さまざまな人や企業が交流・取引する場(プラットフォーム)を提供する事業モデルであるプラットフォーム事業。eコマース、SaaS、マーケットプレイスなど、インターネットの普及により市場は拡大しています。
現代ビジネスに欠かせないプラットフォーム事業について、基本概念から具体例、展望までをわかりやすく説明します。
事業を検討されている方に役立つ情報を具体的に解説していますので、ぜひ最後までお読みください。

小中規模プロジェクトを中心にSEやコンサルとして活動。クラウド導入やスタートアップ、新規事業開拓の支援も経験しました。
プラットフォーム事業とは
プラットフォーム事業(プラットフォーム・ビジネス)とは、さまざまな人々や企業が相互に交流したり、商取引をしたりするためのプラットフォームを提供するビジネスモデルです。相互作用を容易にすることで、新たな価値を創出していきます。
主なプラットフォーム事業の形態には以下のようなものがあります。
- マーケットプレイス
- アプリプラットフォーム
- クラウドソーシング
- シェアリングエコノミー
- SNSプラットフォーム
プラットフォーム事業者は、サービスの利用料や手数料、広告収入などで収益を上げています。需要と供給をマッチングさせるプラットフォームの存在が、新しいビジネスモデルの創出や効率化につながっています。
プラットフォーム事業における4つの要素
これらの4つの要素がすべて連携して機能することで、プラットフォームは価値を最大化し、収益を上げることができます。プラットフォーマーは常にこれらの要素を分析し、戦略的に設計、改善を重ねていく必要があるのです。
要素 | 定義 | 役割 | 重要性 |
プレイヤー | 需要側(消費者・企業)と供給側(事業者・個人)の2つの利用者グループ | 商品・サービスの需要と供給を担う | 両者のニーズを的確に捉え、効果的にマッチングする |
価値単位 | プラットフォーム上で交換される価値のあるモノやサービス(商品、サービス、データ、金銭など) | 取引の対象となる | 明確に定義し、円滑な取引を可能にする |
フィルター | 適切な価値単位を見つけやすくする仕組み(検索機能、レビュー、ランキング、AI推薦など) | 需要と供給のマッチングを支援 | マッチング精度を高め、ユーザー体験を向上させる |
インフラ | プラットフォームの基盤(WEBサイト、アプリ、決済システム、物流網、データセンターなど) | プラットフォームの機能を支える | 安全性、使いやすさ、拡張性を確保し、価値と収益に直結 |
それでは詳しく解説します。
プレイヤー
プラットフォーム事業には必ず2つの利用者グループが存在します。
1つは需要側で、商品やサービスを求める消費者や企業などのユーザーです。もう1つは供給側で、実際にその商品やサービスを提供する事業者や個人などのユーザーです。
プラットフォーマーは、この需要側と供給側の両方のニーズを的確に捉え、効果的にマッチングさせる必要があります。
価値単位
プラットフォーム上で需要側と供給側の間で交換される価値のあるモノやサービスのことを価値単位と呼びます。
代表的な価値単位としては、物理的な商品、サービス、データ、金銭などのことです。
プラットフォーマーは、この価値単位を明確に定義し、取引を円滑に行えるようにする必要があります。
フィルター
プラットフォームには多数の価値単位が流通するため、需要側が望む適切な価値単位を見つけやすくするフィルタリングの仕組みが重要です。
具体的には、検索機能、レビューやランキングシステム、AIやアルゴリズムによる推薦機能などがフィルターとしての役割を果たします。
フィルターが適切に機能することで、需要と供給のマッチング精度が高まります。
インフラ
プラットフォームの基盤となるのがインフラです。WEBサイトやアプリ、決済システム、物流網、データセンターなどのハード・ソフトインフラのことです。
安全で使いやすく、拡張性の高いインフラを構築することが、プラットフォームの価値と収益に直結します。インフラを最適化し、絶えず進化させていく必要があります。
プラットフォーム事業が活用できるビジネス
プラットフォーム型ビジネスは非常に幅広い業界で活用されており、新しいマッチングの仕組みを生み出すイノベーションとなっています。
市場のニーズを満たすための戦略を立てる上での参考にしてください。
ECサイト
ECサイトでは、サイト上に出品者と購入者を集め、商品の需給をマッチングするプラットフォームを提供しています。
Amazonをはじめとする大手ECモールは、出品者(供給側)と購入者(需要側)の取引の場を提供するプラットフォームです。
価値単位は商品自体です。検索やカテゴリ分け、レビュー評価などのフィルター機能で商品選択を支援しています。
物流インフラも自社で整備し、スムーズな商品移動を実現しているプラットフォームが多いです。また、会員制でロイヤリティプログラムも運営していることも特徴です。
フリーマーケットアプリ
フリーマーケットアプリは、個人間の中古品売買を仲介するC2Cマーケットプレイスです。
代表例はメルカリやラクマで、個人がアプリ上で新品・中古品を簡単に売買できます。
アプリが価値単位の出品情報、取引情報をプラットフォーム上で一元管理。安全な個人間送金の仕組み、商品の匿名配送システム、メッセージ機能など、個人取引をサポートするインフラを提供しています。
ライドシェアサービス
UberやGO、S.RIDEなどが代表例で、運転手と乗客の需給マッチングを行います。
運転手(供給側)と配車を求める利用者(需要側)をリアルタイムでマッチングさせています。
配車アプリ上でGPSを活用した最適ルート配車、料金の自動計算などの機能を備えています。
価値単位は移動そのものです。リアルタイム配車システムや、キャッシュレス決済、レビューなどの仕組みでサービスを支えています。
SNS(ソーシャルメディア)
Facebook、Twitter、InstagramなどのSNSもプラットフォーム事業の一種です。
投稿者(供給側)と閲覧者(需要側)の需給をマッチングしているプラットフォームとして位置づけられています。
価値単位はユーザーが生成するコンテンツです。リアルタイムフィード、人気投稿ランキング、検索機能などでコンテンツを参加者間で共有しやすくしています。広告収入がメインの収益源です。
オンライン学習プラットフォーム
オンライン学習プラットフォームとは、講師(供給側)と受講者(需要側)をマッチングするプラットフォームです。
代表的なものとして、UdemyやSchooなどが挙げられます。。
価値単位は講師の動画講座コンテンツです。コンテンツの分野、価格、レビュー、人気ランキングなどでフィルタリングされ、受講者は自分に合った講座を見つけやすくなっています。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、プロジェクト実行者(供給側)と支援者(需要側)の需給マッチングプラットフォームです。
CAMPFIRE(キャンプファイアー)やMakuake(マクアケ)が代表例です。
プロジェクト情報を一元管理するプラットフォームとして機能し、支援者と支援を求める側の需給をマッチングさせています。
価値単位はプロジェクト自体で、達成度合いなどの情報が提示されています。案件の検索機能やカテゴリ分類などのフィルターがあり、支援者はプロジェクトを発見しやすくなっています。
スキルシェアサービス
スキルシェアサービスでは、発注者(需要側)とフリーランスのようなスキルワーカー(供給側)をマッチングしています。
クラウドワークスやLancersなどのサービスが代表的です。
価値単位はスキルワークそのものです。
発注者とフリーランスの案件情報の公開、レビューシステム、決済インフラなどを提供しています。案件内容の検索や、スキルワーカーの実績・評価などでフィルタリングされ、案件とワーカーのマッチングを促進しています。。
マッチングアプリ
マッチングアプリは、男女の利用者(需要側と供給側)同士の人間関係のマッチングを提供するプラットフォームです。
代表的なものはPairsやTinderです。出会い系アプリのように、個人の人間関係の需給をマッチングしています。
価値単位は人間関係そのものです。プロフィールの内容で検索できるほか、近くにいる利用者の表示、相互の気になる人リストアップなどでフィルタリングされ、マッチングが図られます。
フードデリバリーサービス
フードデリバリーサービスでは、飲食店(供給側)、配達員(供給側)、利用者(需要側)の3者をマッチングさせるプラットフォームを提供しています。
代表例はUber eatsや出前館が挙げられます。価値単位は飲食物の配達サービスです。
GPSを活用した最適なドライバー配車、決済のキャッシュレス化、配達状況の追跡などのインフラが整備され、スムーズな3者の需給調整が実現されています。
シェアオフィス
シェアオフィスは、オフィススペース(供給側)と起業家・フリーランスなどのスペース需要者(需要側)のマッチングプラットフォームを提供しています。
代表例はWeWorkやリージャスグループが挙げられます。価値単位はオフィススペース自体です。
空室情報の一覧表示、検索やエリア指定などでスペースが発見しやすくなっています。また利用者コミュニティのSNSなども提供されています。
プラットフォーム事業のメリット
プラットフォーム事業は、ビジネスの世界で急速に成長しています。どのようなメリットが享受できビジネスチャンスを生むかを解説していきます。
市場範囲の拡大ができる
プラットフォーム事業は、従来のビジネスモデルでは手の届かなかった広範な市場での活動ができるようになりました。
地理的な制約が緩和されて全国や全世界を市場にしたり、新しい市場の傾向や多様な消費者の行動に対応して新たな顧客層を開拓したりできます。
迅速かつ柔軟に変化へ対応でき、ビジネスを優位に推進させられます。
ネットワーク効果によって価値が増える
より多くの事業者や顧客が集まることで、提供される商品(物やサービス)の価値がさらに高くなります。これは「ネットワーク効果」と呼ばれる概念です。
プラットフォームが成長すると、ビジネスパートナーや開発者が参加して環境が充実するため、顧客の幅広いニーズに応えられるようになります。
データの収集や分析によって市場の動向を把握でき、マーケティング効率も上昇します。プラットフォーム事業で収益拡大をするには、ネットワーク効果の最大化がポイントです。
顧客との直接的な関係の構築ができる
事業者は顧客と直接関われるようになります。顧客からの情報は市場の動向を知るために貴重であり、商品の改善や開発に役立ちます。
集めた顧客のデータからは購買行動やニーズを分析し、ターゲットに合わせたマーケティングや顧客体験の向上に活用できます。
利用者データの収集・分析を通じて顧客との長期的な関係を築き、ロイヤリティを高めていくことが可能です。
プラットフォーム事業のビジネスモデル
プラットフォーム事業で収益を上げる方法は、そのビジネスモデルによって異なります。プラットフォーム事業でよく使われるビジネスモデルを分かりやすく解説します。
手数料課金モデル
手数料課金モデルは、プラットフォーム上での取引ごとに一定の手数料を取る方法です。
取引の量が増えれば増えるほど収益も増加するため、活動が活発な市場では特に効果的なビジネスモデルといえます。
手数料課金モデルを成功させるためには、手数料の設定が重要です。
高すぎると売り手や買い手を失う可能性があり、逆に手数料が安すぎると収益が不十分になります。市場の競争状況などを考慮して適切な手数料を設定することが求められます。
フリーミアムモデル
フリーミアムモデルは、基本的な機能を無料で提供し、高度な機能や追加サービスを有料で提供するビジネスモデルです。
初期段階で多くのユーザーを集め、その中から特定の機能やサービスに魅力を感じるユーザーを有料版へと誘導します。
無料版と有料版とのサービスのバランス、ユーザーが有料版へ移行するための動機づけ、フィードバックの活用などを考慮して運用することが重要です。
月額課金モデル
月額課金モデルは、定期的に一定の料金を支払うことでサービスを利用できるシステムです。
このモデルでは、収益の予測が容易になるという特徴があります。サブスクリプションサービスや会員制プログラムでよく採用されています。
定期的なコンテンツの更新や機能の改善といった継続的な価値提供、顧客ニーズへの対応、フィードバックに基づくサービスの改善などを考慮して運営することが重要です。
従量課金モデル
従量課金モデルは、利用者が実際に使ったサービスやリソースの量に応じて料金を支払う方式です。
このモデルでは、利用者が必要な分だけの料金を支払う公平なシステムとして、特にデータ重視のサービスに適しています。
効果的に運用するためには正確な計測と透明性ある料金体系が必要です。予想外の高額請求を防ぐ安全対策や市場の動向に基づく料金体系の調整をすることで、収益性と顧客満足度の両方を高めることにつながります。
具体的なプラットフォーム事業例
プラットフォーム事業には企業向けと消費者向けがあります。
ここでは、国内中小企業や起業家に直接的に関連して直面する市場環境を反映した具体的として、日本国内の消費者向けプラットフォーム事業の具体例を紹介します。それらのビジネスモデルの機能と成功要因を解説します。
楽天市場
楽天市場は日本最大級のECモールです。小売業者にオンライン販売の場を提供し、消費者には豊富な商品を用意しています。
収入源は主に出店手数料と広告収入です。楽天ポイントのようなロイヤルティプログラムで顧客の継続利用を促進しています。
幅広い商品ラインナップ、使いやすさ、商品情報の充実、レビューシステム、決済の簡便さなどでユーザーに良好な購買体験を提供しています。定期的なセールやキャンペーンで顧客の関心を惹きつけています。
また、販売者へのマーケティング支援や成長支援を行い、プラットフォーム全体の発展にも寄与しています。
楽天市場は顧客と販売者の両方に価値を提供することで成長を遂げ、今後も革新的サービスと顧客体験の向上が期待されています。
メルカリ
メルカリはフリーマーケットアプリです。使いやすさ、安全性、効果的な収益モデルが成功の要因です。
直感的なUIで手軽に出品・購入でき、幅広い年齢層が利用しています。匿名配送とセキュリティ対策で安全な取引環境を実現しています。
収益源は取引手数料で、利用者増加に伴い収益も増加するビジネスモデルです。
広告やソーシャルメディア、口コミを活用した新規ユーザー獲得と既存ユーザーのエンゲージメント向上に注力しています。こうした取り組みでCtoC市場で高い評価を得ています。
ワールド
ワールドはオムニチャネル戦略でオンライン・オフライン統合したショッピング体験を提供します。
実店舗、オンラインストア、アプリなどの複数チャネルで一貫した顧客体験ができます。オンラインで選び店舗で試着、逆に店舗で見て自宅で購入、といった行き来が可能です。
オンライン・オフラインデータを活用し、マーケティング、在庫管理、需要予測、パーソナライズされたプロモーションを実現しています。
オムニチャネルによりデジタルとリアルの境界をなくし、利便性と体験を融合した新しい購買体験を生み出しています。

Jiteraは、プラットフォーム事業の立ち上げから運営まで、幅広くサポートいたします。
- 市場調査と競合分析に基づく最適なプラットフォーム戦略の立案
- AI技術を活用した効率的なプラットフォーム開発とカスタマイズ
- ユーザーエクスペリエンスを重視したUI/UXデザインの提供
- データ分析による継続的なプラットフォーム改善とビジネス成長支援
専門家チームが、設計から開発、運用、改善までのすべての段階で企業をサポートし、競争優位性のあるプラットフォームを構築します。
データ分析とユーザーフィードバックに基づいた継続的な改善により、ユーザーエンゲージメントの向上と収益の拡大を図ります。
プラットフォーム事業で成功を目指すなら、ぜひJiteraにご相談ください。
今すぐJiteraに無料相談する
プラットフォーム事業のデメリットと対策
プラットフォーム事業には、競争の激化、プラットフォームへの依存リスク、管理と運営の複雑化などの問題点もあります。それぞれへの対策も紹介します。
競争が激化している
プラットフォーム市場が成長するにつれ、競争はより激しくなり優位性を確立することが難しくなります。
事業者は自社の商品に独自性を持たせた差別化を図ることが重要です。
市場調査に基づいて迅速に市場の変化に対応し、顧客のニーズに合わせた商品を開発したり効果的なマーケティング戦略を立てたりすることが対策となります。
新しい技術の進歩やトレンドに迅速に対応することで競争で優位に立てるでしょう。
プラットフォーム依存のリスクがある
1つのプラットフォーム事業に集中しすぎると、ルールの変更や市場の動きによってビジネスに大きな影響が出かねません。
複数のプラットフォームで事業を展開することで、リスクを分散させて他のプラットフォームで事業を継続できます。
また、事業モデルを多様化させて複数の収入源を作ることで、市場やプラットフォームの変動によるリスクを軽減できます。
これらの対策をし、事業の安定性と成長の可能性を高めることが大切です。
管理と運営が複雑
プラットフォーム事業が大きくなるにつれて、管理と運営は複雑になります。より効率的で分かりやすいシステムの採用が重要です。
詐欺や不正な勧誘といった問題に対応するためには、信頼性の高い認証システムや取引の監視メカニズムが必要です。最新のセキュリティ技術を導入し、定期的な監査や侵入テストでセキュリティのリスクを最小限に抑えられます。
法規則への対応も重要です。個人情報の保護方針、利用規約、知的財産の管理など、法律の専門家の意見を定期的に聞くことが望ましいです。
これら対策により、管理や運営をスムーズにできます。
まとめ:プラットフォーム事業で新しいビジネスを創出
プラットフォーム事業の基本からその多様な形態、ビジネスモデルに至るまでを解説しました。
プラットフォームを理解してビジネス戦略に取り入れることで、市場での成功の可能性を大きく高められます。
プラットフォーム事業は、今後もビジネスの世界で大きな動きを見せることが予想されます。常に最新のトレンドに注意を払い適応することが成功への鍵です。常に市場の動きを注視して新たなビジネス機会を見極めることで、ビジネスはさらに発展していくでしょう。
株式会社Jiteraはデジタルコンサルティングのスペシャリスト集団です。プラットフォーム事業について質問や相談がある場合は、お気軽にJiteraへご連絡ください。