Webシステム開発の世界には多様な技術が存在しているため、これらを一つ一つ理解しようとしていくと膨大な時間と労力がかかります。特にJavaの世界では、Servlet(サーブレット)とJSP(JavaServer Pages)が重要な役割を担っています。
この記事では、サーブレットが何なのかその基本的な特徴やメリット・デメリット、そしてJSPとの違いをわかりやすく解説していきます。
初心者から中級者まで、JavaのWeb開発に関心があるすべての方に役立つ内容となっておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
サーブレットの基本
サーブレットの基本について理解するためには、まずその本質と機能を把握することが重要です。
サーブレットはJavaを使用してWebサーバー上で動作するプログラムであり、クライアントからのリクエストに応じて動的なWebページを生成したり、データを処理したりする役割を担います。
例えばサーブレットを活用すれば、ECサイトではユーザーの閲覧履歴に基づいて推奨商品を表示するなど、個々のユーザーに合わせたページを提供することが可能です。
ここでは、サーブレットとはそもそも何なのかを特徴とともに解説していきます。
サーブレットとは何か?
サーブレットは、Java言語を使用してWebサーバー上で動作するプログラムの一種です。これは、クライアントからのHTTPリクエストに応じて動的なWebページを生成したり、データを処理したりする役割を担います。
サーブレットはWebアプリケーションのバックエンド側で動作し、クライアント側のリクエストに基づいてサーバー上で様々な処理を行います。
サーブレットの主な役割は、動的なコンテンツの生成です。
静的なHTMLページと異なり、サーブレットを使用することでユーザーのリクエストやアクションに応じてリアルタイムでページ内容を変更することが可能になるため、ユーザーの行動や設定に基づいてカスタマイズされた操作を提供することができます。
サーブレットはサーブレットコンテナ(例:Apache Tomcat)上で実行され、このコンテナがHTTPリクエストを受け取り、適切なサーブレットに処理を委ねます。
サーブレットはGETやPOSTなどのHTTPメソッドに基づいて異なる動作を行い、クライアントに対して適切なレスポンスを返します。
この柔軟性と機能性により、サーブレットは多くのWebアプリケーションの開発で中心的な役割を果たしているといえるでしょう。
サーブレットの特徴
効率的なライフサイクル管理
サーブレットは一度ロードされるとメモリ内に常駐し、複数のリクエストに対して迅速に応答することができるため、リクエストごとにプログラムを起動する必要がなく、パフォーマンスの向上が図れます。
また、セッション管理機能を通じてユーザーごとの状態を保持し、パーソナライズされたユーザーエクスペリエンスを提供することも可能です。
マルチスレッドに対応
サーブレットはマルチスレッドにも対応しているため、同時に複数のリクエストを効率的に処理することができます。
これにより、高トラフィックの状況でも安定したパフォーマンスを維持してユーザーに応答時間の短いサービスを提供することが可能となっています。
マルチスレッドの対応は、特に大規模なWebアプリケーションや多数のユーザーが同時にアクセスする環境において重要な機能です。また、サーブレットはプラットフォームに依存しないJava言語で書かれているため、異なるオペレーティングシステムやハードウェア環境での互換性が高いという特徴があります。
そのため、開発者は特定のプラットフォームに縛られることなく、幅広い環境でサーブレットを利用することができます。
機能の追加や拡張を簡便化
既存のシステムにサーブレットを追加することで新しい機能を簡単に統合し、アプリケーションの機能を柔軟に拡張することが可能です。
このモジュール化も大規模なアプリケーション開発において有効です。
サーブレットのメリット
サーブレットはJavaをベースにしたWebアプリケーション開発のための強力なツールです。
ここでは、サーブレットの主なメリットを掘り下げ、それらがどのようにWebアプリケーションの開発に影響を与えるかを詳しく解説していきます。
モジュール化されている
サーブレットの最大のメリットの一つは、そのモジュール化された構造です。
サーブレットは独立したモジュールとして機能して特定の機能を担当するため、開発者は特定の機能やサービスをサーブレットとして切り分け、再利用可能なコンポーネントとして組み込むことができます。
例えば、ユーザー認証やデータベースへのアクセスなどの共通機能をサーブレットとして開発し、異なるアプリケーションで再利用することが可能です。
このようなモジュール化によって開発の柔軟性が高まり、コードの再利用による効率化が可能となります。
ライフサイクルの管理ができる
サーブレットは、ライフサイクルを効率的に管理する能力を持っています。
サーブレットが一度ロードされるとメモリ上に常駐し、続くリクエストに対して迅速に応答することができます。
そのため、各リクエストに対してサーブレットを毎回ロードする必要がなくなり、処理速度が向上します。
また、セッション管理機能を通じてユーザー固有の情報を保持することができるなど応用の幅が広いです。
このライフサイクル管理は、特に大規模なアプリケーションや高トラフィックの環境でその価値を発揮するといえるでしょう。
プラットフォームに依存していない
Javaベースのサーブレットは、プラットフォームに依存しないという重要な特徴を持っています。
これは、Windows、Linux、macOSなど、異なるオペレーティングシステム上で同一のサーブレットが動作することを意味します。
このプラットフォーム独立性により、開発者は特定の環境に縛られることなく幅広いデプロイメントオプションを持つことができるでしょう。
また、Javaのポータブルな特性によってサーブレットは異なるサーバー環境間で容易に移植可能なため、アプリケーションのスケーラビリティと可搬性が大幅に向上します。
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サーブレットのデメリット
サーブレットはJavaベースのWebアプリケーション開発において多くのメリットを提供していますが、一部のデメリットも存在します。
これらのデメリットは、特に特定の開発環境において影響を及ぼす可能性があるといえるでしょう。
Javaの実行速度の遅さ
Javaはインタプリタ言語であり、コンパイルされたネイティブコードと比較して実行速度が遅いという課題があります。
サーブレットはJavaで書かれているため、この実行速度の問題も引き継いでしまっています。
特に、リアルタイム性が求められるアプリケーションや高速な処理が必要なシステムでは、この遅延は顕著になる可能性がありるでしょう。
しかし、JavaのJITコンパイラのような技術により実行速度は日々改善されており、サーブレットのメモリ常駐特性により、一度ロードされた後の処理は比較的高速となっています。
サーブレットに対応したISPが少ない
国内において、サーブレットをサポートするインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)は限られています。
これは、個人開発者や小規模なプロジェクトにとっては大きな障壁となり得ます。
サーブレットを利用したアプリケーションを公開するためには、サーブレットをサポートするホスティング環境を見つけるか、自身でサーバー環境を構築する必要がありますが、これは初心者や小規模な開発チームにとっては追加のコストや技術的な負担がかかってしまうでしょう。
サーブレットを専門とする開発者不足
ITエンジニアが不足している昨今の日本では、そもそも母数が少ない現状です。
その中でも、基幹システムや大規模システムに昔から使用されてきたJavaよりもAIを活用できるPythonなどの言語の方が人気を博していることもあり、Javaの中のさらに特定の領域であるサーブレットを専門とする経験豊富な開発者は十分にはいないといえます。
そのため、複雑なサーブレットベースのアプリケーションを開発する場合に、適切な専門知識を持つ開発者を見つけることは、プロジェクトの成功においては非常に重要な要素となるでしょう。
この技術者不足はプロジェクトの進行速度や品質に影響を与える可能性があるため、システム開発の際は様々な角度から技術面や運用面を考慮していく必要があります。
サーブレットとJSPとの違い
JSPとは何か?
JavaServer Pages(JSP)はJavaをベースにしたサーバーサイドの技術で、動的なWebページを生成するために使用されます。
JSPの主な特徴
JSPの大きな特徴は、HTML内にJavaコードを埋め込むことでサーバー側で動的なコンテンツを生成し、それをクライアントに送信できる点です。これにより、ユーザーのリクエストに応じて変化するWebページを簡単に作成することができるでしょう。
JSPは、主にプレゼンテーション層に焦点を当てており、HTMLコードの中にJavaコードを埋め込むことでWebページの動的な部分を処理していきます。
例えば、ユーザーがリクエストするとサーバー上のJSPファイルが実行され、Javaコードが処理された結果がHTMLとしてクライアントに返されるため、同じページでもユーザーや状況に応じて異なる内容を表示することが可能になります。
JSPのメリット
JSPの利点は、Web開発者がJavaの詳細な知識なしに動的なWebページを容易に作成できることでしょう。
HTMLに慣れている開発者でもJavaコードを簡単に組み込むことができ、複雑なバックエンドの処理を進めながらフロントエンドの開発にも集中できます。
また、JSPはサーブレットと密接な関係で、サーブレットが主にバックエンドのビジネスロジックを処理するのに対し、JSPは主にフロントエンドの表示ロジックを担当しています。
サーブレットとJSPの比較
特徴 | サーブレット | JSP |
主な用途 | ビジネスロジックとデータ処理 | ユーザーインターフェースと表示ロジック |
記述方法 | Javaコードのみ | HTML内にJavaコードを埋め込む |
実行環境 | サーバーサイド | サーバーサイド |
コーディング | Javaプログラミングに重点 | HTMLに重点、Javaコードは埋め込み |
開発の容易さ | Javaの知識が必要 | HTMLの知識が主体、Javaは部分的 |
処理の流れ | リクエストに応じてJavaクラスが動作 | リクエストに応じてページが生成 |
再利用性 | 高い(モジュール化されたコード) | 中程度(ページ単位での再利用) |
パフォーマンス | 高速(コンパイル済みのJavaクラス) | やや遅い(ページ要求ごとにコンパイル) |
上記の表からわかるように、サーブレットとJSPはそれぞれ異なる目的と特性を持っています。
サーブレットは主にビジネスロジックとデータ処理に焦点を当てており、サーバーサイドでの複雑なデータ操作やビジネスルールの実行に適しています。
サーブレットは純粋なJavaコードで記述されており、一度コンパイルされると高速に動作するため、サーブレットは再利用性が高く、パフォーマンスにも優れています。
一方、JSPはユーザーインターフェースと表示ロジックに特化しています。
HTMLページにJavaコードを埋め込むことで動的なWebページを容易に作成できるため、主にページのレイアウトやデザインに関連する作業に適しており、HTMLに慣れている開発者にとってはよりアクセスしやすい形式となっています。
ただし、JSPはリクエストごとにコンパイルが必要なため、サーブレットに比べるとパフォーマンスは若干劣る場合があります。
まとめ
この記事では、ava Servlet(サーブレット)とは何かを初心者でもわかりやすいように解説してきました。
Webシステム開発において、Java Servlet(サーブレット)とJSP(JavaServer Pages)は重要な役割を果たしています。
サーブレットは動的なWebページの生成、データ処理、セッション管理などを行い、Webアプリケーションのバックエンド側で動作します。
サーブレットはメモリ上に常駐し、マルチスレッド対応で効率的なライフサイクル管理が可能ですが、Javaの実行速度の遅さやISPの対応不足などのデメリットもあります。
一方、JSPはHTML内にJavaコードを埋め込み、サーバー側で動的なコンテンツを生成するツールです。
JSPは主にプレゼンテーション層に焦点を当て、HTMLページの中にJavaコードを埋め込む形式を取ります。
サーブレットとJSPは異なる目的と特性を持ちますが、その特性を補うために連携して使用されることが多いため、これからjavaを使用した開発現場へのアサインを考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
システム開発全般に関して何かお悩みの方は、経験と知識が豊富なJitera社に一度ご相談してみてはいかがでしょうか。