JSPはかつて多くの企業で使われていた古い技術です。しかし、今でも使い方によっては価値あるもののひとつです。
この記事では、以下の内容をわかりやすく解説します。
- JSPの基本的な機能
- サーブレット、JavaScriptとの違い
- JSPの課題と「古い」と言われる理由
- JSPでの開発がおすすめのパターン
この記事を読めば、JSPについての理解が深まり、現代の開発環境でどう活用すべきかが明確になるでしょう。

Javaをメインとしたフルスタックエンジニアとして10年以上のキャリアを持ち、勘定系Webアプリケーションなど様々なプロダクトを開発。クラウドインフラ・DXコンサルティング・生成AIへとスキルを広げている。
JSP言語とは
JSPとは、Webアプリケーション開発に使用される技術の一つです。
「Java Server Pages」の略で、Java言語をベースとしたサーバーサイドの開発技術です。
JSPはHTMLの中にJavaのコードを埋め込むことができる特殊な技術で、動的なWebページを生成する仕組みを提供します。単なるプログラミング言語ではなく、HTMLとは異なる特性を持っています。
また、Webフロントエンド開発でよく使用されるJS(JavaScriptの略)とも異なるものです。JSとはクライアントサイドで動作するのに対し、JSPとはサーバーサイドで動作する技術です。
JSPはHTMLとJava言語の特徴を組み合わせた技術であり、JavaプログラマーがWeb開発に参入する際の学習コストを抑えられる点で重宝されています。
開発者は、JSP言語を使用することで、既存のJavaの知識を活かしながら、より柔軟で動的なWebアプリケーションを効率的に構築できます。
JSPの基本的な機能
JSPは様々な機能を備えており、Webアプリケーション開発においてサーバーサイドの処理を効率的かつ柔軟に実現します。その基本的な機能は、動的なコンテンツ生成から状態管理、さらにはコンポーネントとの連携まで多岐にわたります。
これらの機能がそれぞれ重要な役割を担い、開発者が迅速かつ効率的にWebアプリケーションを構築するための強力な基盤を提供します。以下に、JSPの主要な機能について詳しく見ていきましょう。
動的コンテンツ生成機能
JSPは、HTMLとJavaコードを組み合わせることで、ユーザーからのリクエストに応じて動的にWebページを生成することができます。この仕組みにより、静的なHTMLでは実現が難しい個別ユーザー向けのページや、リアルタイムでのデータ表示が可能になります。
さらに、フォームデータの処理やデータベースからの情報取得も容易に行うことができるため、柔軟で対話的なWebアプリケーションの構築が可能となります。
サーブレット変換機能
JSPファイルは、Webサーバー上で自動的にJavaのサーブレットにコンパイルされます。
コンパイルとは、ソースコードを機械が理解できる中間コード(バイトコード)やネイティブコードに変換するプロセスであり、この変換によって、効率的な実行環境が実現され、高いパフォーマンスを維持することができます。
また、この仕組みにより、JSPは通常のHTMLの記述に近い形式で簡単に書ける上に、サーブレットのように強力な処理能力を持つという利便性が生まれます。
スコープ管理機能
JSPでは、ページスコープ、リクエストスコープ、セッションスコープ、アプリケーションスコープの4種類のスコープを管理することができます。
それぞれのスコープは用途に応じてデータの有効範囲を制御し、データの競合や不要な保持を防ぐ役割を果たします。
ページスコープはJSPページ内での一時的なデータ管理、リクエストスコープは1つのHTTPリクエスト内でのデータ共有に適しています。
セッションスコープはログイン情報などユーザー単位のデータ管理に使用され、アプリケーションスコープは全ユーザーで共有する設定データの管理に役立ちます。
この機能により、効率的なデータ管理とスケーラブルな設計が可能となります。
状態管理機能
JSPは、セッション管理やクッキー管理を通じて、ユーザーの状態を追跡し、保持することができます。これにより、ユーザーが複数のページにまたがって操作を行う場合でも、一貫性のある体験を提供することが可能です。
たとえば、オンラインショッピングでは、カートに追加された商品の情報をセッションとして管理し、ユーザーが購入手続きを進める間も状態を保持する仕組みが実現できます。
このように、状態管理機能は、継続的なサービス提供やパーソナライズされた体験の提供に欠かせません。
コンポーネント連携機能
JSPは、再利用可能なカスタムタグやコンポーネントと容易に連携することができます。これにより、開発効率を大幅に向上させ、コードの再利用性を高めることができます。
カスタムタグを使用することで、共通のUIコンポーネントや複雑なロジックを簡単に実装できるため、大規模なアプリケーションの開発や保守が容易になります。
また、これらのコンポーネントを適切に管理することで、アプリケーション全体の保守性を向上させることが可能です。
JavaBeansとの連携
JSPは、JavaBeansとシームレスに統合することができます。これにより、ビジネスロジックをわかりやすく記述し、プレゼンテーション層とロジック層を分離することが可能です。
たとえば、JavaBeansを使用してデータベースのデータを管理し、JSPでそのデータを簡単に表示することができます。
この設計は、コードの再利用性を高めるだけでなく、保守性を向上させ、アプリケーションの開発効率を大幅に向上させます。
MVC2アーキテクチャ対応
JSPは、Model-View-Controller(MVC)パターンに基づいたアーキテクチャ設計に対応しています。これにより、アプリケーションの構造が整理され、ロジックとプレゼンテーションの分離が明確になります。
特に、大規模なWebアプリケーション開発において、MVC2アーキテクチャを採用することで、保守性や拡張性が飛躍的に向上します。
また、JSPがViewの役割を担い、サーブレットやJavaBeansがそれぞれControllerやModelの役割を果たすことで、役割分担が明確になり、チーム開発においても効果的な分業が可能となります。
JSPとサーブレット、JavaScriptの違い
JSP・サーブレット・JSはいずれもウェブアプリケーション開発のための技術ですが、それぞれには大きな違いがあります。
ここでは、以下の3つの違いについて詳しく解説します。
- 実行場所の違い
- 言語の違い
- 主な用途の違い
比較項目 | JSP | サーブレット | JavaScript |
---|---|---|---|
実行場所 | サーバーサイドで実行され、JSPファイルが動的にHTMLを生成 | サーバーサイドで実行され、JSPファイルがコンパイルされた形態 | クライアントサイドで実行され、ブラウザで動的にHTMLを操作 |
言語 | Javaベースの技術。HTMLにJavaコードを埋め込む形式 | Javaベースの技術。純粋なJavaコードで記述 | 独立したスクリプト言語。Javaとは異なる文法体系 |
主な用途 | ユーザーインターフェースの作成、表示ロジックの処理 | バックエンド処理やリクエスト・レスポンスの管理 | 動的な要素の制御、ユーザーとのインタラクションの処理 |
特徴 | サーバーでHTMLを動的に生成し、クライアントに送信 | 高度なプログラム制御が可能 | リアルタイムでブラウザ上の操作や変更を実現 |
実行場所
JSPとサーブレットはサーバー側で実行される技術です。サーブレットはJSPファイルがコンパイルされた後の形態となります。
一方、JavaScriptはクライアント側、つまりユーザーのブラウザ上で実行される技術です。この実行場所の違いにより、それぞれの技術の特徴と役割が明確に分かれています。
これらをサーバー上で動作させるために利用される代表的なアプリケーションサーバーがTomcatです。Tomcatとは、JSPやサーブレットを効率的に実行するためのJavaベースのサーバーで、動的なWebアプリケーションの運用を支援する環境を提供します。
言語
JSPとサーブレットはJavaベースの技術で、Java言語の文法に従います。JSPはHTML内にJavaのコードを埋め込む形式をとり、サーバーサイドで動的にコンテンツを生成します。
一方、サーブレットは純粋なJavaコードで記述され、よりプログラム的な制御が可能です。
これに対して、JavaScriptはクライアントサイドで動作する独立したスクリプト言語であり、Java言語とは異なる文法体系を持っています。以下に、それぞれの簡単なサンプルコードを示します。
JSPサンプルコード
<% String name = “John”; %>
<html>
<body>
<p>Hello, <%= name %>!</p>
</body>
</html>
このように、JSPはHTMLの記述とJavaの記述を1つのファイル内で結合し、サーバーサイドで動的にHTMLを生成します。
サーバーがこのコードを解釈し、Javaコードを実行して最終的なHTMLをクライアントに送信します。そのため、クライアント側ではJavaの処理が隠蔽され、純粋なHTMLが表示される仕組みになっています。
JavaScriptサンプルコード
<html>
<body>
<p id=”greeting”></p>
<script src=”example.js”></script>
</body>
</html>
JavaScriptファイル (example.js)
let name = “John”;
document.getElementById(“greeting”).innerText = `Hello, ${name}!`;
このように、JavaScriptはHTMLファイルとは別にスクリプトファイルを分離して記述し、クライアントサイドで動的にHTMLを生成します。
ブラウザでJavaScriptが実行されることで、指定されたHTML要素(この場合は<p id=”greeting”>)に動的な内容が挿入されます。
JSPとは異なり、サーバーサイドでの処理は行わず、クライアントサイドでリアルタイムに操作を行うのが特徴です。
主な用途
JSPは主にユーザーインターフェースの作成や表示ロジックの処理に使用され、サーブレットはバックエンド処理やリクエスト・レスポンスの管理を担います。
JavaScriptはウェブページの動的な要素の制御や、ユーザーとのインタラクションの処理に利用されます。これらの技術を適切に組み合わせることで、より効果的なWebアプリケーション開発が可能となります。
JSPの課題と「古い」と言われる理由
JSPは長年にわたり多くのWebアプリケーション開発で使用されてきた技術ですが、近年のWeb開発の急速な進化により、いくつかの課題が表層化してきています。
フロントエンド技術の進歩や開発手法の変化を受けて、JSPが「古い」技術と評価される理由を、JSPの持つ主な課題と共に見ていきましょう。
技術的な課題がある
JSPではHTMLとJavaコードが同じファイル内に混在するため、コードの可読性や保守性が低下する問題があります。特に大規模なアプリケーションでは、この問題が顕著になり、長期的な保守が困難になることがあります。
また、フロントエンドとバックエンドのコードが密接に結びついているため、それぞれの独立した開発や改修が難しくなります。
モダンな開発手法と適合しない
現代のWeb開発では、マイクロサービスアーキテクチャやAPI駆動開発が主流となっています。
しかし、JSPはこれらのモダンな開発手法との親和性が低く、特にフロントエンドとバックエンドを明確に分離する開発スタイルとは相性が良くありません。
フロントエンド技術が進化している
React、Angular、Vue.jsなどのモダンなフロントエンドフレームワークの台頭により、Webアプリケーションの開発手法は大きく変化しています。
これらの技術は、コンポーネントベースの開発や状態管理など、より効率的な開発手法を提供しており、JSPはこれらと比較すると機能面で見劣りする部分が多くなっています。
開発効率に問題がある
JSPを使用した開発は、現代のフレームワークと比較すると開発効率が低くなりがちです。テンプレートエンジンとしての機能が限定的であり、開発者は多くのボイラープレートコードを書く必要があります。
また、ホットリロードなどの開発者体験を向上させる機能も不足しており、結果として開発サイクルが長くなる傾向があります。
しかし、既存のJSPで構築されたシステムを維持・改良する場面も少なくありません。その際には、効率的に設計書を自動生成できるツールを活用することで、従来のJSP開発の課題を補うことが可能です。
JSPでの開発がおすすめのパターン
このような課題があるものの、JSPには長年の実績とJavaエコシステムとの高い親和性があります。特に、セキュリティ要件が高く、バックエンドとの連携が重要なシステムにおいて、JSPの採用は合理的な選択となる場合があります。
以下に、JSPが特に効果的に活用できるパターンをいくつか紹介します。
管理画面系のアプリケーション
社内向けの管理システムやバックオフィス系のアプリケーションでは、JSPの採用が適しています。Javaの堅牢なセキュリティ機能とセッション管理機能を活用でき、また頻繁なUIの更新が必要ない場合が多いため、JSPの特長を活かせます。
フォームベースのアプリケーション
データ入力や申請処理など、フォームを多用するアプリケーションにおいて、JSPは サーバーサイドバリデーション(サーバー側での入力値検証)を容易に実装できます。
また、JSTL(JSP Standard Tag Library)やカスタムタグを活用することで、フォーム処理の共通化も効率的に行えます。
レポート/帳票系アプリケーション
データベースからの情報取得と表示が主な機能となるレポート系システムでは、JSPのテンプレート機能と Java の データ処理能力を直接組み合わせられる利点があります。
特に、PDFやExcel形式での出力が必要な場合、Javaの豊富なライブラリを活用できます。
小規模なECサイト
商品管理や在庫管理など、バックエンド処理が重要な小規模なECサイトでは、JSPとJavaによる一貫した開発が有効です。
特に、トランザクション管理や決済処理など、信頼性の確保が重要な機能において、実績のあるJSPとJavaの組み合わせは安定した選択肢となります。
これらのパターンに共通するのは、フロントエンドの華やかさよりも、バックエンドとの確実な連携や堅牢性が重視される点です。
MVCパターンの採用やコードの適切な分離など、ベストプラクティスを意識した開発を行うことで、JSPの特性を最大限に活かすことができます。
まとめ:JSPでの開発は活用シーンで使い分けましょう
JSPは、サーバーサイドで動的なWebページを生成するための技術です。
Java言語をベースとしているため、Javaの豊富なライブラリやフレームワークを活用でき、HTML内にJavaコードを埋め込むことで動的なページを作成できます。また、サーブレットと組み合わせることでロジックの分離も可能です。
一方で、モダンなフロントエンド技術と比べるとインタラクティブなページ作成には制限があり、複雑なアプリケーション構築には限界があります。
そのため、Javaを使ったバックエンド処理が中心のアプリケーションではJSPが適していますが、フロントエンド中心の開発ではJavaScriptなどの他の技術を使用することが適切な場合もあります。シーンに応じた技術選択が、効率的なWeb開発につながります。
JSPでの開発に関する質問、相談、依頼がある場合、実績豊富な株式会社Jiteraに一度ご相談ください。
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