AWS Cloud9は、AWSが提供する統合開発環境(IDE)です。
AWSで開発している方の中には、ローカルでプログラムを開発し、AWSへアップロードしているという方も多いでしょう。
AWS Cloud9を利用するとブラウザで開発を行うことができ、AWSへ直接アクセスできるため、開発効率が向上します。
本記事では、AWS Cloud9の特徴やメリット、デメリット、利用方法を紹介します。
記事を読むと、AWSで効率的に開発を行うことができるようになるので、ぜひ最後までご覧ください。
大学院を修了後、金融系SIerでSEとして従事。現在も外資系ITサービス企業で金融部門のSEとして勤務しています。ITの知見を活かしてWebライターとしても活動中です。
AWS Cloud9とは?

冒頭で述べた通り、AWS Cloud9はAWSが提供するブラウザで開発を行う統合開発環境(IDE)です。
AWS Cloud9について以下の2つの観点で紹介します。
- 統合開発環境(IDE)とは
- 主な機能
統合開発環境(IDE)とは

統合開発環境(Integrated Development Environment、IDE)は、ソフトウェア開発の効率を飛躍的に向上させるアプリケーションです。
プログラマーがコードを書く際に、エラーの検出、デバッグ、ビルドといった一連の作業を一つの場所で完結できるように設計されています。
IDEはコーディングを支援する多様な機能を備えています。
例えば、ソースコードの問題点をリアルタイムで指摘する機能や、プロジェクト管理ツールやデバッグツールなどが備わっており、より迅速かつ効率的に作業を進められます。
そのため、開発者は複雑なプログラムの開発に集中でき、生産性の向上が期待できます。
主な機能
AWS Cloud9には、コーディングを効率的に行うための様々な機能が備わっています。
その中でも主要な機能は以下の6つです。
- コード編集
- 実行とデバッグ
- コード補完
- 統合ターミナル
- ファイル共有
- バージョン管理
それぞれの機能について詳しく紹介します。
コード編集
AWS Cloud9は、JavaScriptやPython、PHP、Ruby、Go、C++といった多様なプログラミング言語に対応しており、開発者が必要とする幅広いニーズに対応します。
また、多様な言語でのコーディングが直感的に行えるように設計されており、シンタックスハイライトやエラーチェックなど効率的なコード編集を支援する機能が充実しています。
開発者はこれらのツールを使うことで簡潔で読みやすいコードを素早く作成することができるので、プロジェクトの進行をスムーズに進めることが可能です。
実行とデバッグ
AWS Cloud9の実行とデバッグ機能によってコードの動作を確認し、問題を特定して修正することが可能です。
AWS Cloud9では、プログラムの実行がシンプルな操作で行え、デバッグツールを使ってエラーやバグを効率的に見つけ出すことができます。
また、ブレークポイントの設定やステップ実行など詳細なデバッグオプションが用意されており、開発者はコードの挙動を細かく追跡し、最適な解決策を迅速に導き出すことが可能です。
コード補完
AWS Cloud9のコード補完機能は、開発者がコードを入力する際に関連する候補を提示してくれる便利なツールです。
この機能により、タイピングの手間を省きながら必要なコードを素早く見つけられるので、プログラミングの速度と正確性が向上します。
また、構文エラーのリスクを減らし、より効率的なコーディングが可能になります。
さらに、開発者が未知の関数やメソッドについて学びながら作業を進められるので、新しい言語やライブラリを学ぶ際にも役立ちます。
統合ターミナル
AWS Cloud9の統合ターミナルは、コード編集画面内で直接ターミナルコマンドを実行できる機能です。
統合ターミナルを使用して、サーバーへの接続や、パッケージやソフトウェアのインストール、各種スクリプトの実行など多様な操作を行うことができます。
また、複数のターミナルウィンドウを開いて同時に作業を進めることが可能であり、開発の効率が大きく向上します。
さらに、統合ターミナルはIDEの他の機能とシームレスに連携し、開発プロセスをスムーズかつ迅速に進めることが可能です。
ファイル共有
AWS Cloud9では、開発者間でのファイル共有が容易です。
チームメンバーはプロジェクトファイルをリアルタイムで共有し、同時に編集することが可能です。
そのため、遠隔地にいるメンバーとの作業を効率化し、プロジェクトの進行を早めることができます。
また、共有されたファイルは、変更履歴が記録されるため、誰がどの部分を編集したかが一目でわかります。
AWS Cloud9のファイル共有機能は、チームでの開発をよりスムーズにし、生産性の向上に貢献します。
バージョン管理
AWS Cloud9のバージョン管理機能は、開発プロセスにおける変更履歴の追跡を容易にします。
開発者は過去のバージョンに戻ったり、異なるバージョンのコードを比較したりすることが可能です。
これにより、チームメンバー間でのコードの統合がスムーズに行われ、複数人での開発が効率的に進められます。
また、誤って重要なコードを上書きした場合でも、簡単に元の状態に復元することが可能です。
AWS Cloud9バージョン管理機能により、開発者が安心して作業に集中できる環境を実現しています。
AWS Cloud9の料金体系は?

AWS Cloud9を利用する場合、基本的には料金はかかりません。
ただし、料金が発生する利用方法もあります。
ここでは、料金に関する以下の3点について紹介します。
- 基本的にフリー
- AWSのフリー利用枠
- AWSのEC2を利用で発生する料金例
基本的にフリー
AWS Cloud9は、基本的な利用に関しては料金が発生しません。
追加費用を心配することなく、クラウド上でコードを書き、プロジェクトを管理することができます。
ただし、AWS Cloud9を使用する際には、実行環境やデータストレージなど他のAWSサービスを利用する可能性があり、これらのサービスには別途料金がかかる場合があります。
AWSの他のサービスを利用する場合、無料利用枠をうまく利用することで、コストを抑えながら開発を進めることが可能です。
AWSのフリー利用枠
AWS Cloud9を利用する際には、AWSが提供するフリー利用枠を活用することができます。
特定のAWSサービスでは、無料で使用できるものがあり、開発者はこの枠内であれば追加料金を支払うことなくサービスを利用することが可能です。
例えば、Amazon EC2やAmazon S3などのサービスがフリー利用枠の対象となっています。
新規ユーザーは12ヶ月間、毎月一定量までこれらのサービスを無料で使用できます。
AWSのフリー利用枠を上手く利用すれば、初期投資を抑えつつ、必要なリソースを確保することができます。
AWSのEC2を利用で発生する料金例
AWS Cloud9を使用する際、EC2インスタンスを利用すると使用時間に応じて料金が発生します。
実際に使用したリソースに対してのみ費用を支払うもので、開発者はプロジェクトの規模やニーズに合わせてリソースを選択することができます。
例えば、t2.microインスタンスなどの小規模なインスタンスは、フリー利用枠の範囲内で無料で利用できますが、より大きなインスタンスや追加のストレージ、ネットワーク帯域などを使用する場合は、それに応じた料金がかかります。
AWSの料金計算ツールを使用すれば、事前に予想されるコストを計算し、予算内での開発計画を立てることが可能です。
AWS Cloud9のメリット

AWS Cloud9は様々な機能を持ち、開発においてたくさんのメリットがあります。
ここでは、AWS Cloud9のメリットについて以下の5点について取り上げます。
- 場所を選ばない開発
- 迅速な開発環境構築
- 開発環境の共有ができる
- コスト削減になる
- 拡張性がある
それぞれ紹介します。
場所を選ばない開発
AWS Cloud9はインターネット接続があれば、世界中どこからでもアクセス可能な開発環境です。
そのため、開発者はオフィスだけでなく、自宅や移動中、さらにはカフェなどの公共の場でも作業を行うことができます。
このアクセスの柔軟性は、特にリモートワークやフレキシブルな勤務体系を採用している企業にとって大きな利点となります。
また、緊急の修正が必要な場合でも、すぐに対応することが可能です。
AWS Cloud9ような場所を選ばない開発環境は、現代の多様なワークスタイルに適応し、生産性の向上に貢献します。
迅速な開発環境構築
AWS Cloud9は、複雑な設定や環境構築の手間を省き、開発者が直ちにコーディングを開始できる環境を提供します。
開発ツールがあらかじめ用意されているので、新しいアイデアや機能を迅速に試すことが可能です。
また、プロジェクトの要件に応じて必要なツールやライブラリを簡単に追加できるため、開発のスピードが大幅に向上します。
AWS Cloud9は、時間とリソースを有効に活用し、開発プロセスを加速させます。
開発環境の共有ができる
AWS Cloud9における開発環境の共有機能は、チームメンバー間での共同作業に役立ちます。
この機能を利用することで、遠隔地にいる同僚ともリアルタイムでコードを共有し、同時に編集作業を行うことが可能になります。
共有された開発環境は、プロジェクトの進捗に合わせて柔軟に調整でき、チーム全体の生産性を向上させることができます。
また、共有機能は、新しいメンバーがプロジェクトに参加する際の導入を容易にし、効率的なチームワークを実現します。
コスト削減になる
AWS Cloud9を活用することで、物理的なサーバーや開発環境の設置にかかるコストを削減できます。
クラウド上で完結するため、ハードウェアの購入やメンテナンスの必要がなく初期投資を抑えることが可能です。
また、AWS Cloud9を使用にかかる費用は発生しません。
このコストパフォーマンスの高さは、特に予算に限りがあるスタートアップ企業や個人開発者にとって大きなメリットとなります。
AWS Cloud9は、コスト効率の良い開発環境を提供することで、多くの開発者に選ばれています。
拡張性がある
AWS Cloud9は、プロジェクトの規模が拡大しても、必要に応じてリソースを追加することで対応可能な拡張性を備えています。
AWS Cloud9でAWSツールキットという拡張機能を利用すると、Amazon EC2やAmazon S3だけでなく様々なサービスにアクセスが可能です。
例えば、AWS Cloud9からアクセスできるサービスにはAPI GateWayやAWS CloudFormation、AWS Lamdbaなどがあります。
拡張機能を使うことによって幅広い開発に対応できます。
AWS Cloud9のデメリット

AWS Cloud9には、開発において多くのメリットがあります。
その一方で、デメリットもあります。
ここでは、AWS Cloud9の以下のデメリットについて取り上げます。
- インターネットに接続していないと使えない
- PCによっては動作が重くなる
それぞれ紹介します。
インターネットに接続していないと使えない
AWS Cloud9は、インターネット接続が必要なクラウドサービスであり、オフラインでは利用できません。
また、インターネット環境が不安定な場所では、動作が遅くなるなどAWS Cloud9の利用に影響が出る可能性があります。
しかし、Chrome、Safari、Firefox、Microsoft Edgeなどの主要な最新ブラウザで完全にサポートされており、インターネット環境さえあれば、これらのブラウザを通じてどこからでも開発作業を行うことが可能です。
AWS Cloud9は便利でアクセスしやすいですが、インターネット環境に依存している点はデメリットと言えるでしょう。
PCによっては動作が重くなる
AWS Cloud9は、ブラウザベースの開発環境であるため、PCの性能によっては動作が重くなる場合があります。
特にメモリやCPUの処理能力が限られている古いPCや低スペックのモデルのPCでは、複数のファイルやアプリケーションを同時に開いて作業する際に遅延が生じる可能性があります。
そのため、スムーズにAWS Cloud9を動かすには、ある程度の性能を持ったPCを使用することが推奨されます。
AWS Cloud9は、多様なユーザーが利用できるように設計されていますが、最適なパフォーマンスを得るためには適切なハードウェアの選択が重要です。
AWS Cloud9の利用方法

AWS Cloud9を利用するには以下の手順が必要です。
- Step1:AWSアカウントを作成
- Step2:AWS Cloud9 コンソールにアクセス
- Step3:新しい開発環境を作成
- Step4:コードエディタでコードを編集
- Step5:実行ボタンをクリックしてコードを実行
- Step6:デバッグボタンをクリックしてコードをデバッグ
なお、Step1:AWSアカウントを作成では、AWSのフリー枠のみの利用でもクレジットカード登録が必須となりますのでご注意ください。
それぞれ紹介します。
Step1:AWSアカウントを作成
AWS Cloud9を利用するための最初のステップは、AWSアカウントの作成です。
これはAWSの公式Webサイトにアクセスし、必要な情報を入力することで行えます。
アカウント作成時には、連絡先情報やクレジットカード情報を含む支払い情報など、いくつかの個人情報の提供が求められます。
また、セキュリティのために、電話番号の確認や多要素認証の設定を行うことが推奨されます。
アカウントが作成されると、AWSのさまざまなサービスを利用するための基盤が整い、Cloud9を含む開発ツールへのアクセスが可能になります。
Step2:AWS Cloud9 コンソールにアクセス
AWSアカウントを作成した後に行うべきことはAWS Cloud9 コンソールへのアクセスです。
AWSマネジメントコンソールにサインインし、サービス一覧からCloud9を選択することで、開発環境へと進むことができます。
このコンソールは、新しい開発環境の作成、既存の環境の管理、プロジェクトの設定変更など、Cloud9に関連するさまざまな操作を行うための中心的な場所です。
直感的なユーザーインターフェースとなっており、初心者でも簡単に操作を行うことができます。
Step3:新しい開発環境を作成
AWS Cloud9 コンソールにアクセスしたら、『環境を作成』ボタンをクリックして開発環境の設定を始めます。
ここでは、環境の名前や説明を入力し、開発に適したインスタンスタイプやプリセットされたテンプレートを選択できます。
また、環境のプライバシー設定を行い、必要に応じて他のAWSサービスとの連携も設定することが可能です。
入力ページ下部の『作成』ボタンをクリックした後、数分で開発環境が構築されます。
Step4:コードエディタでコードを編集
AWS Cloud9のコードエディタは、開発者がプロジェクトに必要なコードを効率的に編集できるように設計されています。
『File』メニューの『New File』をクリックし、新しいエディタを開きます。
編集をする前に『File』メニューの『Save As』で、Javaであれば『~.java』、『~.py』などファイル名と拡張子を指定して保存しておくと実行するときに楽なので、おすすめです。
このエディタはシンタックスハイライトやコード補完機能を備えており、エラーの発見と修正を容易にします。
Step5:実行ボタンをクリックしてコードを実行
AWS Cloud9には、『実行』ボタンがあり、これをクリックすることで簡単にコードを実行できます。
この機能により、開発者は書いたコードが期待通りに動作するかをすぐに確認でき、結果をリアルタイムで見ることが可能です。
また、実行結果はコンソールウィンドウに表示され、エラーメッセージや出力結果を直接確認できます。
AWS Cloud9は、このように開発者がコードを瞬時にテストし、問題を素早く解決できる環境を提供しています。
Step6:デバッグボタンをクリックしてコードをデバッグ
AWS Cloud9のデバッグ機能は、開発者がコード内の問題を効率的に特定し、修正するために便利なツールです。
デバッグをするには、まずブレイクしたい処理がある行番号の左側をクリックします。
その後、コンソールに表示される白い虫マークをクリックして緑にしたのち、『実行』ボタンをクリックすることで、デバッグ実行ができます。
AWS Cloud9は、開発者が効率的にデバッグを行い、高品質なソフトウェアを提供するための重要な機能を備えています。
AWS Cloud9のまとめ

AWS Cloud9の特徴やメリット、デメリット、使い方などを紹介しました。
AWS Cloud9は、AWSが提供するブラウザのみで開発が可能なIDEです。
実行やデバッグ機能だけでなく、コード補完やファイル共有機能などが備わっているため、チームで効率よく開発することが可能です。
また、AWS Cloud9には、場所を選ばずに開発できるなど多くのメリットがあります。
一方で、インターネット環境が必須であることなどデメリットもあります。
利用開始するにはAWSアカウント作成など全部で6つの手順を踏むことが必要です。
株式会社Jiteraでは、AWSなどのクラウドサービスだけでなくAIも活用したシステム開発を行っています。
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