システム運用中の障害は常に起こり得るため、迅速かつ適切な対応が必要です。これを怠るとサービスやビジネスに重大な影響を与える可能性があります。
そこで注目されているのが「インシデント管理」です。
本記事では、インシデント管理の意味や必要性、方法論であるITILの位置づけなど、インシデント管理の基本について詳しく解説します。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
インシデント管理とは
インシデント管理とは、障害発生時に状況を把握し、速やかな復旧を目指すことです。
復旧に必要な情報を一元管理し、関連部署やメーカーと連携しながら対応します。
さらに、管理した内容を振り返り、再発防止にも取り組むことが大切です。
インシデントは、ソフトウェアやハードウェアのエラー、バグに関する問い合わせなど、多岐にわたります。
契約した稼働効率を下げる要因はすべてインシデントとされ、迅速な対応が求められるため、24時間体制で対応することも一般的です。
迅速なサポートは、顧客満足度の向上にもつながります。
インシデント管理と問題管理の違い
インシデント管理と問題管理はサービス上、障害発生時から復旧までを管理しています。
しかし、インシデント管理と問題管理との違いをまとめると以下の通りです。
項目 | インシデント管理 | 問題管理 |
対応範囲 | 障害発生から復旧まで | 障害について原因把握から再発防止まで |
対応速度 | 即時対応が求められる | 原因把握まで時間をかける |
リスク面 | 事業リスクを減らしながら解決 | 再発防止や影響の軽減に特化 |
インシデント管理は全体的に応急処置と考えられ、日々稼働するシステムで滞った場合に適宜スピーディーな処置を行わなければなりません。
しかし、何度も発生することがあり、都度対応するケースもあります。そこで問題管理として別途管理をしながら、インシデント発生原因を突き止めていきます。
いずれも稼働させるシステムのトラブルを管理し、発生数を減らすことを目指して日々運用することになります。
インシデント発生時の影響と損害
インシデント管理には、以下のメリットが存在します。
- 類似のトラブルに迅速に対処できる
- 事前の管理でリスクを低減できる
類似のトラブルに迅速に対処できる
インシデントは事の次第によっては対処に時間がかかったりすることがあり、それが二次的被害を生む可能性もあります。
そういった事態の対処に慣れているプロフェッショナルがその場にいれば良いですが、そうでないこともあるでしょう。
過去のインシデント情報を管理しておけば、類似のトラブルが発生した際に迅速に対処でき、顧客満足度の向上につながります。
インシデントが発生すると問い合わせが増え、対応が遅れると社会的信用を損ない、顧客離れや売上減少の原因になります。特に重大なシステムの場合、メディアに取り上げられ、信用を大きく失うリスクもあるため、早急な対応と恒久対策が重要です。
事前の管理でリスクを低減できる
正しくインシデント管理を行うことによって、稼働させるシステムに関して企業活動やユーザからの信頼それぞれの下げるリスクを最小限に抑えることができます。
迅速に対応することによって、サービスだけでなくシステム稼働に関する支障も減らすことも期待できます。
予想される障害は、ソフトウェアからサーバなどのハードウェアまで幅広く発生します。それぞれのインシデントに適切に対応するためには、情報を正しく整理し蓄積することが重要です。
これにより、エンジニアやヘルプデスクが同様の障害や問い合わせに迅速に対応でき、信頼性も向上します。
適切なインシデント管理により、障害範囲の拡大を防ぎ、属人化の解消や業務効率化にもつながります。
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インシデント管理ツールの種類
インシデント管理ツールとして様々な機能や種類を搭載して、各企業から提供されています。
主な種類として社内外から集められる問い合わせを中心に管理する「問い合わせ管理システム型」と、プロジェクトやタスク管理をメインとした「プロジェクト管理システム型」があります。
それぞれのツールを業務体制などに適切に取り入れることで、適切なインシデント管理を実施することが可能です。
問い合わせ管理システム型
問い合わせ管理システム型のインシデント管理ツールは、以下のような特徴があります。
- 問い合わせで受け付けた内容を一元管理し、自動で振り分ける機能を備えている
- 質問内容の分析や集計を行い、業務効率化を目指す
- AIを活用した自動回答機能を備えているツールもあり、リソース不足に対応できる
代表的なツールとして、Zendesk、Freshdesk、osTicketなどがあります。
プロジェクト管理システム型
プロジェクト管理システム型のインシデント管理ツールは、以下のような特徴があります。
- インシデントを管理しながら、ナレッジベースを構築し、業務に活用できる
- タスク管理やワークフロー機能を備えており、使いやすいインターフェースが特徴
- プロジェクトの進捗状況を可視化し、チームメンバー間のコミュニケーションを促進する
代表的なツールとして、Jira、Redmine、Backlogなどがあります。
具体的なツールに関しては、下記の記事をご参照ください。
インシデント管理の4つのプロセス
インシデント管理はプロセスを踏んで対応していきながら、情報を蓄積して共有することが重要です。
具体的には、以下のステップどおりに進めることをおすすめします。
- 1.インシデントの特定
- 2.インシデントの分類
- 3.インシデントの対応
- 4.インシデントの復旧
1.インシデントの特定
インシデントが発生した際、まず問題の内容を正確に把握し、特定する必要があります。
以下の情報を収集し、インシデントを明確にすることが大切です。
- 発生日時
- 影響を受けるサービスやシステム
- 影響範囲と影響度合い
- 報告者や発見者の情報
2.インシデントの分類
インシデントの分類は、特定したインシデントに対して適切な対応を取るために重要です。
分類の軸には、重要度(ビジネスへの影響度合い)、緊急度(業務への影響の大きさと対応の urgency)、複雑度(解決に必要な技術的難易度)、影響範囲(影響を受けるユーザーや部門の範囲)などがあります。
これらの軸を組み合わせ、マトリクスやフローチャートを用いて優先順位を可視化することが可能です。
過去の事例をもとに分類基準を継続的に改善し、リソースの配分や対応品質の向上につなげていきましょう。
3.インシデントの対応
分類したインシデントに対して、適切な対応を行います。
具体的には、以下のような活動です。
- 問題の切り分けと調査
- 暫定的な回避策の実施
- 恒久的な解決策の検討と実装
- 進捗状況の管理とコミュニケーション
インシデントの内容や影響度に応じて、適切な担当者やチームを割り当て、スピード感を持って対応することが大切です、
また、対応の状況を、関係者に定期的に報告・連絡することを忘れてはいけません。
情報を共有し、進捗状況を明確にすると、対応プロセスの「見える化」を図ることが可能です。
4.インシデントの復旧
インシデントが解決した後、サービスやシステムを通常の運用状態に戻すプロセスが復旧です。
復旧作業では、解決策の検証とテストを行い、その解決策が適切かつ効果的であることを確認します。
適切かつ効果的な解決策が講じられれば、インシデントによる問題は確実に解消され、システムやサービスは正常に機能します。
これにより、ユーザーはサービスを中断することなく利用でき、ビジネスへの影響も最小限に抑えられます。
また、再発防止策の検討と実施は不可欠であり、同様のインシデントが繰り返されるリスクを低減し、システムの安定性と信頼性を向上させるために、根本原因の特定と予防措置が必要です。
インシデントを解決するためのポイント
最後に、インシデントを解決するためのポイントをまとめます。
- インシデント発生時に連絡先を決める
- インシデントの優先度・緊急度を決める
- 解決後は情報を残す
上記3つの詳細は、以下の通りです。
インシデント発生時に連絡先を決める
インシデントが発生した際、迅速に対応するためには、誰に連絡を取るべきかを明確にしておくことが重要です。
あらかじめ、インシデントの種類や影響度に応じた連絡先リストを作成し、全ての関係者で共有しておきましょう。
連絡先リストには、技術的な対応を行うエンジニアや、ユーザーへの通知を行う広報担当者、重大なインシデントの場合は経営層など、役割に応じた連絡先を記載します。
この情報を元に、インシデント発生時に速やかに適切な人材に連絡を取れます。
インシデントの優先度・緊急度を決める
インシデントの優先度と緊急度を適切に判断することは、効果的なインシデント管理において不可欠です。
優先度は、インシデントがビジネスに与える影響の大きさを表し、緊急度は、どれだけ迅速な対応が必要かを示します。
インシデントの優先度と緊急度を決める際は、以下の点を考慮します。
- 影響を受けるユーザーの規模と種類を確認する
- 業務への影響の大きさを見積もる
- セキュリティとコンプライアンスのリスクを評価する
- 放置することによる損失を推定する
これらの要因を総合的に判断し、優先度と緊急度を適切に設定しましょう。
結果として、リソースの配分や対応の順序を最適化できます。
解決後は情報を残す
インシデントが解決した後は、そのインシデントに関する情報を記録し、整理することが重要です。
解決までのプロセス、実施した対策、関係者からのフィードバックなどを文書化し、ナレッジベースに蓄積します。
この情報は、同様のインシデントが発生した際の参考になるだけでなく、インシデント管理プロセスの改善にも役立ちます。
また、定期的に情報を分析することで、インシデントの傾向や原因を特定し、予防策を講じることも大切です。
インシデント管理でよくある失敗
インシデント管理を効果的に実施するには、いくつかの課題があります。
これらの課題に適切に対処することで、インシデント管理のプロセスを改善し、より迅速かつ効率的な対応が可能です。
誰が対応するか明確に決まっていない
インシデントが発生した際、誰がそのインシデントに対応するかを明確にすることが重要です。
責任者や担当者を明確にすることで、スムーズな対応できます。
しかし、適切な人材が不足していたり、役割分担が不明確だったりすると、対応が遅れたり、効果的な解決ができない場合があります。
対策としては、インシデント対応のための役割と責任を明確に定義し、それぞれのインシデントに適した人材を割り当てることです。
対応できるスキルがなければ、定期的なトレーニングや教育を実施し、担当者のレベルを向上させましょう。
スキルのある人材がいない
インシデント管理には、技術的な知識やトラブルシューティングのスキルが必要です。
しかし、そのようなスキルを持った人材が不足していると、インシデントへの対応が難しくなるケースが少なくありません。
特に、複雑なシステムやテクノロジーに関するインシデントでは、高度な専門知識が必要です。
この課題に対処するには、人材育成に力を入れるか、外部で見つけるか、2つの方法があります。
人材教育は時間もコストもかかるため、外注先を見つけた方が早いケースがありますが、社内の人材が育たないリスクがあります。
まとめ:インシデント管理は企業にとって不可欠
適宜インシデント管理を行うことによって、トラブルが続いた際にもシステムを正常に稼働させることが可能です。
PDCAサイクルを回すことで、インシデントの予防に役立ちます。
しかし、日々発生するインシデントや問い合わせに対応するためには、しっかりとした体制が必要です。
エンジニアだけでなく、ヘルプデスクの社員にも対応できるよう、マニュアルを整備しましょう。効果的なインシデント管理体制を構築するには、専門的な知識と経験が求められます。
もし、自社でインシデント管理体制の整備に悩んでいる場合は、システム・アプリ開発の実績が豊富な株式会社Jiteraに相談してみてはいかがでしょうか。
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