TensorFlow(テンソルフロー)とは?できることやPytorchの違いから事例まで紹介

TensorFlowは、Googleが開発したオープンソースの機械学習ライブラリで、ディープラーニングやニューラルネットワークの研究、開発に広く用いられています。

データの読み込み、前処理、計算、状態、出力といった処理をテンソルという多次元配列で扱うことで、画像認識、音声認識、自然言語処理など、多岐にわたる機械学習タスクを効率的に実行できるようになりました。

また、TensorFlowはその柔軟性と拡張性から、研究者や開発者にとって非常に魅力的なツールです。

本記事では、TensorFlowの特徴を詳しく掘り下げ、機械学習におけるその役割とともに初心者向けの使い方やチュートリアルも紹介します。

アバター画像
監修者 エンジニア Sakai

制御系システムや自動化システムの新規開発を中心に、15年以上の開発経験を持つ現役エンジニアです。『デジタルは人と人をつなぐもの』という言葉が好きです。デジタルの世界をわかりやすく伝えていきます。

\エキスパートが回答!/
この記事に関する質問はこちら
記事に関するご質問以外にも、システム開発の依頼やAIの導入相談なども受け付けております。

    会社名必須
    必須
    必須
    Eメール必須
    電話番号必須
    ご依頼内容必須

    TensorFlow(テンソルフロー)とは

    TensorFlow(テンソルフロー)は、その名が示すように多次元配列(テンソル)を通じてデータが流れる(フロー)という概念に基づいています。このライブラリは、機械学習の研究開発を加速させ、より高度な機能を持つアプリケーションの開発を可能にしているのです。

    主な特徴には、様々なハードウェア(CPU、GPU、モバイルデバイス、組み込みシステムなど)での動作、自動微分機能、そしてTensorBoardという可視化ツールの利用があります。

    これらの特徴により、複雑なニューラルネットワークの学習が容易になり、パラメータの最適化を自動的に行えるのです。

    TensorFlowの応用分野は多岐にわたり、以下のような分野で活用されています。

    • 画像認識
    • 音声認識
    • 自然言語処理
    • ゲームAI
    • ロボティクス

    実際の利用例としては、医療画像診断、顔認識システム、自動翻訳、チャットボットなどが挙げられます。

    TensorFlowは、複雑なデータフローグラフの構築と効率的な計算を可能にし、機械学習の研究開発を加速。より高度な機能を持つアプリケーションの開発が実現され、様々な分野で革新的なソリューションを生み出しています。

    TensorFlow(テンソルフロー)でできること

    TensorFlowの強力な機能と幅広い応用可能性を踏まえ、このライブラリでできることをより具体的に見ていきましょう。

    TensorFlowは、機械学習の全プロセスをサポートし、多様なタスクに対応できる柔軟性を持っています。

    企業や研究機関は、TensorFlowを活用することで効率的にAIソリューションを開発し、新しい価値を創造することができます。また、オープンソースであることから、コミュニティによる継続的な改善と拡張が行われ、最新の機械学習技術を迅速に取り入れることが可能です。

    TensorFlowの主要な機能と応用例は、大きく以下の2つの観点から理解することができます。

    機械学習モデルの構築・学習・実行

    TensorFlowは、機械学習モデルの構築から学習、実行までの全プロセスをサポートします。多様なニューラルネットワーク(CNN、RNN、トランスフォーマーなど)の構築が可能で、Keras APIを使用することで直感的なモデル設計ができます。

    データ処理においては、画像、テキスト、音声などの非構造データの前処理や拡張、正規化機能を提供しています。これにより、モデルの学習効率を高めることができます。

    モデルの学習過程では、損失関数やオプティマイザの設定が可能で、GPUやTPUを活用した高速学習を実現します。学習後は、テストデータセットによる性能評価やTensorBoardを用いたモデルの可視化と分析が行えます。

    さらに、TensorFlowは学習済みモデルの簡単な保存と読み込み機能を持ち、様々な環境(モバイル、ウェブなど)への展開を容易にします。これにより、開発したモデルを実際のアプリケーションに組み込むプロセスがスムーズになります。

    TensorFlowでできるタスクの具体例

    TensorFlowは、幅広い機械学習タスクに対応する強力なツールです。主な応用分野とその具体例を以下に紹介します。

    タスク 詳細
    画像認識 ・自動運転車の視覚システム
    ・顔認識技術
    ・医療画像解析
    ・Google Photosの写真整理機能
    自然言語処理 ・Google翻訳の高精度化
    ・感情分析
    ・テキスト生成
    音声認識・合成 ・SiriやGoogle Assistantなどの音声アシスタント
    ・音声テキスト変換システム
    時系列解析 ・株価予測
    ・天候予報
    ・需要予測
    強化学習 ・AlphaGoのようなゲームAI
    ・自律型ロボットの動作最適化
    推薦システム ・E-コマースの商品推奨
    ・動画・音楽のコンテンツ推薦

    これらの例は、TensorFlowが研究から実用まで幅広い分野で活用されていることを示しています。その多様な応用可能性から、今後もTensorFlowの適用範囲は拡大し続けると予想されます。

    TensorFlow(テンソルフロー)とPytorchの違いを比較

    機械学習の世界では、様々なフレームワークが開発されていますが、その中でも特に注目を集めているのが「TensorFlow」と「PyTorch」です。

    これら二つのフレームワークは、それぞれに独自の特徴を持ち、開発者や研究者の間で広く使用されています。

    【TensorFlowとPyTorchの違いを比較】

    特徴 TensorFlow PyTorch
    開発元 Google Facebook
    初期リリース 2015年 2016年
    主要言語 Python, C++ Python
    動的グラフ 対応(Eager Execution) ネイティブ対応
    静的グラフ ネイティブ対応 トレースによる変換が必要
    デバッグのしやすさ やや複雑 比較的容易
    本番環境への展開 優れている 改善中
    モバイル/組込み対応 充実 限定的

    本章では、TensorFlowとPyTorchの主要な違いを比較し、それぞれの長所と短所について紹介していきます。

    処理速度の違い

    処理速度に関しては、一般的にTensorFlowが静的グラフを使用する場合に優位性を持ちます。事前にグラフを最適化できるため、大規模なデータセットや複雑なモデルでの処理が高速です。一方、PyTorchは動的グラフを使用するため、柔軟性が高く、小規模から中規模のプロジェクトでは競争力のある速度を発揮します。

    しかし、近年の更新により両者の差は縮まっており、具体的なユースケースや最適化の度合いによって結果が変わる可能性があります。

    学習曲線の違い

    PyTorchは直感的なPythonライクな文法を採用しており、初学者にとって学習しやすい傾向があります。動的計算グラフを使用するため、デバッグが容易で、従来のPythonデバッグツールを使用できます。

    一方、TensorFlowは以前は静的グラフのみをサポートしていたため、やや学習曲線が急でしたが、Eager Executionの導入により、PyTorchに近い使いやすさを実現しています。

    ただし、本番環境での最適化のためには、静的グラフの理解が必要となる場合があります。

    コミュニティの違い

    TensorFlowは、Googleのバックアップと長い歴史を持つことから、大規模で活発なコミュニティを形成しています。豊富なドキュメンテーション、チュートリアル、サードパーティライブラリが利用可能です。

    PyTorchも急速に成長しており、特に研究コミュニティでの人気が高まっています。最新の研究論文の多くがPyTorchを使用して実装されており、アカデミックな環境での採用が増えています。

    適用分野の違い

    TensorFlowは、大規模な産業応用や本番環境への展開に強みを持っています。TensorFlow Liteやモバイル向けの最適化により、組み込みシステムやモバイルアプリケーションでの使用に適しています。

    PyTorchは、研究や迅速なプロトタイピングに適しており、自然言語処理や計算機視覚の分野で人気があります。動的な性質により、複雑な自然言語処理モデルの実装が容易です。

    両フレームワークとも継続的に発展しており、それぞれの長所を活かしながら、短所を改善する努力が続けられています。選択には、プロジェクトの規模、目的、開発者の経験などを考慮することが重要です。

     

    TensorFlow(テンソルフロー)プロジェクト事例

     

    TensorFlow(テンソルフロー)は多くの企業や組織で活用されており、様々な分野で革新的なプロジェクトを実現しています。

    本章では、AirbnbInSpaceSwisscom の3社によるTensorFlowの活用事例を紹介します。

    これらの事例は、TensorFlowが様々な産業や用途で活用され、ビジネスプロセスの改善や新しい価値の創造に貢献していることを示しています。その柔軟性と強力な機能により、TensorFlowは今後も多くの革新的なプロジェクトで重要な役割を果たすことが期待されます。

    Airbnb

    (出典:Airbnb

    Airbnbは、TensorFlowを活用して宿泊施設の写真を自動分類し、ユーザー体験を向上させました。

    最先端の深層学習モデルを改良し、数百万枚の写真を使って再学習を行ったのです。その結果、寝室、バスルーム、リビングルームなどの部屋タイプを高精度で分類できるようになりました。

    さらに、画像キャプションを利用した独自のラベリング手法を開発し、コストを抑えながら大量のトレーニングデータを確保。この技術により、ゲストは関心のある部屋の写真をより簡単に見つけられるようになり、ホストの掲載内容の自動チェックも可能になりました。

    Airbnbは、この成功を基に、さらなる画像認識技術の開発を進めています。

    Airbnbの事例を見る

    InSpace

    (出典:InSpace

    InSpaceは、教育者向けに設計された新しいビデオ会議プラットフォームです。TensorFlow.jsを活用し、チャット機能に有害コメントフィルターを実装しました。

    このフィルターは、単純な禁止ワードリストではなく、機械学習モデルを使用してコンテキストを考慮した高度な判定を行います。重要な点は、このモデルがブラウザ上で動作し、メッセージをサーバーに送信せずにプライバシーを保護できることです。

    また、Web Workers APIを使用してメインスレッドをブロックせず、ユーザー体験を損なわないよう設計されています。この技術により、教育現場でのオンラインコミュニケーションの安全性と快適性が向上しました。

    InSpaceの事例を見る

    Swisscom

    (出典:Swisscom

    Swisscomは、スイスの通信プロバイダーで、TensorFlowを活用してカスタマーサポート業務を大幅に改善しました。顧客からの多様な問い合わせを適切に分類し処理するため、TensorFlowとKerasを用いて独自の機械学習モデルを開発したのです。

    このモデルは、チャットの意図分類(40以上のカテゴリー)と電子メールの分類に使用されています。特に電子メール分類モデルは100万以上のパラメータを持つ大規模なもので、畳み込み層と全結合層を組み合わせた構造を持っています。

    この取り組みにより、Swisscomは従来のアプローチと比較して、チャット分類で10%以上、電子メールの分類で22%の精度向上を達成。顧客サポートの質を高めながら、業務を社内で維持することが可能となりました。

    Swisscomの実例を見る

    TensorFlow(テンソルフロー)が学習できる参考書

    TensorFlowはじめました-実践!最新Googleマシンラーニング

    Amazon

    本書は、機械学習ライブラリTensorFlowの入門から実践までをカバーする総合的なガイドです。CIFAR-10画像分類問題を中心に据え、データフローグラフの概念からモデルの構築、学習、評価までの一連のプロセスを詳細に解説しています。初心者エンジニアが躓きやすいポイントに配慮しながら、実際のプロジェクトで活用できる知識とスキルの習得を目指しています。

    おすすめポイント!

    • 段階的な説明で、機械学習の基礎からTensorFlowの高度な使用法まで学べる
    • 実際のデータセットを用いた hands-on 形式で、理論と実践のバランスが取れている
    • TensorBoardを活用したデータの可視化技術を詳しく解説
    • モデルの性能向上のための様々な最適化テクニック(正規化、ドロップアウト、データ拡張など)を紹介
    • 最新のディープラーニングモデル(VGGNetなど)の実装方法にも触れており、最新技術のキャッチアップが可能

    本書を通じて、読者は機械学習プロジェクトの全体像を把握し、実践的なスキルを身につけることができます。

    scikit-learn、Keras、TensorFlowによる実践機械学習

     

    Amazon

    本書は、scikit-learn、Keras、TensorFlowを使用して実践的な機械学習スキルを習得するための包括的なガイドです。

    機械学習の基礎から深層学習、強化学習まで幅広いトピックをカバーし、実際のデータと問題を用いて学習プロセスを詳細に解説しています。(第2版では、最新の技術や手法が追加され、TensorFlow 2に対応)

    おすすめポイント!

    • 現実的な問題とデータを使用し、機械学習プロジェクトの全工程を実践的に学べる
    • 従来の機械学習から最新の深層学習技術まで幅広くカバーしている
    • GitHubのコードとJupyter Notebookを使って実際に試しながら学習できる
    • 教師なし学習、CNN、GANなど、最新の機械学習テクニックを紹介している
    • データ処理から特徴量選択、過学習対策まで、実務に直結するスキルを網羅している
    • TensorFlow 2に対応し、最新フレームワークによる効率的な実装方法を解説している

    本書は、機械学習を実践的に学びたいエンジニアや、最新の深層学習技術を習得したい読者にとって、必携の一冊となるでしょう。

    現場で使える!TensorFlow開発入門-Kerasによる深層学習モデル構築手法

    Amazon

    本書は、TensorFlowとその高レベルAPIであるKerasを使用して、深層学習モデルを構築する方法を解説した実践的な入門書です。基礎から応用まで幅広くカバーし、特に画像処理に焦点を当てた実装例を多く含んでいます。

    おすすめポイント!

    • TensorFlowとKerasの基礎から実践的な応用までを網羅的に解説している
    • 「ノイズ除去」「自動着色」「超解像」など、現場で役立つ具体的な画像処理技術の実装方法を学べる
    • 深層学習の理論と実装をバランスよく学習できる構成になっている
    • 学習済みモデルの活用方法など、実務で重要なテクニックも紹介されている
    • Kerasの機能を詳しく解説しており、効率的なモデル構築のスキルが身につく
    • 画像生成など最新の深層学習技術にも触れており、最新トレンドを押さえられる

    この本は、深層学習に入門したいエンジニアや、TensorFlowとKerasを使って実践的なスキルを身につけたい開発者にとって、非常に有用な一冊となるでしょう。

    まとめ:TensorFlow(テンソルフロー)を活用した開発はJitera

    TensorFlowの強みは、その柔軟性と拡張性です。画像認識、自然言語処理、推薦システムなど、多様なタスクに対応できます。

    本記事では、実際のプロジェクト事例や参考書の紹介を通じて、TensorFlowの実用性と学習方法についても解説しました。Airbnb、InSpace、Swisscomなどの企業事例は、TensorFlowが実際のビジネスでどのように活用されているかを知ることができたと思います。

    TensorFlowは、機械学習技術の普及と進化を促進し、今後もビジネス、医療、科学など様々な分野に革新をもたらすでしょう。初心者から専門家まで、TensorFlowを活用することで、AIの可能性を最大限に引き出すことができるのです。

    TensorFlowを活用したツール開発やAI実装についてさらに詳しく知りたい方や、具体的なプロジェクトでの活用を検討されている方は、Jitera社へご相談ください。JiteraではAIを使ったシステム開発などを中心に、様々なITの課題に対応しています。

    Jiteraへ質問する

    例:開発手順、ツール、プロンプト

    メルマガ登録

    社内で話題になった「生成AIに関するニュース」をどこよりも早くお届けします。