プログラミング言語の一種である「JavaScript(ES6)」は、WebサイトやWebアプリケーションの動的な動作を開発する際に使用されます。ES6を使用してプログラムすることで、WebサイトやWebアプリケーションに複雑な機能を搭載することが可能となります。
既に多くのエンジニアに使用されているES6ですが、その特徴や歴史、細かい機能の数々について知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、JavaScript(ES6)の基本情報や機能の詳細、前身のES5との違いや対応ブラウザ、トランスパイラについて解説いたします。JavaScript(ES6)に関する知識を深めたい方や、ES6の導入を検討している方は、今回の内容を参考にしてみてください。
新潟県出身。都内の某大学を卒業後、IT企業に就職。システム開発業務や運用保守業務に携わる。趣味は旅行と食事。写真は広島に旅行に行った際に食べたお好み焼き。
ES6の基本

まずは、JavaScript(ES6)の基本情報について解説いたします。WebサイトやWebアプリケーションの開発で使用されることが非常に多いJavaScript(ES6)には、どのような特徴があるのでしょうか。
こちらでは、ES6の概要やES6が登場した背景、ES6の主な機能について説明していきます。ES6に関する基本的な知識を深めたいとお考えの方は、こちらの内容を参考にしてみてください。
ES6とは何か?
プログラミング言語の一種であるJavaScript(ES6)は、WebサイトやWebアプリケーションの動的な動作を実現するために使用されます。ES6は、JavaScriptのバージョンの1つで、ECMAScript 2015とも呼ばれます。
ES6という名称は、JavaScriptの6番目のメジャーバージョンであることが由来で名づけられました。2015年リリース以来、何度かのマイナーアップデートが実施されています。
ES6でプログラムすることで、Webページ上でボタンをクリックした際に表示されるポップアップ画面や、ユーザーが画面をスクロールした際に表示される動的なコンテンツ、アニメーションやユーザーとのインタラクションなどを実現することが可能となります。
前バージョンのES5と比べても、シンタックスやオブジェクトが大幅に追加されており、よりモダンなコーディングを実現できます。
ES6は、Webページの双方向性を叶えるために、欠かせないプログラミング言語です。
ES6が登場した背景
JavaScriptはもともと、「LiveScript」という名称でしたが、当時流行していたSun Microsystems(現Oracle)のJava言語の知名度や人気にあやかり、JavaScriptという名前に変わりました。
名前に共通点があることから勘違いされることも多いのですが、JavaとJavaScriptには関連性がありません。しかし、名称を変更した甲斐あって、JavaScriptのユーザー数は一気に増加しました。
多くのユーザーを抱えることとなったJavaScriptは、その後様々な変遷をたどります。そのアップデートの一端がES6です。
ES6は前バージョンと比べると、大幅に改善が施され、多くの新機能が搭載されています。具体的には、letおよびconstキーワードによる変数宣言、アロー関数、クラス、モジュール、テンプレート文字列、分割代入などが含まれます。これらの機能は、開発者の効率的なコードの記述と保守性の向上を提供しています。
ES6はJavaScriptの更なる発展を後押しし、その後のECMAScript仕様の基盤となりました。現在も多くの開発者がES6を活用しています。
ES6の主な機能
ES6には様々な機能が搭載されています。特徴的な機能としては、以下の10点が挙げられます。
- ブロックスコープの導入 (letとconst)
 - アロー関数 (Arrow Functions)
 - クラス (Class)
 - テンプレート文字列 (Template Strings)
 - 分割代入 (Destructuring Assignment)
 - スプレッド演算子 (Spread Operator)
 - プロミス (Promises)
 - ジェネレーター (Generators)
 - モジュール (Modules)
 - MapとSet
 
それぞれの機能について詳しく解説していきます。
ブロックスコープの導入 (letとconst)
ES6ではブラックスコープが導入されました。これにより、letとconstという新しい変数宣言キーワードが導入され、変数の有効範囲が従来よりも細かくなり、より予測可能で安全なコードが書けるようになりました。letは再代入可能な変数を宣言し、constは再代入不可能な変数を宣言します。
ブラックスコープが導入されたことで、従来のvarを活用することで、発生していた問題を解決することができました。letやconstを用いることで、コードの可読性が向上し、意図しない変数の再利用や変更が防がれるようになりました。
アロー関数 (Arrow Functions)
ES6にて、アロー関数(Arrow Functions)という関数構文が導入されました。アロー関数を活用することで、従来の関数宣言よりも短く、シンプルな構文を実現することができます。
矢印のような記号「=>」を使って関数を定義することから、アロー関数と名づけられました。直観的なコーディングを実現したいときは、アロー関数を使用すると良いでしょう。
ただし、アロー関数と通常の関数とでは、thisの挙動が異なるため、注意が必要です。アロー関数では、関数が定義されたコンテキストのthisのが維持されます。これにより、コールバック関数内でのthisの問題を回避することができます。違いを把握して、ヒューマンエラーの回避に繋げましょう。
クラス (Class)
ES6では、クラスと呼ばれる新たなオブジェクト指向の機能が導入されました。クラス機能が導入されたことで、JavaScriptでは、直感的で構造化されたクラスベースのオブジェクト指向のプログラミングが実現しました。
ES6ではclassキーワードを使用してクラスを定義していきます。その後、constructorメソッドを呼び出し、初期化処理を実施して、クラス内でメソッドを定義していきます。
クラスを使用すると、オブジェクト指向プログラミングの概念に基づいたコードを書くことができます、クラスを使用することで、コードが構造的になり、理解しやすくなります。また、クラスは継承をサポートしているため、既存のクラスを基にして新しいクラスを作成することも可能です。コードの再利用性が高まるので、業務効率化にも有効です。
ほかにもクラスを用いることで、カプセル化やシンタックスシュガーを実現することができます。効率的で明確なコーディングを実施する際には、クラス機能を活用すると良いでしょう。
テンプレート文字列 (Template Strings)
ES6では、新しい文字列の構文が導入されました。そのうちの一つであるテンプレート文字列では、通常の文字列とは異なり、バッククォートを使用します。
テンプレート文字列では、${}内に変数や式を埋め込むことができます。これにより、文字列結合のために使用される+演算子などの通常の文字列連結よりも、可読性が高まります。また、複数行の文字列を簡単に表現することも可能です。
テンプレート文字列内で関数を呼び出し、その結果を文字列に埋め込むこともできます。テンプレート文字列は、文字列の組み立てや可読性の向上の点において非常に有効です。複雑な文字列操作やHTMLの生成を行う場合に役立てることをおすすめします。
分割代入 (Destructuring Assignment)
ES6の分割代入とは、配列やオブジェクトから値を取り出して、変数に代入する機能のことです。分割代入の機能を活用することで、コードを簡潔に記載することができます。
具体的には、配列の順序に合わせて対応する変数に値を代入したり、「,」を使用して未使用の要素をスキップすることが可能となります。
分割代入は、関数の戻り値や複雑なデータ構造から必要な情報を簡単に取り出す際に非常に役立ちます。コードの可読性を高めたい場合は、ぜひ活用してください。
スプレッド演算子 (Spread Operator)
スプレッド演算子は配列やオブジェクトなどの要素を展開して新しい配列やオブジェクトを生成するための構文です。スプレッド演算子は、関数の引数、配列の要素、オブジェクトのプロパティなどのコンテキストで使用されます。
スプレッド演算子は、…を使用して要素を新しい配列に展開します。また、関数の引数としても使用することができます。オブジェクトでスプレッド演算子を使用すれば、オブジェクトのプロパティを展開して新しいオブジェクトを生成できます。
スプレッド演算子は複製や結合などの場面で効果的に活用することができます。不変性を保ちつつデータを更新したり、関数の引数を柔軟に扱うことも得意です。複雑なコードを書くときには、スプレッド演算子を活用してみてください。
プロミス (Promises)
ES6のプロミスは、非同期処理の管理を改善するためのオブジェクトです。プロミスはコールバックベースの非同期コードが持つ問題を解決し、コードの可読性を向上します。
プロミスを使用することで、ネストされたコールバックを避け、コードを平易に保つことができます。.catch()キーワードを活用すれば、エラーを一か所で処理することも可能です。
.then()を使用して直列実行、Promise.all()で並列実行を実施するなど、非同期処理の制御も簡単に実行できます。複数の非同期処理を効果的に制御するには、プロミスの使用が有効です。
ジェネレーター (Generators)
ES6のジェネレーターは、非同期プログラミングや反復処理をより簡潔に書くための機能です。ジェネレータを使用することで、実行を一時停止し、再開することができます。
ジェネレーターでは、function*キーワードを使用して定義します。yieldキーワードを使用すると値が帰り、実行が一時停止されます。その後、next()メソッドが呼ばれると、一時停止した箇所からコードが再開され、次のyieldまで実行が進みます。
ジェネレーターは、非同期処理や大量のデータの生成に優れています。可読性が高く、メモリ効率が良いため、非同期処理のコードや反復処理のコードを扱う場面での活用をおすすめします。
モジュール (Modules)
ES6で導入されたモジュールは、従来のJavaScriptのモジュールシステムを大幅に改修したものでした。ES6のモジュールを活用することで、モジュールベースの開発を円滑に進めることができます。
モジュールの具体的な特徴の一つが、変数や関数の名前空間を整理することができるという点です。これにより、グローバルスコープの衝突や名前の重複を回避することができます。
また、モジュールを活用することで、特定の機能や処理を単一のファイルにまとめ、他の場所から容易に利用できるようになるため、コードの再利用性が高まります。
モジュールを使用すると、クラスや関数、変数をファイルごとにまとめることができるので、コードの管理を容易に行うことができます。大規模アプリケーション開発やコードベースで効果的に使用することができるので、JavaScriptを用いる開発では、モジュールの活用が一般的となっています。
MapとSet
MapとSetはES6で導入された機能です。Mapは、キーと値のペアを格納するコレクションです。通常のオブジェクトと異なり、任意のデータ型をキーとして使用することができます。要素の順序が保証されるため、コードの可読性が高まります。Setは、重複を引き起こさない値の集合を表すデータ構造です。データの重複を排除したり、ユニークな値の検索を行う際に使用されます。
MapとSetは、キーと値の関連付けや一意な値の管理が必要な場面で役立つデータ構造です。場面は特定されますが、従来のオブジェクトやデータ構造よりも優れた性能を発揮することも多いです。
ES6とES5の比較

ES6の前身であるES5は2009年にリリースされています。ES6のリリースまでに、およそ6年もの月日が経過していますが、両者の間には一体どのような差が生じたのでしょうか?
こちらでは、ES6とES5の比較を行っていこうと思います。ES5と比べ、ES6はどのような改善が行われたのかを分かりやすく解説していきます。ES6の特徴について詳しく知りたい方は、こちらの内容を参考にしてみてください。
ES6とES5の違い
ES6とES5の主な違いとして、以下の3点が挙げられます。
- 新しい構文の導入
 - 新しい変数宣言キーワードの導入
 - クラスの導入
 
まずは、新しい構文の導入について解説します。ES6では、アロー関数やテンプレート文字列、分割代入、クラス、スプレッド演算子、ジェネレーターなど、様々な新しい構文が導入されました。その中の1つであるアロー関数を活用することで、コードの記述量を大幅に削減することができます。
// ES5
var multiply = function(x, y) {
return x * y;
};
// ES6
const multiply = (x, y) => x * y;
上記の例において、ES5では関数宣言の方法として、匿名関数を利用した関数リテラルを使用しています。ES5では、関数リテラルのほかにも、通常のfunction命令やFunctionコンストラクターを用いることで、関数を宣言することができます。いずれの方法と比べても、アロー関数を用いた方が可読性が高まっていることは明らかです。
またES6では、変数宣言のキーワードとして、letおよびconstが導入されました。letやconstを活用することで、変数のスコープをより明確にし、再代入可能性をコントロールすることができます。letは再代入可能な変数を宣言し、constは再代入不可能な変数を宣言します。
// ES5
var counter = 0;
counter = 1;
// ES6
let counter = 0;
counter = 1; // 再代入可能
const pi = 3.14;
// pi = 3.15; // 再代入不可
上記のコードのように、ES5では再代入可能な変数を指定することが困難でした。ES6では変数について、手軽に細かく設定することができます。綿密なコーディングが必要な現場で、このような変数宣言キーワードは重宝されています。
ES6ではクラス機能が導入されました。それにより、オブジェクト指向的なプログラミングを実現できるようになりました。クラスを使用してコンストラクタやメソッドを定義し、継承やポリモーフィズムなどの概念を導入することができます。
// ES5
function Person(name, age) {
this.name = name;
this.age = age;
}
Person.prototype.sayHello = function() {
console.log(‘Hello, ‘ + this.name);
};
// ES6
class Person {
constructor(name, age) {
this.name = name;
this.age = age;
}
sayHello() {
console.log(`Hello, ${this.name}`);
}
}
上記のように、ES6ではES5に比べて、より階層的なコードを実現することができています。ES5ではprototypeを利用してクラス定義を実現していたので、class命令でクラスを定義できるES6は、利便性が向上したと言えるでしょう。
| ES5 | ES6 | 
| 関数リテラル・function命令・Functionコンストラクターで関数を宣言 | アロー関数で宣言 | 
| 変数宣言はverのみ、再代入に関する指定はできない | letとconstが追加され、再代入可能性がコントロール可能に | 
| prototypeを利用してクラスを定義 | class命令でクラスを定義 | 
ES6への移行
ES5からES6へ移行する際には、いくつかの注意点があります。
まず一つが、ベースコードを理解することです。どの機能がES6でサポートされているのかを把握しておかなければ、スムーズに移行することはできません。その後、BabelやTypeScriptなどのトランスパイラを使用して、ES5のコードをES6に変換していきましょう。トランスパイラを使用することで、新しい機能を利用しながら、古いブラウザで動かすことができるようになります。
ES6に移行した後は、アロー関数や新しい文字列操作機能、クラスやモジュールの活用方法を学びながら取り扱っていきます。複数の新たな機能を使いこなすことで、ES6の有用性を最大限に発揮することが可能です。
対応ブラウザとトランスパイラ

ES6を活用するには、対応ブラウザを正しく把握する必要があります。ES6を導入しても、ブラウザが対応していなければ使用することはできません。
こちらでは、ES6の対応ブラウザとトランスパイラについて解説していきます。
ES6対応ブラウザ
ES6は比較的新しいJavaScript機能や構文が導入されているバージョンであり、対応ブラウザは順次増えている状況です。対応済みの主要なブラウザとしては、以下が挙げられます。
- Google Chrome
 - Safari
 - Firefox
 - Microsoft Edge
 - Opera
 
Google ChromeやFirefoxなどのブラウザでは、ブラウザのバージョンが新しければ、ほぼすべての機能が活用できる状況となっています。ただし、旧バージョンのMicrosoft EdgeやSafariでは、一部機能のサポートが実現していないこともあるため、注意が必要です。
ES6の機能ごとに対応ブラウザを調べたい場合には、参照のサイトを利用してみてください。
ES6のブラウザ対応状況については、現在も対応拡大中なので、お使いのブラウザに対応しているかどうかは、最新の情報を確認してみると良いでしょう。
トランスパイラとは
トランスパイラとは、とあるプログラミング言語で書かれたプログラムを、別の言語に変換するソフトウェアで、「トランスレータ」と「コンパイラ」を組み合わせた造語です。トランスパイラは、JavaScriptにおいて、主にES6のバージョンを変換するために使用されます。
例えば、ES6の最新の構文や機能に対応していないブラウザを使用していた場合にも、トランスパイラを使用することで、新しい構文をサポートするブラウザと古いブラウザの双方で動作するコードに変換することも可能です。
トランスパイラはES6の利便性を高める機能の一つです。JavaScriptを使用してプログラムするときは、ぜひ活用してみてください。
ES6のまとめ

今回は、プログラミング言語の一種であるJavaScriptのバージョンの一つの「ES6」について解説していきました。ES6の登場により、JavaScriptは機能性をさらに高め、その有用性から多くのユーザーを獲得しました。
ES6に対応するブラウザは現在も拡大しています。現在お使いのブラウザも、ES6に対応しているかもしれません。WebサイトやWebアプリケーションの開発を行うときは、ぜひES6を活用してみてください。
また、ES6の導入を検討されている方や、ES6についてより深く知りたいとお考えの方は、ぜひ一度実績豊富な株式会社Jiteraにご相談ください。貴社の要件に対する的確なアドバイスが提供されると期待できます。
