バージョン管理とは、ソフトウェアやドキュメントの変更管理を追跡して、複数のバージョンを管理する仕組みのことです。
本記事では、バージョン管理のメリットや注意点、ほかにも、Git以外のおすすめツールの紹介もおこなっています。
本記事を読んで、自社でどのようにバージョン管理をおこなうかの参考にしてください。

PHPを独学で勉強した後にWeb業界に参入。大手企業でプログラマーとして活躍後、自社サービスの立ち上げ、大手検索エンジンサービスの保守運用作業、ソーシャルゲーム開発などに携わりながら、SE・管理職の道を歩んで現在に至る。現在は、管理職に携わる傍ら、これまでの経験を活かした執筆活動を続けている。
バージョン管理とは
バージョン管理とは、ソフトウェアやドキュメントの変更履歴を追跡し、複数のバージョンを管理する仕組みです。バージョン管理をおこなうことで、過去の状態に戻したり、複数の開発者が同時に作業しても競合を防ぐことができます。
代表的なバージョン管理システム(VCS)は、GitやSubversionなどです。特にGitは分散型で、各ユーザーがローカルにリポジトリを持ち、自由に変更できます。
バージョン管理は、開発の効率化やバグ修正、リリースの管理に不可欠です。
バージョン管理の方法
バージョン管理とは、複数のバージョンを管理する仕組みで、開発の効率化やバグ修正、リリースの管理に不可欠なものです。次に、バージョン管理の方法をみていきましょう。
ここでは、以下の項目に分けて、バージョン管理の方法を解説します。
- ブランチを作成し作業を開始する
- 変更をコミットしリモートにプッシュする
- プルリクエストを作成しレビューを受ける
- 変更をメインブランチにマージする
- チーム全体がリリース管理をおこなう
上記手順に従って操作することで、ソースコードやドキュメントなど、さまざまなリソースのバージョン管理が可能です。
1. ブランチを作成し作業を開始する
バージョン管理するためには、まず、ブランチの作成が必要で、おもにGitなどの分散型バージョン管理システムで使われるものです。ブランチとは、リポジトリのメインの作業ラインとは別に、変更をおこなうための独立した作業スペース。
新しい機能やバグ修正をおこなう場合、メインのコードに影響を与えずに作業できます。ブランチを作成しておけば、ほかの修正などに影響されず、目的の部分だけ修正ができ、便利です。
2. 変更をコミットしリモートにプッシュする
ブランチを作成して変更した後は、コミットをおこないリモートへのプッシュすることが必要です。変更をコミットすることで、作業履歴がローカルに保存され、その時点でのファイルの状態が記録されます。
次に、リモートリポジトリにその変更を反映するにはプッシュが必要です。プッシュすることで、他の開発者が最新の変更を取り込むことができ、共同作業が円滑に進みます。
3. プルリクエストを作成しレビューを受ける
変更をコミットしてプッシュしたら、その内容をレビューする必要があります。レビューを依頼するためには、プルリクエストを作成しましょう。
ブランチでおこなった作業が完了したら、プルリクエストを作成し、リモートリポジトリのメインブランチへの統合をリクエストします。
プルリクエストでは、変更内容を説明し、どの問題を解決したかや機能追加の目的の明確な記述が必要です。変更内容を明確に記述しておけば、他の開発者がコードをレビューし、品質や不具合の有無の確認が容易です。
レビューを受け、必要な修正があれば反映し、最終的にレビューが承認されると変更がマージされます。レビューは、品質向上とバグ防止に必要なものです。
4. 変更をメインブランチにマージする
プルリクエストを作成してレビューを受けたら、変更内容をメインブランチにマージしましょう。 プルリクエストが承認され、コードがレビューされて問題がないことが確認されたら、バージョン管理にてマージがおこなわれます。
マージが完了すると、メインブランチには最新の機能や修正が反映され、他の開発者もその変更を取り込むことが可能です。
ただ、場合によっては、競合(コンフリクト)が発生することがあるでしょう。コンフリクトが発生した場合、これを手動で解決し、正しい状態を確認した後にマージを進めます。
マージは、全体のプロジェクトを安定した状態に保ちながら開発を進めるための重要なステップです。
5. チーム全体がリリース管理をおこなう
上記で解説した作業を、一人だけではなくチーム全体でおこなうことが重要です。
バージョン管理におけるリリース管理は、チーム全体が協力して新しいバージョンのソフトウェアや製品を安定的に公開するプロセスです。
リリース前には、すべての変更がメインブランチにマージされ、テスト環境で動作確認がおこなわれます。問題がなければ、特定のタグをつけ、これをリリースバージョンとして記録して、リリース準備完了です。
リリースの際、チーム全体でスケジュールを調整し、各メンバーがそれぞれリリースに必要な役割を果たします。たとえば、デベロッパーはバグ修正や機能追加、テスターは品質確認、プロジェクトマネージャーはリリースの進捗を監視する、などです。
チーム全体で協力してリリースすることで、安定した製品の提供が可能になります。
バージョン管理にツールやシステムを導入するメリット
バージョン管理は、ブランチ作成から始めコミットやプッシュしながら変更をおこない、プルリクエストを出してレビューを受けるという流れであることがわかりました。また、バージョン管理は、ツールやシステムを導入することが可能です。
ここでは、以下の項目に分けて、バージョン管理にツールやシステムを導入するメリットを解説します。
- 正確に変更履歴を追跡できる
- チームが並行開発を効率的におこなえる
- バグの原因を特定しやすくなる
- プロジェクトの進捗を把握できる
- テストの再現性を向上できる
バージョン管理が可能なツールやシステムを導入することで、より正確で効率よくバージョン管理がおこなえます。
正確に変更履歴を追跡できる
バージョン管理ツールやシステムを導入する最大のメリットの一つは、正確に変更履歴を追跡できる点です。
GitやSubversionなどのツールを使うことで、誰が、いつ、どの部分を変更したのかが詳細に記録されます。詳細な履歴を活用すれば、過去のバージョンに戻すことや、変更内容を比較することが容易になるでしょう。
たとえば、バグが発生した場合、どの変更が原因であるかを追跡し、迅速に修正することが可能です。
また、複数の開発者が同時に作業していても、個々の変更が競合することなく統合できるため、チーム全体の作業効率が向上します。さらに、プロジェクトの進行やリリース管理も透明性が高まり、徹底した品質管理が可能です。
チームが並行開発を効率的におこなる
バージョン管理ツールやシステムを導入することで、チームが並行開発を効率的におこなえるようになります。
GitやMercurialなどの分散型バージョン管理システムでは、開発者がそれぞれ独立したブランチを作成し、異なる機能やバグ修正に取り組むことが可能です。
それぞれが独立したブランチで開発を進めるので、同じプロジェクト内で複数の作業を同時に進めても、変更が衝突するリスクを減らせます。
各メンバーが個別に作業をおこない、完了後にその変更をメインブランチにマージすれば、他の開発者とも簡単に統合が可能です。ツールで変更履歴を管理し、差分やコンフリクトを自動的に検出するため、手動での調整作業も減ります。
手作業を幅に削減できるため、大規模なプロジェクトや多人数での開発でも、生産性を高く保ちながらスムーズに作業が進められるでしょう。
バグの原因を特定しやすくなる
バグの原因を特定しやすくなることは、バージョン管理でツールやシステムを導入するメリットの一つです。
GitやSubversionのようなツールは、各変更が誰によって、いつ、どの部分におこなわれたかを正確に記録します。この変更履歴を参照することで、バグが発生したタイミングや、関連するコードの変更点を迅速に把握できるため、問題箇所の効率的な特定が可能です。
さらに、バージョン管理ツールは、変更を段階的にコミットするため、バグが発生した以前の安定したバージョンに簡単に戻すことができます。ブランチやタグを利用すれば、特定の機能や修正が原因でバグが発生したかどうかを検証しやすくなるでしょう。
バージョン管理システムは、バグ追跡や修正プロセスを円滑にし、全体的な開発の品質向上が期待できます。
プロジェクトの進捗を把握できる
バージョン管理ツールやシステムを導入することで、プロジェクトの進捗を効果的に把握できるようになります。
GitやSubversionなどのツールは、各開発者の作業履歴やコミット状況のリアルタイムな記録・共有が可能です。リアルタイムに共有できるため、チーム全体がどの機能が進行中で、どの作業が完了しているかを容易に確認できます。
たとえば、プロジェクトマネージャーやリーダーは、リポジトリの状態を見れば、進捗や遅延、優先すべき課題の把握が容易です。状況を容易に把握できるため、的確な指示やスケジュール調整が可能になります。
さらに、プルリクエストやブランチ管理を活用すれば、作業のレビューや統合も計画的に進めることが可能。計画的に作業を進められれば、プロジェクト全体の管理を一貫しておこなうのが容易となるでしょう。
バージョン管理をツールやシステムを導入しておこなうことで、プロジェクトの透明性が向上し、チーム全体の生産性が向上します。
テストの再現性を向上できる
テストの再現性を向上できることは、バージョン管理ツールやシステムを導入するメリットの一つです。
変更履歴が正確に記録されるため、特定のバージョンやコミットに基づいてテストをおこなうことが可能です。バグが発生した際に、そのバージョンに戻ってテストを再実行することで、問題の再現や分析が容易になります。
さらに、開発者が機能ごとに独立したブランチを作成できるのもメリット。特定の機能が導入されたバージョンでのテストをおこない、影響を受ける部分を正確に確認することができます。
どのような影響があるかを正確に把握できるため、テスト環境が安定し、異なるバージョン間の比較も容易です。
また、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)と連携することで、特定の変更が他の機能に与える影響を自動的にテストでき、テストの再現性がさらに向上します。
おすすめのバージョン管理ツール・システム5選
バージョン管理をツールやシステムを導入することで、さまざまなメリットが得られることがわかりました。では、これらのツールやシステムにはどのようなものがあるのでしょうか。
以下は、おすすめのバージョン管理ツールやシステムをまとめた比較表です。
ツール名 | 特徴 | 有料/無料 | メリット | デメリット |
![]() Git |
分散型バージョン管理システム。ローカルで作業可能。 |
無料 |
高速、柔軟性が高く、ブランチ管理が容易。大規模プロジェクトに向いている。 |
学習曲線が急で、初心者には難しいことがある。 |
![]() |
中央集権型バージョン管理システム。フォルダとファイルのバージョン管理が可能。 |
無料 |
シンプルな操作性、バイナリファイルの管理が得意。 |
オフライン作業が難しく、スケーラビリティに欠ける。 |
![]() |
分散型バージョン管理システム。簡潔なコマンドとユーザーインターフェース。 |
無料 |
操作が直感的で、分散型の利点を享受できる。 |
Gitに比べてコミュニティが小さく、情報が少ない。 |
![]() |
中央集権型のバージョン管理で、大規模なプロジェクト向け。 |
有料 |
大規模データの管理に強く、高速なパフォーマンス。 |
高コストで、設定や運用が複雑なことがある。 |
![]() |
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツール。バージョン管理機能もある。 |
有料 |
業務プロセスの自動化に特化し、使いやすい。 |
バージョン管理機能は他の専用ツールに比べて劣る。 |
また、以下の項目に分けて、それぞれのツールやシステムの詳細を解説します。
- Git
- Subversion
- Mercurial
- Perforce
- UiPath
これらのツールやシステムの特徴を掴んで、自社にあったものを導入してください。
Git
Gitは分散型バージョン管理システムで、ソースコードやドキュメントの変更履歴を効率的に管理できます。その最大の特徴は、各開発者がローカルリポジトリを持ち、インターネット接続なしで作業できる点です。
変更をコミットすることで、過去の状態に戻すことや変更の比較が容易におこなえます。
Gitはブランチ管理が強力で、新しい機能の開発やバグ修正を独立したブランチでおこない、完了後にメインブランチにマージできる点がメリット。また、複数の開発者が同時に作業しても競合を最小限に抑える仕組みがあり、リモートリポジトリとの同期もスムーズです。
オープンソースであり、多くのプラットフォームやツールと連携する柔軟性を持っています。Gitは、チームでの協力や大規模プロジェクトに特に適しています。
Subversion
Subversion(SVN)は、中央集権型のバージョン管理システムで、ファイルやディレクトリの変更履歴を効率的に管理します。特徴的なのは、すべてのデータが中央リポジトリに保存されるため、チーム全員が同じコードベースにアクセスできる点です。
全員が同じコードベースにアクセスできるため、複数の開発者が同時に作業をおこなっても、変更が簡単に統合できます。
Subversionは、バイナリファイルのバージョン管理が得意で、フォルダやファイルの変更履歴を追跡する機能も充実。また、特定のバージョンに戻す「ロールバック」や、特定のリビジョンを比較する「差分表示」などが簡単におこなえます。
ただし、オフライン作業には制約があり、リポジトリにアクセスできない場合、変更を保存することができません。Subversionを利用する場合、インターネット接続が安定している環境での利用がおすすめです。
Mercurial
Mercurialは、分散型バージョン管理システムで、ソフトウェア開発やドキュメントの変更履歴を効率的に管理するためのツールです。特徴的なのは、直感的なコマンドラインインターフェースと優れたユーザーエクスペリエンスで、初心者でも使いやすい設計になっている点。
Mercurialでは、各開発者がローカルリポジトリを持ち、オフラインで作業できるため、インターネット接続なしでもコミットやブランチ作成が可能です。また、変更のマージやブランチの操作がシンプルで、特に機能の追加やバグ修正をおこなう際に便利に利用できるでしょう。
さらに、Mercurialはプラグインを通じて機能拡張が可能で、多様なワークフローに対応できます。
ただし、Gitに比べてコミュニティやリソースが小さく、情報が限られることがデメリット。それでも、開発者のニーズに応じた柔軟性と使いやすさから、特に中小規模のプロジェクトに適しています。
Perforce
Perforceは、特に大規模なプロジェクト向けに設計された中央集権型のバージョン管理システムです。おもにソフトウェア開発やゲーム制作で利用されており、複数の開発者が同時に作業しても、高速かつ効率的にデータを管理できます。
Perforceの強みは、大容量のファイルやバイナリデータの取り扱いに優れていること。大容量のファイルを取り扱えるため、画像や音声ファイルなどのメディアデータを含むプロジェクトでも、スムーズに管理できます。
また、ブランチやマージの操作が強力で、変更の統合が容易です。さらに、豊富な権限管理機能により、ユーザーごとに細かいアクセス制御が可能。
ユーザーごとにアクセス制御ができるため、プロジェクトのセキュリティを高めることができます。
ただし、商用ソフトウェアであるため、ライセンス費用が発生し、導入や運用が他のツールに比べてコストがかかる点がデメリット。
総じて、Perforceは大規模かつ複雑なプロジェクトに最適なツールであるといえるでしょう。
UiPath
UiPathは、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)ツールで、業務プロセスの自動化を目的としています。
ユーザーがビジュアルインターフェースを使って簡単にワークフローを設計できるため、プログラミングの専門知識がなくても利用可能です。直感的なドラッグ&ドロップ機能により、複雑なプロセスを視覚的に構築できます。
UiPathは、データの抽出や入力・アプリケーション間のデータ移動・定型業務の自動化など、多岐にわたるタスクを実行可能。また、AIや機械学習と統合することで、より高度な自動化ができます。
管理機能も充実しており、ロボットの監視やログの取得が簡単におこなえる点も魅力。ただし、ライセンスが有料であるため、コストがかかる点や、特定の業務プロセスに特化した設計であるため、柔軟性に欠けることもあります。
バージョン管理ツールGitの使い方
ここからは、バージョン管理ツールの一つであるGitの使い方をみていきましょう。
以下の項目に分けて、それぞれの作業をコード例を交えて解説します。
- 1. リポジトリを初期化する
- 2. 変更を追跡する
- 3. 変更をコミットする
- 4. ブランチを操作する
- 5. リモートと同期する
- 6. マージをおこなう
- 7. 履歴を確認する
- 8. 競合を解決する
- 9. タグを付ける
- 10. リポジトリを管理する
上記手順に沿ってコマンドを実行することで、Gitでのバージョン管理が可能です。
1. リポジトリを初期化する
Gitでリポジトリを初期化するには、まずターミナルを開き、作業したいディレクトリに移動します。次に、git initコマンドを実行します。
たとえば、プロジェクト用のフォルダを作成して移動する場合、以下のようにします。
cd my_project
git init
git initコマンドを実行することで、my_projectフォルダ内に新しいGitリポジトリが作成され、.gitフォルダが生成されます。
2. 変更を追跡する
Gitで変更を追跡するには、まずファイルを作成または編集します。たとえば、hello.txtというファイルを作成し、内容を追加します。
その後、変更をステージングエリアに追加するために、git addコマンドを使います。
git add hello.txt
git add コマンドで、hello.txtファイルの変更を追跡できるようになりました。
3. 変更をコミットする
次に、変更をコミットして履歴に記録します。以下のコマンドでコミットメッセージを付けて保存します。
git commitコマンドを実行すると、hello.txtの変更がGitによって追跡され、履歴に保存されます。
4. ブランチを操作する
Gitでブランチを操作するには、まず新しいブランチを作成します。たとえば、feature-branchという名前のブランチを作成するには、以下のコマンドを実行します。
次に、そのブランチに切り替えるには、以下のコマンドを使用します。
git checkout feature-branch
これで、feature-branchに切り替わり、独立して作業できます。
作業が完了したら、変更をメインブランチにマージするために、メインブランチに戻り、マージコマンドを使用します。
git merge feature-branch
これで、新しい機能がメインブランチに統合されます。
5. リモートと同期する
リモートリポジトリと同期するには、まずリモートリポジトリを追加します。たとえば、GitHubにあるリモートリポジトリをoriginという名前で追加するには、次のコマンドを使用します。
次に、ローカルの変更をリモートにプッシュするには、以下のコマンドを実行します。
これで、ローカルのmainブランチの変更がリモートリポジトリに反映されます。また、リモートの変更を取得するには、以下のコマンドを使用します。
git pullコマンドを実行することで、リモートリポジトリの最新の変更がローカルに同期されます。
6. マージをおこなう
マージをおこなうには、まずマージ先のブランチに切り替えます。たとえば、mainブランチに切り替えるには次のコマンドを実行します。
次に、マージしたいブランチ(ここではfeature-branch)を指定してマージを実行します。
これで、feature-branchの変更がmainブランチに統合されます。もし競合が発生した場合、該当ファイルを手動で修正し、再度ステージングしてコミットします。
git commit -m “Resolve merge conflict”
git addとgit commitコマンドを実行することで、マージが完了し、変更がmainブランチに反映されます。
7. 履歴を確認する
Gitで履歴を確認するには、git logコマンドを使用します。このコマンドを実行することで、コミットの履歴が表示され、各コミットのハッシュ、著者、日付、コミットメッセージが確認できます。
履歴が多い場合、最新の数件だけを表示するには、-nオプションを使用します。たとえば、最近の3件を表示するには次のようにします。
git log -3
また、履歴を簡潔に表示するには、–onelineオプションを使います。
—onelineオプションを使用すれば、各コミットの短いハッシュとメッセージが一行で表示され、視覚的に履歴を把握しやすくなります。
8. 競合を解決する
Gitで競合を解決するには、まずマージを実行します。たとえば、mainブランチにfeature-branchをマージしようとすると、競合が発生することがあります。
git merge feature-branch
競合が発生すると、Gitは競合のあるファイルを表示します。
ファイルを開くと、「<<<<<<< HEAD、=======、>>>>>>> feature-branch」というマーカーが見えます。これを基に、どの変更を残すかを手動で修正します。
修正後、競合の解消が完了したら、ファイルをステージングします。
最後に、競合解決を記録するためにコミットします。
これで競合が解決され、変更が反映されます。
9. タグを付ける
Gitでタグを付けるには、まず特定のコミットにタグを作成します。タグは主にリリースや重要なポイントを示すために使用されます。
タグを作成するには、次のコマンドを実行します。
これで、現在のコミットにv1.0というタグが付けられます。特定のコミットにタグを付けたい場合は、コミットハッシュを指定します。
タグをリモートリポジトリにプッシュするには、以下のコマンドを使用します。
すべてのタグを一度にプッシュする場合は、次のようにします。
これにより、ローカルで作成したタグがリモートリポジトリに反映されます。
10. リポジトリを管理する
Gitでリポジトリを管理するには、まずリポジトリの状態を確認することが重要です。git statusコマンドを実行すると、変更されたファイルやステージングエリアの状況を確認できます。
次に、不要なファイルを管理するために.gitignoreファイルを作成し、追跡したくないファイルやフォルダを指定します。たとえば、以下の内容を.gitignoreに追加します。
*.log
リポジトリのバックアップや共有には、リモートリポジトリを設定します。リモートリポジトリを追加するには、次のコマンドを実行します。
最後に、リポジトリをクリーンに保つために、定期的に不要なブランチを削除します。ローカルブランチを削除するには、以下のコマンドを使用します。
これで、リポジトリの管理がスムーズにおこなえます。
このように、さまざまな方法でリポジトリを管理できますが、操作方法などまだまだわからないことが多いのではないでしょうか。
Gitのリポジトリ管理で不明なことがあれば、多くの知見を持つ、株式会社Jiteraにご相談ください。どんなに細かいことでも、ヒアリングさせていただき、適切なアドバイスをご提案させていただきます。
バージョン管理ツール・システム導入時の注意点
Gitコマンドを活用すれば、バージョン管理のさまざまな作業ができることがわかりました。次に、バージョン管理ツールを使用した際の注意点をみていきましょう。
ここでは、以下の項目に分けて、バージョン管理ツール・システム導入時の注意点を解説します。
- 適切なツールを選択する
- 明確なワークフローを確立する
- セキュリティを確保する
- 大規模ファイルの扱いに注意する
- バックアップ戦略を立案する
- CI/CDとの統合を考慮する
バージョン管理ツールやシステムを導入する際は、自社の状況にあった適切なツールを選択することが重要です。また、明確なワークフローを確立したり、セキュリティを確保することも必要となります。
適切なツールを選択する
バージョン管理ツールやシステムを導入する際には、適切なツールを選択することが重要です。
まず、プロジェクトの規模や性質に応じたツールを検討しましょう。
たとえば、大規模なチームや複雑なプロジェクトには、GitやPerforceのような強力な分散型システムが適しています。一方、シンプルなプロジェクトや少人数のチームには、Subversionのような中央集権型システムが合う場合もあるでしょう。
また、チームの技術力や経験も考慮する必要があります。ほかにも、コストも重要な要素であり、ライセンス費用や運用コストを事前に確認することが重要です。
明確なワークフローを確立する
バージョン管理ツールやシステムを導入する際には、明確なワークフローを確立することが不可欠です。
まず、チーム内での役割と責任を明確にし、誰が何を担当するのかをはっきりさせます。各担当を明確にすることで、作業の重複や誤解を防ぎ、効率的な作業が可能になるでしょう。
また、ブランチ戦略を定義することも重要な項目の一つ。さらに、マージやリリースの手順も明確に定めておくことが重要です。
最後に、定期的にワークフローを見直し、必要に応じて改善することも忘れないようにしましょう。
セキュリティを確保する
バージョン管理ツールやシステムを導入する際、セキュリティを確保するようにしましょう。アクセス制御を設定し、ユーザーごとに適切な権限を与えることで、機密情報や重要なファイルへの不正アクセスを防ぎます。
また、定期的にバックアップを実施し、データの損失や障害に備え流ことも重要です。さらに、全ての開発者に対してセキュリティに関するトレーニングを実施し、脆弱性やリスクについての認識を高めることも効果的でしょう。
ほかにも、定期的なセキュリティ監査をおこなって、システムの脆弱性を特定し、迅速に対策を講じることも重要です。
セキュリティを確保することで、バージョン管理システムの安全性を向上させ、プロジェクト全体の信頼性を確保することができます。
大規模ファイルの扱いに注意する
バージョン管理ツールやシステムを導入する際、大規模ファイルの扱いには特に注意が必要です。
一般的に、画像や動画、バイナリファイルなどの大きなファイルは、リポジトリのパフォーマンスに悪影響を与えることがあります。パフォーマンスに悪影響が出ると、クローンやプル、プッシュの際に時間がかかり、チームの生産性が低下することも。
大規模ファイルを扱う場合は、Git LFS(Large File Storage)などの専用ツールを利用するようにしましょう。専用ツールを利用すれば、リポジトリには小さなポインターファイルだけを保存して、実際の大規模ファイルは別のストレージに保管されるため、リポジトリのサイズを抑えることができます。
バックアップ戦略を立案する
バージョン管理ツールやシステムを導入する際、バックアップ戦略を立案することは不可欠です。
頻繁に変更がおこなわれるプロジェクトでは、毎日または毎週のバックアップがよいでしょう。一方、変更が少ない場合は、月次のバックアップでも十分な場合が多いです。
また、リポジトリ全体をバックアップするのが基本ですが、特に重要なブランチやタグ、設定ファイルも忘れずに含めるようにします。さらに、バックアップをおこなう際には、クラウドストレージや外部ハードディスクなど、異なる物理的な場所に保存するのがよいでしょう。
最後に、定期的にバックアップの検証をおこない、正常に復元できるかを確認することも重要です。
CI/CDとの統合を考慮する
バージョン管理ツールやシステムを導入する際には、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)との統合を考慮することが重要です。
CI/CDは、コードの自動テストやデプロイをおこなうプロセスであり、バージョン管理と連携することで開発効率を大幅に向上させます。CI/CDとの統合を考量するためには、使用するバージョン管理ツールがCI/CDツールと互換性があるかを確認しましょう。
また、CI/CDパイプラインの設計時には、どのブランチでテストやデプロイをおこなうかを明確にしておく必要があります。
さらに、自動テストの実行結果やデプロイ状況をバージョン管理ツールのコミット履歴やプルリクエストに関連付けることもおすすめです。関連付けをおこなうことで、コードの変更がどのようにプロダクション環境に影響を与えるかを追跡しやすくなります。
まとめ:バージョン管理を正確におこない効率よく開発しましょう
今回は、バージョン管理に関して、以下のことがわかりました。
- バージョン管理はソフトウェアやドキュメントの変更履歴を追跡し複数のバージョンを管理する仕組み
- 正確に変更履歴を管理できたりチームで並行開発を効率的におこなえるのがメリット
- バージョン管理をおこなうためのツールやシステムがある
- プロジェクト環境にあった適切なツールを利用することが重要
バージョン管理をおこなうことで、チームの並行開発を効率的におこなえますが、どのように活用したらよいかわからないこともあるでしょう。
バージョン管理に関して不明点や疑問があれば、多くの知見を持つ、Jitera株式会社にご相談ください。自社の状況を詳細にヒアリングさせていただき、最適なアドバイスをご提案させていただきます。