世の中の働き方の多様化に伴い、スマートフォンやタブレットのようなモバイル端末がビジネスでも幅広く使われるようになりました。
特に、テレワークが浸透した現代では、持ち運びや操作性に優れたモバイル端末の需要も高まっています。
しかし、持ち運びができるモバイル端末は紛失や盗難による情報流出のリスクや、台数が多すぎて資産管理が煩雑になるといった問題もあります。
そんな企業で利用されるモバイル端末の管理・セキュリティ対策を行う上で欠かせないツールが、MDM(モバイルデバイス管理)です。
本記事では、MDMツールにフォーカスし、概要やおすすめ10選について解説していきます。
本業はサーバー・クラウドエンジニアです。主にWindowsOS、Azure系をやっています。最近ではクラウドセキュリティ関連の設計構築、運用を手掛けています。
MDMの基本

MDMについて、名前は聞いたことがあっても、どのような機能があるか、導入することで自社の業務にどのような影響があるのか理解があいまいな方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずはMDMを理解するための基本として、そもそもMDMとは何か、MDMが必要とされる背景について解説します。
MDMとは何か?
MDMとは、Mobile Device Managementの略称で、企業で利用されるスマートフォンやタブレットといったモバイル端末を一元管理するためのサービスやツールを指します。
昨今の働き方改革によるリモートワークの推進により、モバイル端末の持ち出しによる業務が一般的になっているため、モバイル端末を管理する為にMDMの導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。
MDMを導入することで、モバイル端末に対して以下のような制御や管理を実施できます。
- 各モバイル端末へ必要なアプリケーションの自動インストール
- 業務に必要のないアプリケーションの操作・インストール制限
- モバイル端末紛失時の遠隔ロックやデータ初期化
- 各モバイル端末の操作ログの収集
MDMによってモバイル端末の管理・運用を効率化し、各業務の生産性の向上や、モバイル端末利用時のセキュリティリスクへの対応が期待できます。
MDMの重要性
iPhoneやAndroidの普及やテレワークの浸透により、社員間の連絡手段や業務利用を目的としてモバイル端末を導入する企業が増えてきました。
しかし、モバイル端末は気軽に利用できる反面、セキュリティ対策や社員による私的利用の防止など、モバイル端末全体をどのように管理していくかが、企業にとっての課題です。
モバイル端末を利用する際の主な課題として、代表的には以下があります。
- モバイル端末の紛失時の対応
- 情報漏えいのリスク
- モバイル端末の管理
MDMを導入することで、端末資産管理の一元化や、モバイル端末の紛失や盗難による情報漏えいリスクの低減が期待できます。
そのため、モバイル端末が身近になった現代だからこそ、モバイル端末の一元的な管理を実現できるMDMツールが重要視されているわけです。
MDMの主な機能

MDMによる企業内のモバイル端末の管理の一元化やセキュリティ対策を行うため、MDMツールに搭載された機能について理解を深める必要があります。
MDMが提供する主な機能は、以下の4つです。
- デバイス管理
- アプリケーション管理
- データ管理
- セキュリティ管理
それぞれ見ていきましょう。
デバイス管理
MDMツールの機能で最も代表的な機能がデバイス管理に関する機能です。
デバイス管理機能で社員に配布したモバイル端末を効率的に管理・運用することで、運用者の作業負担を軽減してくれます。
デバイス管理の主な機能としては以下のようなものがあります。
- モバイル端末の利用状況の管理
- ポリシーによる端末制御(パスワードポリシーや権限管理など)
- パッチ配布
規模が大きい企業では、各社員に配布されるモバイル端末も数多くなるため、端末の管理作業が煩雑になりやすいです。
MDMのデバイス管理機能を利用することで、モバイル端末の管理やポリシーによる制御が容易に行えるため、管理者の業務負担を軽減できます。
アプリケーション管理
MDMでは、自社で開発したアプリケーションの配信やバージョン管理、アプリの利用制限といった、モバイル端末にインストールされるアプリケーションの管理を一元化できます。
アプリ配信のサーバーを構築する必要がなく、アプリの強制インストールや、不要なアプリのアンインストールも一括で行なえます。
また、利用アプリの制限も可能で、許可したアプリ以外はインストールできない制御をかけたり、特定アプリの利用に条件を付与したりすることも可能です。
データ管理
MDMは業務データの管理や必要な時にデータを一斉配信するといった機能があります。業務に必要なファイルや書類などをMDMを通じて管理・モバイル端末に配信できます。
例えば、商談用の営業資料の最新版をMDMで保持・常に最新の状態にアップデートしておき、商談当日に端末に配信するといった制御が可能です。
また、モバイル端末のデータ管理で特に役に立つのが、電話帳データの管理です。
会社の同僚の連絡先や取引先の連絡先データをMDMで保持しておき、定期的な更新・配信を行うことで、MDMで管理されている端末は常に最新の連絡先情報を把握できます。
セキュリティ管理
モバイル端末は簡単に持ち運べるため、いつでもどこでも業務ができることがメリットですが、常に紛失や盗難といったリスクが伴います。
そのため、MDMでは紛失・盗難によるデータ流出を未然に防ぐため、以下のようなセキュリティ機能が多数搭載されています。
- リモートワイプ機能
- リモートロック機能
これらの機能はモバイル端末の紛失や盗難が発覚したタイミングで、遠隔から端末をロックしたり、端末内のデータを初期化したりできるため、モバイル端末の不正利用によるデータ流出のリスクを最小限にします。
また、MDMにはモバイル端末のOSアップデートやセキュリティパッチの適用を管理者側から実施できる機能もあります。
これまでのモバイル端末のOSアップデートなどは利用者に依存しており、端末によってセキュリティ機能に差がある場合がありました。
しかし、MDMを導入することによって、全モバイル端末のセキュリティレベルを最新に保てます。
MDMツールおすすめ10選を比較

MDMのツールにはいくつか種類があり、それぞれApple、Google、Androidに特化したMDMが存在します。
以下では、MDMのツールの種類と機能の概要について解説します。
Apple MDM

AppleのMDMとして、既存のMDMと連携して利用するApple Business Managerが有名です。
Apple Business Managerは、Apple製のデバイスやアカウント、コンテンツを統合管理できる無料のWebポータルで、主に以下のような管理を実現できます。
- AppleStoreアプリ、ブックの購入に関する管理・制御
- ゼロタッチ導入によるAppleデバイスのキッティングの効率化
- 企業用Apple IDの管理
特に、ゼロタッチ登録により事前にMDMとモバイル端末を紐づけることで、利用者はデバイスの電源をオンにするだけでMDMへの登録が完了し、セットアップ作業を簡略化できます。
iPhoneやiPadといったApple製品は、企業でも業務利用されることが多いため、Apple MDMにより管理の効率化が期待できるでしょう。
Google MDM

Google MDMは、Google Workspaceが提供している機能の一つで、Googleの管理コンソール上でデバイスを管理できるMDMです。
Google MDMでは、基本管理と詳細管理の2種類の管理方法があり、自社の要件に応じて管理方法を決められます。
基本管理と詳細管理の機能の違いについては以下の表を参考にしてください。
| 機能 | 基本管理 | 詳細管理 |
| デバイス管理機能 | ・アカウントのリモートワイプ
・デバイスのブロック ・デバイスの監査、アラート |
・デバイスのリモートワイプ
・会社所有のデスクトップ、Android、iOSデバイスの一括登録 ・社内データアクセスの承認を必須にする |
| アプリ管理機能 | ・Android アプリの管理 | ・Android、iOSアプリの管理
・管理アプリをインストールできるユーザーの管理 |
| セキュリティ対策 | ・デバイス管理ルールの設定
・基本的なパスコード設定 ・ログイン時の本人確認 |
・スクリーンロック、PINなどの高度なパスワード設定
・カメラの利用制限やデータ暗号化を必須にするポリシー設定 |
また、Google MDM では、コンテキストアウェアアクセスと呼ばれる機能を使い、きめ細やかなアクセス管理を実現できます。
例えば、社内ネットワークに接続したモバイル端末のみ、GoogleWorkspaceへのアクセスを許可したり、ユーザーの端末内のストレージが暗号化されている場合にのみGoogle Driveへのアクセスを許可するといったような制御が可能です。
Android MDM

Android MDMで代表的なのが、Google社が提供するAndroid Enterpriseと呼ばれる端末管理プログラムで、企業のAndroidデバイスを効率的に管理する機能が多数搭載されています。
Android Enterpriseでは、主に以下のような機能を利用可能です。
- パスワードポリシー設定
- カメラの使用、スクリーンショットの禁止
- インストールできるアプリのみGoogle Playストアに表示する
また、Android Enterpriseでは、モバイル端末内でプロファイルを分けて保持できる機能が搭載されており、BYOD端末であっても仕事用とプライベート用とで領域を分けられます。
| タイプ | プロファイル構成内容 |
| Fully Managed Device | デバイスを仕事用のデバイスとして構成 |
| Work Profile | 個人所有のデバイスにプライベート領域と仕事領域を構成 |
| COPE | 会社所有のデバイスにプライベート領域と仕事領域を構成 |
仮に、リモートによる制御が必要になった場合でも、仕事領域にのみ制御を行うため、プライベート領域に影響を与えることがなく、従業員のプライバシーも守られるメリットがあります。
CLOMO MDM

引用元:CLOMO MDM公式サイト
CLOMO (クロモ)MDMは、モバイルデバイス管理(MDM)ツールの分野で13年連続NO.1シェアを誇る、信頼性の高いソリューションです。
企業や組織におけるスマートフォンやタブレットなどのデバイス管理を効率的に行うことができます。
CLOMO MDMの代表的な機能は、以下の通りです。
- 遠隔で利用状況を把握
- 機能制限や設定
- デバイスのロック・データ消去
- アプリ配布・管理
- ウィルス対策
- 緊急サポート
また、CLOMO MDMでは無料トライアルを提供しているため、導入前に実際の機能や使い勝手を試せます。
この手軽さは、MDMツールの選定において、大変魅力的な点の一つです。
企業や組織におけるモバイルデバイス管理の重要性が増す中、CLOMO MDMは、その豊富な機能と実績から、多くの企業に選ばれているMDMツールです。
デバイス管理の効率化とセキュリティ強化を目指す企業にとって、CLOMO MDMは検討に値する選択肢の一つと言えるでしょう。
LanScopeAn

引用元:LanScopeAn
LanScopeAn(ランスコープアン)は、使いやすさを追求したMDMツールです。
ツールの操作が苦手な方でも利用できるよう、シンプルな画面構成を採用しています。
モバイルデバイスだけでなく、WindowsのPCにも対応しているため、幅広いデバイスの管理が可能です。
これまでに2,500社以上が導入しており、利用ユーザーの約83%が満足していることからも、その使いやすさと効果が実証されています。
LanScopeAnの主な機能は、以下の通りです。
- 稼働状況の管理
- インストールプロファイル・アプリの管理
- 資産アラート
- 位置情報・移動履歴の取得
- メッセージやアンケート送付
- セキュリティ対策
これらの機能により、デバイスの稼働状況や位置情報の把握、アプリケーションの管理、セキュリティ対策など、包括的なデバイス管理を行うことができます。
価格は、年間契約で1台あたり1,200円と登録料6,800円です。
また、60日間の無料体験期間があるため、実際の運用前に機能や使い勝手を試すことができます。
SPPM

引用元:SPPM公式サイト
SPPM(エスピーピーエム)は、オプションサービスを多く取り扱い、カスタマイズ性の高いMDMツールです。
SPPM3.0という基本機能に、任意となるオプションを追加できます。
PCとモバイルに対応した新しいプランが「SPPM Seurity One」です。具体的なプランは以下のようになります。
| おすすめの方 | 月額(税込) | 機能 |
| IDやパスワード管理業務を効率化したい | 1,100円/ID | ・SPPM3.0(モバイル/PC端末管理) ・24時間365日緊急時操作代行 ・デバイス証明書 ・Secure SSO(シングルサインオン) ・クラウド電話帳 ・SPPM AI(文字起こし/要約) |
| パスワードセキュリティを強化したい | 2,310円/ID | 上記に加えて下記を追加 ・Secure MFA(ログイン時の複数認証) ・Secure LCM(認証情報を一元管理、一括変更) |
| クラウドセキュリティを全体的に強化したい | 3,960円/ID | 上記に加えて下記を追加 ・Secure EDR(脅威検知対応) ・Secure Filtering(法人向けWebフィルタリングサービス) |
SPPMは、MDMツールの資料請求数でNO.1を誇り、これまでに6,200社以上の導入実績があります。
また、SPPMでは30日間の無料試用期間を設けており、導入前に実際の機能や使い勝手を確認することが可能です。
mobiconnect

引用元:mobiconnect公式サイト
mobiconnect(モビコネクト)は、企業だけでなく学校・教育委員会でも導入されているMDMツールです。
直感的に操作できるUIUX(操作画面)が特徴で、サポートの回答速度や品質にも力を入れています。
企業向けプランは以下の3つです。
| プラン名 | 年額 | 機能 |
| エントリー | 1,980円/台 | ・端末紛失時対策 ・独自セキュリティ ・基本管理機能 ・IT資産管理/運用資産 |
| ベーシック | 2,640円/台 | 上記に加えて下記を追加 ・環境設定 |
| スタンダード | 3,300円/台 | 上記に加えて下記を追加 ・セキュリティ設定/監視設定 ・ファイル管理 |
※学校・教育委員会は別途見積もり
オンライン無料相談会や資料ダウンロードがあるので、興味ある方はそちらから試してみてください。
30日間の試用期間も用意されていて、始めやすくなっています。
AssetView MDMv4

引用元:AssetView MDMv4
AssetView MDMv4は、ユーザーが必要とする機能やサービスを選択できるMDMツールです。
提供されている15種類の機能やサービスの中から、企業のニーズに合ったものを選び、カスタマイズしたパッケージを作ることができます。
つまり、以下のような方には特に適したサービスです。
- MDMの機能の中で、自社に必要なものだけを選びたい方
- 予算に合わせて、最適な機能の組み合わせを作りたい方
- 事業の成長に合わせて、MDMの機能を柔軟に変更・拡張したい方
AssetView MDMv4は、パッケージ版とクラウド版の両方が用意されています。
パッケージ版は、自社のサーバーにシステムを導入するタイプで、よりカスタマイズの自由度が高くなります。
一方、クラウド版は、AssetViewが提供するクラウドサーバーを利用するタイプで、導入の手間が少なく、コストを抑えることが可能です。
また、金額や機能の詳細については、規模に応じて異なるため、AssetViewへ直接問い合わせることをおすすめします。
Jamf Pro

引用元:Jamf Pro
Jamf Pro(ジャムフプロ)は、iPhoneやiPadなどのApple製品に特化したMDMサービスです。
IT管理者の業務自動化とセキュリティの維持・強化を実現し、Appleの最新機能にも24時間以内に対応する「0デイアップデート」にも対応しています。
そのため、IT管理者の作業負担を大幅に軽減し、常に最新のセキュリティ対策を施したApple製デバイスの運用が可能です。
また、Apple専門のMDMであるため、画面操作が直感的にできるようになっています。
他社製品と比べて階層構造が複雑になりにくく、従業員や管理者にとってストレスになりません。
さらに、クラウドだけでなくオンプレミスにも対応しているため、自社の情報システムに合わせて組み込めます。
費用感が気になる方は直接、問い合わせましょう。
SOTI MobiControl

引用元:SOTI MobiControl
SOTI MobiControl(モビコントロール)は、世界174ヶ国、18,000社以上に導入されている、モバイルデバイス管理(MDM)ツールの世界的なリーダーです。
世界中の多くの企業に選ばれており、そのシェアは業界でトップクラスです。同ツールが高い信頼性と優れた機能を備えていることの証明と言えるでしょう。
このツールは、数千台から数万台規模の大量のモバイル端末を保有する企業において、アプリケーションの一括管理が可能です。
IT管理者は、個別の端末に対して手動でアプリケーションをインストールしたり設定したりする必要がなくなり、業務の効率化を進められます。
プランはSaasとオンプレミスの2つです。
- Saas:初期費用50,000円〜、ランニングコスト500円〜/台
- オンプレミス:初期費用200,000円〜、ライセンス費用 個別見積もり
※税抜表示
気になる方は、公式サイトから問い合わせましょう。
MDMのメリット

MDMを導入することで、セキュリティや生産性の向上、リスク管理の強化といった、モバイル端末を管理する上で様々なメリットを得られます。
以下では、MDMのメリットについて具体的に解説します。
セキュリティの向上
MDMを導入することで、モバイル端末の設定や制御を管理者側で統一・実行できるため、情報漏えいやウイルス感染に対するセキュリティを向上できます。
例えば、特定のアプリのインストールを禁止したり、端末紛失時には遠隔ロックして第三者の操作を禁止するといった制御が可能です。
社員のモバイル端末の私的利用や、外部の人間による端末操作といった、セキュリティリスクになる操作を未然に防ぐことで、重要な企業データの流出を防ぎます。
生産性の向上
モバイル端末を新しく導入する場合、必要なアプリのインストールや初期設定といったセットアップが必要です。
特に、企業規模が大きくなると場合によっては数千台のセットアップが必要となるため、膨大な数のセットアップを手作業で行う必要があり、コストやリソースを多く投入する必要がありました。
MDMでは、端末の初期設定や必要アプリのインストールをシステム側で自動化できる点がメリットです。
また、これらのセットアップ作業は複数端末でまとめて行えるため、セットアップ作業に人員を割り当てる必要がなく、生産性の向上や業務効率化が期待できます。
リスク管理の強化
MDMでは、端末の利用状況や操作ログを管理者側で閲覧できるため、不正利用につながる操作をいち早く検知・制御が可能です。
例えば、端末を紛失した時に、第三者による利用履歴が確認できたら遠隔で端末を初期化するといった操作が可能なため、セキュリティ事故が発生する確率を最小限に抑えられます。
また、GPSによる端末位置の特定により、紛失してしまった場合でも電源が入っていれば見つけられるため、資産の保護にもつながります。
このように、MDMを導入するとモバイル端末におけるリスク管理を全体的に強化できるという点がメリットです。
私的利用を抑止できる
MDMを導入することで、会社支給のモバイル端末の私的利用を効果的に抑止できます。
まず、MDMでは特定のアプリのインストールを禁止したり、アプリの利用を制限したりすることが可能です。
例えば、SNSアプリやゲームアプリなど、業務に不要なアプリを制限すれば、社員による私的利用を防ぐことができます。
もし不適切な利用が確認された場合、管理者は証拠を持って該当の社員に注意できます。
また、MDMではWebフィルタリング機能を使って、業務に関係のないWebサイトへのアクセスを制限することも可能です。
このように、MDMを導入することで、会社支給のモバイル端末が業務以外の目的で使用されるリスクを最小限に抑えられます。
MDMの課題

企業内のモバイル端末を一元管理でき、セキュリティの向上も期待できるMDMですが、導入にあたってデメリットが発生する可能性があります。
MDMの導入を検討する際には、以下で紹介するデメリットを考慮しておきましょう。
プライバシーへの配慮
MDMでは、端末情報の管理や管理者による遠隔操作など、モバイル端末の管理を効率化してくれますが、従業員のプライバシーへの配慮が必要です。
例えば、位置情報の取得による端末の特定や、リモートワイプ機能によって端末を操作されることで、企業側から監視されているように感じてしまい、モチベーションが低下するといったケースがあります。
特にBYOD端末(個人所有のモバイル端末の業務利用)を導入している場合、従業員個人の所有端末を管理・制御されることに対してより強い不満を抱く可能性があります。
コストとリソースの問題
MDMの導入には、モバイル端末の数と配布する従業員数に比例してコストが発生します。
企業規模が大きくなると管理する端末台数も増えていくため、導入前と比べてかえってコストがかかりすぎてしまう場合があるというデメリットもあります。
また、安全にMDMを運用していくためには、利用者への通知や教育も不可欠です。
そのため、導入コストだけではなく、MDMの使い方の研修やマニュアルの作成といった教育のためのコストもかかることを認識しておきましょう。
ユーザー体験への影響
MDMを利用することで特定アプリの使用を禁止したり、インストールできないような制御が可能なため、業務以外の私的利用を防ぐ点では便利です。
しかし、セキュリティに対する意識を高く持ちすぎて機能制限しすぎると、業務にとって必要な機能まで制限してしまい、かえって使いづらくなる可能性があります。
セキュリティ対策を行うことは大切ですが、業務の妨げにならない最低限のレベルでの制御を行うことをおすすめします。
MDMの導入手順

MDMをスムーズに導入するための手順を押さえておきましょう。
以下では、MDMシステム選定の選び方のポイントや、具体的なポリシーの設定内容、ポリシーの適用方法について解説します。
1.MDMシステムの選定
まずは、導入するMDMツールを選定するため、自社のモバイル端末利用における要件を洗い出し、要件に合った機能を提供しているツールをいくつかピックアップしていきます。
MDMツールの選び方のポイントとしては以下を参考にしましょう。
- 利用端末の台数、OS、接続エリアが対応しているか
- 自社のセキュリティレベルを満たす機能が提供されているか
- クラウド型かオンプレミス型か
これらの要件を洗い出すために、モバイル端末で行う業務の整理や、利用者数の確認など、社内の要望を含めてできるだけ具体的にしておくと、導入後のギャップの少ない製品を選定できます。
2.デバイス登録と設定
導入するMDMツールが決まったら、実際に導入を行うため、管理するモバイル端末の登録と設定を行います。
デバイス登録は一つひとつの端末を手作業で登録するのは非効率なため、MDMのテンプレート機能を利用します。
テンプレート機能は、初期設定やセキュリティ設定のひな形をあらかじめ設定しておき、モバイル端末をMDMに登録する際には同じ設定を複数の端末に配布できるため、設定対象の端末が多い場合に便利です。
また、各部署ごとに異なる初期設定を行いたい場合も、テンプレートを使い分けておくことで、導入作業もスムーズになります。
3.ポリシーの設定と適用
モバイル端末をMDMに登録した後は、適用するポリシーを設定し、各端末に適用していきます。
MDMのポリシーでは、セキュリティに関するものや端末の操作を制限するものまで様々な設定が行なえます。
ポリシーに設定する内容の具体例としては以下のようなものがあります。
- モバイル端末の接続先ネットワークの指定(Wi-fi接続 or 携帯キャリアのネットワーク)
- モバイル端末のパスワードポリシー(最低文字数、使用する文字列の組み合わせ指定など)
- 特定アプリやカメラなどのモバイル端末の機能制限
また、ポリシーの適用先デバイスもMDM内でグルーピングが可能で、営業部や技術部といった部署ごとにグルーピングしてポリシー適用することも可能です。
MDMを運用する企業のほとんどが複数部署での利用を想定しているため、部署毎の業務要件に合ったポリシーを設定・適用します。
4.MDMの運用と管理
MDMは導入して終わりではなく、継続的な運用と管理、利用ユーザーに対するサポート体制の確保などが必要です。安定的な運用を行うことで、MDM導入の効果を最大限発揮できるでしょう。
デバイスの監視と制御
MDMでは、あらゆるモバイル端末の情報を一元管理しているため、モバイル端末の利用状況の監視や、不正な操作が発覚した際の制御が行なえます。
例えば、特定の業務アプリがどのように使われているか、禁止されているアプリやサイトを使用していないかなどをモニタリングし、不正な操作が見つかった際には、端末の強制ロックやリモートワイプによるデータの初期化といった制御が可能です。
気軽に使えるモバイル端末ですが、情報漏えいも発生しやすいため、安全にモバイル端末を利用するためにMDMによる端末の監視と制御を行っていくことは重要です。
セキュリティの強化と脆弱性対応
MDMによりモバイル端末の操作履歴やアクセス履歴といった情報を収集できます。
しかし、ただ情報を収集するだけではなく、定期的な効果測定を行い、場合によってはセキュリティの強化や脆弱性対策を行うことも重要です。
近年ではフィッシングサイトやサイバー攻撃の手口も巧妙化しており、適切なセキュリティ対策を講じていないと、情報漏えいの危険性も少なくありません。
そのため、MDMの効果測定は運用の一環として必ず行うようにしましょう。
ユーザーサポートとトラブルシューティング
MDMを効果的に運用するためには、ユーザーのサポート体制と、問題が発生した場合のトラブルシューティングを行なえる環境が必要です。
MDMの導入当初は、ユーザーからさまざまな問い合わせが発生することが考えられます。
具体的な問い合わせ内容としては以下のようなものがあります。
- 基本的な操作方法が分からない
- 業務に必要なアプリがブロックされてしまった
- デバイスの定期的なアップデートやポリシー適用が上手くいかない
このようなトラブルが発生すると、業務自体がストップしてしまうことにもなりかねないため、MDMを運用する部門に問い合わせ窓口やトラブルシューティングできる環境を用意しておくことが大切です。
また、問い合わせ内容によっては、メーカへの確認が必要な場合もありますため、導入するMDMツールにサポート窓口があるか、24時間対応してもらえるかなども確認しておくと良いでしょう。
MDMツールの活用事例

便利な機能が多く搭載されているMDMですが、具体的な導入事例を知ることで、自社導入の参考となるでしょう。
以下では、MDMの導入事例について、3つのシーンに分けて解説します。
企業内デバイスの管理
ある企業では、企業規模が大きくなるほどモバイル端末の配布が多くなり、管理部門の作業工数が増えていくことが課題としてありました。
例えば、自社のセキュリティポリシーに従った設定を各端末に手動で設定していくため、インストールマニュアルの作成、設定後の確認などといった作業が端末毎に増えていきます。端末の設定作業も利用者に依存していたため、端末によって違う設定が行われているケースもありました。
MDMを導入してからは、モバイル端末の設定を一括で設定、ポリシー配信も全端末に対して自動で行えるようになり、企業内デバイスの管理工数を大幅に削減できました。
また、デバイスの状態もMDMより確認できるため、デバイスのポリシー適用状態や、OSアップデート状況といった情報も容易に把握できるようになり、全体的なデバイス管理の効率化を実現しました。
BYOD環境のセキュリティ強化

リモートワークが推進される現代において、個人所有のデバイスを業務用に利用するBYOD環境を採用している企業もあります。
BYOD環境では、従業員が使い慣れた端末で業務が行えるため、生産性の向上やコスト削減といったメリットがあります。
しかし、BYOD環境では仕事用だけではなくプライベート用でも利用することがあるため、ウイルス感染の危険性や、企業側の管理負担が増えるといった課題もありました。
そこで、BYOD環境においるセキュリティ対策として、MDMを同時に導入する企業が多くあります。
MDMを導入することで、BYOD端末の利用状況の把握や、紛失時の強制ロックといった対応が可能となり、BYOD環境におけるセキュリティを強化できます。
リモートワーク環境の運用支援
近年、働き方改革の一環として、リモートワークの普及が進んでいます。
企業は柔軟な働き方に対応するため、業務用としてモバイル端末の配布を行う一方で、リモートワーク特有の課題に対応できるMDMを導入するケースが増えてきました。
リモートワーク環境におけるMDMの使い方の一例としては以下があります。
- モバイル端末の紛失・盗難時には遠隔ロックや遠隔の端末初期化を利用し、情報漏えいを防ぐ
- OSのアップデートを全端末強制的に行い、古いOS利用によるセキュリティリスクの低減
- 利用アプリの制限を行い、社用端末の私物化を防ぐ
リモートワーク環境では、従業員一人ひとり使い方が異なり、情報漏えいのリスクも高まります。MDMの機能を用いることで、安全なリモートワークの運用を支援してくれます。
MDMのまとめ

テレワークによる場所を選ばない働き方が一般化し、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末の業務利用はますます増えていきます。
持ち運びできるモバイル端末は便利な反面、管理の煩雑さや紛失などによる情報漏えいといったセキュリティの懸念もあります。
そのため、モバイル端末を業務利用する際には、効率的な管理・セキュリティの向上が期待できるMDMツールの導入をおすすめします。
本記事で解説したように、MDMツールには、デバイス管理機能だけではなく、セキュリティ対策の機能や、アプリケーションの管理機能など様々なものがあります。
MDMツールを選定する際には、自社が本当に必要とする機能は何かを業務要件から洗い出しておくことが大切です。
自社の要件に合うMDMツールの選定に迷われた方は、株式会社Jiteraにぜひご相談ください。専門家による適切なアドバイスにより、貴社のMDM導入をスムーズかつ効率的に行えるでしょう。
