インターネットが普及した今、サイバー攻撃は企業にとって大きな脅威です。
2023年には、中小企業の約4割がサイバー攻撃被害に遭い、被害額は平均数百万円に達しています。
こうした状況下で、大切なデータを外部からの不正アクセスから守るために「ファイアウォール」は欠かせません。
「ファイアウォールって聞いたことはあるけど、よくわからない…」
この記事では、ファイアウォールの基本から種類、機能や必要性などを分かりやすく解説します。
ファイアウォールは、企業のセキュリティ対策において必須のツールです。まだ導入していない場合は、この記事をぜひ参考にしてください。
『IT活用で業務を効率化させる!』がテーマ。 とある企業でITエンジニアとして10年以上お仕事をしています。 ITを活用して業務を効率化させたい、生産性を向上させるため日々勉強中。
ファイアウォールの基本

まずは、ファイアウォールの基本や仕組みについて、解説していきます。
ファイアウォールとは
ファイアウォールは、インターネットと社内ネットワークなどの境界に設置し、不正アクセスから内部ネットワークを守るセキュリティ対策です。
火災時の防火壁のように、外部からの攻撃や情報漏えいを防ぐ役割を果たします。
ファイアウォールには、ソフトウェアとして提供されるものと、ハードウェアとして提供されるものがあります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、ネットワーク規模や予算に合わせて選択可能です。
ファイアウォールの仕組み

ファイアウォールの仕組みは、大きく3つのステップに分けられます。
パケット検査
ファイアウォールは、インターネット上を流れるデータの最小単位である「パケット」と呼ばれる単位を一つ一つ検査します。
IPアドレス、ポート番号、プロトコルといった基本情報に加え、以下の詳細な情報も検査します。
- パケットヘッダー情報: 送信元・送信先のMACアドレス、パケット長、フラグメント情報など
- アプリケーション層情報: HTTP、FTP、SMTPなどのアプリケーションプロトコル固有の情報
- ペイロード情報: データ部分の一部を検査し、マルウェアや不正なデータの混入を検知
これらの情報を総合的に分析することで、より精度の高いパケット検査が可能になります。
ルールに基づいた判断
ファイアウォールは、事前に設定されたルールに基づいて、パケットを許可するか遮断するかを判断します。
ファイアウォールは、以下のルールに基づいて、パケットの許可・遮断を判断します。
- IPアドレス: 特定のIPアドレスからのアクセスを許可または禁止
- ポート番号: 特定のポート番号を使用する通信を許可または禁止
- プロトコル: 特定のプロトコル(TCP、UDP、ICMPなど)を使用する通信を許可または禁止
- アプリケーション: 特定のアプリケーション(Webブラウザ、メールソフトなど)を使用する通信を許可または禁止
- 時間帯: 特定の時間帯のみアクセスを許可
- 曜日: 特定の曜日のみアクセスを許可
- 状態情報: 過去の通信履歴に基づいて、正当な通信かどうかを判断
これらのルールは、ネットワークのセキュリティポリシーに基づいて設定されます。
許可/遮断
パケットが許可された場合、ファイアウォールは社内ネットワークに送信します。
一方、遮断された場合、ファイアウォールは以下の処理を行います。
- 破棄: パケットを破棄し、送信元に送信されないようにする
- リセット: 送信元に接続をリセットするメッセージを送信
- ログ記録: 遮断されたパケットの情報(IPアドレス、ポート番号、プロトコルなど)をログに記録
これらの処理は、ファイアウォールの設定によって異なります。
ファイアウォールの種類

ファイアウォールには、それぞれ異なる特徴を持つ種類があります。自社の規模や環境、ニーズに合ったファイアウォールを選ぶことが重要です。
ここでは、ファイアウォールの種類について、3つご紹介します。
ルーターベースファイアウォール
ルーターベースファイアウォールは、ネットワーク機器であるルーターに組み込まれたファイアウォールです。
ルーターは、ネットワーク間の通信を制御する役割を担っており、ファイアウォール機能はその一部として提供されます。
ルーターベースファイアウォールは、パケットヘッダー情報に基づいて、通信を許可/遮断することが可能です。
パケットヘッダー情報には、送信元IPアドレス、送信先IPアドレス、ポート番号、プロトコルなど、通信の基本的な情報が含まれています。
メリットは以下のとおりです。
- 設定が比較的簡単
- 導入コストが低い
- ネットワーク全体を保護できる
デメリットは以下のとおりです。
- アプリケーションレベルの制御ができない
- 細かい設定ができない
プロキシファイアウォール
プロキシファイアウォールは、インターネットと社内ネットワーク間の通信を仲介するサーバに設置するファイアウォールです。
クライアントは、直接インターネットにアクセスするのではなく、プロキシサーバを経由してアクセスします。
プロキシサーバは、クライアントからのリクエストを受け取り、インターネット上のサーバにアクセスします。そして、サーバからのレスポンスを受け取って、クライアントに返します。
プロキシファイアウォールは、パケットヘッダー情報だけでなく、アプリケーションレベルの情報も基づいて、通信を許可/遮断することが可能です。
メリットは以下のとおりです。
- 高いセキュリティレベルを実現
- アプリケーションレベルの制御が可能
- 匿名通信を実現
デメリットは以下のとおりです。
- 設定が複雑になる
- 処理速度が遅くなる場合がある
アプリケーションレベルゲートウェイ
アプリケーションレベルゲートウェイは、特定のアプリケーションの通信のみを許可/遮断するファイアウォールです。
Webサービスなど、特定のアプリケーションのセキュリティを強化したい場合に適しています。アプリケーションレベルゲートウェイは、アプリケーションプロトコルに基づいて、通信を許可/遮断します。
メリットは以下のとおりです。
- 特定のアプリケーションのセキュリティを強化
- 不正アクセスを徹底的に遮断
デメリットは以下のとおりです。
- 設定が複雑になる
- すべてのアプリケーションに対応しているわけではない
ファイアウォールの機能

ファイアウォールは、単に通信を遮断するだけの存在ではありません。様々な機能を搭載し、社内ネットワークを多様な脅威から守ります。
ここでは、ファイアウォールの主な3つ機能について、解説していきます。
不正アクセスの防止
ファイアウォールは、外部からの不正アクセスを防止します。事前に設定されたルールに基づいて、不審な通信を検知し、遮断します。
具体的には、以下の方法で不正アクセスを防ぎます。
- アプリケーション制御: 特定のアプリケーションの通信を許可/遮断
- コンテンツフィルタリング: Webサイトやファイルなどのアクセスを制限
- 侵入検知・防御 (IDS/IPS): ネットワーク上の不正な活動を検知し、遮断
パケットのフィルタリング
ファイアウォールは、パケットヘッダー情報に基づいて、パケットを許可/遮断します。パケットヘッダー情報には、通信の基本的な情報が含まれています。
ファイアウォールは、事前に設定されたルールに基づいて、パケットを処理します。ルールには、以下のようなものが含まれます。
- 特定のIPアドレスからのアクセスを許可/遮断
- 特定のポート番号へのアクセスを許可/遮断
- 特定のプロトコルを使用する通信を許可/遮断
セキュリティポリシーの適用
ファイアウォールは、企業独自のセキュリティポリシーに基づいて、通信を制御することができます。
セキュリティポリシーには、以下のようなものが含まれます。
- インターネットへのアクセスを許可する時間帯
- 使用できるアプリケーション
- アクセスできるWebサイト
ファイアウォールは、セキュリティポリシーを適用することで、企業のセキュリティレベルを向上させることができます。
ファイアウォールには、上記以外にも様々な機能があります。
過去のパケット情報に基づいて、通信を許可/遮断する機能や社内ネットワークのIPアドレスを外部から見えないように変換する機能、サービス拒否攻撃を防ぐなど、企業のセキュリティ対策において重要な機能が多くあります。
ファイアウォールの設定

ファイアウォールを導入しただけでは、十分なセキュリティ対策とは言えません。安全なネットワーク環境を実現するには、適切な設定が重要です。
ここでは、ファイアウォールの設定について、解説していきます。
ルールベースの設定方法
ルールベースの設定方法は、ファイアウォールの設定画面で、許可/遮断したい通信のルールを作成する方法です。
ルールを作成するには、以下の項目を設定する必要があります。
- 方向: 送信/受信/両方向
- プロトコル: TCP/UDP/ICMP/その他
- ポート: 特定のポート番号、ポート範囲、またはすべて
- IPアドレス: 特定のIPアドレス、IPアドレス範囲、またはすべて
- アクション: 許可/遮断
ポートの開放と許可の設定
特定のアプリケーションを使用する場合は、そのアプリケーションが使用するポートを開放する必要があります。
ポートを開放するには、ファイアウォールの設定画面で、以下の項目を設定する必要があります。
- プロトコル: TCP/UDP
- ポート: 特定のポート番号またはポート範囲
- アクション: 許可
ファイアウォールの無効化
ファイアウォールを無効化すると、インターネットからの攻撃に対して無防備な状態になります。
ファイアウォールを無効化する場合は、以下の点に注意してください。
- 無効化する期間を最小限に抑える
- 無効化する前に、他のセキュリティ対策を講じる
- 無効化後は、ネットワークの状況を監視する
ファイアウォールの設定は、企業のセキュリティレベルを左右する重要な作業です。
また、適切な設定を行うことで、安全なネットワーク環境を実現することができます。設定に不安がある場合は、専門業者に相談することをおすすめします。
ファイアウォールの管理

ファイアウォールを設置したら、終わりではありません。安全なネットワーク環境を維持するためには、継続的な管理が必要不可欠となります。
ここでは、ファイアウォールの管理について、主な3つの方法について、解説していきます。
ファイアウォールの定期的な更新
ファイアウォールは、常に最新の状態で保つ必要があります。脆弱性が発見された場合は、速やかにアップデートを適用しましょう。
脆弱性とは、ソフトウェアの設計や実装上の欠陥のことです。悪意のあるユーザーによって悪用される可能性があります。
ファイアウォールのアップデート方法は、製品によって異なります。
- 自動更新機能: 自動更新機能が搭載されている場合は、有効にしておきましょう。
- 手動更新: 自動更新機能がない場合は、手動でアップデートファイルをダウンロードして適用する必要があります。
ファイアウォールは、定期的にアップデート情報を確認し、最新の状態を保つようにしましょう。
ログの確認と分析
ファイアウォールは、通信ログを記録しています。定期的にログを確認し、不正な通信がないかを分析しましょう。
ファイアウォールには、以下のような種類のログがあります。
- アクセスログ: すべての通信の記録
- 拒否ログ: ファイアウォールによって遮断された通信の記録
- 攻撃ログ: ファイアウォールに対する攻撃の記録
ログは、ファイアウォールの設定画面から確認できます。また、ログをファイルに出力して、専用のツールで分析することもできます。
ファイアウォールの障害対応
ファイアウォールに障害が発生した場合、迅速に復旧する必要があります。障害発生時の対応手順を事前に確認しておきましょう。
ファイアウォールの障害には、以下のような種類があります。
- 設定ミス
- ハードウェア故障
- ソフトウェア障害
障害発生時の対応手順は、ファイアウォールの製品によって異なります。
- 障害発生時の連絡先: ファイアウォールの製造元または販売元
- 障害発生時の対応手順: ファイアウォールのマニュアル
また、障害復旧後は、再発防止策を検討する必要があります。
- 設定の見直し
- ハードウェアの交換
- ソフトウェアのアップデート
ファイアウォールの必要性

企業のネットワークは常にサイバー攻撃の脅威にさらされています。
情報漏えいやシステム停止などの被害を防ぐためには、ファイアウォールの導入が不可欠です。
ここでは、ファイアウォールの必要性について、解説していきます。
データ保護とセキュリティ確保
ファイアウォールは、社内ネットワーク上のデータを保護し、セキュリティを確保します。
顧客情報や社員情報などの機密データを外部からの不正アクセスから守り、情報漏洩のリスクを軽減します。
具体的には、以下のようなデータ保護とセキュリティ確保に役立ちます。
- 氏名、住所、電話番号、メールアドレス、クレジットカード情報などの顧客情報を保護
- 氏名、住所、電話番号、メールアドレス、給与情報などの社員情報を保護
- 営業戦略、製品情報、研究開発情報などの機密情報を保護
ファイアウォールは、データ保護とセキュリティ確保に不可欠なツールです。
不正アクセスからの保護
ファイアウォールは、外部からの不正アクセスを検知し、遮断します。
ハッカーによる侵入やマルウェア感染などを防ぎ、ネットワークの安全性を維持します。
具体的には、以下のような不正アクセスからの保護に役立ちます。
- ハッカーによるネットワークへの不正侵入を防ぎます。
- マルウェアを含むファイルやプログラムのダウンロードを遮断します。
- 大量のアクセスを送りつけてネットワークをダウンさせるDDoS攻撃を防ぎます。
ファイアウォールは、単独で完璧なセキュリティ対策を実現するものではありません。
他のセキュリティ対策と組み合わせて、総合的なセキュリティ対策を講じることが重要です。
ファイアウォールの活用方法

ファイアウォールは、ビジネスネットワークのセキュリティ対策に欠かせないツールです。外部からの不正アクセスや攻撃を防御し、重要なデータを保護します。
また、インターネット接続の安全性確保にも役立ちます。インターネットからの脅威を防御し、安全な通信環境を実現することができます。
ここでは、ファイアウォールの活用方法について、解説していきます。
ビジネスネットワークのセキュリティ対策
ファイアウォールは、ビジネスネットワークのセキュリティ対策において、以下の役割を果たします。
- 社内ネットワークへの不正アクセスを防止: 外部からの不正なアクセスを遮断し、情報漏洩を防ぎます。
- 情報漏洩を防ぐ: 社内情報が外部に持ち出されるのを防ぎます。
- テレワーク環境のセキュリティを強化: テレワーク環境における情報漏洩や不正アクセスを防ぎます。
具体的な対策としては、以下の方法が挙げられます。
- アクセス制御: 社内ネットワークへのアクセスを許可するIPアドレスやポート番号を制限する
- アプリケーション制御: 特定のアプリケーションの通信を制限する
- VPNの利用: 社内ネットワークへの安全なリモートアクセスを実現する
インターネット接続の安全性確保
ファイアウォールは、インターネット接続の安全性確保において、以下の役割を果たします。
- 不正な通信を遮断: ウイルス感染やフィッシング詐欺被害を防ぎます。
- 有害なサイトへのアクセスを制限: 社員が誤って有害なサイトにアクセスすることを防ぎます。
- DoS攻撃を防御: DoS攻撃によるサービス停止を防ぎます。
具体的な対策としては、以下の方法が挙げられます。
- パケットフィルタリング: 不正な通信を遮断する
- 侵入検知・防御: ウイルスや不正な侵入を検知して遮断する
- コンテンツフィルタリング: 有害なサイトへのアクセスを制限する
ファイアウォールは、様々な方法で活用することで、ネットワークセキュリティを強化し、大切なデータを保護することができます。
導入方法、ビジネスネットワークのセキュリティ対策、インターネット接続の安全性確保を理解し、適切な対策を講じることで、安全なネットワーク環境を実現しましょう。
ファイアウォールのまとめ

インターネットが普及した現代、企業にとってサイバー攻撃は深刻な脅威です。
情報漏えいやシステム停止などの被害を防ぐためには、ネットワークセキュリティ対策が不可欠です。
その中でも、ファイアウォールは重要な役割を果たします。
ファイアウォールとは、外部からの不正アクセスを遮断し、社内ネットワークを守るセキュリティ対策です。
この記事では、ファイアウォールの基本から種類や機能、必要性や設定、管理、活用方法まで、解説しました。
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