エッジAI(Edge AI)は、近年注目されている技術の1つで、AI(人工知能)の処理をネットワークの端末機器(エッジデバイス)で行うことが特徴です。
これにより、インターネットに常時接続されている必要がなく、リアルタイムでの処理が可能となります。
農業での作物監視や災害時の緊急対応など、インターネットアクセスが困難な状況下でもAIの力を活用可能です。
本記事では、エッジAIの概要、そのメリットとデメリット、そして活用事例について詳しく説明します。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
エッジAI(Edge AI)とは?
エッジAI(Edge AI)とは、ネットワークの端末機器(エッジデバイス)に搭載されたAIのことです。学習したデータをクラウドに送ることなく、端末で即時に処理することができるのが特徴です。
たとえば、農業においては、エッジAIを使って作物の監視を行うことができます。具体的には、エッジデバイスに搭載されたカメラが作物の状態をリアルタイムで監視し、病気や害虫の発生を即座に検知して、農家に通知します。これにより、早期対応が可能になり、作物の健康を保つことができます。
また、災害時の緊急対応にもエッジAIは有効です。災害発生時に、エッジデバイスが被害状況を即時に分析し、必要な対応を迅速に決定することで、人命救助や被害の軽減に役立ちます。
エッジAIはこのように、リアルタイムでの判断が必要な場面で大いに力を発揮します。
エッジAIの活用により、従来のシステムよりも迅速かつ効率的に対応できる場面が増えてきています。
エッジAIとクラウドAIの違い
特徴 | エッジAI | クラウドAI |
---|---|---|
データ処理場所 | 端末(エッジデバイス) | クラウドサーバー |
応答時間 | 即時 | サーバーへのデータ送信が必要 |
使用例 | 農業での作物成長の監視 | 消費者行動の予測を含むマーケティングデータの分析 |
強み | リアルタイムの意思決定 | 大規模データ解析の処理 |
エッジAIとクラウドAIは、データ処理の場所と方法が異なることが特徴です。エッジAIは、データを端末(エッジデバイス)で直接処理し、即時に結果を出すことができます。一方、クラウドAIは、データをクラウドサーバーに送信し、サーバー側で処理を行います。
たとえば、エッジAIは農業や製造業など、リアルタイムでの判断が必要な場面で活用されます。具体的には、農業ではエッジデバイスを使って作物の成長状況を監視し、異常を即座に検知して対応することができます。
一方、クラウドAIは大量のデータを解析するのに適しています。たとえば、企業のマーケティングデータを分析し、消費者の行動パターンを予測するなど、膨大なデータを扱う場合に有効です。
つまり、エッジAIはリアルタイム性が求められる状況に強く、クラウドAIは大規模データの解析に強いということです。
このように、エッジAIとクラウドAIは、それぞれの強みを活かして異なる用途で利用されています。適切な技術を選ぶことで、効率的なシステムを構築することができます。
ちなみに、AIの自動運転技術についてはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
エッジAIはデバイスだけでAI処理をする
エッジAIは、データをクラウドに送信することなく、エッジデバイス自体でAI処理を行うのが特徴です。これにより、即時にデータ処理が可能となり、遅延を大幅に減少させることができます。
たとえば、スマート農業ではエッジデバイスが作物の状態を監視し、異常が発生した際に即座に対応策を実行可能です。このように、リアルタイムの反応が求められる状況で、エッジAIは大いに力を発揮します。
クラウドコンピューティングを併用する場合でも、エッジデバイス上での処理が主となります。これにより、データの転送に伴うコストや時間を削減することが可能です。
お気軽にご相談ください!
エッジAIのメリット
エッジAIの最大のメリットは、AI処理を行うためにデータをクラウド上に送信する必要がないことです。この特徴から、いくつかの恩恵を得ることが可能です。
- レスポンスが早い
- 情報セキュリティを確保できる
- 通信量を削減しコスト削減できる
- システムをスピーディに構築できる
それぞれ詳しく解説します。
レスポンスが早い
エッジAIの1つ目のメリットは、レスポンスが非常に早いことです。エッジデバイス自体でAI処理を行うため、データをクラウドに送信して処理結果を待つ必要がありません。これにより、リアルタイムでのデータ処理が可能となります。
たとえば、自動運転車では、エッジAIを活用することで周囲の状況を瞬時に把握し、適切な運転操作を行うことができます。これにより、安全性が高まり、事故のリスクを減少させられるでしょう。
また、工場の生産ラインでもエッジAIを利用することで、機械の異常を即座に検知し、迅速に対応可能です。これにより、生産効率が向上し、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
このように、エッジAIの速いレスポンスは、さまざまな分野で大きな利点となります。リアルタイムのデータ処理が求められる状況において、エッジAIは強力なツールとなるでしょう。
情報セキュリティを確保できる
エッジAIのもう2つ目のメリットは、情報セキュリティを確保できることです。データがエッジデバイス内で処理されるため、クラウドに送信されることがなく、データ漏洩のリスクが大幅に減少します。
たとえば、医療分野では患者の個人情報を扱うため、データの漏洩が大きな問題となります。エッジAIを利用することで、患者のデータは病院内のデバイスで処理され、外部に送信されることがありません。これにより、患者のプライバシーを守りながら、高度な医療サービスを提供することができます。
また、金融機関においてもエッジAIは有効です。顧客の取引データや個人情報をエッジデバイスで処理することで、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
このように、エッジAIは情報セキュリティの観点からも非常に重要視されている技術です。
通信量を削減しコスト削減できる
エッジAIを活用することで、通信量を大幅に削減し、コスト削減が可能です。エッジデバイスでデータを処理するため、クラウドに大量のデータを送信する必要がなくなります。これにより、通信コストが削減されるだけでなく、帯域幅の節約も実現できるでしょう。
監視カメラシステムでは、大量の映像データを常時クラウドに送信すると、通信費用が高額になります。しかし、エッジAIを使うことで、カメラが現地で映像を分析し、異常が検知された場合のみクラウドに通知します。これにより、データの送信量が大幅に減り、通信コストが抑えられるのです。
このように、エッジAIは通信量を削減し、コスト削減に寄与する重要な技術です。生産性向上を目指す企業にとっては必要不可欠です。
システムをスピーディに構築できる
エッジAIの導入により、システムをスピーディに構築することが可能です。エッジデバイスでの処理がメインとなるため、複雑なクラウドインフラを必要とせず、迅速にセットアップできます。これにより、開発期間とコストの削減が実現します。
たとえば、スマートファクトリーの構築をイメージすると、エッジデバイスを各機械に取り付けるだけで、リアルタイムのデータ処理と分析が可能となります。これにより、生産ラインの監視と最適化が迅速に行われ、生産効率の向上が図れます。
このように、エッジAIはシステムの迅速な構築を可能にし、さまざまな分野での活用が進んでいます。
エッジAIのデメリット
エッジAIには多くの利点がありますが、幾つかのデメリットも存在します。その原因となるのが以下の2つです。
- AI処理をするためにデータをクラウド上に送信する必要がない
- 大規模なシステム構築には向いていない
そして、これらの問題により、以下2つのデメリットが発生します。
- 処理能力が限られる
- 管理にコストや手間がかかる
上記2つのデメリットを理解することで、エッジAIを活用すべきかが理解できます。ぜひ参考にしてみてください。
処理能力が限られる
エッジAIは、デバイス自体でデータを処理するため、クラウドAIに比べて処理能力が限られることがあります。
特に、大量のデータをスピーディに処理したい場合には向いていません。また、エッジデバイスのハードウェア性能に依存するため、複雑な計算や膨大なデータの処理にはクラウドAIの方が適しています。
たとえば、リアルタイムでの高度な分析や複数のタスクを同時に処理することが難しくなります。たとえば、マンションの管理システムでは、交通状況の監視、エネルギー管理、環境モニタリングなど多くのタスクが必要となりますが、これらすべてをエッジAIで処理することは困難です。
このように、エッジAIはリアルタイム性に優れていますが、大量のデータ処理や複雑な分析には向いていないため、利用シーンに応じて適切に選択することが重要です。
管理にコストや手間がかかる
エッジAIの導入には、管理にコストや手間がかかるというデメリットがあります。エッジデバイスはそれぞれが独立して動作するため、故障やソフトウェアのアップデートが発生するたびに個別対応が必要となります。これにより、運用コストが増加し、管理の手間も増えることになります。
たとえば、製造業において多くのエッジデバイスを導入する場合、各デバイスのメンテナンスが必要です。故障したデバイスを交換したり、定期的なソフトウェアアップデートを行ったりするために、技術者を呼ぶ必要が出てきます。これにより、全体の運用コストが予想以上に高くなることがあります。
このように、エッジAIの管理には多くのコストや手間がかかるため、長期的な運用計画と予算管理が重要です。適切なリソースを割り当てることで、効率的な運用を目指すことが求められます。
エッジAIの活用事例
エッジAIは、さまざまな分野で実際に活用されています。代表的な事例としては以下のようなものがあります。
- 車の自動運転システム
- 産業用のロボット
- 警備業界
ここでは、各分野でエッジAIがどのように活用されているのかと、エッジAIを活用する旨みについて詳しく解説します。
自動車の運転自動化
エッジAIは、自動車の運転自動化において重要な役割を果たしています。自動運転システムでは、車両に搭載されたセンサーやカメラがリアルタイムで環境を認識し、エッジAIがそのデータを瞬時に処理します。これにより、車両は周囲の状況を把握し、適切な運転操作を行うことができます。
たとえば、テスラの自動運転システムは、エッジAIを活用して道路の車線、他の車両、歩行者を認識し、安全な走行をサポートします。
この技術により、運転手の負担を軽減し、交通事故のリスクを大幅に減少させられるのです。
自動車の運転自動化は、今後ますます普及し、安全性と利便性の向上に寄与すると考えられています。
産業用ロボット
エッジAIは、産業用ロボットにも広く活用されています。工場内での製造プロセスにおいて、エッジAIを搭載したロボットは、リアルタイムでデータを処理し、精密な作業を自動で行うことができます。これにより、生産効率が向上し、品質の安定化が図られます。
例えば、組立ラインでは、ロボットがエッジAIを使って部品の位置を認識し、正確に組み立てを行います。異常が検出された場合は、即座に対応することで、生産ラインの停止を最小限に抑えられます。
この技術により、製造業における自動化が進むとともに、人手不足の解消、コスト削減など様々なメリットが発生しています。
警備業界
エッジAIは、警備業界でも重要な役割を果たしています。監視カメラやセンサーにエッジAIを搭載することで、リアルタイムで異常を検知し、迅速に対応することが可能です。これにより、セキュリティの向上と迅速な対応が実現します。
たとえば、ショッピングモールでは、エッジAIを使って不審な行動や侵入を検知します。異常が検知されると、即座に警備員に通知され、迅速な対応が可能です。
さらに、エッジAIはデータをローカルで処理するため、プライバシー保護にも役立つでしょう。この技術が普及することで、警備業務の効率化と安全性の向上を図れるとともに、お客様により安心できる環境を提供できます。
エッジAIまとめ
本記事では、エッジAIの概要、そのメリットとデメリット、そして活用事例について詳しく説明しました。
エッジAIは、デバイス自体でデータを処理することで、リアルタイム性、プライバシー保護、通信コストの削減など、多くのメリットを提供します。具体的な活用事例としては、自動運転車、産業用ロボット、警備業界が挙げられます。
これらの分野でエッジAIは効率化と安全性の向上に大きく貢献しています。しかし、初期導入コストや管理の手間、処理能力の限界といったデメリットも考慮する必要があります。
エッジAIは特定の用途では大いに役立ちますが、大規模なデータ処理にはクラウドAIとの併用も視野に入れるべきでしょう。
また、AIに関する質問や、AIを使ったシステム開発についてのご相談、案件のご依頼がある場合は、株式会社Jiteraまでお問い合わせください。 専門のスタッフが、最適なソリューションをご提案し、皆様のビジネスの成功をサポートいたします。
エッジAIの可能性を最大限に活用し、効率的かつ安全なシステムを構築するためのパートナーとして、ぜひご相談ください。