テクノロジーの進化は目覚ましいものがあり、多くの企業が古いシステムから新しいテクノロジーへの移行に直面しています。
レガシーシステムとは古くなった技術やソフトウェアを指し、業務効率の低下やセキュリティリスクを引き起こすことがあります。
しかし、これらのシステムを更新または置き換えようとすると技術やコスト面において多くの課題が出てくるでしょう。
本記事ではレガシーシステムの脱却方法と課題解決策について解説していきます。
近畿大学理工学部生命科学科を卒業後、独学でReactやNext.jsを中心としたフロントエンド開発に特化し、2022年10月よりフリーランスエンジニアとして活動。ヨーロッパや東南アジアを旅しながら、いろんな文化や人との出会いを楽しみつつ、クリエイティブなUI/UX設計に取り組んでいます。
レガシーシステムとは
レガシーシステムは、過去の技術や仕組みで構築されたコンピューターシステムのことを指します。主に1980年代に導入されたメインフレームやオフィスコンピューターが代表的な例といえます。
レガシーシステムの定義は具体的な年数によって明確に定められるものではありませんが、新しい技術や開発手法が登場した後も、古くなったコンピューターシステムのまま使用されていることを指します。
1980年代にはメインフレームやオフィスコンピューターが主流であり、それらのシステムは高い性能を持っているため多くの企業で使用されていました。
当時のシステムの古い技術や慣習が継承されつつ改修が重ねられているため、レガシーシステムは徐々に複雑化し、独自の拡張や改修が行われるようになっているのが懸念されています。
レガシーシステムの問題点と脱却が必要な理由
レガシーシステムからの脱却が必要な理由はいくつかありますが、ここではそれぞれの項目について解説していきます。
運用コストの増加
レガシーシステムの運用には、時間とともに多くの問題が生じてしまいます。
一つは、オリジナルのシステムを設計・開発した技術者やその技術自体が時代遅れになることで修正や更新が困難となり、これを専門とする技術者の費用が増加していきます。
また、古いシステムはエネルギー効率が悪かったり処理速度が遅かったりするため、日々の運用コストが無駄に増大してしまうことも考えられます。
更には、互換性のない古いハードウェアやソフトウェアの維持にもコストがかかるなど、多方面で運用コストがかかってしまうデメリットがあります。
セキュリティリスクが高い
レガシーシステムは、設計が古いため最新のセキュリティ脅威に対して脆弱です。
多くの場合は最新のセキュリティパッチやアップデートが提供されないため、未解決のセキュリティリスクを抱え続けることになり、データ侵害やサイバー攻撃のリスクが高まり、企業にとって重大なセキュリティ事故につながる可能性があります。
拡張性が低い
レガシーシステムは、変化する要件や市場の動向に素早く対応することが難しいです。
システムの基本構造が固定的であるため、新しい機能の追加やシステムの拡張が技術的にも経済的にも不可能な場合があります。
システムにおいて拡張性が低いことは、将来的な運用が厳しくなることにもつながるためデメリットといえます。
経営リスクが高い
レガシーシステムの不具合や障害はサービスの中断を引き起こし、それによって企業の収益やブランドに悪影響を与えることがあります。
また、顧客の要望に応じられないことで顧客満足度が低下し、結果的に顧客を失うことにもつながるかもしれまぜん。
このようなシステム依存は企業の柔軟性と対応能力を奪ってしまうため、最終的には企業の存続自体を脅かすことにもなり得ます。
DX化への対応が遅れる
デジタル変革(DX)は新しい技術を取り入れて業務効率を最適化していくことを指します。
レガシーシステムは新しい技術やプラットフォームとの統合が難しく、これがDXへの移行を遅らせる要因ともなります。
結果として市場の要求に応える機会を逃してしまうので競争上の不利益を被ることになります。
長期的な運用を考えるのであれば、レガシーシステムからの脱却は必須となってくるでしょう。
レガシーシステムからの脱却方法とモダナイゼーション
ここではレガシーシステムからの脱却方法についてそれぞれの項目で紹介していきます。
システム刷新を行う
システム全体の根本的な更新を行うことでレガシーシステムの制約を解消し、新しい技術基盤に移行することで柔軟性と性能を大幅に向上させることができます。
このシステムの刷新には、システムアーキテクチャの再設計、古いコードの書き換えや廃棄などがありますが、これによってシステムは最新のセキュリティ標準に準拠した安全なものを利用することができます。
また、ユーザーインターフェースの刷新も行うことで、今の時代や流行に合った使用感を実現できるようになります。
最新の技術で改修する(モダナイズ)
既存のシステムを最新の技術で順次更新する方法でも脱却が可能でしょう。
例えば、レガシーシステムのデータベースをモダンなNoSQLやクラウドベースのソリューションに移行することや、旧来のモノリシックなアプリケーションをマイクロサービスアーキテクチャに分割することなどがあります。
また、AIや機械学習のような先進技術を組み込むことで、システムに新たな価値を生み出すことも可能です。
クラウドへ移行する
レガシーシステムをクラウドに移行できれば、コスト削減、運用の簡素化、スケーラビリティの向上が実現できます。
クラウドサービスプロバイダーのプラットフォーム上でシステムを再構築または再配置することにより、ハードウェアの維持管理から解放されるため、リソースをオンデマンドでスケールアップまたはスケールダウンできるようになります。
災害に強く、人件費等のコスト削減、工数の短縮などあらゆるメリットを受けられる可能性があります。
レガシーシステム脱却を成功させるポイント
レガシーシステムからの脱却を成功させるには、認識しておくべき重要なポイントを理解しておく必要があります。
ここでは、その成功のための具体的なポイントについて紹介していきます。
経営層のコミットメントを獲得する
レガシーシステムから脱却する際は組織全体に影響を及ぼす可能性があるため、プロジェクト全体を見通せる経験値と統率性が重要となります。
経営層はプロジェクトのビジョンと目標を明確にし、必要なサポートを提供することで理解を得る必要があるでしょう。
また、経営層がこの技術的更新の必要性を理解して積極的に関与することで、プロジェクトに対する全社的なコミットメントを確実にすることができます。
現状の分析と把握をしっかり行う
成功するためには間違いなく現在のシステムの詳細な分析から始める必要があるでしょう。
この分析には、システムのアーキテクチャ、使用技術、依存関係、及び業務プロセスの理解などがあり、レガシーシステムの機能、限界、および業務への影響を正確に把握することで、改修または置換の範囲を具体的に定めることができます。
また、この情報はリスク評価とミティゲーション戦略の策定にも不可欠といえます。
目標と要件を定義する
クリアで実現可能な目標と具体的な要件の設定もプロジェクトを軌道に乗せる上で重要です。
目標は、業務の効率化、顧客体験の向上、コスト削減など、企業の戦略的優先事項に合わせて設定し、これらの目標に基づいて技術的要件やビジネス要件を詳細に定義することが後の設計と実装の指針となります。
適切な方法を選択する
レガシーシステムからの脱却方法は多岐にわたりますが、システム全体のリプレース、部分的なアップグレード、クラウドへの移行など、状況に応じた最適な戦略を選択することが重要です。
選択した方法は、技術的な実現可能性、コスト、サービスへの影響、期待される利益を総合的に評価した結果から何が適切かを判断する必要があるでしょう。
必要な人材の確保と育成を行う
技術的な専門知識を持つ人材は、レガシーシステムからの脱却では不可欠です。
プロジェクトのニーズに合わせて、適切な技術力を持つ内部スタッフを育成するか、外部から専門家を確保することが求められます。
必要な人材確保の際は、どんなスキルセットが必要で、どのくらいの期間確保できるのか、プロジェクトリーダーは成功させるために深く考えておく必要があります。
レガシーシステムと2025年の崖
2025年の崖とは、2025年までにレガシーシステムを改善しなければ、年間に最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると提唱されたものです。
これは2018年に経済産業省のデジタルトランスフォーメーションに向けた研究会のDXレポートで提唱されており、DX実現が難しくなるだけではなく、さまざまな問題を抱えることを示しています。
経済損失の原因としてはシステムトラブルのリスクが高まったりシステムの維持費が高額なったりなどが挙げられています。
レガシーシステムから新システムに移行するには、コストや手間がかかるため、ついつい後回しにしてしまいがちです。
しかし、2025年の崖を回避するためにも、早めにレガシーシステムの脱却を考えましょう。
まとめ:レガシーシステムの脱却は専門家へ相談を
レガシーシステムの背景にはさまざまな事情があるかと思います。
しかし、いつか解決に向けた取り組みをしなければこのまま管理・保守費用が膨れ上がっていくため、少しずつ対応策について糸口を探りながら行動に移すことがとても重要です。
レガシーシステムについて相談や悩みがある方、新たなシステムへ切り替えたい方は、ぜひJitera社へ一度ご相談してみてはいかがでしょうか。