ソフトウェア開発において「ビルド」という用語は頻繁に耳にしますが、その具体的な意味やプロセス、さらにはコンパイルやデプロイとの違いについては違いがわからない人も多いかと思います。
この記事ではビルドの基本的な定義から始め、そのプロセスとシステム開発における重要性について掘り下げていきます。
また、ビルドと密接に関連するコンパイルやデプロイとの違いについても詳しく解説し、JavaやC言語におけるビルドの違いについても比較していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
ビルドとは?
ビルドはソフトウェア開発においては必須の作業であり、ソースコードから実行可能なアプリケーションや配布パッケージを生成する一連の作業を指します。
このプロセスではコンパイル、リンク、パッケージングなどを含み、最終的にはユーザーに提供できる形の製品を生み出していく流れとなります。
特にビルドの自動化は、特に大規模なプロジェクトや複数のプラットフォームをサポートする場合に重要となるため、効率的な開発を実現するためにもビルドプロセスは自動化するのがおすすめです。
ビルドの定義とそのプロセス
ビルドは、プログラミング言語で書かれたソースコードを実行可能なファイルに変換するプロセスです。
このプロセスにはソースコードのコンパイル、生成されたオブジェクトコードのリンク、そして最終的な実行ファイルの生成が含まれます。
ビルドは、開発者が異なる環境で同じ結果を再現できるように、一般的にはスクリプトファイルによって自動化されています。
この自動化により一貫性のあるビルドが保証されるので、開発者間での環境構築差異が少なく、プロジェクト新規参画者であっても効率的な開発が進められるようになります。
ビルドがシステム開発において重要な理由
エンジニアであればビルドの重要性は誰もが把握していることですが、システム開発における作業の効率性や品質に影響を与えるレベルの重要プロセスといえます。
ビルドプロセスを通じて開発者はソースコードのエラーを検出して修正することができます。
ビルドツールを使用すれば、開発者は繰り返し行われるビルド作業を自動化できるので、作業の時短が可能となります。
そのため、開発段階における工数にも余裕ができるため、必要なフェーズで必要以上の時間をかけることも可能になるでしょう。
ビルドプロセスの適切な管理と自動化を行うことはシステム開発における作業の一貫性を保つために重要であり、品質が保たれたプログラムは後の改修・新規開発にも役立てることが可能です。
コンパイルとビルドの違い
コンパイルとビルドはソフトウェア開発において重要な用語ですが、それぞれ異なる役割を持っています。
これらの違いを理解することで、システム開発の実際の業務においても役立てられます。
コンパイルとビルドの関連性
コンパイルは、プログラミング言語で書かれたソースコードをコンピュータが理解できる機械語(バイナリコード)に変換するプロセスで、この変換はコンパイラと呼ばれるソフトウェアによって行われます。
コンパイルは、ビルドプロセスの一部として行われることが多いです。
一方でビルドは、コンパイルされたコードを実行可能なソフトウェアに組み立てるプロセスです。
これには、コンパイルだけでなくリンクやパッケージングなどの追加のステップが含まれます。
ビルドは、ソフトウェアの完成形を作り出すための一連の作業のことを指します。
ビルドとコンパイルの実際のプロセス比較
プロセス | コンパイル | ビルド |
---|---|---|
目的 | ソースコードを機械語に変換 | 実行可能なソフトウェアを作成 |
手順 | ソースコードを解析し、機械語に変換 | コンパイル、リンク、パッケージングを含む |
結果 | オブジェクトファイル(バイナリコード) | 実行可能なアプリケーションやライブラリ |
ツール | コンパイラ | ビルドツール(例:Make、Maven) |
応用 | 特定の言語に特化 | 複数の言語やライブラリを統合 |
コンパイルを行うことで、ソースコードをコンピュータが実行できる形式に変換します。
これは、プログラムの各部分が個別に行われるプロセスでありますが、一方ビルドではこれらのコンパイルされた部分を組み合わせて実行可能なソフトウェアを作成するという、より包括的なプロセスとなっています。
ビルドプロセスでは、コンパイルされたコードをリンクして必要なライブラリやリソースを組み込み、最終的にユーザーが使用できる形式のソフトウェアを生成していきます。
このプロセスには依存関係の解決、テストの実行、ドキュメントの生成などの追加ステップが含まれることがあります。
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ビルドとデプロイの違い
ビルドとデプロイはよく混同されがちですが、実際の作業は異なるため理解しておく必要があります。
ビルドはソースコードから実行可能なアプリケーションを生成するプロセスであり、デプロイはこのアプリケーションを実際の運用環境に配置し、利用可能な状態にする作業のことを指します。
ここでは、ビルドとデプロイの違いについて詳しく解説していきます。
デプロイの意味と役割
デプロイは、開発されたソフトウェアやアプリケーションを実際の運用環境に反映させるプロセスです。
これには、ソフトウェアをサーバーにアップロードして必要な設定やデータベースの接続を行う作業が含まれるでしょう。
デプロイの目的は、開発者が作成したプログラムを実際にユーザーが使用できる状態にすることです。
ユーザー側視点に立った言い方にすると、本番環境にデプロイすることはリリースと同義と捉えてもらって構いません。
デプロイはプログラムが完成した後の最終段階の作業であり、このプロセスを通じてソフトウェアが世に出る準備が整います。
実務でのビルドとデプロイの連携
ビルドとデプロイはソフトウェア開発の異なるフェーズで行われる作業ですが、密接に連携しているといえます。
ビルドプロセスはソースコードから実行可能なアプリケーションを生成し、この生成物がデプロイの対象となります。
実務では、ビルドされたアプリケーションをテスト環境にデプロイしてテストした後、最終的には本番環境へのデプロイが行われます。
適切にビルドできていないものはもちろん本番環境へはデプロイすべきではありませんし、エラーが出ている段階ですぐさま修正しておく必要があります。
根本的な作業の違いがあるため、しっかりとその違いを理解しておきましょう。
JavaとC言語におけるビルドの違い
JavaとC言語はどちらも広く使用されるプログラミング言語ですが、ビルドプロセスにおいては異なる特徴を持っています。
これらの違いを理解することで、それぞれの言語を使用した開発を行う際もスムーズに作業に移行することができます。
ここではJavaとC言語のビルドプロセスの特徴について違いを比較し、それぞれ解説していきます。
特徴 | Java | C言語 |
---|---|---|
コンパイル対象 | .javaファイル(ソースコード) | .cファイル(ソースコード) |
生成物 | .classファイル(バイトコード) | 実行可能なバイナリファイル |
プラットフォーム独立性 | 高い(JVM上で実行) | 低い(直接的な機械語) |
ビルドツール | Maven、Gradle | make、CMake |
適用分野 | クロスプラットフォームアプリ、Webアプリケーション | 組み込みシステム、OS開発 |
Javaのビルドプロセスと特徴
Javaのビルドプロセスは、そのプラットフォーム独立性とオブジェクト指向性に大きく影響されます。
Javaのコードはまず「.java」ファイルとして記述され、Javaコンパイラによって「.class」ファイル(バイトコード)に変換されます。
このバイトコードは任意のプラットフォーム上でJava仮想マシン(JVM)によって実行されるため、”Write Once, Run Anywhere”(一度書けばどこでも動く)の特徴を持ちます。
Javaのビルドプロセスは、依存関係の管理やビルド自動化に特化したツールを使用することが一般的でしょう。
代表的なビルドツールにはMavenやGradleがあり、これらはプロジェクトの依存関係を解決して初学者であってもビルドプロセスを比較的簡単に実行してくれます。
また、Javaのビルドプロセスは、オブジェクト指向の原則に従ってモジュール化されたコードの組み立てに重点を置いています。
C言語のビルドプロセスとその特徴
C言語のコードは「.c」ファイルとして記述された後、コンパイラによって直接的な機械語(実行可能なバイナリファイル)に変換されており、プログラムの実行効率を最大化することに重点を置いているといえます。
C言語のビルドプロセスでは、makeやCMakeなどのビルドツールが一般的に使用されます。
これらのツールは、ソースファイルとヘッダーファイルの依存関係を管理して複数のファイルから成る大規模なプロジェクトのビルドを効率化しています。
C言語のビルドプロセスは、システムのリソースを直接操作する必要があるプログラミングに適しており、組み込みシステムやOSの開発に広く利用されています。
ビルドのよくあるトラブルと対処法
ビルドはシステム開発においてほとんどの場合で実行される作業ですが、多種多様なトラブルが発生する可能性が考えられます。
これらのトラブルを理解して適切に対処することもシステム開発においては求められるでしょう。
ここではビルドのよくあるトラブルと対処法についてそれぞれの項目で詳しく解説していきます。
ビルド設定の不備
ビルド設定の不備は、ビルドプロセス中にありがちな事項です。
これは、ビルドスクリプトや設定ファイルに誤りがある際に発生する場合がほとんどです。
例えば、依存関係が正しく定義されていない、ビルドパスが誤っている、必要なライブラリが含まれていないなど要因は多岐にわたります。
対処法としては、ビルドスクリプトや設定ファイルを一行一行慎重に確認し、誤りがないかチェックすることが重要です。
また、ビルドツールの公式ドキュメントを参照して設定方法を再確認することも有効でしょう。
ビルド時に表示されるエラーメッセージも手がかりの一つとなるため、詳細に分析して問題の原因を特定することも必要です。
プロジェクトの不備
プロジェクトの不備は、ソースコードやリソースファイルに問題がある場合に発生します。
これには、ファイルの欠落、コードのシンタックスエラー、非互換性の問題などが含まれるでしょう。
対処法としては、ソースコードをチームメンバーと共にクロスレビューし、エラーや論理的な誤りを探すことが有効といえます。
バージョン管理システムを使用していれば、誤りを見つけた段階ですぐに問題が発生する前の安定した状態に戻し、変更点を特定することも可能となります。
また、単体テストや統合テストを実施して、コードの問題点を早期に発見することも重要です。
ほとんどの場合は製造段階でビルドをよく利用するため、このフェーズで解決しておくのが無難です。
何かの手違いでスクリプトが書き換えられている場合は思わぬエラーが発生し、進捗に影響が出てしまう場合もあるため、Gitなどを用いて適切にソース管理していくことをお勧めします。
さらに、依存関係が正しく解決されているかを確認し、必要に応じて依存ライブラリを更新することも必要です。
環境の不備
環境の不備は、ビルドを実行する環境(開発環境、ビルドサーバーなど)に問題がある場合に発生します。
これには、不適切なツールのバージョン、環境変数の設定ミス、OSの違いによる非互換性などがあります。
対処法としては、開発チーム内で使用するツールやライブラリのバージョンを標準化し、全員が同じ環境で作業できるようにすることが重要です。
コンテナ技術の利用、特にDockerなどを使用して一貫性のあるビルド環境を作成することも有効となります。
そして、環境変数が正しく設定されているかを適宜確認し、必要に応じて修正していくことも必要です。
また、異なるOSでのビルドを考慮したクロスプラットフォーム対応を行うことも考慮すべき事項の一つといえるでしょう。
まとめ:ビルドで開発プロセスを改善しましょう
この記事では、ソフトウェア開発におけるビルドの基本概念やプロセス、そしてコンパイルやデプロイとの重要な違いについて詳細に解説してきました。
ビルドはソースコードから実行可能なアプリケーションや配布パッケージを生成する一連の作業であり、コンパイル、リンク、パッケージングなどを含むプロセスです。
一方デプロイは、開発されたソフトウェアやアプリケーションを実際の運用環境に反映させるプロセスで、ソフトウェアをサーバーにアップロードして必要な設定やデータベースの接続を行う作業となります。
システム開発においてビルドは必須な作業の一つとなっており、開発者が効率的かつ一貫性を保った状態で開発を行えるだけでなく、プログラムの品質ひいてはサービスの品質維持にまで影響を与えるレベルの重要な作業となります。
ビルドについて把握しておくことで効率的な開発が行えるため、特にプロジェクトを管理する立場にある人は、開発に入る前の時点でビルドツールの整備やマニュアル・ナレッジを整えておくことをお勧めします。
ビルドやデプロイを含むシステム開発前半に関してお悩みの方は、知識と経験が豊富なJitera社に一度ご相談してみてはいかがでしょうか。