人間の直感や経験の優れた点と、機械学習の効率性や能力を融合させたものが「拡張知能」です。拡張知能は、人間の脳では扱いきれないようなたくさんの情報を素早く処理するために知能を拡張したもののことを意味します。
「AI(人工知能)」の方が聞き馴染みのある単語ですが、私たちがよく目にする「AI」とは、実際にはこの拡張知能のことを指しています。
AIを活用して事業を展開していきたいと考えている方は、この部分の知識を理解しておくべきでしょう。
この記事では、拡張知能の基本的な概念から、具体的な使用例まで幅広く解説します。
東京都在住のライターです。わかりづらい内容を簡略化し、読みやすい記事を提供できればと思っています。
拡張知能とは?

拡張知能は、人間の脳が扱いきれない多量の情報を素早く処理できるように設計された知能システムです。
一般的に「Artificial Intelligence(人工知能)」と呼ばれる技術が含まれていますが、拡張知能の概念はそれをさらに進めた「Augmented Intelligence(拡張知能)」としても知られています。
たとえば、拡張知能は大量のデータからパターンを抽出し、予測を行う技術であり、医療診断や金融市場の分析に活用されています。
そして、知識の限界を押し広げ、新たな発見を促進する重要な役割を担っています。
拡張知能の特色
拡張知能は、人間には処理できない大量の情報を短時間で効率的に処理することが可能です。そのため、私たちの知能が実質的に拡張され、より複雑な問題に対処できるようになります。
たとえば、この技術はデータ解析やパターン認識に非常に優れており、大規模なデータセットから有用な洞察を素早く抽出することができます。医療診断の支援や消費者行動の予測、気候変動の研究など、多岐にわたる分野で活用されています。
このような拡張知能の特色は、単に情報処理の速度や量だけでなく、その応用範囲の広さにも表れています。私たちは新たな課題に対する解決策をより迅速に、かつ効果的に見つけることが可能となります。
拡張知能と人工知能の違い

| 特徴 | 人工知能 | 拡張知能 |
|---|---|---|
| 目的 | タスクの自動完了 | 人間の判断能力の強化 |
| 判断の主体 | AIが主に独立して判断 | 人間が最終判断を下す |
| 役割 | 独立した操作 | 補完的なサポート |
| 応用の例 | 自動運転、ロボット工学 | データ分析、意思決定支援 |
拡張知能と人工知能の違いは、主に人間の判断への関与の度合いにあります。人工知能は独立してタスクを実行することが多いのに対し、拡張知能は人間の知能を補完し、拡張する役割を持っています。
たとえば、人工知能はプログラムされた通りに自動で決定を下すシステムですが、拡張知能は人間の判断をサポートし、最終的な決断には人が関与します。
この違いを理解することは、AI技術を適材適所で使用する上で必要不可欠なことです。
拡張知能:実際に判断を行うのは人間
たとえば、医療分野において、拡張知能は大量の患者データを解析して、異常が疑われるケースを医師に提案できます。しかし、医療分野のように生命の危機が発生する業務においては、最終的な診断や治療の決定は、AIの提供する情報をもとに医師が行うべきです。
つまり、人間の仕事をサポートする役割で動くのが「拡張知能」です。
人工知能:全て人工知能の中で完結
人工知能はすべての作業をAIが完結させます。具体的には、チャットボット技術として活用されていることが多いです。
チャットボットは、顧客サービスや情報提供のために設計されており、ユーザーからの問い合わせに自動的に応答します。
たとえば、オンラインショッピングのカスタマーサポートで使用されるチャットボットは、顧客からの質問を受けて、在庫状況の確認、配送日の予測、商品の仕様説明などを行います。
人間の介入は必要なく、AIが独立して全ての応答を生成可能です。チャットボットは自然言語処理技術を活用して、ユーザーの質問の意図を理解し、適切な回答を提供します。これにより、24時間365日の即時対応が可能となり、顧客満足度の向上を狙いながら、コスト削減にも寄与します。
また、人工知能に興味がある方は、以下の記事でAGIについて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
拡張知能の事例

最後に、拡張知能を活用した事例についてみていきましょう。
Watson
拡張知能の代表的な事例として、IBMの「Watson」が挙げられます。Watsonは、特に医療分野での活用が注目されています。たとえば、がん診断の支援において、Watsonは膨大な医療文献から関連情報を迅速に引き出し、個々の患者に最適な治療内容を提案することが可能です。
このシステムは、医師が患者の病状や治療履歴を入力すると、最新の研究成果や臨床試験のデータをもとに治療提案を行います。このような機能により、Watsonは医師の診断を補完し、より精度の高い治療計画の立案が可能です。
拡張知能は医療現場での迅速な意思決定を行うことが可能です。
DARWINリアルワールドデータプラットフォーム(製薬企業サノフィ)
製薬企業サノフィが開発した「DARWINリアルワールドデータプラットフォーム」は、拡張知能の応用例です。
このプラットフォームは、実際の患者データを収集・分析することで、薬剤の効果や安全性について深い知識を提供します。
そのため、膨大なデータセットから有益な情報を抽出し、新薬の研究開発や既存薬の効能改善に役立てます。
具体的には、データを活用して、治療効果のパターンを識別し、副作用などのリスクを評価することが可能です。DARWINは、より安全で効果的な医療ソリューションの提供を実現しています。
エビデンスプラットフォームとDARWINが統合(ハーバード大学医学部の教職員とAetion社)
ハーバード大学医学部の教職員とAetion社が協力して、拡張知能の事例として「エビデンスプラットフォーム」と「DARWIN」を統合しました。
このプラットフォームは、実際の患者データを基にした広範な医療分析を可能にし、医薬品の安全性と効果をリアルタイムで評価するための強力なツールです。
このシステムは、大規模なデータベースを活用して、疾患の治療パターンや薬剤の効果に関するエビデンスを生成することが可能です。
たとえば、新しい治療法が特定の患者群にどのような影響を与えるかを科学的に解析し、それを基に治療ガイドラインの改善や政策決定のサポートを行います。
このような拡張知能の応用は、臨床研究の質を高め、より正確で信頼性の高い医療情報の提供に寄与しています。
拡張知能のまとめ

この記事では、拡張知能とは何か、その特徴や活用例について解説しました。拡張知能は、人間の知識・直感・経験をAIの処理速度や能力と組み合わせ、人間の知能を補完・拡張する技術です。
拡張知能を理解することは、今後ますますAIが日常生活やビジネスに影響を与える中で、重要な知識となります。
AIに関する質問をお持ちの場合や、AIを活用したシステム開発に関するご相談がある場合は、ぜひ株式会社Jiteraまでお問い合わせください。お客様のニーズに合わせて最適なソリューションを提案させていただきます。

