ISMSクラウドセキュリティ認証は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の観点からクラウドサービスのセキュリティを評価し、認証する制度です。
この記事では、ISMSクラウドセキュリティ認証の基礎知識や、企業が取得する条件およびメリットを解説しています。
この記事を読んで、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得するかどうかの参考にしてください。

PHPを独学で勉強した後にWeb業界に参入。大手企業でプログラマーとして活躍後、自社サービスの立ち上げ、大手検索エンジンサービスの保守運用作業、ソーシャルゲーム開発などに携わりながら、SE・管理職の道を歩んで現在に至る。現在は、管理職に携わる傍ら、これまでの経験を活かした執筆活動を続けている。
ISMSクラウドセキュリティ認証とは
ISMSクラウドセキュリティ認証は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の観点からクラウドサービスのセキュリティを評価し、認証する制度です。ISMSは、組織が情報セキュリティを適切に管理するための枠組みであり、ISO/IEC 27001などの国際規格に基づいて構築されます。
ここでは、ISMSクラウドセキュリティ認証に関して詳しく知るために、以下の項目に分けて ISMSの基本的な定義とこの認証がどのようなものであるかを解説します。
- ISMSクラウドセキュリティ認証の目的と概要
- ISO/IEC 27017とは
それぞれの項目の内容を理解して、ISMSをより深く理解していきましょう。
ISMSクラウドセキュリティ認証の目的と概要
ISMSセキュリティ認証の目的は、クラウドサービスプロバイダーが情報セキュリティを適切に管理し、顧客の信頼を確保することです。
具体的には、以下のような目的があげられます。
- 信頼性の向上
- 情報セキュリティの確保
- コンプライアンスの確保
また、ISMSクラウドセキュリティ認証の概要は、以下のとおりです。
- 評価基準の確立
- 審査プロセスの実施
- 認証取得
- 継続的な改善
ISMSクラウドセキュリティ認証には、情報セキュリティに関する評価基準が設定され、ISO/IEC 27001などの国際規格に基づく要件が含まれています。
ISO/IEC 27017とは
ISO/IEC 27017は、ISMSの規格である、ISO/IEC 27001に関連する国際規格の1つです。この規格は、クラウドサービスにおける情報セキュリティに焦点を当てています。
具体的には、以下のような領域に関するガイダンスを提供しています。
- クラウドサービスのセキュリティ管理
- 情報セキュリティリスク管理
- データの保護
- 法的・規制要件への適合
IDO/IEC 27017は、クラウドサービスの利用者とプロバイダーの両方にとって有用な情報セキュリティの枠組みを提供し、クラウドサービスの信頼性とセキュリティを向上させるのに役立っています。
ISMSクラウドセキュリティ認証取得のメリット
ISMSクラウドセキュリティ認証は、ISMSの観点からクラウドサービスのセキュリティを評価し、認証する制度であることがわかりました。次に、この認証を取得することで得られるメリットを見ていきましょう。
ここでは、以下の5つの項目に分けて、ISMSクラウドセキュリティ認証取得のメリットを解説します。
- 情報セキュリティの強化
- 顧客との信頼関係の構築
- 法令遵守を証明できる
- コンプライアンス策定の効率化
- 海外進出の促進
ISMSクラウドセキュリティ認証を取得することで得られるメリットを理解し、どのように自社で活用できるかの参考にしてください。
また、以下の記事ではサイバーセキュリティに関して詳しく説明しています。ぜひ、参考にしてください。
情報セキュリティの強化
ISMSクラウドセキュリティ認証を取得することによって情報セキュリティの強化につなげられます。以下は、情報セキュリティに関する、おもなメリットです。
- リスク軽減
- 信頼性の向上
- 法的要件の遵守
- 競争力の向上
ISMSの枠組みに基づいたセキュリティ対策は、情報セキュリティリスクを軽減するのに役立ちます。また、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得することで、顧客やパートナーからの信頼を高めることができます。
ほかにも、法的及び規則上の要件に対する遵守を証明するための有用な手段となるでしょう。
これらのメリットは、情報セキュリティの強化に貢献し、クラウドサービスプロバイダーがセキュリティリスクを軽減して信頼性を高めるのに役立ちます。
顧客との信頼関係の構築
顧客との信頼関係の構築ができることは、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得することで得られるメリットの1つです。
以下は、顧客との信頼関係に関する、おもなメリットです。
- 信頼性の向上
- セキュリティへの意識向上
- リスクの軽減
- 競争力の強化
ISMSクラウドセキュリティ認証は、クラウドサービスプロバイダーが情報セキュリティに対する適切な管理体制を整備していることを証明するものです。顧客は、この認証を見て、サービスプロバイダーに対する信頼を高めることができます。
また、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得することで、クラウドサービスプロバイダーがセキュリティに対して真剣に取り組みをおこなっていることを顧客は認識できるでしょう。
ほかにも、ISMSクラウドセキュリティ認証取得済みのクラウドサービスプロバイダーは、セキュリティ対策を適切に実施していることを示すことができます。
顧客は、この認証を見て、情報漏洩やサービス停止などのリスクを軽減できると考え、安心した上でサービスの利用が可能です。
法令遵守を証明できる
ISMSクラウドセキュリティ認証を取得することで、法令遵守していることを証明できます。以下は、法令遵守に関するおもなメリットです。
- 法的要件への適合性の確認
- 信頼性の向上
- リスク軽減
- 法的紛争の回避
ISMSクラウドセキュリティ認証は、情報セキュリティに関する国際規格に基づいています。このため、クラウドサービスプロバイダーがこの認証を取得することは、情報セキュリティに関する国際的なベストプラクティスを遵守していることを示します。
これらの規格は、法的要件や規制に合致しており、認証を取得すれば法的要件への適合性を確認できる場合が多いです。また、法的要件に適合することで、法的紛争や訴訟のリスクを回避することができます。
クラウドサービスプロバイダーが法令遵守を証明できれば、顧客や利害関係者との法的な問題を心配をする必要がなくなります。
コンプライアンス策定の効率化
コンプライアンス策定の効率化が図れることは、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得することによるメリットの1つです。これには、以下のようなメリットがあります。
- フレームワークの提供
- ベストプラクティスの活用
- 指針の提供
- 効果的な監査の実施
ISMSクラウドセキュリティ認証は、情報セキュリティに関する国際規格に基づいています。この規格は、情報セキュリティに関する包括的なフレームワークを提供しており、クラウドサービスプロバイダーはこれを利用して情報セキュリティの管理体制の構築が可能です。
このため、クラウドサービスプロバイダーは情報セキュリティに関する規定を再検討する必要がなくなり、コンプライアンス策定の効率化が図れます。
これらのメリットは、クラウドサービスプロバイダーが情報セキュリティのコンプライアンスを達成するための効率性を向上させ、リソースを効率的に活用するのに役立つでしょう。
海外進出の促進
ISMSクラウドセキュリティ認証を取得することで、海外進出の促進の効果が期待できます。海外進出に関するおもなメリットは、以下のとおりです。
- 国際的な信頼性の向上
- 法的要件への適合性の証明
- 顧客の信頼獲得
- 競争力の強化
ISMSクラウドセキュリティ認証は、情報セキュリティに関する国際規格に基づいています。この認証を取得することで、クラウドサービスプロバイダーは国際的な信頼を獲得し、海外市場において高い評価が得られるでしょう。
また、海外市場は競争が激しい場所です。
ISMSクラウドセキュリティ認証を取得することで、クラウドサービスプロバイダーは競争力を強化でき、海外市場での地位を確立することができます。特に、情報セキュリティに対する顧客の関心が高い海外市場では、認証を取得することで競争の優位性を確保できるでしょう。
企業がISMSクラウドセキュリティ認証を取得する条件
ISMSクラウドセキュリティ認証を取得すれば、さまざまなメリットが得られることがわかりました。では、企業がこの認証を取得するためには、どのような条件があるのでしょうか。
ここでは、企業がISMSクラウドセキュリティ認証を取得する条件を、以下の項目に分けて解説します。
- ISO/IEC 27001:2013を取得
- ISO/IEC 27017:2015の適切な実施
- 認証取得プロセスのステップ
それぞれの条件を理解して、自社でISMSクラウドセキュリティ認証が取得できるかどうか確認してください。
ISO/IEC 27001:2013を取得
企業がISMSクラウドセキュリティ認証を取得するためには、まず、ISO/IEC 27001:2013を取得する必要があります。
ISO/IEC 27001:2013は、ISMSに関する国際規格であり、以下のような条件を満たす必要があります。
- ISMSの構築と運用
- 適切な文書化と記録の管理
- 内部監査とマネジメントレビュー
- 外部認証機関の審査
企業は、ISO/IEC 27001:2013に基づいて、ISMSを構築し、運用している必要があります。また、適切な文書化と記録の管理も求められます。
さらに、ISMSの運用に関する文書化された手順や記録を管理し、必要に応じてこれらを更新および維持しなければなりません。
上記の条件を満たすことができれば、企業はISO/IEC 27001:2013 を取得でき、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得するための基盤を構築することができます。
ISO/IEC 27017:2015の適切な実施
ISO/IEC 27017:2015の適切な実施をすることは、企業がISMSクラウドセキュリティ認証を取得するために必要な条件の1つです。
ISO/IEC 27017:2015は、クラウドサービスにおける情報セキュリティに関する国際規格であり、以下の条件を満たす必要があります。
- クラウドセキュリティポリシーの策定
- リスク評価と管理
- データの保護
- アクセス制御と認証
企業は、ISO/IEC 27017:2015に基づいてセキュリティポリシーを策定する必要があります。
このポリシーは、クラウドサービス提供者がクラウドサービス利用者に対して提供する、セキュリティ関連の制御に関する指針を定義したものです。
また、ISO/IEC 27017:2015では、クラウド環境でのデータの保護に関する要件が含まれています。企業は、データの機密性・整合性・可用性を確保するための適切な技術的および組織的な対策を実施する必要があります。
企業が、ISO/IEC 27017:2015の適切な実施を行うことで、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得するための基盤の構築が可能です。
認証取得プロセスのステップ
企業が、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得するためのステップは、おもに以下のとおりです。
- 準備と計画
- 内部監査
- 管理者レビュー
- 認証機関の選定
- 審査と認証
- 認証の取得
- 継続的な改善
認証取得プロセスを開始する前に、ISMSを構築し、ISO/IEC 27001およびISO/IEC 27017の要件に適合するような準備と計画が必要です。
次に、組織の自己評価を行い、内部監査を実施します。
経営陣は、内部監査結果をレビューした内容に応じた修正や改善を指示することで、ISMSの運用状況を確認し、適切な対策を実施します。
その後、信頼できる認証機関を選定して審査を受け、認証機関からISO/IEC 27001およびISO/IEC 27017の要件に適合しているという認証を受けなければなりません。
無事に認証を取得できれば、ISO/IEC 27001およびISO/IEC 27017の要件に準拠していることが証明できます。
ただし、認証取得後も、組織は情報セキュリティの継続的な改善を実施する必要があります。定期的な監査やマネジメントレビューを通じて、ISMSの有効性を維持し、新たなリスクや要件に対応することが重要です。
ISMSクラウドセキュリティ認証の取得事例
ここまで、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得するための条件をみてきました。次に、実際にISMSクラウドセキュリティ認証を取得した企業の事例をみていきましょう。
ここでは、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得した企業を、以下の項目に分けて解説します。
- 株式会社WellGo
- 株式会社デジタルライン
- 株式会社TKC
- 株式会社エムネス
実際の取得事例をみながら、自社と照らし合わせた上でISMSクラウドセキュリティ認証を取得するかどうかの参考にしてください。
株式会社WellGo
株式会社WellGoは、ISMSクラウドセキュリティ認証(ISO/IEC 27017:2015)を取得しています。ISMS認証(ISO/IEC 27001:2013)をベースに、クラウドサービス特有の情報セキュリティ管理策について、適切な管理・実践がされていることを第三者機関が認定するものです。
クラウド健康経営プラットフォーム「WellGo」としてCSP、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)としてCSCの両方の立場で取得しています。
WellGoでは、ISMSをしっかりと確立することで社外へも自信をもって示すことができ、セキュリティに関する社内全体の意識、知識レベルの向上が見られるなど大変よい変化が見られたとしています。
株式会社デジタルライン
株式会社デジタルラインは、2019年7月にプライバシーマークの運用課題を解決するために、LRMのサポートを受け、ISMSとISMSクラウドセキュリティ認証の取得に取り組みました。
Dlineサービスは、国際基準のISO規格に準拠して運用されており、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)とISO27017(ISMSクラウドセキュリティ)の認証を取得しています。
ISMSクラウドセキュリティ(ISMS-CLS)は、ISMS認証を前提としたアドオン認証で、クラウドサービス固有のリスクに対するセキュリティ対策の実施を確認する制度です。
株式会社TKC
株式会社TKCは、2015年10月12日にISO/IEC 27017:2015に基づくISMSクラウドセキュリティ認証を取得しています。
TKCは、会計事務所や地方公共団体向けにシステムの開発や提供を行っている企業で、全国の80万件を超える顧客にクラウドサービスを提供しています。
TKCのデータセンターであるTISCでは、国際規格などの認証取得に積極的に取り組み、厳格な情報セキュリティー体制の整備・運用の維持、向上に努めています。
TISCは、災害に強い堅牢な建物や世界最高水準の情報セキュリティー対策といったインフラ面に加え、社員が24時間365日、サービスの稼働状況を監視するなど運用面でも万全のサービス体制をとっています。
株式会社エムネス
株式会社エムネスは、2021年5月12日に国際規格に基づくISMSクラウドセキュリティ認証を取得しています。
エムネスは、情報セキュリティ全般に関する国際規格(ISO/IEC 27001:2013)と、クラウドサービスのセキュリティ対策における国際規格(ISO/IEC 27017:2015)の認証を取得しています。現役の放射線科医が遠隔読影サービスを始めたことからスタートした会社で、医師とIT専門家がコラボして医療支援クラウドサービス「LOOKREC」を開発しています。
LOOKRECは、インターネット接続端末のみでいつでもどこでも画像にアクセスでき、機器の設置や医療機関側でのシステムメンテナンスは不要なため、低コストかつ簡単に導入、維持することができます。また、医師間、医療従事者間の画像を介したリアルタイムなコミュニケーションも可能です。
まとめ:ISMS認証とクラウドセキュリティの未来
今回は、ISMSクラウドセキュリティ認証に関して、以下のことがわかりました。
- ISMSクラウドセキュリティ認証はISMSの観点からクラウドサービスのセキュリティを評価し認証する制度
- クラウドサービスプロバイダーが情報セキュリティを適切に管理し顧客の信頼を確保することが認証の目的
- ISO/IEC 27017はISMSの規格であるISO/IEC 27001に関連する国際規格の1つ
- ISMSクラウドセキュリティ認証を取得できれば顧客との信頼関係を築ける
- ISMSクラウドセキュリティ認証を取得するためには別の認証を取得する必要がある
ISMSクラウドセキュリティ認証は、ISMSの観点からクラウドサービスのセキュリティを評価し、認証する制度です。これは、クラウドサービスプロバイダーが、情報セキュリティを適切に管理し、顧客の信頼を確保することが目的となります。
ISMSクラウドセキュリティ認証の1つに、ISO/IEC 27017があり、これは、ISO/IEC27001に関する国際規格の1つです。
ISMSクラウドセキュリティ認証を取得できれば、顧客との信頼関係を築くことができます。
また、この認証を取得するためには、ISO/IEC 27001:2013の取得やISO/IEC 27017:2015の適切な実施が必要です。
取得するのに条件があるISMSクラウドセキュリティ認証ですが、どのように取得していけばよいかわからないこともあるでしょう。このような場合は、ISMSクラウドセキュリティ認証に知見のある、株式会社Jiteraへご相談ください。
自社にてISMSクラウドセキュリティを取得したいと考える背景などをヒアリングさせていただき、適切なアドバイスをさせていただきます。