近年多くの企業が推進しているDX(デジタルトランスフォーメーション)では、最新のデジタル技術やITツールの利用が欠かせません。
その中でも企業におけるDX推進に最適だと考えられているのが、チャットボットです。
私たちの日常生活においても見かける機会が増えたチャットボットですが、ビジネスへの活用に関しては、社内にチャットボットに関するノウハウや開発リソースが無く、どのように導入すればいいか分からないのではないでしょうか。
本記事では、チャットボットの活用方法や導入のメリット、実際にチャットボットを導入して成功したビジネス事例をご紹介します。
チャットボット導入における課題と解決策についても解説していますので、チャットボットの導入を検討している担当者はぜひ参考にしてください。

とある企業のシステム管理者として10年以上勤めています。 自身の経験や知識を活かし、誰にでも分かりやすい記事をお届けしたいです。
DX推進におけるチャットボットとは?
チャットボットとは、 ユーザーからの質問や要望に対して⾃動で応答するプログラムです。
まるで人間が対応しているかのように自然な文章で回答したり、想定していない問い合わせの場合はオペレーターへ誘導したりなど、状況を判断して適切な対応を行ってくれるといった特徴があります。
チャットボットは様々な場面で活用されますが、最もよく使われているシーンはいわゆる「よくある質問」への対応です。
通常、こういった問合せ窓口へ担当者を置いて対応する場合、担当者側は何度も同じ質問に答えなければならない、ユーザー画は電話が繋がるまで時間がかかるなど、企業側・ユーザー側の双方にとってあまり良い仕組みになっていません。
そこでチャットボットを導入すれば、企業側・ユーザー側それぞれにメリットがあります。
- 企業側:専任の担当者を配置せずにすむため、業務の効率化・コスト削減が見込める
- ユーザー側:24時間365日好きなときに問い合わせができて、待ち時間がない
ビジネスにおける課題解決や効率化は「DX推進」の目的でもあるため、チャットボットの導入はDX推進をより後押ししてくれるといえるでしょう。
DXにおけるチャットボットの役割やメリット
DXにおけるチャットボットの役割や、導入するメリットとは何でしょうか。
- 顧客接点の強化と顧客満足度の向上
- 業務効率化とコスト削減
- 新規事業の創出
- 社内業務の効率化
- データ収集と分析
ここでは、これらの点に着目して具体例を解説します。
顧客接点の強化と顧客満足度の向上
チャットボットを導入すると、企業と顧客(ユーザー)が接する機会を増やす効果が期待できます。
その企業に対して何か質問をしたくても、電話やメールでの問い合わせを「煩わしい」と感じるユーザーは一定数存在しており、問合せの方法がそれだけしかないとその企業に対する興味を失う可能性が高いです。
チャットボットという問合せ方法を提供していれば、ユーザーは気兼ねなく質問ができ、結果的に顧客満足度の向上へとつながります。
業務効率化とコスト削減
ユーザーにとってメリットがあるチャットボットは、企業側にも恩恵があります。
企業側が設置する通常の問合せ窓口であれば、電話対応を行う人員の配置、問合せメールをチェックする部門から対象部署への連絡、さらに問合せについての御礼と回答文の作成など、多くの手間が必要です。
問合せ窓口をチャットボット化して自動化すれば、問合せ対応を行う人員が不要になり、メールのチェックや返信も最低限に抑えられ、業務の効率化とコスト削減が見込めるでしょう。
新規事業の創出
チャットボットの活用によって、新たな事業の創出へ繋がる可能性があります。
ユーザーからのよくある質問への対応だけでなく、特定分野の技術情報に特化したチャットボットや、商品選びに悩むユーザーへおすすめ商品を提案するチャットボットなど、人的リソース不足などが課題となり実現に至らなかった事業の立ち上げも可能です。
社内業務の効率化
チャットボットが対象とするのは企業のユーザーだけではありません。社員向けのチャットボットを展開すれば、社内業務の効率化も図れます。
例えば、社内システムの保守やヘルプデスク対応を行うシステム部門であれば、社員からのシステムに関する問い合わせの一次対応をチャットボット化すれば、有人での問い合わせ対応件数を大幅に削減でき、本来の業務へと注力できるようになります。
データ収集と分析
チャットボットへ入力された問い合わせ内容は、データとして収集・蓄積が可能です。その蓄積されたデータを分析すれば、ユーザーが求めているもの(=ニーズ)が見えてきます。
そのニーズを次に開発する商品やサービスなどへ反映させれば、さらなる顧客満足度の向上、ひいては企業価値の上昇も見込めるでしょう。
チャットボット導入によりDX推進が成功した企業事例
近年、企業への導入が目立ち始めたチャットボットですが、実際にチャットボットを導入した企業ではどのように活用されているでしょうか。
ここでは、チャットボット導入によりDX推進が成功した企業事例を紹介していきます。
株式会社マウスコンピューター
株式会社マウスコンピューターは、自分が求めるスペックへ自由にカスタマイズできるPCの製造・販売を手掛けている会社です。
販売したPCに関するトラブルのサポートも行っており、当初はコールセンターの電話・メール・LINEでの対応を行っていました。
かつてマウスコンピューター社のPCはいわゆる”玄人向け”で、PCトラブルが発生した際もユーザー側が最低限の原因切り分けを行ってくれていため、コールセンターへの問合せも高度な内容がほとんどだったとのこと。
しかし、2015年頃から幅広い層へ広告を展開したために、PC操作に詳しくない”ライトユーザー”が増加。トラブルの内容も初歩的なものが増えていったようです。
そこで、公式サイト上の問合せページへAIチャットボットを新たに設置しました。
簡単なトラブル対処であればチャットだけで対応できるようになり、結果的にユーザー満足度の向上とサポート対応件数の減少という両方の効果を得られたという事例です。
島村楽器株式会社
楽器や音楽書籍の販売、音楽教室の運営などを展開しているのが島村楽器株式会社です。
島村楽器では、新店舗のオープンや新サービスのリリースなどに伴い、店舗から本社への問い合わせが増大していたため、問合せ対応の効率化が課題になっていました。
そこで、AI機能を搭載したチャットボットを導入し、登録したFAQの内容をAIが自動で学習して質問へ回答してくれるように変更。一問一答形式の対応であっても、類義語を自動判別する機能によって問題なく対応できるようになりました。
導入後は、新規問い合わせのほとんどをチャットボットで解決できるようになり、本社の担当部門が不在となる土日にも対応できるように改善された事例です。
株式会社スパイラル(旧:株式会社パイプドビッツ)
株式会社スパイラル(旧:株式会社パイプドビッツ)は、ローコード開発プラットフォーム「スパイラル」を展開している会社で、他社の様々なシステムとの連携実績も持っています。
この「スパイラル」と、株式会社アイアクトが展開するAIチャットボット「Cogmo Attend」が連携し、自社サイトなどに設置したチャットボット上で行われた会話内容をデータベース化できるようになりました。
データベースはセキュアな環境下に置かれているため、ユーザーはチャットボットへの個人情報入力も安心して行え、チャットボットでは対応が難しい問合せが発生しても、有人対応へスムーズに繋げることが可能となっています。
チャットボットと自社システムを連携させ、市場価値を高めた事例です。
積水化学工業株式会社
住宅から社会インフラ、健康・医療化成品など、様々な事業展開を行っているのが積水化学工業株式会社です。
同社ではDXを推進する施策の1つとして、2020年より社内外の問合せに対応するチャットボットを導入。
営業部門だけでなく、技術部門も日々の問合せに多くの時間を割いていたため、チャットボットを導入した結果、業務の効率化、そして人的リソースを本来の業務へ集中させる効果が得られました。
質問を回答するために必要な情報・知識をチャットボットへ集約し、社員の誰もが同じクオリティの情報を得られるようになった事例です。
チャットボットでDX推進を行う際の導入ポイント
チャットボット製品を提供している企業は多数あり、その機能や特徴は様々です。
自社に合ったチャットボット製品を選ぶにはどうすればいいのか、ここではチャットボットでDX推進を行う際の導入ポイントについて解説します。
適切なチャットボットを選ぶ
チャットボットには、「AIの有無」や「機能」によっていくつかの種類があります。チャットボットを導入する目的を整理し、どの種類のチャットボットが適切なのかを考えましょう。
AIの有無
AIを搭載していれば、Q&Aの内容をAIが学習・分析を行い、自ら判断して適切な回答を提示してくれるようになる。AIが無ければ、想定される質問と回答はすべて用意しなければならない。
機能
入力された質問に回答する「FAQ型」、システム処理まで行う「処理代行型」、情報の発信ができる「配信型」、何気ない会話ができる「雑談型」などの種類がある。
コストを理解し予算を決める
チャットボットを導入する際は、導入費用に加えて月額の運営費用も発生するのが一般的です。
特に昨今では「AIを搭載しているかいないか」によって、導入費用・運営費用ともに大きく変動する点に注意しなければなりません。
一般的な相場だと、AI非搭載チャットボットの導入費用は無料〜数⼗万円程度ですが、AIを搭載したものなら20〜100万円程度と高額になります。
また、登録できるQ&Aの数やシナリオ作成の有無、個別機能のカスタマイズなどでも諸費用は大きく変わってくるでしょう。
チャットボット導⼊を検討する際は、⾃社のニーズに合った機能や価格帯を決めて、無料トライアルなどで使⽤感を試してみてから導入するのをおすすめします。
フィードバックの収集と分析を行う
チャットボットは「質問に対する回答の質の高さ」によって満足度が決まるといっても過言ではありません。そして、回答の質を高めるためには利用者からのフィードバック分析が必須といえます。
一部のチャットボット製品では、対応後にフィードバック(アンケート)への協力依頼を表示する機能を持っています。
すべてのユーザーが答えてくれるわけではありませんが、協力してもらった貴重なフィードバックは担当部門にてしっかりと分析を行えば、回答品質の向上へと繋げられるでしょう。
機能のアップデートと最適化を怠らない
特にAIを搭載していないチャットボットでは、機能のアップデートや最適化(メンテナンス)を行っていないと、内容が古かったり実状に合っていない回答をしたりなど、「使えないチャットボット」というレッテルを貼られてしまいかねません。
チャットボット製品を検討する際は、こういった機能のアップデートや最適化のしやすさにも着目して選んでみましょう。
チャットボットは長い期間運用するのが前提のシステムともいえるため、管理面においても優れた機能をもつ製品を選ぶのをおすすめします。
まとめ:DX推進におけるチャットボットの価値
DXを推進するにあたって、チャットボットは比較的導入しやすく、ユーザーの目にも触れやすい仕組みだといえます。
企業側とユーザー側が直接的に接触する機会を作れるシステムでもあるため、適切なチャットボットを導入する=ユーザーの満足度向上へ直結すると捉えてみるのがいいでしょう。
自社に合った最適なチャットボットを選ぶ際は、他社の導入事例を参考にし、機能面や価格などを比較しながら選ぶのがおすすめです。
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