こんにちは!Jiteraの岩崎です。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか。私は週末に家族と一緒に公園でピクニックを楽しみ、リフレッシュしました。では今週もこの一週間で社内で話題になった生成AIトレンドについて説明します。

富士通の生成AIサービス
富士通が2024年7月から提供開始する「エンタープライズ生成AIフレームワーク」は、企業向けに特化した生成AIサービスです。この新サービスは、企業が抱える大規模データの取り扱いやコスト、応答速度、法令順守などの特有のニーズに対応することを目的としています。富士通の既存AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」に組み込まれ、企業の業務効率化や精度向上を支援します。
特に注目すべきは「ナレッジグラフ拡張RAG」という技術です。この技術は、従来のRAG(Retrieval-Augmented Generation)が持つ大規模データ処理の弱点を克服し、1,000万文字以上のドキュメントを参照できる能力を持っています。企業の膨大なデータや法令をナレッジグラフで構造化し、より高精度な回答生成を実現します。これにより、企業はより複雑な質問にも対応可能となり、業務の効率化が期待されます。
さらに、富士通は生成AI混合技術と生成AI監査技術も取り入れており、企業が生成AIを安全かつ効果的に活用できる環境を整えています。生成AI混合技術では、異なる生成AIモデルを組み合わせて最適な結果を導き出すことができ、生成AI監査技術では、安全性と透明性を確保するための監査機能が世界初の技術として導入されています。
これらの技術により、企業はより精度の高いデータ解析や業務の自動化を実現し、競争力を高めることができます。富士通の「エンタープライズ生成AIフレームワーク」は、企業が抱える様々な課題を解決し、効率的かつ効果的な業務運営をサポートする重要なツールとなるでしょう。
医師調査
2024年7月5日に発表された医師1,578名を対象としたアンケート結果では、医療現場での新技術の導入状況が明らかになりました。特に大学病院での新技術導入が進んでおり、遠隔医療やAIによる画像診断への期待が高まっています。
このアンケート結果によれば、全体的に新技術の導入はまだ進んでいないものの、遠隔医療が最も多く活用されている分野であることがわかりました。多くの医師がAIによる画像診断に期待を寄せており、遠隔医療や再生医療、ロボット手術も高い期待を受けています。
生成AIは、問診や予診、カルテ作成、研究論文の英文校正など多岐にわたる用途で期待されています。アンケートに回答した医師の約7割が生成AIを医療現場で活用できると考えており、AIの導入により業務の効率化と診断精度の向上が見込まれています。特に、AIはデータ整理や診断補助に役立ち、医師の負担を軽減します。書類作成の負担が軽減されることで、医師はより多くの時間を患者の診察に充てることができるようになります。
Metaの新しいAIモデル
Metaは2024年7月に、5つの新しいAIモデルを発表しました。これらのモデルは、テキストと画像を処理するマルチモーダルシステム、次世代言語モデル、音楽生成、AI音声検出、多様性向上の取り組みを含んでいます。
まず、Chameleonというモデルはテキストと画像の両方を理解し生成する能力を持ち、画像キャプション生成や視覚的質問応答において高性能を発揮します。これにより、ユーザーはテキストと画像を組み合わせたコンテンツを簡単に生成することができます。
次に、次世代の大規模言語モデルであるMeta Llama 3は、推論力、コード生成、指示追従能力が向上しており、8Bおよび70Bパラメータのモデルが用意されています。業界ベンチマークで最先端の性能を示し、オープンソースとして提供されることで、広範なユースケースに対応します。
さらに、JASCOというモデルはテキストから音楽を生成する能力を持ち、入力されたコードやビートなどを基に多様な音楽を生成します。これにより、音楽クリエイターはより自由度の高い音楽制作が可能になります。
AudioSealはAI生成音声を検出するためのオーディオウォーターマーキング技術であり、AI生成音声のセグメントを迅速かつ効率的に検出することができます。これにより、大規模かつリアルタイムのアプリケーションでの利用が可能となります。
最後に、多様性向上の取り組みとして、Metaはテキストから画像を生成するモデルの地理的多様性を評価する自動指標を開発しました。65,000以上の注釈を収集し、地理的表現の評価を行うことで、モデルの多様性と表現の改善を目指しています。
Cloudflareの新機能「AI Scrapers and Crawlers」
Cloudflareは2024年7月3日に、AIボットによるWebスクレイピングを防ぐ新機能「AI Scrapers and Crawlers」を発表しました。この機能は、AIボット、スクレイパー、クローラーを自動的に検出してブロックするもので、全てのCloudflareユーザーが利用可能です。
特に注目すべきは、グローバルな機械学習モデルを使用してユーザーエージェントを偽装したボットも検出可能にする点です。これにより、ウェブサイト運営者は無断データ収集から保護され、より安全なインターネット環境を維持できます。主なターゲットとして、Bytespider(ByteDance)、Amazonbot(Amazon)、ClaudeBot(Anthropic)、GPTBot(OpenAI)などの主要AIボットが含まれています。
↓過去一年にネットワーク上で見られたAIボットの推移
GMOインターネットグループの「天秤AI」
GMOインターネットグループは、複数の生成AIを同時に実行・比較できる「天秤AI」を発表しました。この機能は、最大6つの生成AIモデルを同時に実行し、各モデルの回答を比較して最適なものを選択できる点が特徴です。
さらに、履歴保持機能も追加され、過去に実行したプロンプトとその結果を自動的に保存し、いつでも振り返ることが可能です。これにより、ユーザーは最適な生成AIモデルを効率的に選択し、作業効率を向上させることができます。
天秤AIの利用方法は簡単で、「教えてAI byGMO」のアカウントを作成し、プロンプトを入力して実行するAIモデルを選択するだけです。無料プランでも複数の生成AIモデルを同時に利用可能で、有料プランではウォーターマークなしで利用できます。
防衛省のAI活用基本方針
防衛省は2024年7月2日、初めてとなるAI活用推進の基本方針を策定しました。この方針では、AIを重点的に活用する7つの分野を定め、防衛力の向上と人員不足の課題解決を目指しています。
AI活用の7つの重点分野
- 目標の探知・識別: レーダーや衛星画像の解析によるミサイルなどの目標探知
- 情報の収集・分析: インターネットや電波などからの情報収集と分析
- 指揮統制: 収集した情報の分析に基づく意思決定支援
- 後方支援業務: 補給や整備などの効率化
- 無人アセット: 無人機などの制御や自律運用能力の向上
- サイバーセキュリティー: サイバー防衛能力の強化
- 事務処理業務の効率化: 行政事務の効率化
基本方針のポイント
- AIの活用により、新たな戦い方への対応や人員の効率的な運用を目指す
- 現状のAIには誤りやバイアスのリスクがあるため、人間による関与を確保
- 完全自律型の致死性兵器の開発は行わない方針を明確化
- 民間企業や研究機関、他国との協力を重視
- AIの倫理面に関する独自のガイドラインを策定予定
防衛省のこの基本方針は、AIの活用を通じて防衛力を強化しつつ、人口減少に伴う人員不足の課題に対応することを目指しています。同時に、AIの限界や倫理的な問題にも配慮し、人間の関与を重視する姿勢を示しています。
詳細はこのPDFをご覧ください→https://www.mod.go.jp/j/press/news/2024/07/02a_03.pdf
Amazonの生成AIへの投資強化
Amazonは2024年に生成AIへの投資を強化し、特に南半球やインド・太平洋地域での成長を目指しています。以下にその詳細をまとめます。
主要な投資
- Anthropicへの投資: AmazonはAnthropicに対して総額40億ドルの投資を完了しました。この投資により、AnthropicはAmazon Web Services (AWS)を主要なクラウドプロバイダーとして使用し、将来の基盤モデルの開発と安全性研究を進めます。
- 生成AIスタートアップへの支援: Amazonは生成AIスタートアップに対して2億3000万ドルの投資を発表しました。この投資には、AWSの計算クレジット、メンターシップ、教育が含まれ、特に初期段階のスタートアップを支援します。
- AWS Generative AI Impact Initiative: 公共部門向けに5,000万ドルの投資を行い、生成AIを活用したイノベーションを促進します。
地域別の取り組み
- アジア太平洋地域: Amazon Bedrockのサービスをアジア太平洋地域(ムンバイ)で開始し、地域の企業が生成AIを活用できるようにします。また、マレーシアやオーストラリアに新しいAWSリージョンを設立し、地域の成長を支援します。
- 南半球: 南半球の成長市場に焦点を当て、生成AI技術の普及を推進します。
技術とインフラ
- Amazon Bedrock: 複数の基盤モデル(AnthropicのClaude、AI21 LabsのJurassic-2、Amazon Titanなど)を提供し、企業が生成AIアプリケーションを構築・スケールできるようにします。Mistral AIの最新モデル「Mistral Large」を含む新しいモデルも利用可能です。
- カスタムAIチップ: AWS TrainiumやInferentiaチップを使用して、生成AIモデルのトレーニングとデプロイを効率化。
生成AIの応用例
- 商業ビルのエネルギー効率化: BrainBox AIの仮想ビルディングアシスタント「ARIA」を使用して、ビルの温度調整や設備の故障検知を行い、エネルギー効率を最適化します。
- 医療分野: 医療機関が生成AIを活用して、薬の研究開発を加速し、患者ケアを改善する方法を模索します。
- 教育分野: 教育体験のパーソナライズ化やセキュリティ強化を目指し、生成AIを活用します。
Amazonの生成AIへの積極的な投資と戦略的な取り組みは、グローバルな成長を促進し、特に南半球やインド・太平洋地域での市場拡大を目指しています。これにより、企業や公共部門が生成AI技術を活用して革新を推進し、効率化と競争力の向上を図ることが期待されています。
今週は、富士通やAmazonをはじめとする企業の生成AIへの取り組みが目立ちました。これらの技術革新は、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えることでしょう。来週も、Jitera社内で話題になったAIトレンドを発信していくので、お楽しみに!
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