Dartは、JavaScriptを超えるパフォーマンスと安全性を兼ね備えた、今注目のプログラミング言語です。
Google開発のオープンソース言語であるDartは、Web、モバイル、サーバーサイドなど、幅広い開発環境で活躍します。
この記事では、Dartでできることや開発事例などを詳しくご紹介します。
高校からHTML/CSS/COBOL/C++/Rubyに触れ、システム管理やCMSなど幅広く網羅。建築士から転身し、Webメディアの制作を主軸とした会社を設立。ITパスポート所有。趣味は建築物巡り。
Dart(ダート)とは
Dartは、Googleによって開発されたオープンソースのプログラミング言語です。
JavaScriptのような動的型付け言語でありながら、C#のような静的型付け言語の利点も兼ね備えています。
Webやモバイル、デスクトップ、サーバーサイドまで、あらゆるプラットフォームで動作する汎用プログラミング言語です。
Dartは、開発者の生産性とコードの品質を向上させる次世代のプログラミング言語です。
以下の画像のように、シンプルなコードでプログラムを実行させることができます。
出典:Dart programming language | Dart
DartとJavaScriptの違い
DartとJavaScriptは、Web開発でよく使用されるプログラミング言語ですが、いくつかの重要な違いがあります。
項目 | Dart | JavaScript |
型付け | 静的型付け | 動的型付け |
パフォーマンス | 高速 | 比較的遅い |
学習曲線 | 比較的易しい | 比較的難しい |
主な用途 | Web、モバイル、デスクトップ、サーバーサイド | Web |
型付けの違い
一番大きな違いは型付けです。Dartは静的型付け言語であるため、変数の型を事前に宣言する必要があります。
これは、実行時エラーを防ぎ、コードの安全性と信頼性を高めることが可能です。
一方、JavaScriptは動的型付け言語であるため、変数の型を宣言する必要はありません。開発を迅速化できますが、実行時エラーが発生する可能性があります。
パフォーマンスの違い
パフォーマンスについても違います。
DartはJavaScriptにコンパイルされるため、JavaScriptよりも高速な動作を実現します。
これは、パフォーマンスが重要なアプリケーション開発において大きなメリットです。
学習曲線の違い
DartはJavaScriptと共通点が多いため、JavaScript経験者であれば比較的習得しやすいと言えますが、初心者には少し難しいと言われています。
しかし、JavaScriptは歴史が長く、学習リソースが豊富なので、初心者でも学習しやすいでしょう。
主な用途の違い
DartはWebやモバイル、サーバーサイドなど、さまざまな開発環境で使用可能です。
一方、JavaScriptは主にWeb開発で使用されます。
さらに、DartはFlutterというモバイルアプリ開発フレームワークが有名で、JavaScriptにはReact、Vue.js、Angularなど、さまざまなフレームワークがあります。
Dartの特徴
Dartは高いパフォーマンスや学習のしやすさなどの多くの特徴を持ちます。
ここでは、Dartの7つの特徴について詳しく解説します。
高速で効率がよい
DartはJavaScriptよりも高いパフォーマンスを発揮する言語です。
AOT(Ahead-of-Time)コンパイルによってネイティブコードに変換されるため、モバイルアプリやデスクトップアプリで速度の高さを発揮します。
TechEmpowerのベンチマークテストによると、DartはJavaScriptよりも2倍以上の速い処理が可能とされています。
また、Dartのガベージコレクション機能はメモリ管理によるパフォーマンス低下を防ぎ、効率的な動作の維持が可能です。
Flutterと組み合わせると美しいUIと高いパフォーマンスを両立したアプリの開発が期待できます。
安全で信頼性が高い
Dartは静的型付けと言って、コンパイルを行う言語です。コンパイル時に型チェックが行われるため、実行時のエラーを未然に防ぐことができます。
そのため、信頼性の高いコードを構築でき、大規模なアプリケーションや長期にわたるプロジェクトにおすすめです。
また、DartはNull安全性を標準でサポートしているため、一般的なエラーを高確率で回避できます。
シンプルで学習しやすい
DartはJavaScriptやC#と似た文法なので、これらの言語に慣れている開発者にとっては学習に対するハードルが低く、さらにはすぐに習得しやすい言語と言われています。
先にご紹介したようにコードの保守性も高く、ミスを減らすことも可能です。
一方で、関数型プログラミングやジェネリクスなどの高度な機能も持っているため、完璧に使いこなすためにはある程度の学習がは必要です。
オープンソース
Dartはオープンソースなので、誰でも自由に利用・改良が可能です。
開発者のコミュニティが活発で、定期的にアップデートが行われます。また、GitHub上でソースコードが公開されているため、独自のカスタマイズを行うことが可能です。
オープンソースであることで、他の開発者と連携しやすい環境が整っている点が非常に魅力と言えます。
Flutterと相性がいい
Flutterとの相性が良く、モバイルやWeb、デスクトップアプリケーションを一つのコードベースで開発できる点が大きな特徴です。
FlutterのウィジェットベースのUI設計はDartの処理性能の高さと相性が良く、スムーズで美しいインターフェースを作成できます。
さらに、Dartのネイティブコンパイルによってパフォーマンス面においても優れているため、クロスプラットフォーム開発におすすめと言えます。
マルチプラットフォーム対応
Dartはマルチプラットフォーム対応の言語なので、同一のコードベースで開発ができます。
開発の効率が大きく向上するため、どのデバイスやOSでも一貫性のある使い心地を感じられます。
Flutterを活用すれば、iOSやAndroidなどのさまざまなプラットフォーム向けにシームレスな開発ができるため、コスト削減も可能です。
大規模開発ができる
Dartは、大規模なアプリケーション開発にも適しています。
静的型付けによって実行時のエラーを防ぎ、クラスやライブラリを活用することでコードの再利用ができたり保守性を向上させたりできます。
複雑なUIや機能が多いアプリケーション開発も可能です。オープンソースなのでコミュニティやライブラリも充実しており、大規模プロジェクトでも開発しやすい環境が整っています。
Dartでできること
Dartは、Webやモバイルアプリ、デスクトップアプリケーションなど、さまざまなプラットフォームに対応した開発が可能です。
Flutterと組み合わせることで、クロスプラットフォーム開発の効率が向上したり、サーバーサイド開発ができたりします。
ここでは、Dartでできることを6つご紹介します。
Webアプリケーション開発
Dartは、Webアプリケーション開発が可能です。
Flutterフレームワークを使用すると、一つのコードベースでモバイルアプリと同じようにWebアプリケーションの構築ができ、開発の効率化が図れます。
また、DartはJavaScriptにコンパイルされるため、ブラウザで直接実行できるのも特徴です。
サーバーサイド開発
Dartはサーバーサイド開発にも利用できます。
Dart VMを用いることで効率的なサーバーサイドアプリケーション構築が可能です。
また、HTTPサーバーの構築やWebSocketの処理が簡単にでき、非同期処理も得意とするため、リクエストが多いアプリケーションにもピッタリです。
さらにAqueductなどのフレームワークを活用することでREST APIやデータベース連携も簡単で、バックエンド開発にもおすすめです。
デスクトップアプリケーション
Flutterを活用することでWindows、macOS、Linux向けのデスクトップアプリケーションの作成も可能です。
クロスプラットフォーム対応のUIを構築できるため、異なるデバイスやOSにおいても同じコードベースで動作するアプリケーションを作れます。
Dartのパフォーマンスと文法のシンプルさも、デスクトップ向けのアプリケーション開発にとって大きな魅力といえます。
モバイルアプリケーション開発
Dartは、Flutterと組み合わせることで、iOSとAndroid向けのモバイルアプリケーション開発が可能です。
コードベースが一つあれば両プラットフォームに対応したアプリを作成できるため、開発コストや時間を大幅に削減できます。
アニメーションやカスタムウィジェットを使ったUIの開発が得意で、仕事用のアプリやゲームなどさまざまなアプリケーションに対応できます。
コマンドラインツール
コマンドラインツールの開発にもピッタリで、CLIアプリケーションを手軽に作成できます。
ファイルシステムの操作やHTTPリクエストの処理、リソースの管理など、タスクを自動化するツールも構築可能です。
また、Dartは非同期処理が得意なので、大量のデータを素早く処理するスクリプトの作成にも向いています。
データ処理と分析
データ処理や分析の用途でも利用ができます。
膨大な量のデータセットを処理するための非同期機能やジェネレーターを備えています。また、データ解析や機械学習向けのライブラリが豊富に揃っているため、活用することでデータの収集や分析、可視化などのタスクを自動化できます。
リアルタイムで行うデータの処理や解析が必要なアプリケーション開発で大きな力を発揮します。
Dartを使用したアプリケーションの例
ここからは、Dartを使用したアプリケーションの具体例を紹介します。ぜひ開発の参考にしてください。
Webアプリケーション:Adobe XD
Adobe XDはDartで開発されたUI/UXデザインツールです。Adobe XDは、UI/UXデザインツールとして高い評価を得ています。
Dartで開発されているため、高速で安定した動作、高いパフォーマンス、オープンソース、活発なコミュニティなどのメリットがあります。
モバイルアプリケーション:Google Ads
Google AdsはGoogleの広告配信プラットフォームです。Google Adsは、主にJava、Python、JavaScriptなどの言語を使用して開発されていますが、一部にDartが採用されています。
Google Adsの開発言語に関する公式情報は公開されていないため、どこにDartが使われているかの詳細については推測するしかありませんが、Dartは、Web、モバイル、サーバーサイドなど、幅広い開発環境で使用できる言語です。
今後、Google Adsの開発にDartがより広く使用される可能性は十分に考えられます。
デスクトップアプリケーション:LimeChat
LimeChatは、オープンソースのマルチプラットフォームチャットクライアントです。Dartを使用して開発されており、Windows、Mac、Linux、Android、iOSで動作します。
高いパフォーマンスや安全性、モジュール性、クロスプラットフォーム開発などのDartの機能を活かして開発された、高機能で使いやすいIRCクライアントです。
サーバーアプリケーション:Aqueduct
AqueductはDartで開発されたオープンソースのWebフレームワークです。RESTful APIの開発に特化しており、高速で軽量な動作が特徴です。
以下のようなWebアプリケーション開発に適しています。
- マイクロサービス
- モバイルアプリのバックエンド
- サーバーサイドレンダリング
- IoTデバイス向けのAPI
Aqueductは、DartでRESTful APIを開発するための優れたフレームワークです。
高速で軽量、シンプルで使いやすい、拡張性が高い、活発なコミュニティがあるなどの特徴があります。
マイクロサービス、モバイルアプリのバックエンド、サーバーサイドレンダリング、IoTデバイス向けのAPIなど、さまざまなWebアプリケーション開発に適しています。
Dart開発のデメリット
Dartは、Web、モバイル、サーバーサイドなど、幅広いプラットフォームで動作する汎用的なプログラミング言語です。近年、その注目度が高まっており、多くの開発者がDart開発に挑戦しています。
しかし、Dart開発にはいくつかの課題があります。
ライブラリやフレームワークの不足
Dart開発におけるライブラリやフレームワークの不足は、状況によって課題になる可能性があります。
以下の場合、課題となる可能性があります。
- 特定の機能を実現するためのライブラリが存在しない
- 既存のライブラリが機能不足、使いにくい、メンテナンスされていない
- 複数のライブラリを組み合わせて複雑な処理を実現する必要がある
- 最新の技術に対応したライブラリが少ない
自分でライブラリを開発すると解決できることが多いです。
また、オープンソースのライブラリを利用したり、Flutterなどのフレームワークを利用したりすれば解決できます。
Dartは比較的新しい言語なので、他の言語と比べるとライブラリやフレームワークの数は少ないです。今後、Dartの開発が活発化していくと、ライブラリやフレームワークの数も増えていくと考えられます。
コミュニティの規模が小さい
Dart開発は、Flutterフレームワークと密接に関連しており、Flutter開発者コミュニティの規模と密接に関係しています。
Flutter開発者コミュニティは、近年急速に成長しており、2023年には200万人を超える開発者がいると推定されています。
Dart開発者コミュニティは、Flutter開発者コミュニティ全体の一部であり、その規模は数十万人規模と推定されています。
他の主要なプログラミング言語のコミュニティと比較すると小さい規模ですが、近年急速に成長しています。
広く採用されている言語ではない
Dartは広く採用されている言語とは言えません。Dartは2011年にリリースされた比較的新しい言語で、まだ利用者が少ないです。
また、DartはWebブラウザやモバイルデバイスで標準言語として採用されていません。
ただ、近年DartはFlutterフレームワークの普及により注目度が高まっています。
Flutterは、Dartを使用して開発できるモバイルアプリケーションフレームワークです。Flutterは高いパフォーマンスと美しいUIを実現できることから、多くの開発者に採用されています。
今後、DartはFlutterフレームワークの普及とともに、より広く採用される言語になる可能性があります。
Dartに将来性はある?開発市場での位置づけ
2011年にリリースされて以来、Web開発、モバイル開発、サーバーサイド開発など、さまざまな分野で利用されています。
先ほどもいいましたが、Flutterフレームワークの普及により注目度が高まり、利用者も増えています。
Flutterは、Dartを使用して開発できるモバイルアプリケーションフレームワークです。
Flutterは高いパフォーマンスと美しいUIを実現できることから、多くの開発者に採用されています。
Flutterの普及により、Dart開発の需要はますます高まっています。
今後、Dartは以下のような分野で広く利用されることが期待されます。
まとめ:Dartを活用してビジネスを加速
Dartは、さまざまなビジネスシーンで活用できる言語です。
Dartは、JavaScriptと比べて高速で安全、学習コストも低い言語です。Web、モバイル、サーバーサイドなど幅広いプラットフォームで動作し、さまざまな開発用途に利用できます。
DartはGoogleが開発している言語なので、ますます注目度が高まる言語でしょう。
多くの開発者がDart開発に挑戦していくことが予想されます。もし効率のいいシステム開発を目指してるならば、株式会社Jiteraへお問い合わせください。
ニーズに合わせたシステム開発のお手伝いをさせていただきます。