからの学術的質問に回答してくれることが可能になりました。
Elicitも学術文献検索サービス「Semantic Scholar」の学術論文群を学習元としており、2億件以上ものデータベースの中から、利用者の求めている学術的な回答とその文献元を的確に照会してくれます。
※引用元の論文がオープン利用可能な場合は全文を、そうでない場合は抜粋や要約を表示します。
要するに、Elicitは大量に学術論文を読んでいるAIであり、Elicitを利用することで、気になってはいるが整理できていない「ファジーな学術的質問」をAIへ投げかけることが可能になります。
Elicitに知りたいテーマや疑問について何度も問いかけることで、既存の様々な論文を参照しながら、求めている答えとその根拠になる引用元や研究データを探し出すことができます。
Elicitのメリット
自然言語(NLP)による論文リサーチの活用はまだ発展途上ですので、今後様々な活用法が期待されています。
現状でもElicitには、
- 関連文献や関連研究への
- レビューの高速化
- 人力でのジャーナル検索では見つけられない関連論文の発見
- AIが独自判断で関連度が高いと判断した論文を、検索したキーワードが全く一致していなくても提供してくれます。
- 系統的なレビューと複数の研究結果の統合の自動化、一覧化
- 検索した質問に関連した論文データの表などメタアナリシス的な情報を、引用元と測定結果とともに自動的に纏めてくれます。
- 別分野における”似ている研究”の探索
- 自然言語によるファジーな検索によって、既存の概念から外れた”関連論文”が見つかる可能性もあります。
- 無料プランが充実しているため、試してみやすい
- 最近注目されているNLPによる論文リサーチという手法が、自身の研究スタイルやビジネスプランにどのように活用できるかをひとまず試してみてみることができます。
といったメリットがあり、AIに調べさせることで新たなリサーチアプローチが生み出されることも期待されています。
例えばすでに、研究課題の論文を読んだElicitとともにブレインストーミングを行うなど、既存のリサーチでは実現できなかった活用方法が注目されています。
また、過去の実験内容を実際のデータとともにメタアナリシスしてくれるため、特に実証的なデータがほしいようなニーズにおいても非常に強力なツールであると言えるでしょう。
Elicitのデメリット
Elicitは便利なツールですが、まだ発展途上であり多くの課題も抱えています。
まず、最も注意するべきは、生成AIによって回答が要約されることで論旨の細部の二アンスが抜け落ちるリスクが有る点です。
もちろん、Elicit AIの回答はバックボーンに研究論文の情報のみを利用しているため、あからさまに間違った情報を出力することはありません。
※Elicit公式曰く、
A good rule of thumb is to assume that around 90% of the information you see in Elicit is accurate. (90%以上の確度で正確な情報を出力する)
とのことです。
ですが、
- その回答自体が自身の仮説に対する論証になっているか
- 引用された論文自体の確度にどこまで信頼が置けるか
など、論文の中身の正確性については自身の目で精読して判断しなければなりません。
AIアシスタントは入手可能な文献を”ざっと”調べるといった用途には向きますが、出力の検証自体には別途人力で注意を払う必要があります。
その点を加味して、Elicitは大量の論文に対して「ある程度の概要」を掴み必要な論文を”選り分ける”のに非常に便利なツールとして使うことをおすすめします。
また、Elicitは日本語に対応していないため、その点も人によっては使用するハードルが高くなります。
Elicitへの質問はすべて英語で行い、検索される論文もすべて英語で表記されています。
ただ、Google翻訳やDeepLをはじめとした翻訳サービスを併用することで十分活用可能な範囲なので、ぜひ英語が苦手な方も一度試してみることをおすすめします。
なんといっても基本的な機能は無料で利用可能なのですから。
Elicitは長い論文を短く要約してくれるため、適切に翻訳ツールを使うことで、むしろ英語が苦手な人こそ海外の論文に触れる機会を増やすことができます。
その他にも、
- Elicitがサポートする学術論文(Semantic Scholarなど)に書かれていない情報や質問に答えることができないこと
- 事実の特定や論理的、非経験的な質問に対しては、回答は得られないこと
- 例えば、「昨年マレーシアが輸入した日本車の台数は?」や「2022年のワールドカップの勝敗結果を教えて」みたいな質問をしたいならばGoogleに聞くほうがよほどまともな回答が返ってきます。
- Elicitはあくまでも、求めている研究分野の論文調査作業を肩代わりしてくれるツールです。
- 発展途上であり、破壊的な機能の追加や更新が急に行われる可能性があること
- ワークフローの自動化や、テーブル操作といった分析作業はクレジット制のため、より高度な分析には有料プランが必要
といった点にも注意が必要です。
AI支援ツールは発展途上の便利な道具であり、まだまだ適切な付き合い方が認知されておらず、抱えている課題も多いです。
メリット・デメリットを把握し、ケースバイケースに合わせて都合の良いツールを使い分けるとよいでしょう。
特にAI支援ツールの併用は、より効率的な論文検索に役立ちます。
例えば、Elicitにはグラフ機能などが搭載されておらず情報の可視化が貧弱ですが、Research RabbitやConnected Papersのようなデータの可視化を得意とするリサーチ支援AIツールを併用することでより情報の整理を改善することができます。
自動で反証の引用を紐づけてくれるスマート引用ツールである「Scite」を使えば、論文の確度についても素早く確認が可能になります。
Elicitの基本的な機能と使い方
Elicitでは、3つの基本機能が用意されています。
- Find papers
- 質問した内容に関連した研究論文を探してくれます。
- List of Concept
- 質問した研究課題に対して、関連する複数の論文のテーマやコンセプトをリスト化し、一覧できるよう整理してくれます。
- Upload
- 既存の論文をアップロードすると、その論文を解釈して質問に答えてくれます。
この記事では、この3つの機能の概要について紹介します。
ただし、まだElicitは発展途上のツールであり、様々な活用方法や新規機能が日々開発されています。
ぜひ一度公式サイトなどを参考にして、自分のビジネスに合った使い方を模索することをおすすめします。
Find papers:研究論文を自然言語で探す
Elicitにログインし、検索窓に研究に関する質問を投げかけると、2 億件以上の論文データベースから質問に対する回答と関連論文のリストを返してくれます。
Elicitの最も基本的な機能であり、気になる研究や知りたい実証事例がある場合は、気軽にElicitに問い合わせるだけで必要な回答や過去の論文を手に入れることができます。
論文検索を行う場合、まずはこのFind papers機能を使って、自身の研究テーマについてElicitとブレインストーミングすることから始めてみてはいかがでしょうか。
またこの検索には、
- 最も関連性の高い4件の論文の簡単な要約の表示
- 関連する論文を選ぶことで、更に類似した論文を追跡検索
- 論文から詳細を抽出して、引用元などの論拠を整理した表にまとめる
といった機能も提供されており、慣れてくるとより詳しい情報を深堀りしていくことができるようになります。
ただし、Elicitはただ検索するだけだと関連するキーワードのトップ4件の論文のみを参照して回答することには注意が必要です。
これはつまり、質問の言葉選びによっては上位の4つの論文の情報が偏ってしまい、満足行く回答が得られないリスクがあるということです。
この問題を回避するためには、(もちろん質問方法を変えるのが最も手っ取り早いですが)、Elicitにはフィルタリング機能が用意されていることも知っておきましょう。
検索する論文に対して、日付や分析の種類(例えば、対照試験や体系的レビュー、メタ分析など) といった追加条件を指定してフィルタリングする機能がElicitには搭載されています。
特に使い始めのうちは質問方法を変えて出力変化を見ながら、積極的にフィルタリング機能も併用することをおすすめします。
List of Concept:多数の関連文献からテーマとコンセプトを見つける
List of Concept機能を使うと、探しているコンセプトに合致する多数の論文を、それらのテーマやコンセプトと共にまとめたリストを入手することができます。
通常、自身のテーマに関連する資料を論文検索から探す場合、サマリーだけを眺めるだけでも非常に多くの時間がかかります。
ですが、このList of Concept機能を使うことで、1~2行で表された「その論文は、探しているテーマとどう関連しているのか」というコンセプトのリストが手に入ります。
これによって例えば、
- 研究者や学生が自身の文献レビューや既存の論文との突合を行う際に、時間を大幅に節約できる
- 新たなビジネスチャンスを模索する際に、テーマやコンセプトと合致する過去の研究結果を素早く見つけることができる
- 複数の研究結果から似た事例を取り出しデータの抽出と統合を行う、つまりメタアナリシス作業を自動化できる
というように、時間のかかる論文検索を効率化、省力化することが可能です。
Upload:AIに論文を読んでもらう
既存の論文のURLを入力するか、その論文のPDFをアップロードすると、
- その論文の簡単な要約
- 各情報の具体的な引用元の表示
を行い、その論文に対する質問に答えてくれるAIボットを生成します。
※アップロードした論文は、そのユーザーのみが閲覧するPDFデータとして扱われ一般へは公開されません。
大量の論文の要点を精読する手間を減らし、その論文の概要を整理するのに役立ちます。
ただし、Elicitは英語の論文と質問のみに対応している点には注意しましょう。
この機能は、英語の長い論文を読む手間を減らしてくれます。
大量の論文をElicitに要約してもらい、自身の求める研究内容に合わせていくつか質問することで、自身に取って重要な論証部分を特定できます。
そして、更にElicitに質問を重ねることで論文全体の要旨がつかめるため、効率よく重要なデータを参照することができるのです。
お気軽にご相談ください!
Elicitの無料利用とその条件
Elicitは基本的に多くの機能が無料(要アカウント登録)で利用可能です。
また有料のサブスクリプションプランとして、Elicit PlusやElicit Enterpriseプランが用意されています。
有料のプランではより高度な検索分析機能を利用することができます。
また、Elicitが提供する論文の分析や出力結果のリスト化、AIによるワークフロー自動化といった機能を利用する際には、毎月配布されるクレジットが必要になります。
各プランの概要は以下となります。
プラン名 | 価格 | 機能 | クレジットの配布 |
Basic | 無料 | 論文検索 論文からのデータ抽出 コンセプト検索 Upload 結果とレビューの保存 分析結果の出力は不可 |
毎月5000クレジット配布 クレジットの追加は不可 |
Plus | 月額 10ドル | Basicの全機能 分析結果をRIS,CSV,BIBに出力 高度な分析モード 論文内のテーブル(表)データの活用 カスタマーサポートが優先的に利用可能 |
毎月12000クレジット配布 クレジットの追加購入も可能 |
Enterprise and Institutions | 要問合せ (規模や用途によって決定) |
Plusの全機能 組織内のユーザーならばクレジットの共有が可能 インボイスベースの請求書発行 カスタマーサポートが常に最優先で利用可能 |
必要な量を必要な分 |
Elicitの無料プランについて
Elicitの無料プランでは毎月5000クレジットが配布され、基本的な機能である
- 論文検索
- 論文からのデータ抽出
- コンセプト検索
- 論文のUpload
- 結果とレビューの保存
- 分析結果の出力は不可
が利用可能です。
有料プランは追加クレジットに加え、
- 分析結果のエクスポート機能
- より高度な分析モード
- 論文内の表データがそのまま活用可能
という3つの機能がつきますが、興味のある論文を探すだけならば無料プランの5000クレジット分でも十分かと思います。
Elicitを無料で使うならば、単純に「興味のある分野の最新学術文献をざっと調べる」ツールとして活用できます。
活用していく中で、更に情報を深堀りしていきたい要望や、頻繁に論文を参照するような用途に使用したい要望が生まれた際には、改めて有料プランを検討しましょう。
また、論文自体の検索や情報の整理、可視化に関しては、
- Google Scholar
- 世界中で利用されている学術文献検索データベース
- J-Global
- 日本国内外の論文を検索できるJST製統合プラットフォーム
- Research Rabbit
- 複数の論文間の関連性や情報をグラフ化、可視化するツール
- Connected Papers
- 1つの論文から関連する別の引用元へのグラフを作成するツール
- Scite
- 研究論文のテーマや結果に対して、その結論を賛成、または反論している引用の数を分析する「スマート引用」ツール
などのツールを併用することでもカバー可能です。
この記事でも、後ほどこれらのツールについて簡単に紹介しています。
有料の論文検索プラン「Elicit Plus」のメリット
「無料でも手軽に論文を検索するぐらいの用途ならば十分だ」と紹介しましたが、自身に関わりのある分野の研究論文をより深く探索する場合は毎月5000クレジットでは足りなくなります。
例えば、
- 従来の人力で検索ワードを見つけなければいけない論文検索データベースでは、決して見つけられない分野外の研究結果を見つける
- 馴染みのない分野で、自分が興味を持っているテーマについて探索する
- 海外で発表された大量の英語論文を読んで最新学術への理解を深める
といった、自身の研究分野やビジネス分析のために、より関連性の高い論文データの探索やブレインストーミングを行いたい場合、今までは多くの時間と様々な分野への文献知識が必要でした。
Elicit Plusならば、毎月10ドルでAIが代わりに論文を読んで、最新の学術研究を深堀りする手伝いをしてくれます。
まるで論文自身と対話するように、頻繁に自身の興味のあるテーマについてElicitに質問を投げかけ、ブレインストーミングをするような使い方を行うならば、ぜひ有料プランへの移行も検討してみてください。
Elicitと他の研究情報検索ツール
近年、論文情報を検索するための様々な支援ツールが誕生しています。
これまでのデータベースサービスを含め、いくつかの有名な論文検索ツールについて紹介します。
また、情報検索のコツについて別の記事で詳しく紹介しています。
よろしければ参考にしてみてください。
これまでの一般的な論文検索データベースについて
基本的に、研究論文を検索する際には複数のデータベース・サービスを使いわけます。
各々のデータベース・サービスは分野と目的に応じて特化している情報が違うため、それぞれの特徴を理解することで、効率よく論文を探す事が可能です。
これまで、下記のような文献データベースサービスを併用して目当ての論文を探してきました。
概要 | 運営元 | 分野や補足 | |
Google Scholar | 学術情報の検索に特化したGoogle検索サービス | 世界中で公開されているあらゆるジャンルの学術研究論文を、Googleの高度な検索技術で検索可能 | |
Pubmed | NCBIが提供するデータベース・サービス | アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI) | 主にライフサイエンスや生物工学分野に特化した、アメリカ国立医学図書館の情報検索システムEntrezの一部 |
CiNii | 日本国内の様々な分野の文献を検索できるデータベース・サービス | 国立情報学研究所 | 文学や社会科学を含む、分野を問わない日本の文献や研究データ、プロジェクト情報をカバーしており、論文だけでなく、図書館の書籍も検索可能 |
J-GLOBAL | 国内外のデータベースサービスを日本語で検索できる統合検索プラットフォーム | 科学技術振興機構(JST) | PubmedやJ-Stageを含む様々な国内外のデータベースサービスへのアクセスを支援する日本製学術検索プラットフォーム |
J-STAGE | 科学技術二特化した学術論文データベース | 科学技術振興機構(JST) | 主に日本の科学技術関連の学術論文に特化した学術論文検索データベース |
これらのデータベースは一定の成果を上げ、多くの人が自身の研究を深堀りするために利用していました。
ですが近年、学術情報のデジタル化と標準化が急速に進み、検索されるコンテンツ量が膨れ上がり、多様化し、人間が探せる量を超えてしまいました。
AI検索アシスタントについて
人力では探せない規模に膨れ上がった学術文献を効率的に探すために、近年ではAIの活用が期待されています。
自然言語処理(NLP)や大規模言語モデル(LLM)の発展に伴い、ある程度検索をコンピュータに肩代わりしてもらおうという試みがいくつも生まれました。
ここでは、AIを用いた学術論文検索データベースを2つ挙げます。
運営会社 | 概要 | 特徴 | |
Dimensions AI | Digital Science 社 | 世界中の研究エコシステム全体を結び付ける研究発見プラットフォーム | 関連する別の論文や研究データをリンクさせ、相互引用を視覚化させる |
Semantic Scholar | アレン人工知能研究所 | AIによる論文の文脈を解した関連度検索が可能な検索プラットフォーム | 論文の引用情報の意味解析や関連性抽出を行い,関連が深い論文を提案する |
ElicitはSemantic Scholarを知識のベースとしており、引用情報の意味解析を行ったうえで、質問に対して関連性の高い回答と論文の提示を行ってくれます。
AI活用型リサーチツールの比較
この検索へのAI活用を更に便利にするために、様々な検索アプローチに特化したサービスが登場します。
Elicitをはじめとして、様々なAI活用型のリサーチツールをいくつか表に纏めてみました。
今後の論文リサーチに活用する際の参考にしてみてください。
概要 | メインの機能 | 活用例 | |
Elicit | AIとの対話による文献レビューツール | アカデミックな質問に対して、論文を引用して回答を生成する | 関連研究の把握 自身の研究に対するブレインストーミング |
Perplexity AI | 対話型AI検索エンジン | ChatGPTのような対話型検索エンジンに、出典元の記載と静的情報からの引用を利用することで、情報の確度が高い回答を行う | あまり知らない分野の知識を会話形式で取得
ChatGPTの検索スタイルを利用したいが、情報元が正確に必要な場合 |
Research Rabbit | 論文間のつながりを可視化し関連研究を検索するツール | 異なる論文間のつながりをグラフで可視化する | 著者同士のネットワークの発見 関連文献の整理 引用の抽出 |
Connected Papers | 関連性の高い論文のグラフ化する検索アシスタントツール | 特定の論文から関連する論文をグラフ化する | 先行研究や派生研究の確認 複数の論文とつながりがある論文の抽出 |
Scite | スマート引用ツール | 指定した論文の主張にたいして、それを支持/反論する引用数を検索する | 論文の主張の妥当性や反証の確認 論文間のつながりの可視化 |
Elicitのまとめ
南デンマーク大学のMushtaq Bilal博士は、
“ChatGPT will redefine the future of academic research. But most academics don’t know how to use it intelligently,”
「ChatGPTは学術研究の未来を再定義するだろう。だが、ほとんどの学者はそれを賢く利用する方法を知らない」
と提言しました。
博士は続けて、研究リサーチという分野においてAIツールの存在価値は今後一層高まっていくこと、AIを忌避せず如何付き合っていくかが重要になることを警告しています。
学術文献のデジタル化の発展により、もはや人力では探せない規模の論文がネット上に溢れかえっています。
そのため、今後も様々な形で「AIによる効率的な論文検索」の活用が広がっていくことでしょう。
ElicitをはじめとしたAIツールとうまく付き合いながら、自身の研究課題についての知見を効率よく深めてみてください。
株式会社Jiteraでは、AIを使ったビジネス促進や自動化・効率化をサポートしています。
経験豊富なエンジニアが、DX化にお悩みの企業様の事情に合わせたよりよいシステムプランをご提案いたします。
IT技術による業務効率化にご興味をお持ちの企業様。
ぜひ一度株式会社Jiteraにご相談ください。