あなたはシステム開発のプロジェクト管理にAIを活用していますか?
システム開発ではさまざまな場面でAIを活用できます。
プロジェクト計画の際にAIを活用すると、効率的にプロジェクト計画書を作成できるだけではなく、客観的にリスク分析することでプロジェクトの失敗を防ぐといった効果も得られます。
また、プロジェクトマネージャーとしての経験が少なくても、AIをうまく使うことで、効率的かつ網羅的にプロジェクト計画書が作成できます。
本記事では、AIを活用したプロジェクト管理の具体的な方法とそのメリットについて、実例を交えながら詳しく解説します。
10年目現役システムエンジニアです。 JavaやPythonを使用したアプリケーション開発、生成AIを活用したプログラミングやプロジェクト管理、ノーコードツールを活用したシステム開発の経験があります。 SEとしての経験を活かして、すぐに使える実用的な情報をお届けしたいです。
AIを使ってプロジェクト計画書を作成するメリット

AIを活用してプロジェクト計画書を作成することで、プロジェクト管理の効率と精度が大幅に向上します。
主なメリットは以下の3点です。
- 時間短縮による効率化
- 一貫性の維持による精度の向上
- 客観性の確保によるリスク管理の強化
それぞれについて解説します。
時間短縮による効率化
AIを使用することで、プロジェクト計画書の作成にかかる時間を大幅に削減できます。
具体的な効果としては以下の点が挙げられます。
- 情報の収集と整理が迅速:AIが瞬時に関連情報を提供し、構造化してくれるため、資料の収集や整理にかかる時間が削減されます。
- ドラフトの高速生成:基本的な計画書の骨子をAIが数分で作成してくれるため、ゼロから書き始める必要がありません。
- 繰り返し作業の自動化:類似プロジェクトの場合、過去の計画書を参考にAIが自動的に適切な内容を提案してくれます
私の場合は、AIによる情報の整理やドラフトの作成といったところで効率化効果を感じました。
AIにたたき台を作ってもらうだけでも、作業効率がかなりあがります。
一貫性の維持による精度の向上
プロジェクト計画時には、スコープ、予算、期間といったさまざまな観点で情報を整理する必要があります。
人手ではミスや情報の抜けが生じることがありますが、AIを使うことで、プロジェクト計画書の一貫性を維持できます。
一貫性を維持することで得られる効果は以下の通りです。
- 用語の統一:AIが一貫した用語を使用するため、文書全体で専門用語や略語の使用が統一されます。
- 構造の一貫性:AIが提案する構造は論理的で一貫性があるため、計画書におけるセクション間の関連性が明確になります。
- データの整合性:AIが自動的にチェックを行うため、数値データなどの整合性を保てます。
用語の統一やセクション間での整合性を保てるという効果は大きいです。
ただ、数値データの整合性についてはAIの出力が間違っていることがあるため、自分でも再確認することをおすすめします。
客観性の確保によるリスク管理の強化
AIを活用することで、人間の主観や経験則だけでは見落としがちな要素を含めた、より客観的なリスク管理ができます。
具体的な効果は以下の通りです。
- 包括的なリスク分析:AIは過去の事例や一般的な知見を基に、幅広い観点からリスクを洗い出します。
- バイアスの軽減:個人の経験や組織の慣習に縛られない、客観的な視点を提供してくれます。
- データに基づく予測:過去のプロジェクトデータを分析し、より正確な工数や予算の見積もりを支援します。
過去のリスク事例や、過去のプロジェクト計画書をインプットにすることで、より精度が高い計画が立てられます。
AIを活用することで、自分では見落としていたリスクや考慮点を洗い出せるという効果が得られます。
AIを使ったプロジェクト計画書の作り方

ここでは、AIを活用してプロジェクト計画書を効率的に作成する方法を紹介します。
冒頭で紹介した事例のやり方を紹介していきます。
今回紹介する流れは以下の通りです。
- プロジェクト概要を整理する
- 制約条件やリスクを洗い出す
- プロジェクト計画書を作成する
それでは一つずつ解説します。
①プロジェクト概要を整理する
まず、プロジェクトの全体像を把握するために、AIにプロジェクト概要の整理を依頼します。
プロンプトの例は以下のとおりです。
各要素について簡単な説明も加えてください。
AIが列挙する要素には以下のようなものが挙げられます。
- プロジェクトの目的
- 具体的な目標
- 主要な機能
- ターゲットユーザー
- プロジェクトのスコープ
- 成功基準
- 予算
- タイムライン
- 主要なステークホルダー
このリストを参考に、自分のプロジェクトの特性に合わせて必要な情報を整理していきます。
②制約条件やリスクを洗い出す
次に、プロジェクトの制約条件やリスクをAIに洗い出してもらいます。
プロンプトの例は以下の通りです。
以下のプロジェクト概要に基づいて、考えられる主要な制約条件とリスクを挙げてください。
各項目に簡単な説明を加えてください:
[ここに①で整理したプロジェクト概要を挿入]
リスクの重要度や評価時期などリスク管理のために必要な情報が決められている場合は、それも出力するよう指示するとよいでしょう。
AIは与えられた情報をもとに、プロジェクト特有の制約条件やリスクを提示してくれます。
さらに、プロジェクト計画書の他の要素についても、AIと相談しながら決定するのもおすすめです。
- 品質計画:「このプロジェクトの品質基準と品質管理方法を提案してください」
- 顧客分析:「このプロジェクトの主要ステークホルダーのニーズと期待を分析してください」
- スケジュール最適化:「このプロジェクトのクリティカルパスと最適化方法を提案してください」
- リソース配分:「このプロジェクトの主要フェーズごとに必要なリソースを提案してください」
AIとの対話を通じて、これらの要素を詳細に検討し、プロジェクト計画書に反映させていきます。
③プロジェクト計画書を作成する
最後に、①と②で整理した情報をもとに、AIにプロジェクト計画書を作成してもらいます。
以下のようなプロンプトを使用します。
AIが生成したプロジェクト計画書をもとに、必要に応じて情報を追加・修正し、より具体的で実用的な計画書に仕上げていきます。
ただ、AIが作成した計画書は完璧ではありません。
プロジェクトマネージャーがレビューし、必要に応じて調整を加えることが重要です。
AIは効率的に情報を整理し、計画書の骨格を作成しますが、最終的な判断は人間が行う必要があります。
AIを活用することで、プロジェクト計画書の作成プロセスを大幅に効率化し、より包括的で質の高い計画を立てられます。
ただし、AIはあくまでも支援ツールであり、プロジェクトの成功には人間の洞察力と判断力が不可欠であることを忘れないようにしましょう。
AIを使ったプロジェクト計画書の作成例

それではまずは私が実際にAIを使ってプロジェクト計画書を作成した実例を紹介します。
AIを使ってプロジェクト計画書を作成するやり方はこのあと紹介するので、まずは実際の流れを確認してみましょう。
今回はClaude 3.5 Sonnetを使って出力した例を紹介します。
①プロジェクト概要を整理する
まず、プロジェクトの概要を整理することから始めます。
プロジェクトの概要としてどのようなことを整理すればよいかAIに聞いてみました。
使用したプロンプトは以下のとおりです。
あなたは経験豊富なプロジェクトマネージャーです。
ECサイト向けの新しい顧客管理システム(CRM)プロジェクトの概要を整理するために必要な要素をリストアップしてください。各要素について簡単な説明も加えてください。
実際のやり取りは以下になります。

このようにまずはプロジェクト計画時に整理すべきプロジェクトの概要とは何かをAIにアドバイスしてもらいました。
②制約条件やリスクを洗い出す
次に、プロジェクトの制約条件やリスクをAIに洗い出してもらいます。
先ほど定めたプロジェクトの概要とともに、制約条件やリスクを洗い出してもらいます。
使用したプロンプトは以下になります。
本プロジェクトの概要は以下のとおりです。
ECサイト向けCRM開発プロジェクト
1. プロジェクト概要
本プロジェクトは、当社ECサイトの顧客管理を強化し、販売促進を図るための新しい顧客管理システム(CRM)の開発を目的としています。
2. 目的と目標
顧客との関係強化と販売促進
顧客データの一元管理による業務効率化
パーソナライズされたマーケティング施策の実現
導入後1年以内に顧客満足度10%向上、リピート率15%増加を目指す
3. 主要機能
顧客情報管理(プロフィール、購買履歴、問い合わせ履歴)
セグメンテーションとターゲティング
…(省略)
上記のプロジェクト概要を基に、このプロジェクトの制約条件やリスクを洗い出してください。
予算、期間、リソースの制約も含めてください。
実際のやり取りは以下のとおりです。

Claudeからの出力結果には、制約とリスクが網羅的にまとめられていました。
リスクとしては以下のような項目が挙げられています。

一般的なリスクも多いですが、予算、スケジュール、品質の観点だけではなく、ユーザトレーニングやセキュリティといった観点まで入っているため、自分では気づかない項目にも気づけました。
③プロジェクト計画書を作成する
最後に、整理したプロジェクト概要と洗い出した制約条件・リスクをもとに、プロジェクト計画書を作成します。
以下のようなプロンプトを使用しました。
上記のプロジェクト概要、制約条件、リスクを基に、プロジェクト計画書を作成してください。
計画書には、プロジェクトの概要、目標、スコープ、スケジュール、リソース配分、リスク管理計画を含めてください。
実際の出力は以下のとおりです。

このようにAIを活用することで、プロジェクト計画書の作成を効率的に進めることができました。
また、AIに観点やリスクを洗い出してもらうという使い方をすることで、プロジェクトマネージャーとしての経験が少なくてもプロジェクト計画書を効率的に作成できます。
単に情報をまとめてもらうだけではなく、AIにアイデア出してもらうという使い方もおすすめなので、ぜひ試してみてください。
まとめ

今回は、AIを活用したプロジェクト計画書の作成方法とそのメリットについて、実例も踏まえて解説しました。
AIの活用により、プロジェクト計画書の作成時間を大幅に短縮できるだけでなく、一貫性の維持や客観性の確保といった質的な向上も実現できます。
ただ、重要なのは、AIはあくまでも支援ツールであり、最終的な判断や意思決定はプロジェクトマネージャーが行う必要があるということです。
AIの提案を参考にしながらプロジェクトの特性に合わせてカスタマイズすることで、より効果的なプロジェクト管理が可能となります。
今回紹介した内容を参考に、AIを活用して効率的かつ網羅的なプロジェクト計画書を作成しましょう。
