AI画像解析(Artificial Intelligence Image Analysis)とは、人工知能(AI)を使用して画像を解析するプロセスを指します。コンピュータビジョン・画像処理・機械学習の分野が組み合わさったもので、さまざまな分野で使用されている技術です。
幅広い使用用途が存在するので、実際に活用してみたいと考える方も少なくないでしょう。そこでこの記事では、現代社会に定着しつつあるAI画像解析の特徴や仕組み、事例などを解説しています。合わせておすすめのソフトも紹介していくので、興味がある方は是非最後までご一読ください。
IT関連の会社でWebコーダー、某携帯キャリアでネット回線や携帯販売を行っていました。現在はライターを中心に、仕事で得た知識を活かして幅広く活動中。音声や動画の制作など、もの造りが好きです。
AI画像解析の特徴
AI画像解析と似たような言葉に画像認識技術が存在します。画像認識技術とは画像内の特定のパターンや構造を識別するための、広範囲な技術分野画像処理の技術全般です。一方、AI画像解析は機械学習やディープラーニングなどのAI技術を用いて画像を解析する違いがあります。
AI画像解析には4つの特徴があります。それぞれに焦点を当ててみていきましょう。
作業の自動化と高速化が可能
通常人間が行う画像の判定作業は1枚の画像の確認に時間が発生するうえに、人為的ミスのリスクがありました。しかしAI画像解析は、大量の画像データを迅速に処理できるため、作業の自動化と効率化が期待できます。人間が見落とす部分もAIが細かくチェックするので、人員の負担も最小限で済みます。
高精度の識別能力
AIモデルは適切にトレーニングを行っていけば、人間の目と比較して高い精度で画像内のオブジェクトや特徴の識別が可能です。特に、深層学習モデルを使用すれば、精度はさらに向上するでしょう。高い認識精度を持つAI画像解析アプリに、画像から翻訳や検索を自動で実行できるGoogleレンズが挙げられます。
応用分野が多様
AI画像解析は、医療診断・自動運転・セキュリティ監視・製造業・農業・芸術創作と幅広い分野で幅広く応用されています。専門性が高い分野であっても、特定の画像の認識を行うように学習させられるので、独自性のある画像解析が実現可能です。
画像データを活用した多種多様な課題に対応するため、日々新しいアプリケーションの開発が進んできます。
カスタマイズが可能
AI画像解析は、特定のアプリケーションや業界に合わせてカスタマイズが可能です。
従来の画像認識技術は拡張の幅はあまり広くありませんでしたが、AIの実装でカスタマイズ性は飛躍的に向上しました。ユーザーは、必要に応じてモデルのトレーニングやパラメータの調整を施し、特定の要件やニーズに適した解決策を実現できます。
AI画像解析の事例
AI画像解析には実際にどのような活用事例があるのでしょうか。ここでは2つの業界での活用事例をそれぞれ解説します。
製造業での不良品検出
製造業におけるAI画像解析の活用事例の一つに、不良品検出があります。製造ラインでの製品の品質管理は非常に重要であり、不良品の早期発見とその排除は、コスト削減や顧客満足度向上につながります。以下は、不良品検出にAI画像解析を活用した具体的な事例です。
- 外観検査
- 欠品部品の特定
- 異常検知
- リアルタイム検査
外観検査では、製造ライン上で製造された製品の外観を画像で撮影し、AI画像解析を使用して不良部分を検出します。例えば、表面の傷やひび割れ・色の不均一性・欠陥を検知します。製品の部品や構成要素の中で、不良となる可能性のある特定の領域やパターンの識別は、AI画像解析の事例の一つです。溶接部の不良や部品の組み立てミス、微細な部品の欠陥を検出できます。
異常検知は、通常の製品とは異なる特徴やパターンを持つ製品を検出します。製品が正常な製造プロセスから外れた場合や、材料の異物混入などの異常があった場合に、早期に発見して対応が可能です。
また、リアルタイムな製品の検査で不良品を自動的に排除できます。検査では生産効率の向上と不良品の購入を、最小限に抑えることが可能です。製造業における不良品検出のためのAI画像解析は、従来の人動検査や人間の目視検査に比べて、効率的で正確な結果を提供して製品の品質向上に貢献しています。
医療での診断支援システム
医療での診断システムでは、AI画像解析が活用される事例は多岐にわたりますが、以下はその一例です。
- X線やMRIの画像解析
- 病理学的検査の支援
- 糖尿病網膜症のスクリーニング
- 皮膚疾患の診断支援
AI画像解析は、X線やMRIなどの医療画像を解析して疾患や異常を検出して医師の診断を支援します。肺がんや乳がんの早期検出、脳卒中の早期診断が挙げられます。
病理学的検査では、顕微鏡で観察された組織サンプルの画像を解析して異常な細胞や組織を検出し、例えば、がん細胞の検出や病理診断の支援に役立っています。糖尿病網膜症は、糖尿病患者の目の網膜に影響を与える疾患であり、早期発見が重要です。AI画像解析では、網膜画像を解析して異常を検出し、医師にスクリーニング結果を提供します。
他に、皮膚の画像を解析して、皮膚疾患や皮膚癌の早期診断や病変の追跡を支援します。AI画像解析は、皮膚の色・形状・境界の特徴を分析して、異常を検出することが可能です。AI画像解析は、医療分野でさまざまな診断支援タスクに活用されており、診断の迅速化や精度向上、医師の負担経験の効果が期待されています。
AI画像解析の仕組み
AI画像解析は、大量の画像データを迅速かつ効率的に処理できるため、作業の自動化と処理速度の向上が期待できます。この項目では、AI画像解析の仕組みをみていきます。
画像入力から分類、検出、セグメンテーション
AI画像解析は、主に以下の3つの処理で構成されています。それぞれを順序だてて、仕組みを解説していきます。
- 分類
- 検出
- セグメンテーション
分類
AI画像解析での分類の手順を、以下の表にまとめました。解析は、表の上から順番に処理されます。
処理 | 説明 |
データ収集と前処理 | 画像データセットを収集して必要に応じて前処理をします。 前処理には、画像のサイズの統一・明るさやコンストラクトの調整・ノイズの除去が含まれます。 |
特徴抽出 | 画像から特徴を抽出するには、たたみ込みニューラルネットワーク(CNN)などのディープラニングモデルを使用が一般的です。 CNNは、画像内の特徴やパターンを自動的に学習して抽出する強力なモデルです。 |
モデルのトレーニング | 抽出された特徴を入力として、機械学習モデルをトレーニングします。 一般的なアプローチには、バックプロパゲーションや確率的勾配降下法の最適化アルゴリズムを使用して、モデルの重みを調整する方法があります。 |
モデルの評価と検証 | 検証用データセットを使用してモデルを評価して、モデルの性能や汎化能力を評価し、必要に応じて調整や改善を行うことが可能です。 |
予測 | 新しい画像に対してモデルを適用し、予測を行えます。 モデルは、与えられた画像がどのクラスに属するかを予測して、それに対応するクラスラベルを出力します。 |
上記の手順で、犬か猫かのような二値分類から、複数のクラスに分類する多クラス分類まで多岐にわたるタスクへの対応が可能です。
検出
AI画像解析における検出手順を以下の表にまとめました。以下の手順に沿って、AI画像解析での検出を行います。
処理 | 説明 |
たたみ込みニューラルネットワーク(CNN)の活用 | CNNは、画像処理タスクにおいて非常に有効なモデルで、たたみ込み層・プーリング層・活性化関数・全結合層といった層で構成されています。 特に、たたみ込み層は画像の特徴を抽出するための重要な役割を果たします。 |
特徴マップの生成 | 入力画像がCNNに与えられると、たたみ込み層は画像内のさまざまな特徴を抽出するためにフィルターを適用し、各層で特徴マップが生成されます。 |
特徴の階層的な抽象化 | CNNは、層ごとに特徴の抽象化します。 特徴の階層的な抽象化を通じて、画像内の情報がより意味のある表現に変換されます。 |
転移学習 | 大規模なデータセットでトレーニングされたモデルの抽象化された特徴を利用して、少量の新しいデータに対しても効果的な特徴抽出が可能です。 |
特徴ベクトルの生成 | 最終的に特徴マップはフラット化されて、特徴ベクトルが生成されます。 特徴ベクトルは、機械学習モデルに入力されて、分類・検出・セグメンテーションなどのタスクに使用されます。 |
AI画像解析における検出のプロセスは、画像内の情報を意味のある表現に変換して、その後のタスクに使用するための重要なステップとなっています。
セグメンテーション
セグメンテーションは、画像内の異なる領域やオブジェクトを識別して、それらを個別に分離するプロセスです。主に以下のような手法があります。
- 画素レベル
- インスタンス
- 領域ベース
- セグメンテーションネットワークの利用
AI画像解析においては、画像内の構造や物体の識別・分離・理解を行うための重要な技術です。セグメンテーションは医療画像解析・自動運転・ロボティクス・監視システムなど、多方面の分野で応用されています。
AIアルゴリズムの活用
AI画像解析では、さまざまなAIアルゴリズムを活用しています。アルゴリズムの基本的な手法は以下が挙げられます。
- ディープラーニングモデルの適用
- 事前トレーニング済みモデルの利用
- トレーニングとフィンチューニング
- モデルの評価と精度向上
- 予測と応用
AI画像解析において最も一般的に利用されるのは、ディープラーニングモデルで、特にたたみ込みニューラルネットワーク(CNN)やその派生形のアーキテクチャが広く使用されています。
アルゴリズムを利用する際、事前に大規模なデータセットでトレーニングされた事前トレーニング済みのディープラーニングモデルの利用が一般的です。収集されたデータセットを使用して、AIモデルをトレーニングします。モデルは画像から特徴を抽出し、入力として与えられたラベルに関連付けされます。
フィンチューニングは、機械学習における微調整のことで、モデルの性能の向上させるために実施されるケースが大半です。トレーニング後、モデルは検証データセットを使用して評価されます。トレーニングされたモデルは精度向上と同時に新しい画像に適用し、画像内のパターンや特徴を分析します。
AIアルゴリズムの活用は、AI画像解析の主要な部分を構成しており、多くの分野で活用されています。
Pythonを使ったAI画像解析
AI画像解析は、多方面な業界や分野で活用されています。中でもPythonを使ったAI画像解析では、Pythonの特徴である機械学習を用いた画像解析が可能です。以下にPythonを活用してAI画像解析を行うためのツールを紹介していきます。
OpenCV
OpenCV(オープン・シーヴィ)は、Intelが開発した画像処理・画像解析・機械学習などの機能を持つオープンソースのライブラリです。Python版でも公開されており、商用利用であっても無料で利用できるため、自社の新規サービス立ち上げにも気軽に利用できるでしょう。
OpenCVを利用すれば、プログラムが画像や動画の中の特定物体の位置情報や動き、パターンの識別が可能となります。OpenCVはAIの機械学習にも利用でき、画像認識を目的としたAI開発では、欠かせない存在となるでしょう。
TensorFlow
TensorFlow(テンソルフロー)はニューラルネットワークを活用して、脳機能の特徴を計算によってシミュレーションでき、基本的な計算といった処理も行えます。GPUの設定をしなくても効率的な開発が可能で、各処理をテンソル呼ばれる多次元配列で扱い、画像認識の多岐にわたる機械学習タスクを効率的に実行が可能です。
AI画像解析は多岐にわたる分野で応用されており、医療診断・製造業での品質管理・自動運転車の環境認識などで活躍しています。TensorFlowの柔軟性と豊富な機能セットの活用で、アプリケーションでの高度な画像解析を実現しています。
おすすめのAI画像解析ソフト
Pythonを用いらずとも、AI画像解析を利用できます。以下はAI画像解析が可能なソフトの代表です。
Clarifai
Clarifaiは、ディープ・ラーニングAIライフサイクル・プラットフォームです。
ソフトウェアは、画像処理APIを提供しており、開発者が簡単に画像解析の機能を利用可能です。APIを活用できれば、自社のアプリケーションやサービスにAI機能を統合する際の手間を軽減ができ、迅速な開発が行えるでしょう。
また、Clarifaiには画像認識APIを体験できるサイトもあり、気軽にAIでの画像解析できます。これまでにAI画像解析を体験したことがない方は、ぜひ試してみるとよいでしょう。
Imagga
Imaggaは、APIを利用して画像認識を行うプラットフォームサービスです。
Imagga APIを使用すれば、画像へのタグ付け・画像の自動的な分類・カラー抽出・サムネイル生成が可能となります。大規模な画像や動画コレクションに関連するタグやキーワードを自動的に割り当てることができ、大量の画像解析に向いています。
AI画像解析では、オブジェクトの検出・顔認識・テキストの読み取りが可能です。
AI画像解析のまとめ
AI画像解析は、大量の画像データを迅速かつ効率的に処理できるため、作業の自動化と効率化が可能です。AIが高精度な解析が可能な利点から、幅広い分野での画像解析に活用され、新しい製品やサービスを創出しています。
製造業での不良品検出や医療業界での診断支援システムは活用分野の一例です。今後もさまざまな分野との連携で新たなサービスや価値を創出していくと予想されます。AI画像解析に利用できるプラットフォームサービスも存在しており、実装しやすいAI技術といえるでしょう。
もしも自社でAI画像解析の活用に不明点や疑問点がある場合、AIを使用した開発のエキスパートである株式会社Jiteraへご相談ください。AI画像解析を活用したサービスを丁寧にヒアリングさせていただき、サポートを行います。