これまで監視(防犯)カメラはスーパーや百貨店など、人の出入りが多い場所でよく目にしていました。しかし、昨今は防犯意識の高まりによって、街中や一般家庭にも導入されるケースが増えています。
導入される機会が増えた結果、ここ数年で監視カメラの種類が増え、新しい技術も取り入れられているのをご存知でしょうか。
その中でもAI(人工知能)を搭載し、撮影した映像データをクラウド上へ送信できるクラウドAIカメラが普及の兆しを見せ始めています。
この記事では、クラウドAIカメラの特徴や代表的な製品、導入するメリットについて詳しく解説。クラウドAIカメラに興味をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。

とある企業のシステム管理者として10年以上勤めています。 自身の経験や知識を活かし、誰にでも分かりやすい記事をお届けしたいです。
クラウドAIカメラとは?
クラウドAIカメラとは、カメラで撮影した映像をクラウド上へアップロードするだけでなく、AI(人口知能)処理を行ってくれる機能を持つカメラです。
通常、AI処理を行う場合は機器側に高い性能が必要となりますが、クラウドAIカメラは負荷のかかるAI処理をクラウド上で行うため、カメラ側は最低限の機能だけ持っています。
カメラ側にAI機能を持たせない代わりに、映像データをクラウド上へアップロードする機能があるもの、もしくは他の機器を使用してクラウド上へアップロードする必要があります。
AIカメラはカメラ側の設備は最低限でよく、また、すぐに利用できて導入コストを抑えられるので、お試し目的での利用はしやすいといえるでしょう。
クラウドAIカメラのメリット
クラウドAIカメラを導入するメリットはどういったものがあるでしょうか。
- 高度な画像認識・解析機能
- 大規模なデータ処理
- 拡張性の高さ
- 設置場所の自由度
ここでは、上記クラウドAIカメラのメリットについて詳しく解説します。
高度な画像認識・解析機能
AI技術は年々進化を続けており、それはクラウドAIカメラも例外ではありません。
AIが最も得意とする高度な画像認識・解析機能は、カメラで撮影した動画や静止画データを分析するのに最適な機能だといえます。
例えばスーパーなどでクラウドAIカメラを設置すれば、客層や年齢層、買い物カゴに入っている商品などを動画や静止画から解析し、客層に合った商品ラインナップへ見直すなど、店舗運営へ貢献できるでしょう。
大規模なデータ処理
従来の監視カメラだと、長時間かつ大量のデータを保管・解析しようとすれば、大がかりな設備や端末が必要となり、導入コストは跳ね上がっていました。
しかし、クラウドAIカメラであれば大規模なデータ処理はクラウド上で行ってくれるため、現場へ設置する端末は最低限でいい、もしくは端末自体が不要な製品も存在します。
カメラを長時間稼働させたい場合や、画像解析といった大規模なデータ処理を、コストを抑えつつ行えるのがクラウドAIカメラの大きなメリットの一つです。
拡張性の高さ
クラウドAIカメラは、各種クラウドサービスとも連携できるなど拡張性の高さもメリットに挙げられます。
これまでただ監視カメラとしての役割しか持っていなかったカメラでも、クラウドサービスと連携させれば、下記に挙げたような新たな活用方法を生み出せるでしょう。
- クラウドAIカメラによって商品の補充状況を確認
- レジを通さずに生産できる無人店舗の実現
- 施設内の混雑状況をリアルタイムに分析して提供
- 工場内にある機械の稼働状況をAIカメラで確認
設置場所の自由度
クラウドAIカメラは、設置場所の自由度が高いのも特徴です。
近年の製品はWi-Fi対応がほぼ標準となっており、電波が届く範囲内であれば好きな場所へ設置可能となっています。
インターネットへ接続できるWi-Fiであれば、AIカメラから直接クラウドサービスへのデータアップロードも可能です。
クラウドAIカメラの代表的な製品・サービス
ここまでクラウドAIカメラの概要やメリットをご紹介しましたが、クラウドAIカメラは多くの企業から特徴ある製品が販売されています。
1つの機能に特化したものや、様々な業種に対応するものまで、様々な製品やサービスが提供されていますので、自社のニーズに合致するクラウドAIカメラを探してみてください。
ここでは、クラウドAIカメラの代表的な製品・サービスをご紹介します。
OPTiM AI Camera
OPTiM AI Cameraは、混雑検出や簡易的な人数分析を中心としたクラウドAIカメラソリューションです。
様々な業種に対応しており、AIによる画像解析によって施設内の混雑や人数分析、アラート発報、混雑状況のWeb公開までサポートしています。
混雑状況を”見える化”し、状況に応じて適切な動線や人員配置が可能となるサービスといえるでしょう。
さらに多くのAI機能が使用できる上位版「OPTiM AI Camera Enterprise」も提供しています。
AIカメラサービス メバル
AIカメラサービス「メバル」は、1日ワンコイン以下で導入可能な低コストAIカメラサービスです。
人物や車両の検知に特化したAI機能を利用でき、施設や道路の混雑状況や、通行人や利用者数の解析へ活用できます。
最大の特徴ともいえるのが、業界最安値と謳う導入コストの低さです。最も安価なプランであれば、1台あたり月額5,000円から導入できるため、1日170円程度で利用できます。
機器のレンタルプランも展開しているため、トライアルとしての利用も可能となっているAIカメラサービスです。
Ciao Camera(チャオカメラ)
Ciao Camera(チャオカメラ)は、特許技術を利用して低価格化を実現したクラウドAIカメラサービスです。
従来の監視カメラを、独自のAI技術によって人間の目と同等レベルにまで引き上げるソリューションであり、カメラ本体をクラウドサーバと接続するだけで、録画・再生・モニタリング・分析などが24時間365日可能となります。
iPhoneに搭載されたカメラを利用するモバイル版も展開しており、カメラ本体を新しく導入するのが難しい状況であっても対応できるのもメリットです。
クラウドAIカメラの選び方
クラウドAIカメラは多くの企業から特色あるサービスが展開されていますが、自社に合ったクラウドAIカメラを選ぶにはどの点を基準にすればいいのでしょうか。
クラウドAIカメラを選ぶ際は、下記の部分に注目して選ぶのをおすすめします。
- 必要な機能があるか
- 導入・運用にかかるコストはどれぐらいか
- セキュリティ面はどうか
- 設置環境は整っているか
それぞれの内容について詳しく解説しますので、参考にしてみてください。
必要な機能
クラウドAIカメラは数多くの製品がありますが、それらに搭載されている機能も多種多様です。どの場面でも使える機能もあれば、特定の業種のみ活用できる機能だけといったケースもあります。
そのため、まずは自社にとって必要な機能が搭載されているかを必ず確認しましょう。
メーカーHPに記載があるケースもありますが、詳細が分からなければカタログの取り寄せや問合せを利用する、もしくはトライアルとして実際に利用してみるのもおすすめです。
コスト
多くのAI機能が搭載されている、もしくは高性能なカメラを使用する場合、導入時や運用コストは高くなる傾向にあります。
特にクラウドAIカメラは、クラウドサービスを利用するため毎月の利用料金がほぼ必須です。
台数に応じて利用料金が変動する場合がほとんどであるため、クラウドAIカメラの運用計画で決定したコストを超えない製品を選びましょう。
セキュリティ
クラウドAIカメラは、インターネット上にあるクラウドサービスへ接続する仕組みですが、そのサービスがどんなセキュリティ対策を講じているかは必ず確認してください。
カメラで撮影した映像データは、その施設を利用したお客様の顔が映っています。ある意味、名前や住所以上に重大な個人情報にもなり得るデータです。
セキュリティ対策を講じていないクラウドサービスを利用すると、最悪の場合、映像データが外部へ流出してしまい、顧客からの信頼は地に落ちると言っても過言ではありません。
利用を検討しているクラウドAIカメラが、どのようなセキュリティ対策を整備しているのかは事前にチェックしておきましょう。
設置環境(どこに設置するか)
クラウドAIカメラの設置環境、つまりどこに設置できるかも製品選びの重要なポイントです。
カメラによっては、天井や壁に取り付けられるタイプ、据え置きのみ、もしくはスマホのアウトカメラを使う製品など、設置できる条件も様々あります。
「据え置きを想定していたが、天井へ取り付けタイプしかない」といったミスマッチを防ぐためにも、クラウドAIカメラをどこに設置するのかは早めに決めておくのがおすすめです。
クラウドAIカメラの業種・業態別活用事例
公共施設においては混雑状況の把握、製造業においては生産ラインの監視など、クラウドAIカメラを活用できる業種やその使い方は様々です。
ここでは、クラウドAIカメラの業種・業態別活用事例について詳しく解説します。
小売業
小売業の場合、クラウドAIカメラによって主に撮影する対象となるのは「人」か「商品」となります。
いずれにおいても店舗の売上を伸ばす、もしくは顧客満足度を高めるのが目的になるため、クラウドAIカメラの導入は非常に効果的であるといえるでしょう。
万引き防止
クラウドAIカメラを監視カメラとして活用し、万引き防止に活用できます。
万引き防止に特化したAI機能によって、万引き犯がとる不審な行動(ウロウロする、キョロキョロする)をリアルタイムに解析して検知。
その人物を撮影した画像や場所を通知し、店舗のスタッフが実際に万引き犯を監視して、万引きを防止するといったものです。
店舗ごとに導入する方法はもちろん、本部による集中管理を行い、不審行動を検知した際に店舗担当者へ連絡をするといった方法もあります。
顧客行動分析
クラウドAIカメラは、顧客の行動分析も可能です。来店人数の集計を始めとして、下記のようなAI機能を備えている製品もあります。
- 店舗前の通行量
- 入店率
- 買い上げ率
- 来店する時間帯
- 客の属性(年齢や性別)を自動識別
- 滞在時間
これらのデータを収集し分析すれば、店舗の売上を伸ばすために今後どのような対策を取るべきかが明確になるでしょう。
AIによる行動分析機能が必要であれば、小売業に特化したクラウドAIカメラの導入をおすすめします。
商品陳列分析
小売業にとっては品切れ=機会損失であるため、単純に利益が減ってしまいます。
そのために商品が欠品していないかスタッフが目視で確認するのが一般的ですが、人的資源が限られる店舗にとっては、欠品ゼロを目指すのは容易ではありません。
その対策として考えられるのが、クラウドAIカメラを導入し、欠品管理を人間の目視からカメラによる自動化へ切り替えるという方法です。
小売業は商品の入れ替えが激しいため、商品1つ1つをAIへ学習させる従来の方法ではなく、陳列棚にスペースが空いている状況を学習させ、在庫状況を把握させる新しい仕組みも登場しています。
レジ待ち時間分析
店舗にとっても客側からしても、最も避けたいのはレジの待ち時間です。レジ待ち時間が長いのは、客が不満に思う=顧客満足度の低下へ繋がり、結果的に店舗の売上へダイレクトに影響してしまいます。
クラウドAIカメラのAI機能によって、レジ待ち状況を瞬時に感知してレジ応援のスタッフを配置するなど、レジ待ち時間削減が可能です。
製造業
製造業において、クラウドAIカメラが主に撮影するのは「工場内の設備」です。
生産ラインを監視して製造工程が問題ないか、もしくは、作業員の安全管理を行うのが主な目的で、近年では工場内はもちろん、倉庫内などでも活用され始めています。
従来では目視での確認が当たり前だった製造業へAIカメラを導入すれば、人的ミスを減らすだけでなく、業務効率化も図れるようになっているのです。
生産ライン監視
製造業にとっては生産ラインが滞りなく稼働しているのが大前提であり、正常に稼働させるため、また、製品の品質を保つために様々なチェックを行っています。
クラウドAIカメラに搭載されたAI機能、特に画像認識処理によって、生産ライン上で発生した不良品の検知や異物混入を未然に防ぐことが可能です。
また、従来は熟練した作業員でしか行えなかった品質チェックについても、AIによる画像認識処理によって熟練者の代わりを担えるようにもなってきました。
このように製造業へクラウドAIカメラを導入すれば、様々なメリットを得られるでしょう。
作業員安全管理
製造業においては、現場での作業員の安全管理も重要です。近年では、安全管理のためにクラウドAIカメラを導入するケースも増えてきています。
例えば、AIによる「動体検知機能」によって現場で転倒した作業員を瞬時に発見して通知を行えば、二次被害を未然に防げるため、作業員の安全確保が可能となるでしょう。
物流業
近年、物流業における労働力不足が社会問題化しており、従来とは異なる新しい手法を使って劇的な改善を求められているのが現状です。
そのため、物流業においてもICTやAI技術を活用し、人間が行っていた作業を自動化して人手不足を補うことが急務となっています。
そこで、物流業にクラウドAIカメラを導入すれば、効率的な倉庫管理や安全管理が可能となります。具体的にどんな活用方法があるのか確認してみましょう。
倉庫管理
物流業において、倉庫管理の最適化は最重要課題です。そんな倉庫内の作業を省力化させるため、クラウドAIカメラが活用されています。
倉庫内においてクラウドAIカメラを活用すれば、倉庫スタッフの作業状況の確認や業務の効率化が可能に。配送へ受け渡す際も、AIによる今後の需要予測を活用すれば、積載手順を効率化できるでしょう。
人間だけを対象とした機能だけでなく、倉庫内物品の在庫状況や保管場所の確認なども、クラウドAIカメラを使えば容易に実現できます。
安全管理
物流業において、クラウドAIカメラが活躍するのは倉庫内だけではありません。実際に荷物を運ぶドライバーの安全管理にも活用できます。
例えば、車内にAI機能を搭載したカメラを設置して居眠り運転の防止が可能に。AIによる画像認識でドライバーに居眠りの兆候が見られたら音を鳴らすなど、ドライバーの事故リスク減少にも活用できるようになっています。
公共施設
不特定多数の人が常に出入りしている公共施設においては、様々な場面でクラウドAIカメラを活用できるでしょう。
特に公共施設においては防犯対策に力を入れる必要があり、実際に2023年に渋谷駅周辺へ100台ものAIカメラが導入されたといった報道も話題になりました。
ここでは、公共施設におけるクラウドAIカメラの活用方法を確認していきます。
防犯対策
公共施設において防犯対策は急務だといえます。
近年は公共施設や街中での犯罪行為も跡を絶たず、諸外国と比べると”安全”だと言われている日本国内においても、これまで以上の防犯対策が求められているのが現状です。
クラウドAIカメラを導入すれば、AI機能によって館内の監視を強化できる、不審人物や急病人の早期発見などに役立つなど、人的資源を割かずとも防犯対策を強化できます。
また、街中に設置したクラウドAIカメラによって、人の流れや混雑度を事前に予測できるため、大規模イベント時の警備計画を適正化できるなど、あらゆる防犯対策へ活用できるでしょう。
施設管理
公共施設自体の管理にもクラウドAIカメラの活用が可能です。
不特定多数の人数が出入りする公共施設だからこそ、AIによる温度や湿度などの数値化や分析、混雑状況に応じた空調の自動調整など、人間では感じ取れない部分で細やかな施設管理が可能となります。
空調を適正に管理すれば省エネにも繋がるため、公共施設においてクラウドAIカメラの活用は様々なメリットが考えられます。
オフィス
通常のオフィスにおいても、クラウドAIカメラを活用できる場面は数多く存在します。中でも「業務の効率化」に着目したものが多く、どんな企業においてもすぐにでも実践できる活用方法が中心なのが特徴です。
ここでは、オフィスでの「入退室管理・勤怠管理」と「オフィスレイアウトの最適化」についてクラウドAIカメラを活用した方法について解説します。
入退室管理・勤怠管理
クラウドAIカメラをオフィスで活用すれば、入退室や勤怠管理の自動化も可能となります。
方法としては、あらかじめAIに従業員の顔写真を学習させてからIDと紐付けを行っておき、従業員が室内へ入退室した時刻を自動的に記録するといったものです。
重要書類が管理している部屋や業務システム用サーバー室など、従業員の入室を厳密に管理したい場所などにおすすめの活用方法となっています。
また、勤怠管理システムとも連携させておけば、出退勤も全自動で管理できるため、入退室と勤怠の同時管理も可能です。
オフィスレイアウト最適化
クラウドAIカメラを使って従業員の動線を映像として記録し、AIによる解析を行えば、オフィスレイアウトの最適化も可能です。
オフィス家具の配置場所や机の数などの動線を考慮して適正に配置すれば、1つ1つの行動が時短化され、結果的に業務の効率化につながります。
オフィス内だけでなく、社員食堂など職員の福利厚生に関係する部分にも応用すれば、従業員のモチベーションアップ効果も期待できるでしょう。
クラウドAIカメラのまとめ
今回は、従来の監視カメラとは違う「クラウドAIカメラ」の特徴、導入するメリットや代表的な製品・サービスをご紹介しました。
従来はただ録画して再生するだけであった防犯カメラも、近年飛躍的に成長したAI技術と組み合わせれば、様々な業種に活用できるソリューションへと進化しています。
特にAIが得意とする画像認識とカメラは相性が良く、人だけでなくモノや環境もチェックできるため、人の視覚だけでは実現できなかった活用方法が数多く生まれているのです。
クラウドAIカメラは多くの企業から提供されていますので、自社の業種やニーズに合った製品を選び、業務効率化に役立ててみてはいかがでしょうか。
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