AIの普及にともない、生成AIを安全かつ倫理的に利用するためのガイドラインが求められています。透明性や公正性、データ保護を中心にリスク管理の強化ができ、人工知能(AI)技術の恩恵を最大限に享受できるようになるのです。
さまざまな企業や組織が発表しているガイドラインやテンプレートを紹介しますので、ガイドラインの作成に役立ててください。

慶應義塾大学環境情報学部を卒業。大手メーカーに20年ほど勤務し、OSの開発やサポートに従事。現在はプログラミング講師などをしている。大手企業と個人事業主という大きく異なる視点を持つところが強み。国の内外を問わない旅好きで、写真はモンゴルにて騎馬トレックしたときのもの。
生成AIとは?基本を押さえよう
生成AIとは、収集した大量のデータをもとにして新しい文章や画像などを創造する技術です。
ビジネス文書の作成やデザインの提案、企画の草案作成など多岐にわたる分野で活用され、私たちの働き方を革新しています。音楽や動画などのメディアコンテンツの生成にも利用されています。
生成AIはデータの解析と学習を通じて、より人間に近い文章やアイデアを提供できるのです。
ニュース記事の作成や小説の執筆、広告コピーの制作だったり、映画予告編の作成だったりといった、人間の業務のサポートができます。
生成AIを理解して適切に活用することは、今後のビジネスでの競争力を高める鍵となりえるのです。
一般社団法人ディープラーニング協会の生成AIガイドライン
一般社団法人ディープラーニング協会が作成したガイドラインは、企業や組織による生成AI技術の適切な活用を支援することが目的です。生成AIの利用がもたらす利便性を最大限に引き出しながら、法令違反や他者の権利侵害などのリスクを最小限に抑えるための具体的なルールを示します。
生成AIに入力するデータの種類や生成物の利用方法の詳細から、倫理的、法的な問題についても触れ、利用者が直面しうるリスクの明確化をしています。
画像生成AIにも対応し、プロンプトの入力方法や生成物の商用利用に関する条件、セキュリティ上の配慮など具体的な問題点を解説しています。
独自のガイドラインを作成する際のひな型として利用でき、安全で効果的な生成AIの利用の助けになるでしょう。
【外部の企業・組織を対象】生成AIガイドライン
生成AIの導入により業務効率が向上する一方で、データの不適切な使用や情報漏洩といったリスクが考えられます。生成AIのメリットを最大限に引き出しながらリスクを最小限に抑えるために、企業や組織は独自の生成AIガイドラインを策定しています。
デジタル庁
デジタル庁は生成AI技術の業務への実践的な導入を促進するための情報発信をしています。生成AIの具体的な応用方法を明示し、官公庁や企業がその利便性を最大限に引き出すことが目的です。
「ChatGPTを業務に組み込むためのハンズオン」では具体的な導入手順や具体的な使用例、プロンプトの例を通じて、参加者は生成AI技術の基本から高度な応用までを学べます。
「デモアプリのコードも公開 中央省庁向け生成AIワークショップ」は、生成AI技術の基礎理論や活用事例を紹介して参加者が実際に手を動かして学べる内容です。デモアプリのコードを公開しているため、具体的な実装方法を学び自身の業務に応用するためのスキルを身につけられます。
デジタル庁は生成AI技術の普及と実践的な活用を推進し、公共サービスや業務の質を向上させることを目指しています。生成AIの導入がもたらす可能性を最大限に引き出し、業務プロセスの革新を図るための重要な指針となるでしょう。
総務省
総務省によるAI利活用ガイドラインの目的は、AI技術の適切かつ効果的な利用を促進してAIの利便性を最大限に引き出しつつ、リスクを最小限に抑えるための具体的な指針を提供することです。
AIの研究開発や利用における関係者が遵守すべき原則を述べた上で、具体的な留意事項や実施方法、発生しうる課題への具体的な対策が詳細に説明されています。
ガイドラインは法的拘束力を持たないソフトローとして位置づけられ、AI利用者が自主的に遵守すべき事項が明確です。
AIサービスプロバイダやビジネス利用者がこのガイドラインを参考にすることで、AIの利用に伴うリスクを適切に管理し社会全体でAIの活用が広がるでしょう。
【教育】生成AIガイドライン
教育機関においても、生成AIの利用が進む中で適切なガイドラインの策定が求められています。教育現場での学習支援や業務効率化に大きな可能性を秘めているものの、同時に教師や学生が安心して利用できる環境を整える必要があるからです。
文部科学省や各教育機関が策定した生成AIガイドラインを紹介し、教育現場での生成AIの適切な利用方法について解説していきます。
文部科学省
文部科学省のガイドラインは生成AIの基本概念と教育的価値を詳述し、教師・機関の活用指針を提供しています。
具体的には、教材作成、授業支援、学習効果向上の安全で効果的な活用方法が掲載されています。また、リスク管理・問題対処法も明記され、倫理・法的問題への対処が明確です。
データ保護と安全対策も具体的に示されており、教育環境向上に役立ちます。
公益社団法人 私立大学情報教育協会
公益社団法人私立大学情報教育協会のガイドラインの目的は、生成AI技術を活用しながら教育と研究の現場での適切な利用を支援することです。
生成AIの基本概念を理解し、応用方法を学ぶための実践的指針を提供。基本概念と教育価値の詳細な解説だけでなく、データ保護・セキュリティに重点を置いた倫理・法的問題の説明もカバーしています。
安全で効果的な利用による教育環境発展と研究進展を目指すガイドラインです。
佐賀県教育委員会
佐賀県教育委員会が策定したガイドラインの目的は、教育現場での生成AI技術の適切な利用を促進することです。
生成AIによる教材作成や学習支援方法を具体的に示しています。
また、データプライバシーの保護と安全性の確保に重点を置き、倫理的および法的な問題についても詳しい記載があります。教師や教育関係者は、生成AI技術を効果的に活用して生徒の学習効果を向上させることが期待できるでしょう。
【大学】生成AIガイドライン
大学においても、生成AIの適切な利用を促進するためのガイドラインが策定されています。大学は教育機関として生成AIの先進的な活用を推進する立場にあるため、学生や教職員が安心して生成AIを活用できる環境を整えることが求められているのです。
さまざまな大学が策定した生成AIガイドラインを紹介していきます。
上智大学
上智大学のガイドラインは、教職員や学生が生成AIを安全かつ効果的に活用できるよう支援することを目的としています。
生成AIの基本概念やその教育的価値を解説し、具体的な活用方法を紹介しています。例えば、授業では担当教員が生成AIの使用可否を学生に明示し、使用する場合はその範囲や意図の説明を推奨しています。また、生成AIが出力した内容を受講生本人が作成したものと認めません。
また、倫理的や法的、社会的問題点についても触れ、個人情報や機密情報の取り扱い、著作権保護、誤った情報の生成と拡散などのリスクに言及しています。
武蔵野大学
武蔵野大学には学生と教職員のそれぞれに向けたガイドラインがあり、生成AI技術を適切に利用して教育と業務の質を向上させることが目的です。
学生向けのガイドラインでは生成AIの利用による影響を考慮して自らの考える力を養うことを重視していることがポイントです。例えば、生成AIの回答をそのまま使用することを防止するための指針が示され、自身のファクトチェックの重要性を解説しています。
教職員向けのガイドラインでは生成AIのによる業務効率改善と、法令遵守や権利侵害を防ぐための注意事項を提供。生成AIの具体的な利用方法とそれに伴うリスクについて詳細に説明しています。
琉球大学
琉球大学のガイドラインは、教育分野での生成AI技術の適切な利用を支援し、教育現場での導入を促進することが目的です。
生成AIを使った教材作成や学習支援の方法が具体的に示されており、教師や教育機関が実際に活用できる内容が特徴です。生成AIの利用に伴うリスクや課題についても詳しく説明されており、教育機関が直面する可能性のある問題への対処方法も提供されています。
福島大学
福島大学のガイドラインは、生成AI技術の適切な利用を支援し、教育現場での導入を促進することを目的としています。
生成AI技術を活用した教育環境の革新を強く推進していることが特徴です。生成AIを用いた教材の開発や授業のサポート方法が詳細に示されているため、教師や教育機関は生成AIを具体的かつ実践的に活用できます。
倫理的および法的な問題を含めて教育機関が直面しうる問題やその対処方法も提供されています。
日本福祉大学
日本福祉大学の生成AIガイドラインには学生向けと教職員向けがあり、大学内における生成AI技術の利便性を活用しつつ、利用に伴うリスクを最小限に抑えることが目的です。
学生向けガイドラインでは、生成AIの活用により学習効果を高めて自身の考える力を育むことを重視。レポート作成や学習支援において生成AIを利用する際の、盗作の防止や倫理的問題を含む注意点が詳細に説明されています。
一方、教職員向けガイドラインでは生成AI技術を教育および業務に活用する方法を提示。講義や研究における生成AIの具体的な利用方法や、データの取り扱いに関する注意事項が詳述されています。
【自治体】生成AIガイドライン
自治体においても、生成AIの適切な活用を促進するためのガイドラインが策定されています。
住民サービスの向上や行政業務の効率化を図るために生成AIが活用されていますが、利用に伴うリスクを最小限に抑えるためには明確な指針により住民に対する信頼を確保することが重要です。
自治体による生成AIガイドラインを紹介し、自治体における生成AIの利用の現状と意義をみていきます。
兵庫県
兵庫県が発信する生成AIのガイドラインは、県の職員が生成AI技術を活用する際の留意点や具体的な利用方法を提供し、業務効率化を図ることが目的です。
生成AIを利用する際の基本事項やデータの入力時に留意すべき点、生成物の利用時に留意すべき点、生成AIの効果的な使い方が主な内容です。特に、データの入力に際しては個人情報や非公開情報の取り扱いに関する厳格な規定を設けています。
具体的なプロンプト集を掲載した上で、生成AIによる生成物については内容の正確性や妥当性の確認を求めています。
加賀市
加賀市による生成AIの利用ルールと利用ガイドラインは、市の職員による生成AI技術の活用で業務の効率化や新しいアイデアの創出を図りつつ、利用に伴うリスクを最小限に抑えることが目的です。
生成AIを利用する際の基本的なルールとして、個人情報や機密情報を入力しないことが強調されています。生成物の正確性や信頼性についても注意が促され、生成AIから得られる結果は必ずしも正確でないことを認識して結果の理由や根拠を精査することを求めていることが特徴です。
呉市
呉市の生成AIの利用ガイドラインと活用の手引は、市の職員による生成AI技術の活用によって業務の効率化や行政サービスの向上を図りつつ、利用に伴うリスクを最小限に抑えることが目的です。
生成AIを利用する際の基本的なルールや適用範囲、利用可能な業務の種類について詳細に説明されています。特に、個人情報や機密情報の取り扱い、生成物の正確性や信頼性について厳格な規定が設けられています。
具体的な利用事例や実際の使用方法も紹介されており、職員が日常業務で生成AIを効果的に活用するための実践的なアドバイスになっています。例えば、文章の要約や翻訳、メールの草案作成、アイデア出しなど、生成AIを活用できるさまざまな場面が示されているのです。
【企業・組織】生成AIガイドライン
企業や組織にとって、生成AIは業務効率の向上や新しいビジネスチャンスの創出に大きな可能性を秘めていますが、データの適切な取り扱いやプライバシー保護、倫理的な問題に対する配慮が求められます。安全かつ効果的に活用するためには、明確なガイドラインを策定して従業員が遵守することが不可欠です。
企業や組織が策定した生成AIガイドラインを紹介し、生成AIの利用の現状をみていきます。
東京都デジタルサービス局
東京都デジタルサービス局によるAI利活用ガイドラインと文章生成AI活用事例集は、職員がAI技術の利便性を活用しつつ、その利用に伴うリスクを最小限に抑えることが目的です。
特に、個人情報や機密情報の取り扱いに関する規定が厳格です。AIが生成するコンテンツの著作権や知的財産権についても詳細に説明されており、職員が法的なトラブルを避けるための指針が提供されています。
また、具体的な利用シナリオや実践例、プロンプト集にを示し、職員がAI技術を効果的に活用できるよう支援しています。
富士通
富士通のガイドラインは、生成AI技術の適切な利用を促進し、法的および倫理的な側面からのリスクを最小限に抑えることが目的です。
生成AI技術を利用する際の基本的なルールや注意事項が詳細に説明されています。特に、データの入力および生成物の利用に関する規定を設け、個人情報や機密情報の取り扱い、著作権や知的財産権の管理についてのルールが厳格です。
また、生成AIが出力する情報の信頼性を確保するためのチェックポイントや誤情報の拡散を防ぐための手順も記載。AI倫理教育やリスクチェック制度の重要性も強調されています。
株式会社サイダス
株式会社サイダスのガイドラインは、生成AI技術の適切な利用支援とビジネス現場への導入促進が目的です。
特に、生成AIは業務効率の改善や新しいアイデア出しなどに役立つ反面、入力するデータの内容や生成物の利用方法によっては法令に違反したり、他者の権利を侵害したりする可能性があることに言及しています。
データプライバシーの保護と安全性の確保に特に重点を置いて倫理的および法的な問題についても詳細に触れられているため、企業が安心して技術を活用できるよう支援しています。
生成AIガイドライン作成のテンプレート
企業や組織において生成AIの利用に伴うリスクを最小限に抑えて利点を最大限に引き出すためには、明確で実用的なガイドラインが不可欠です。策定する際に考慮すべき主要なポイントとテンプレートを紹介しますので、ぜひともお役立てください。
ガイドラインの目的
ガイドラインの目的を明確することは、生成AIの利用における基本方針を示す上で非常に重要です。
生成AIの導入目的は多岐にわたるため、自社のニーズに合わせた目的を設定する必要があります。
具体的な例文は以下の通り。
このガイドラインの目的は、生成AIの適切な利用を促進し、安全かつ効果的な活用を支援することです。具体的には次の通りです。
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ガイドラインの目的を明確にすることで、利用者が何のために生成AIを活用するのかが理解しやすくなります。
対象とする組織や部門
対象とする組織や部門を明確にすることで、生成AIの利用に関する具体的な指針がより適切に適用されます。組織や部門ごとに異なる利用目的や方法、ニーズ、課題に応じてガイドラインを設定することで、生成AIの導入効果を最大限に引き出せます。
具体的な例文
本ガイドラインは、以下の組織や部門を対象としています。
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対象とする組織や部門を具体的に定義してガイドラインの適用範囲を明確にすることで、生成AIの利用に関する指針がより明確になります。
対象の生成AI
ガイドラインを策定する際に、対象とする生成AIの種類やバージョンを明確に定義することが重要です。機能や特性に応じたガイドラインを設けることで、適切な生成AIの利用方法を徹底できます。
具体的な例文
本ガイドラインは、以下の生成AIを対象としています。
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バージョンによって新しい機能が追加されたり、性能が向上していたり、セキュリティ対策が強化されていたりします。使用する生成AIごとに適切なガイドラインを設定することが必要です。
禁止項目
生成AIの利用における禁止項目を明確に定義することも重要です。不適切に使用することにより生じる法や倫理に関わる問題を未然に防ぎ、信頼性の高い結果を得るために必要不可欠です。
具体的な例文
本ガイドラインでは、生成AIの利用において以下の項目を禁止します。
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禁止項目を具体的に設定することで生成AIの利用が安全かつ効果的に行われ、その利点を最大限に引き出せるでしょう。
データ入力に関する注意点
生成AIを利用する際のデータ入力に関する注意点を明確にすることは非常に重要です。
不適切なデータ入力は生成AIの性能を引き出せないだけでなく、信頼性に欠ける結果を招いたり情報漏洩につながったりします。
具体的な例文
本ガイドラインでは、生成AIを利用する際のデータ入力に関する注意点として、以下の項目を遵守してください。
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具体的な注意点により生成AIの利用が効果的かつ安全に行われれば、そのメリットが最大限に引き出されるでしょう。
生成物の利用時に関する注意点
生成AIが生成したコンテンツを利用する際には、業務の品質を保ち倫理的かつ法的に適切な利用しなければなりません。
生成AIの出力結果には誤りや不適切な表現を含むことがあり、法的な問題や社会的な影響が発生することも考えられるため慎重な対応が求められます。
具体的な例文
本ガイドラインでは、生成AIが生成したコンテンツを利用する際の注意点として、以下の項目を遵守してください。
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生成物の利用時に関する具体的な注意点を設定することで、生成されたコンテンツを安全かつ効果的に利用できるでしょう。
障害やトラブル時の対応
生成AIを利用する際には、予期しない障害やトラブルが発生することがあります。ガイドラインには障害やトラブルの発生時に通知する手順、原因の特定と修正方法、再発防止策の実施などが必要です。
具体的な例文
本ガイドラインでは、生成AIを利用する際に発生する可能性のある障害やトラブルに対する対応策として、以下の項目を遵守してください。
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障害やトラブル時の対応策を具体的に設定することで、利用者は問題発生時に迅速かつ適切に対応できます。
まとめ:生成AIガイドラインを策定して社内でもAIを活用
生成AIガイドラインを策定することは、企業や組織にとってリスクを最小限に抑えて業務の効率や生産性を向上させる上で重要です。
ガイドラインには、生成AIの基本的な利用方法から、データの取り扱いや生成物の利用に関する具体的な注意点、障害やトラブル時の対応策など、幅広い項目をカバーする必要があります。生成AIの利用における透明性と信頼性を確保し、社内の全ての部門が一貫して生成AIを活用できる環境を整えられるのです。
株式会社Jiteraはデジタルコンサルティングのスペシャリスト集団です。生成AIのガイドラインについて質問や相談がある場合は、お気軽にJiteraへ連絡して成功をサポートしてもらいましょう。