現代のITインフラにおいて、運用保守エンジニアの人材は必要不可欠となっています。
普段我々が利用しているスマホでの通信や、PCのインターネット回線など、ネットワークにおいて、常に通常通り動作しているのは、運用保守エンジニアのおかげなのです。それだけではありません。ITインフラを利用した決済サービスや、銀行のATMなど、様々なシーンで運用保守エンジニアの働きにより、システムは守られています。
今回はそんな運用保守エンジニアの詳しい仕事内容や、平均年収、運用保守エンジニアになるために必要なスキルなどを徹底解説していきますので、是非最後までご覧ください。

食品商社営業からシステムエンジニアへと転職後、バックエンドエンジニア(Java, PHP)として尽力。開発リーダーを含む上流工程〜下流工程に携わる。IT関連記事から芸能・法律など幅広ジャンルにて執筆。
運用保守エンジニアの仕事内容とは?
ここでは運用保守エンジニアの詳しい仕事内容を解説していきます。
運用保守エンジニアの役割は、システムやサービスが正しく動いているかのシステム運用や、システムやサービスが正しく動くように定期的なメンテナンスを行う保守サービスを行っています。
運用保守エンジニアは基本的にマニュアルを絶対とし、マニュアルで判断できない場合は上流の工程を行っているエンジニアもしくは、運用設計を行っているエンジニアに問い合わせし、指示を仰ぎます。
これらが運用保守エンジニアが行っている主な役割となります。
運用保守エンジニアの具体的な仕事内容
運用保守エンジニアの具体的な仕事内容は、先ほども述べていますが、システムの運用とその管理、及び保守をメインとしています。さらに、運用保守エンジニアは基本的に、7~10人以上のチームを組み、お互いに連携を取りながら仕事をしていきます。
運用保守には必ずOPM(Operations Management)と呼ばれるリーダーが存在し、運用保守エンジニアのメンバーが、業務において相談したい場合や、システムの運用保守の意識合わせを行う朝会や夕会に、このOPMが主導になり、連絡事項の伝達や指示をおこなっています。
その上流に運用保守チームの管理を行う、運用設計エンジニアも存在します。運用保守エンジニアの、チーム全体が何らかのトラブルで対応できない場合、運用設計エンジニアに相談する流れになります。これらの組み合わせで、システムの運用保守を行っていきます。
システムの監視とトラブルシューティング
運用保守エンジニアの最もメインとなる仕事が、システムの監視と、システムに障害が発生した際の原因の特定とその連絡になります。システムの運用において、ストップする事は許されない為、運用保守エンジニアは監視室にある大画面のモニターにあるさまざまな監視項目を目視で確認しています。
モニターに赤色で表示されたり、障害の予兆とみられる数値が表示された場合、すぐにマニュアルを確認し、監視項目にある内容と照らし合わせてどう動くのかを考えます。その監視項目で、一人の手で補えない場合はOPMに相談しますが、そうでない場合は気づいた運用保守エンジニアが一人で対応し、その結果をチームとOPMに報告します。
また、クライアントのSEやユーザーからシステムの障害が発生しているといった内容の問い合わせが来た場合も、運用保守エンジニアが一次、もしくは二次対応の受付を行い、その後の切り分けについて、マニュアルに基づいて対応します。これらが運用保守エンジニアのシステムの監視とトラブルシューティングの仕事の主な内容です。
ソフトウェアのアップデートとパッチ適用
運用保守エンジニアは、監視だけでなくサーバールームなどに設置されている、SEが設計・構築したシステムに関するネットワーク機器やサーバー機器等に、アップデートやパッチの適用を行います。その際は、基本的にマニュアルに従って行っていきます。
ある程度自分で動くといった場合、事前に担当者と打ち合わせを行ってから、マニュアルを見ず打ち合わせ内容からアップデートやパッチ適用を行う場合もあります。何故かというと、ソフトウェアのアップデートやパッチの適用は、システムが更改するたびに手順が変わってきてしまい、マニュアルの意味が薄れてしまうケースもあるからです。
とても繊細な動作をする金融機関のITインフラなどではマニュアルが絶対ですので、システムのアップデートがあるたびにマニュアルの更新を随時おこなう場合もありますが、そうでないとき、このような動きをする場合もあります。自分で考えて動く運用保守エンジニアは、所謂運用SEと呼ばれる、とても市場価値の高い運用保守エンジニアと言われています。それ故に、年収も高い傾向にあるのです。
システムのパフォーマンスチューニング
運用保守エンジニアは、システムのパフォーマンスチューニングも行います。サーバールームにある機器は、常にネットワーク上やシステム上で動作をし続けています。それ故にある程度機器に情報がたまっていき、放っておくと機器が意図した動作をせず、システムの障害に繋がる恐れがあります。
そのような事が無いよう、定型作業と呼ばれる業務を、運用保守エンジニアは行っていきます。例えば対象のシステムが稼働しない時間帯や、予めメンテナンスの告知を行い、システムを停止させる日を決めます。
その時間帯に、運用保守エンジニアはSEが作成したマニュアルに従い、システムの停止・起動・調整を行い、期待値に達したかどうかをOPMもしくは上流が確認を行い、作業完了とします。マニュアル通りに行いかつ、時間通りに終わらせる必要がある為、難易度の高い作業と言えます。
運用保守の業務についてもっと知りたい方は下記記事をご覧ください。
運用保守エンジニアの平均年収は400万~550万円!
ここまで運用保守エンジニアの役割からその仕事内容まで解説しました。ここでは運用保守エンジニアの平均年収とその推移、なぜそのような年収なのかについて説明していきます。
さまざまな観点から解説しますので、運用保守エンジニアを目指していて、年収が気になるといった方は是非参考にするとよいかと思います。
運用保守エンジニア年収アップのカギ!
一般的に運用保守エンジニアの平均年収は、400~550万円程度と呼ばれます。例えばエンジニアとして働きたいけど、エンジニアとしての知識や経験が少ない場合、当然年収が少ないです。
しかし運用保守エンジニアとして3、4年程度働き、OPMや上流からその働きが認められていると、年収は高くなります。さらに運用保守エンジニアのOPMになると、年収がグンと跳ね上がります。
何故かというと、ある程度の知識と経験、ネットワーク構成やシステム構成における知見があると、上流のSEと相談や打ち合わせを可能とし、運用保守エンジニアのスキルとして、他のメンバーとは比べならないほど高くなるからです。
OPMは一つのチームに1、2人程度しか存在していないケースが多いです。それ故にメンバーからも、上流SEからも信頼されて仕事をしている為、安定したキャリアを築くことができます。場合によっては運用保守エンジニアから、設計・構築メンバーにステップアップするケースもあります。
年収を左右する要素
運用保守エンジニアの年収を左右する要素は、知識と経験と技術、さらにコミュニケーションスキルの4つとなります。運用保守エンジニアは、システムに対する知識だけでなく、システムの理解度や操作方法について、技術として習得する必要があります。さらに、SEへの連絡や顧客との対応も必要となるため、コミュニケーションスキルが一番重要となってきます。
機器の操作ができていれば、エンジニアになれると考えている方も少なくないですが、実は全く逆で、コミュニケーションスキルが高くないとエンジニアにはなれません。例えば障害が発生している際に、様々なクライアントに説明が必要な事項を素早く行う必要があります。そのような時に、如何に効率よく伝達ができるか、解りやすいかが問われてきます。
このコミュニケーションスキルが高いことと、スキルが付加価値となり、年収が高くなる傾向があります。コミュニケーションスキルが高いと必然的に、技術の習得が早まるためです。これらの要素が、年収を左右する要素と言われています。
運用保守エンジニアに必要なスキルとは?
ここまで運用保守エンジニアの役割からその仕事内容、年収の詳細について解説していきました。ここでは運用保守エンジニアに必要なスキルについて解説していきます。
一部年収について説明している部分で、重なる部分もありますが、年収とスキルは相互関係となりますので、運用保守エンジニアを目指しているのであれば、スキルについても併せて参考にするとよいと思います。
システム運用や保守に必要な技術スキル
システム運用及び保守に必要な技術スキルは、ITインフラに対する基本的な知識です。例えばネットワーク機器がどのような役割を行っているのか、サーバーはどのような仕組みで動作しているのか、などです。システム運用保守は、エンジニアとしてキャリアを築くための登竜門のようなものになります。
知識と経験が浅い方でも運用保守エンジニアにはなれますが、環境によってはとても高い技術力と知識が必要な企業もあります。そのような場合、高い柔軟性や考え方を持っている必要があるのです。
システム運用保守では、このような技術力と、これまで生きてきた中で培ってきた、その人が持っている経験が問われてきます。ネットワーク機器やサーバー機器について内容を知る為には、ある程度PCについて勉強していたり、システム環境について理解が速いといったことも必要です。つまり、知識と技術だけでなく、今までどれだけIT技術について関わってきたのかといった、経験も重要になるのです。
コミュニケーションや問題解決能力
運用保守エンジニアになる為には、少し前にも解説しましたが、高いコミュニケーション能力と問題解決能力が必要になります。運用保守エンジニアで一番求められるスキルは、これらのスキルと言えます。
何故かというと、運用保守エンジニアは、常に機械に向き合っているのではなく、顧客との対応と、トラブルを解消していくことが日頃の業務となるからです。それ故に、運用保守エンジニアになる為には、技術ではなく、コミュニケーション能力が問われます。
コミュニケーション能力が高くないと、障害が発生した際、情報を伝達するときに、効率よく行えず、トラブルの解消が遅れてしまう可能性があるからです。さらに、コミュニケーション能力が高かったとしても、問題解決能力が高くないと、トラブルの解消が効率よく行われないこともあります。
しかし、コミュニケーション能力が高ければ、必然的に問題解決能力も高くなっていきます。何故かというと、コミュニケーション能力が高い方は、トラブルが起きた際の連絡において、話の内容から意図を汲むことができ、トラブルを経験していく事で問題解消能力を高めていくことができるからです。
新しい技術やシステムの習得と継続的な学習
運用保守エンジニアは、ただシステムの運用と保守をしていればいいわけではありません。ITインフラは常日頃、進歩しています。それ故に、新しい技術の習得と、システムに対する知見が必要になります。
特にシステムの知見は、ネットワーク機器とサーバー機器に新しい機能が搭載され、より効率のよいシステムの構成を行っていくため、システムの知見において、日頃学習していく必要があるのです。
また、日頃からネットワーク機器やサーバー機器について学習しておくことで、新しい監視項目が追加された際、マニュアルに対する理解度が高まり、早い段階で新しい監視項目について、一人で任せても大丈夫と判断され、業務におけるチームから高い信頼と評価を得られます。これにより年収をより高くできます。
こうやって日々新しい技術やシステムについて学習していれば、業務についていけなくなる事もなく、キャリアアップや年収アップに繋げる事ができます。逆に日頃学習しておらず、ただ業務を行っている場合は、なかなかスキルを上げることができず、キャリアと年収の向上が見込めないために、業務に対するモチベーションが下がってきてしまいます。
このような事にならないよう、自身がエンジニアとして成長していくことを目標にし、時にはメンバーと情報交換する事で業務に対する知見を高めていく事が必要です。
運用保守エンジニアの資格と将来性
ここまで運用保守エンジニアの役割とその仕事内容、年収、運用保守エンジニアに求められるスキルについて解説しました。最後に運用保守エンジニアの資格と、その後のキャリアパスについて説明します。
運用保守エンジニアは、経験が浅い方でも運用保守エンジニアとして働くことができます。しかし、運用保守エンジニアとして働いていて、もっといいキャリアを築きたいと考えている場合、資格を取得するのが有効です。そこで、運用保守エンジニアが取るべき資格を解説します。
運用保守エンジニアが取得するべき資格
運用保守エンジニアが取得するべき資格はまずはITパスポートと呼ばれる資格で、IT業界における基本的な単語や施設、機器の役割などについて一定の知見があると証明する資格です。
ネットワークについて強みを活かしていきたい場合は、Cisco社が提供しているCCNAと呼ばれる資格を取得するのが一般的で、CCNAを取得することで、ネットワークの運用から設計まである程度の知見が見込められている証明となります。
サーバーについて強みを活かしたい場合は、LPICLevel1を取得するよいでしょう。こちらも、サーバーについての基本的な事から、LinuxOSについての運用から構築方法まで、幅広い知見が習得された証明となります。
また、データベースに関する資格もあり、運用保守エンジニアからアプリケーションエンジニアにキャリアを築きたい場合は、データベースの資格を取得するのもよいです。
その場合、OracleMasterと呼ばれる資格を取得するとよいでしょう。OracleMasterも、Bronze、Silver、Goldとそれぞれランクがありますが、まずはBlonzeから資格の取得をするとよいです。
各資格取得のための試験を受けるにあたってある程度の学習時間と高額な試験費用を支払う必要がありますが、会社によっては試験費用を条件付きで負担してくれる場合もあるので、資格取得をする場合は上司に相談してから学習するのがよいでしょう。
運用保守エンジニアの将来性は?
運用保守エンジニアはシステムの安定稼働を支える要職として、今後も高い需要が見込まれます。
現在私たちの日常生活やビジネス活動は多くのITシステムに依存しており、そのシステムの継続的な監視とメンテナンスが必要不可欠です。
特に企業や社会インフラを支える大規模なシステムではシステム停止による影響が大きく、障害の発生を最小限に抑えつつ素早く対応できる運用保守エンジニアの存在が重宝されています。
特にクラウド環境の運用保守では、AWSやAzureといったクラウドプラットフォームの知識やコンテナ技術(例:Docker、Kubernetes)も求められるようになっています。また、近年多発するサイバー攻撃に対抗するためのセキュリティにも対応する必要があるため、需要が高いといえます。
運用保守エンジニアの転職候補は?
運用保守エンジニアがキャリアアップや専門スキルの深化を目指す場合いくつかの転職候補がありますが、その道は学んでいく内容によって分かれていきます。
代表的なものとしては「インフラエンジニア」「ITコンサルタント」「プロジェクトマネージャー」などがあるでしょう。
インフラエンジニア
インフラエンジニアは、システムの基盤となるネットワークやサーバ、ストレージなどの設計・構築・運用を担う役割です。
運用保守の経験を通じてシステムの稼働状況やトラブル対応スキルを磨いたエンジニアにとっては、特に近いキャリアパスといえます。
インフラエンジニアは、ネットワークやクラウド環境(例:AWS、GCP)などの専門知識を強化することで、さらなるキャリアアップが可能で、構築や設計といった上流工程にも携わる機会が増えるため、プロジェクトを包括的に理解する力が身に付きます。
ITコンサルタント
運用保守で培ったシステムの全体的な理解やトラブル解決力を活かし、ITコンサルタントとして企業のシステム導入や運用改善を支援するキャリアも選択肢のひとつです。
特に顧客に適したインフラ設計や業務効率化のためのシステム改善提案ができると、クライアントに信頼されるコンサルタントとして活躍できるかもしれません。
実務での課題解決力が高いエンジニアはコンサルティング業務においても即戦力となり、幅広い業界でのプロジェクトに参加する機会も増えるでしょう。
プロジェクトマネージャー(PM)
エンジニアから管理職へのステップアップを目指すなら、プロジェクトマネージャーへのキャリア転向もあります。
運用保守の業務では障害対応やプロセス改善などでPDCAを回し、プロジェクト進行の一部を担う機会が多くあります。
この経験を活かしてリーダーシップやプロジェクト管理スキルを磨くことで、PMとしてのキャリアが開けます。
また、PMとしての経験が豊富になれば、ITマネジメントやシステム構築の全体指揮が取れるゼネラリストとしての地位を確立することも可能となるでしょう。
まとめ:運用保守エンジニアの実情を知ろう
運用保守エンジニアの役割、仕事内容、年収、必要なスキル、取得する資格について解説していきました。現代の技術のIT化により、運用保守エンジニアは高い市場価値があります。
運用保守エンジニアになり、努力し続ける事で構築から設計まで担当するエンジニアにキャリアアップする事も可能です。ですがその場合、技術・知識・経験・対人スキルの全てが高いレベルで要求されるので、運用保守エンジニアとして仕事をしている段階で、それらの技術を習得するのがよいです。
もし運用保守エンジニアについて、もっと知りたい方や、運用保守エンジニアを配置したいと考えている企業の方は、株式会社Jiteraに相談するとよいでしょう。