システム保守とは?費用相場や根拠が知りたい方必見!失敗しないポイントを解説

システム開発が終わったら、それ以上費用が発生しないわけではありません。

開発したシステムを運用するには、システム保守が必要で、システム保守を外注する場合は費用が発生します。

実際に、システム開発会社へシステム保守を依頼する場合、どのような費用が発生すると想定しておけば良いのでしょうか。

そこで本記事では、システム保守費用の全貌に迫ります。

ソフトウェアのアップデートからハードウェアメンテナンス、テクニカルサポート、そしてインフラストラクチャの維持まで、保守に必要な要素を明らかにし、それぞれの費用がどのように見積もられ、どこに発注すべきかをわかりやすく解説します。

Nao Yanagisawa
監修者 Jitera代表取締役 柳澤 直

2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立

2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当

2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発

2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出

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執筆者 hiro1120_writer

食品商社営業からシステムエンジニアへと転職後、バックエンドエンジニア(Java, PHP)として尽力。開発リーダーを含む上流工程〜下流工程に携わる。IT関連記事から芸能・法律など幅広ジャンルにて執筆。

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    システム保守とは

    システム保守はシステムを適切に機能させ続けるために必要で、主にシステムの小さなバグ改善やサービスの監視などを定型業務としています。

    常にバックアップとログ取得を行っておくことで、データの損失を防いでシステム障害や災害時の迅速な復旧が可能となります。

    他にもシステムのパフォーマンスが低下していないかやサーバーにアクセスが集中していて負荷がかかっていないかなどの監視を行い、サービスが停止しないようにしています。

    保守業務といってもシステムや現場ごとに細かな違いや決まりがあるため一概にコレが保守業務とは言いにくいですが、大枠で捉えれば「システムやサービスが通常稼働できる状態」にしておくための業務と言えるでしょう。

    システム保守とシステム運用の違い

    システム保守は導入後の安定稼働を担保するのに対し、システム運用は新機能追加など前向きな業務改善を行います。両者の連携が大切です。

    比較項目 システム保守 システム運用
    目的 システムの安定稼働 業務改善・向上
    主な業務 ・監視・ログ解析
    ・セキュリティ対策
    ・障害対応・復旧
    ・要件定義
    ・システム設計
    ・プログラミング
    ・テスト
    重視ポイント ・信頼性確保
    ・既存資産活用
    ・全体最適
    ・新機能追加
    ・変化対応力
    ・ユーザーニーズ反映
    姿勢 保守的 前向き
    専門能力 運用・管理 開発

    システム保守の役割と範囲

    システム保守の主軸は、一旦開発・リリースされたシステムを長期間安定して利用し続けることです。稼働状況の監視や障害対応のみならず、セキュリティと処理性能を維持することが重要な役割となります。

    システム保守ではまず、CPU、メモリ、ストレージ、ネットワークといった、インフラリソースの使用率や応答時間などの稼働状況を可視化し、しきい値を超える異常値がないか常時監視します。

     

    次に、各種サーバーやミドルウェア、データベースなどのシステムが出力する詳細なログ情報を収集・分析し、エラーや障害の兆候を早期に発見できる体制を整えます。

    加えて、ウイルスや不正アクセスといったセキュリティ上の脅威からシステムを守るため、ファイアウォールの設定やアクセス制御の設定変更を適宜実施したり、脆弱性診断を受ける等の対策を講じます。

    こうした監視、ログ解析やセキュリティ対応を通じて、一旦構築したシステム基盤全体の信頼性と安全性を長期間維持し続けることが、システム保守に課せられた重要な役割なのです。

    システム運用との違い

    システム運用は、新機能追加を中心にビジネスを支える前向きな開発を行います。一方でシステム保守は、そうした変化要求を踏まえつつも、システム基盤全体の保守・管理に注力します。お互いの理解と協力が欠かせません。

    システム運用が担う新機能開発では、ユーザーからの業務改善ニーズを汲み取り、要件定義、基本設計、プログラミング、テストと新規開発プロセスを進めます。変化対応力が求められます。

     

    これに対しシステム保守は、そうした新機能追加に伴うシステム改変を前提としつつも、先行して構築済みのシステム資産やデータを最大限活用することを重視します。

    双方向の理解不足が、 appl対保守の対立を招くことが往々にありますが、実際には、表裏一体となって初めてシステム全体の安定稼働が実現できるのです。お互いの大切さを理解し尊重し合うこと、それがシステムのライフサイクルを全うする道なのです。

    ITシステム運用の役割と範囲

    主にITシステム運用では主な役割として、リリースしたシステムを常に正常な状態で稼働させることにあります。

    営利活動を行うシステムにおいて、日々正常にシステムを稼働させるように監視や障害などの対応を行っていきます。

    またシステム改修やセキュリティ対策も内容によっては予算などを検討してほしいとクライアントへ提案しながら、稼働中のシステムを守らなければなりません。

    サーバーなどのシステム監視は稼働時間が24時間365日に及ぶこともあり、その中で障害発生やハードウェアやソフトウェアのアップデートなどに対応していきます。

    迅速に原因を把握してスピーディーに復旧するとともに、障害発生時にシステムエラーによる営利活動が行えないケースも出てきます。

    その時には障害発生によって影響がどのくらい及んでいるか、分析して素早く報告しなければなりません。

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      ITシステム保守の業務内容

      システム保守には、定期メンテナンス、障害対応、監視・ログ解析、セキュリティ対策、データバックアップと、多岐にわたる日常業務が存在します。

      定期的なメンテナンスとアップデート

      日次や週次で実施するサーバチェックや脆弱性診断、月次のセキュリティパッチ適用等、定期的なメンテナンスが基本となります。

      具体的にはまず、システムが動作するサーバーやストレージ、ネットワーク機器の稼働状況を毎日チェックし、CPU/メモリ利用率や通信トラフィック、入出力応答時間などの基本ステータス情報から問題の兆候がないか確認します。

      週次では、サーバOSやミドルウェア、データベース等の脆弱性検査を実施し、必要なセキュリティパッチの有無を調べます。新たな脆弱性通知に対してはただちにテスト環境で修正プログラム適用の検証を行った上で本番サーバーに適用します。

      月次で実行する定期作業としては、システム内データのエクスポートやカタログ情報のバックアップ取得、アカウントやパスワードの見直し等が代表的です。

      障害対応とリカバリー

      システム障害が発生した際には、原因調査と影響範囲の特定を迅速に行い、サービス回復に全力を注ぐ必要があります。

      まず、障害通知を受けた時点で、現象の切り分けが必要です。サーバダウンなのか、ネットワーク障害なのか、アプリケーションエラーなのか、起因となる領域を特定します。

      次に、障害個所の絞り込みと具体的原因の特定作業を素早く進めます。ハードウェアログや各種システムログからエラー要因を特定し、プロセス再起動や切り替えによるサービスリカバリを試みます。

      業務データ面での損害が大きい場合には、データ復旧を優先的に実施します。日頃からのバックアップ取得が活きてくる局面です。原因追及よりも、まずデータを復元することが最優先課題となる場合があります。

      セキュリティ対策

      システムを守るためにセキュリティ対策は重要で、外部からデータ入手など悪意のある攻撃を防がなければなりません。

      運用しているサーバのベースとなっているOSによってセキュリティ対策も変わっており、メーカーからリリースされているセキュリティパッチ適用やsshの鍵認証など対応は多岐に渡ります。

      また搭載する様々なソフトウェアでも独自の脆弱性を改善するために、常々情報がリリースされているのでチェックしておきましょう。

      継続的にセキュリティ対策を行いながら、安全に稼働できるようにシステム保守に努めることも必要です。

      システム監視とログ管理

      稼働状況を可視化するダッシュボードで日々監視し、ログレポートから障害兆候を早期に捉えることが欠かせません。

      可視化ダッシュボードとしては、CPU/メモリ/ディスク利用率や入出力負荷、ネットワークトラフィック等のリソース使用状況をグラフ化し、しきい値を超えた場合にアラートを出すよう設定しておきます。

      また、各種サーバーやミドルウェア、データベースなどから出力される詳細ログを収集・解析することで、例外処理が頻発していたり、特定のSQLに問題があるといった障害兆候パフォーマンス低下要因を特定できます。

      こうした監視ダッシュボードとログ解析は、表裏一体となってシステムの稼働状況を常時チェックすることを可能にします。日々蓄積するビッグデータを分析し、異常値や障害前兆を早期検知する好循環を生むのです。

      セキュリティ対策とデータバックアップ

      不正アクセス対策や情報漏洩防止に加え、重要データのバックアップとリストア機能の定期検証が必要です。

      セキュリティ対策では、ファイアウォールやIDS/IPSといった入り口対策に加え、アプリケーションレイヤーでのSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといった脆弱性診断・対応を行います。

      併せて、アクセス権限の管理・見直し、通信のVPN化・暗号化、ログ取得の強化といった情報漏洩対策を実施します。

      データバックアップでは、業務上の重要度と変更頻度に応じて、日次・週次単位でのデータエクスポートと、冗長なオフサイト保管を自動実行します。

      加えて、ただ取得するだけでなく、実際に保管データを使ってシステムへのリストアテストを定期的に実施し、思わぬトラブルが障害時の復旧作業を著しく遅延させるリスクに備えます。

       

      ※クロスサイトスクリプティング・・・Webアプリケーションのセキュリティ上の欠陥を悪用し、サイト運営者になりすまして不正なスクリプトを実行する攻撃のことです。

      ※SQLインジェクション・・・Webアプリケーションの入力値検証機能の不備を突いて、本来アクセスできないはずのデータベースに不正にアクセスし、情報漏洩やデータ破壊等を引き起こす手口のことです。

      システム保守

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      システム保守費用の要素

      システム保守費用とは、開発システムを問題なく稼動させるために、管理や維持、顧客、トラブル対応で発生する費用がまとまったもののことをいいます。
      システム保守費用は、システムを長期的に運用することによって生じるため、システム開発費用の一部として見積もりを行うことが重要です。
      また、システム保守費用は将来的な要件に対応できるように適切な予算を確保することも忘れてはいけません。実際のシステム保守費用は、以下のような要素から構成されます。

      ソフトウェアアップデート

      ソフトウェアは、最新版へとアップデートしなければ、エラーが発生し、大きなトラブルにつながってしまうことがあります。
      通信障害や運用トラブルを未然に防ぐためにも、ソフトウェアアップデートの運用保守費は欠かせないものとなります。

      ハードウェアメンテナンス

      システム開発後は、ハードウェアのメンテナンスも必要です。
      たとえば、データベースに保管されているデータのバックアップやセキュリティシステムのアップデート、セキュリティリスクへの迅速な対応などがハードウェアメンテナンスの運用保守費に含まれます。

      テクニカルサポート

      開発サービスにトラブルが発生した場合、非常に頼りになるのがテクニカルサポートの存在です。
      テクニカルサポートとは、開発システムの故障や操作方法などの技術問題に対するお問い合わせを、メールや電話、チャットなどで解決してくれる技術サポーターのことです。
      専任できるテクニカルサポーターの設置には、一定の費用が必要となるため、運用保守費として考慮しておきましょう。

      インフラストラクチャの維持

      インフラストラクチャとは、システムの基盤や設備の要素のことをいいます。別名、インフラとも呼ばれています。
      インフラストラクチャにおける基盤や設備の要素とは、インターネット通信ならインターネット回線、Webサービスを稼働させるためのサーバ、サービスを安定的に運用するための体制などのことです。
      インターネット回線もサーバも運用体制も、決して主軸となるものではありませんが、どれかひとつでもなくなると、システムは正常に稼働できません。
      そのため、システム保守においてインフラストラクチャの維持費は、なくてはならない費用となります。

      ライセンス費用

      システム開発において、特許発明や特許技術を利用する場合は、ライセンス料の支払いが必要となります。
      システム開発をする場合は、毎月どれくらいのライセンス費用が発生するのか、事前に見積時に確認することをおすすめします。

      システム保守の種類と費用相場

      システム保守は、システムの安定した運用を維持するために欠かすことのできない重要な作業になります。

      一般的にシステム保守費用は開発費用の5%程度と言われており、大規模システムでは15%が一般的です。また、ECサイト構築などサービス委託の場合は、ハードウェア・ソフトウェア費用の15%相当額の保守費用が別途発生する可能性があります。

      保守の種類は大きく分けて「予防保守」「改善保守」「適応保守」「訂正保守」の4つに分類されます。

      この章では4つの種類とその費用相場について解説していきます。保守の内容を理解することで、適切な保守体制を整え、システムの長期的な安定運用を実現できるでしょう。

      予防保守

      「予防保守」とは、システムに障害が発生する前に定期的な点検や整備を行うことです。以下のような内容が含まれます。

      • バックアップの作成と確認
      • セキュリティパッチの適用
      • ストレージの状態監視とデータ削除
      • システムリソースの監視と調整
      • ログの確認と分析

      予防保守は、システムの安定した稼働を維持するために欠かせません。障害の未然防止や潜在的な問題の早期発見につながります。

      費用は、システムの規模やベンダーによって異なりますが、開発費用の2~5%程度が目安とされています。定期的な点検は手間がかかりますが、突発的な障害によるダウンタイムコストを抑えることに繋がるでしょう。

      改善保守

      「改善保守」は、既存のシステムの機能や性能を向上させる保守作業です。時代の変化に合わせてシステムを進化させることが目的となり、以下が見込めます。

      • ハードウェアの増設や交換による処理能力の向上
      • ソフトウェアのバージョンアップによる新機能の追加
      • データベースのチューニングによる検索・更新速度の改善
      • ユーザインターフェースの改修による操作性の向上
      • セキュリティ強化のためのシステム改修

      改善保守には一定の開発コストがかかります。費用は規模次第ですが、初期開発費の10~30%程度が一般的とされています。改善保守を適切に行えば、業務効率の向上や売上増加につながる可能性があります。

      適応保守

      「適応保守」は、法改正や新規ビジネス要件などの環境変化に対応するための保守作業です。

      • 税制改正に伴う会計システムの改修
      • 新商品の販売に伴うECサイトの機能拡張
      • クラウドシフトに伴うシステムのマイグレーション
      • 他社システムとの連携のためのインターフェース開発
      • モバイル対応のためのレスポンシブWebデザイン化

      社会環境や事業環境の変化に柔軟に対応することが目的となります。適応保守は一種のシステム開発に近く、かなりの開発コストが見込まれ、案件により異なりますが初期開発費の20~50%程度が相場とされています。

      事業継続には欠かすことができないため、適応保守への投資は必要不可欠と考えてください。

      訂正保守

      「訂正保守」は、システムの不具合やバグを修正する保守作業です。

      • プログラムのロジック誤りによる計算ミスの修正
      • データ紐付けの不備による参照エラーの解消
      • セキュリティホールの解消によるシステム脆弱性の除去
      • 画面デザインの不備による表示の見づらさの改善
      • 入力値のチェック漏れによる異常終了の防止

      システムの信頼性と安全性を確保することが目的です。訂正保守は突発的な案件が多く、案件の複雑さによりますが数万円から数百万円の予定外の費用が必要となります。

      適切な訂正保守を怠ると、業務に重大な影響を及ぼす可能性があります。

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      開発サービスごとの保守費用の目安

      自社で開発したいサービスがある場合は、次のようなシステム保守費用が発生することを想定しておきましょう。

      サービス名 システム開発費用 システム保守運用費用 合計金額(サービス委託費を含む)
      マッチングアプリ 2,000万円 300万円 350万円
      ソーシャルメディアアプリ 1,500万円 225万円 275万円
      AR(拡張現実)システム 1,200万円 180万円 230万円
      マッチングサイト 1,000万円 150万円 200万円
      ECサイト 800万円 120万円 170万円
      ポータルサイト 600万円 90万円 140万円
      日時予約システム 500万円 75万円 125万円
      eラーニングシステム 400万円 60万円 110万円
      CMS構築 300万円 45万円 95万円

      ※これらのシステム開発費用やシステム保守運用費用は、システム開発会社である弊社(株式会社Jitera)が算出した費用の目安となります。システム保守費用については、保守の範囲によっても異なりますので、詳しくは見積時にご確認ください。

      システム保守費用の根拠となる項目

      システム保守費用の根拠となる主な項目は、以下の5つが挙げられます。

      • システム規模
      • システムの複雑性
      • 稼働時間
      • 顧客サポートレベル
      • 開発手法・開発言語・フレームワーク

      これらの要素によって、保守作業の難易度や工数が大きく変わってきます。適切な保守体制を組むためには、これら項目を踏まえた上で合理的な保守費用を見積もることが重要です。

      システム規模

      システムの規模が大きければ大きいほど、保守作業の工数が増えます。サーバ台数、ユーザ数、データ容量などがシステム規模の指標です。

      大規模システムでは、点検や修正対象が広範囲に及び、リソース監視や統合テストなど、確認作業の種類も増えるためより多くの作業時間を要します。

      規模に見合った適切な保守体制と人員を確保し、十分な予算措置が必要不可欠です。システム規模が大きいほど、保守費用は高額になる傾向にあります。

      システムの複雑性

      システムが複雑であれば、その分保守作業の難易度も高くなります。複雑性は、システムを構成するモジュール数、外部システムとの連携数、バッチ処理の多さなどで判断します。

      複雑なシステムほど一つの変更によって広範囲に影響が及ぶ可能性があり、事前の影響範囲確認や統合テスト、リリース後の動作確認など、細やかな作業が求められます。

      そのため、高度な技術力と十分な工数を確保することが必要となってきます。また、複雑なシステムでは関係者間の調整にも手間がかかるでしょう。

      このように、システムの複雑性に見合った適正な保守費用の算定が重要です。単純なシステムに比べれば、複雑なシステムの方が保守費用は高額になる傾向にあります。

      稼働時間

      システムの稼働時間が長ければ長いほど、保守作業の実施タイミングが限られてしまいます。

      24時間365日の無停止システムでは、保守は深夜や休日の時間外での対応が避けられません。

      そのため、作業時間外への人件費の発生が避けられず、コストアップにつながります。また、システムの一時的な停止が難しい場合は、回線や機器の予備を用意するなどのリソース確保が必要となり、さらなるコストの増加要因となります。

      一方、夜間や休日に停止可能なシステムであれば、保守作業の実施は比較的容易です。また、システムの一時停止に伴うユーザへの影響も少ないでしょう。

      このように、無停止システムの保守では、停止が可能なシステムに比べて高額な費用が見込まれ、稼働時間に応じた適切なスケジューリングと予算確保が不可欠となります。

      稼働時間が長ければ長いほど、保守費用は高くなる傾向です。

      顧客サポートレベル

      顧客へのサポートレベルが高ければ、保守作業に対する品質要求水準も高くなります。

      障害発生時の迅速な原因究明と対応、問い合わせ対応のためのホットライン設置など高いサポートレベルが求められる場合には保守体制を手厚くする必要があります。そのため、保守担当者の増員や、24時間体制での常時待機態勢の構築が欠かせません。

      結果として人件費の高額化につながり、保守費用も増加傾向となります。

      一方、顧客サポートレベルが低ければ保守体制を手薄にできるため、人件費の抑制により保守費用を低く押さえる事ができるでしょう。

      このように、顧客サポートレベルに見合った適切な保守費用の設定が重要であり、高いサポートレベルが求められるシステムほど、保守費用は高額になる傾向があります。

      開発手法・開発言語・フレームワーク

      システムの開発手法や、使用する言語・フレームワークによって、その後の保守作業のしやすさが変わってきます。

      アジャイル開発の場合、要件の変更に柔軟に対応できるため、保守への対応も比較的スムーズです。一方、ウォータフォール型開発では、計画段階から保守への配慮が不可欠。

      開発言語やフレームワークによっても保守のしやすさは異なり、コーディング規約の有無や、構造化の程度、ツール・ドキュメントの整備状況などの影響も無視できません。

      言語やフレームワークに精通したエンジニアの確保が容易か否かも、保守体制に影響します。さらに、オープンソースかクローズドかによっても、保守の難易度は変わってきます。

      このように、開発手法や技術スタックに合わせた適切な保守体制と予算の確保が求められます。

      保守がスムーズに行える環境であれば、その分保守費用を抑制できますが、保守が難しい環境では高額な費用となるでしょう。

      システム保守費用の算出方法

      システム保守費用の算出方法には、主に「定額制」「従量課金制」「時間制」の3つのパターンがあります。

      「定額制」は、保守作業の内容や工数に関わらず一定の月額料金を支払う方式です。「従量課金制」は、保守作業の発生量に応じて課金される方式であり、「時間制」は、保守作業に要した実作業時間に応じて課金される方式となります。

      それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、システムの特性や要件に合った算出方法を選ぶことが重要です。

      定額制

      定額制とは保守作業の内容や工数に関わらず一定の月額料金を支払う算出方法です。月額保守料金は、システムの規模や複雑度、サービスレベルなどを勘案して決定されます。

      具体的には、システムの初期開発費用の10~20%程度が目安とされていますが、大規模システムの場合はそれ以上の金額設定となることもあります。

      保守対象のシステム内容と提供されるサービス内容を十分に確認し、適正な月額料金を算出します。

      メリット:

      定額制は、保守作業の発生頻度が比較的高く、工数が一定程度見込まれるシステムに向いています。保守費用を毎月固定で払えるため、予算の平準化が可能となるためです。

      デメリット:

      保守作業が少ない場合は料金が高くつく可能性があります。中小規模の基幹システムや、サービスを委託するシステムなどに定額制が多く採用されています。

      従量課金制

      従量課金制とは保守作業の発生量に応じて課金される算出方法です。作業単位ごと(例:1ケース)の単価が設定されており、実際に発生した作業量に単価を乗じて費用が決まります。

      単価の設定は作業内容の複雑さや工数見積もりを基に行われます。例えば、プログラム修正は5万円/ケース、バッチ修正は3万円/ケースなど、作業種別ごとに異なる単価が設定されることが一般的です。

      メリット:

      従量課金制は、保守作業の発生頻度がそれほど高くない傾向のあるシステムに向いています。作業が起きないときは費用が発生しないため、コストを抑えられます。一方、大量の作業が集中すれば、その分多額の費用が発生するリスクがあります。

      デメリット:

      ウェブサイトの小規模改修や、スポット的な機能追加など、保守作業が断続的に発生するようなシステムでは従量課金制が採用されることが多いでしょう。事前に想定外の大量作業が発生しないことを前提とする必要があります。

      時間制

      時間制とは保守作業に要した実作業時間に応じて課金される算出方法です。単価は作業者の技術レベルや時間帯(夜間・休日は割増)によって異なります。

      例えば、プログラマの場合は、日中の通常時間帯なら1時間あたり5,000円、夜間や休日は7,000円といった単価設定がよくあります。作業時間を実数で集計し、単価に従って費用を算出していきます。

      メリット:

      時間制は、スポット的で工数見積もりが難しい保守作業に向いています。特に、障害対応や問い合わせ対応などは事前の工数予測が難しく、時間制で対応することが多いでしょう。

      デメリット:

      一方で、計画的な保守作業の場合は、工数見積もりが可能です。そういった作業に時間制を採用すると、過剰なコスト発生のリスクがあります。

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      システム保守の費用見積もりから発注までの流れ

      システム保守を発注する際には、適切な見積もりを取り、条件の良い業者を選定することが重要です。

      発注までの流れは、「要件定義」「業者選び」「見積もり依頼」「見積内容の確認」「提案内容の比較と検討」「契約締結」「保守運用開始」という手順を踏みます。

      各ステップで留意点を押さえ、計画的に進めていくことで、ニーズに合ったコストパフォーマンスの高い保守体制を構築できます。

      要件定義

      システム保守を適切に発注するための第一歩が、要件定義です。保守対象のシステムの詳細を洗い出し、どのようなサービスレベルが求められるかを明確にする作業です。

      まずは保守対象システムの規模、複雑性、稼働時間、開発手法などの基本情報を整理して、サーバ台数やデータ量や開発言語などのスペックを確認し、システムの全容を把握していきます。

      次に、そのシステムに対してどの程度のサポート品質が求められるかを定義し、細かなサービスレベルを明確にしていくことが必要です。

      こうした要件を文書化し、発注仕様書を作成していく作業となります。

      業者選び

      システム保守を外部に発注する場合は適切な業者を選ぶことが肝心で、技術力だけでなく、対応力、コスト、実績など、総合的な視点での評価が重要となります。

      まずは、ナレッジや過去に経験がある保守対象システムの開発業者やベンダーから候補を絞り込むのが一般的です。

      次に業者の技術力と対応力を確認していきますが、資格保有者数や経験年数、支援体制などを入念にヒアリングしていきます。

      さらにコストについても一般的な価格水準を考慮しておきつつ選定していくことも大切です。

      これらの項目を総合的に評価し、優先順位をつけて候補業者を選定します。要件をクリアできる技術力と体制、適正なコストパフォーマンス、円滑なコミュニケーションが図れる業者を選ぶことが重要です。

      見積もり依頼

      業者を絞り込んだ次の段階は具体的な見積もりを依頼し、適切な見積条件を明確に示していきます。

      まずは発注仕様書を作成し、見積依頼時の基礎資料として業者に提示します。保守対象システムの詳細、求められるサービスレベル、具体的な保守作業内容などを記載した文書です。要件の認識のズレを防ぐためにも、正確かつ明確な記述を心がけましょう。

      次に、見積依頼時に指示する条件を明確にして、条件をあいまいにしないよう注意が必要です。

      こうした指示に基づき、候補業者に一括して見積もりを依頼します。同条件での比較が可能となるよう、依頼内容には十分注意を払います。

      見積もり内容の確認

      業者から見積書が提出されたら、次はその内容を入念に確認する作業に移ります。

      まずは見積金額の妥当性から確認するために、市場からや知見のある人から一般的な適正価格を確認しておきましょう。

      システム保守費用は、システム開発時の最初の見積段階で事前に金額を算出しておくのがおすすめ。

      次に提案内容が発注要件を満たしているかを確認します。保守対象システムの理解、サービスレベル対応、作業範囲の認識など、要件の漏れやズレがないかどうかを確認します。

      加えて、保守業務の品質を左右する重要項目についても見落とすことがあってはなりません。障害対応の緊急性、作業内容の具体性、成果物のレベルなど、サービス品質面でも要件を満たしているか確かめる必要があります。

      発注要件に適合した適正な内容であることを、確認作業を通じて担保することが重要です。

      提案内容の比較と検討

      複数の業者から見積書が提出されたら、その内容を比較・検討する作業に入ります。

      まずは見積金額を比較し、大まかな高止まり感を確認し、その後提案内容の違いを項目ごとに比較していきます。

      項目としては保守作業の範囲、実施体制、品質保証、リソース確保、報告体制などがありますが、作業漏れのリスク、品質リスク、人員リスク、コミュニケーションリスクなど、保守の質を左右するリスクも洗い出していきましょう。

      一方で、付加価値となる提案も評価すべき点です。新技術の提案、付随作業への言及、システム移行のロードマップ提示など、プラスアルファの部分を見逃さないようにしましょう。

      単に安価というだけでなく、全体のコストパフォーマンスを勘案して最適な業者を選びます。

      契約締結

      業者選定が完了したら、次は正式な契約締結へと移ります。

      まずは、選定した業者の提案内容を改めて確認し直し、その後契約期間や契約金額、支払い条件などの基本条件を確認して双方で合意を取ります。

      次に、具体的な契約書の条文を詰めていきますが、発注側と受注側の役割分担、作業の実施手順、成果物の定義、しっかりと規定しておくことが大切です。

      重要なのは作業水準や品質保証に関する条項で、作業の遵守事項、品質基準、検収条件、債務不履行時のペナルティなどを明記し、保守作業の質を担保します。

      このように、互いの権利義務関係を明確に規定した上で、契約書を締結します。発注者、受注者間で認識の相違がないよう注意を払いましょう。

      保守運用開始

      契約締結が完了すれば、実際の保守運用に移行する段階になります。

      まずは、保守作業の開始に向けた引き継ぎ作業を入念に行いつつ、並行して保守体制の立ち上げを進めます。

      立ち上げのためには作業拠点の確保、人員配置、ツール導入、通信環境の構築など、円滑な保守作業に必要な環境を整備して行く必要があります。

      本格運用開始に先立ち、保守業者による事前の作業検証も欠かせません。障害対応の手順確認、モニタリング環境の検証、設計書やドキュメントのレビューなど、保守品質を高める準備作業を実施します。

      作業状況の定期確認、納品物のレビュー、満足度の継続的なフォローアップなどを行い、保守品質を常に一定のレベルに保つ必要があるため、発注側による品質監視体制も重要です。

      まとめ:システム保守費用は適正価格で委託すべき

      適正な水準を外れた保守費用には、様々なデメリットがあります。安すぎる価格設定、高すぎる価格設定のどちらの場合も、システム保守の質の低下や事業継続へのリスクにつながる可能性があります。

      一方、高すぎる保守費用も看過できません。過剰なサービスコストは、企業の経営を圧迫する最大の要因となり得ます。保守単価の高止まりにより、ITコストが膨らみ、他の重要投資に回す予算が削られてしまう可能性があります。

      適正な保守費用は、確かにコストとして捉えられますが、それは事業継続や事業拡大のための必須の投資ともいえます。品質が維持され、安定したシステム稼働が担保されれば、円滑な業務運営が可能になります。

      したがって保守費用は、長期的な事業への影響を考慮し、適正水準を見極める必要があります。

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