高速道路で「ETC」を使った経験がある方は多いでしょう。
国土交通省の統計によると、ETCの1日あたりの利用率は90%以上と、高速道路を利用するほとんどの方は、ETCを利用しています。
非常に便利なサービスですが、ETCの仕組みについて、くわしく理解していない方は多いです。
そこで本記事では、そもそもETCシステムとは何なのか概要やもたらすメリットを解説します。
合わせて、ETCの導入方法やシステム開発の基本も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
ETCとは?システムの概要

ETCとは、高速道路や一部の有料道路で自動的に通行料金を支払うシステムです。ETCは、「Electronic Toll Collection System」の略で、正式名称は「電子料金収受システム」であり、日本では2001年に導入されました。
車両に搭載されたICカード(ETCカード)や電子タグが料金所で読み取られ、通行料金が自動的に支払われます。ETCシステムは高速道路の利用料金の支払いだけでなく、一部の駐車場やガソリンスタンドでも利用可能です。
ETCの導入により、通行料金の支払いのために一旦停車することなく料金所の通行が可能なので、料金所を通過する際の支払い手続きがスムーズになり、待ち時間が大幅に短縮されます。
ETCシステムの仕組みとは

ETCカードを車載器に挿入した車が料金所のETC車線を通過すると、料金所のアンテナと車載器との間で無線により、高速道路の料金支払いに必要な情報が交信されます。そして、自動的に料金の支払いが行われる仕組みです。
この無線通信により、料金所をスムーズに通過でき、待ち時間を大幅に短縮できます。
ETCシステムの構成
ETCシステムを構成しているのは、車載器とETCカード、料金所のアンテナ、およびバックエンドのサーバーです。
車載器は、通信用アンテナとETCカードを挿入するスロット部、そして本体の3つの部品から構成されます。車載器にはETCカードが挿入され、ETCを通過する際に、高速道路の料金所のアンテナと通信します。
そして、アンテナの役割は、車載器から情報を受信し、バックエンドのサーバーに送信することです。
サーバーは受信した情報を処理し、料金の支払いをします。
ETCシステムの動作
ETCカードを車載器に挿入した状態でETCを通過する際に、料金所のアンテナと通信が行われます。この無線での通信によって、高速道路の料金支払いに必要な情報が受信され、自動的に支払われる流れです。
また、ETC車載器には、音声での動作通知機能があります。ETCカードの認識や、ETCカードが挿入されていない場合の警告音声や、通過時の音や料金の読み上げにより、正常な動作を確認可能です。
ETCシステムを利用するメリット

ここまでETCシステムの仕組みを解説しました。
ETCのサービス開始後、利用者はどんどん増えています。なぜETCの利用者が増えているのか。それはETCを利用するメリットがあるからです。
ここでは、ETCを利用するメリットをいくつか紹介します。
スムーズな通行
ETCを利用する最大のメリットは、スムーズな通行です。ETCシステムのない高速道路では、料金所に到着すると長蛇の列ができ、待ち時間が発生するため、時間を無駄にしてしまいます。
しかし、ETCを利用すれば、通過するだけで支払いが完了するので、一旦停車して料金を支払うのと比べると、スムーズさは格段に違います。
ETCシステムは、交通の混雑緩和にも貢献しているので、高速道路を利用する際の渋滞に巻き込まれるリスクは少ないです。
また、一度停車して再度発車したり、アイドリングの必要がないので、燃費や排出ガスも抑えられるので、環境にやさしい点もメリットです。
料金支払いの手間削減
スムーズな通行の要因なのが、支払いの手間の削減です。
通常の有料道路では、料金所に到着すると車を停めて料金を支払わなければなりませんが、ETCを利用すると、支払いの手間がなくなります。
ETCカードを車載器に挿入するだけで自動的に料金が支払われるため、特に料金所の混雑が予想される時間帯や場所でも支払いにかかる時間を大幅に短縮できます。
さらに、ETCの明細は電子的に管理されるため、請求書や領収書の保管も簡単です。
割引料金の実現
ETCの利用はスムーズさを実現するだけではなく、通常よりも安い料金で高速道路を走行できるのもメリットです。多くの高速道路や一部の有料道路では、ETCの利用で料金が割引される仕組みが導入されています。
例えば、深夜や早朝の通行料金が割引される時間帯割引や、特定の曜日における割引料金などです。また、一定の距離を超えた場合に割引が適用される距離割引もあります。
さまざまな割引があるので、ETCの利用者は通常よりも安く高速道路を利用できます。
割引料金によって、交通費の節約が可能なので、長距離の移動や頻繁に高速道路を利用する場合は、特に大きなメリットです。
ETCカードの種類と特徴

クレジットカードで追加発行できるETCカードには、クレジットカードそのものにETC機能が付帯している一体型と、クレジットカードとETCカードが別々になっている分離型の2つの種類があります。
| 一体型ETCカード | 分離型ETCカード | |
| 特徴 | クレジットカードとETCカードが一緒になっている | ETCカード専用のカード |
| 機能 | 一般的なクレジットカードとしての機能を持ち、ショッピングやキャッシングも可能 | ETC機能のみを持ち、ショッピングなどでのクレジット機能はない |
| メリット | クレジットカードとETCカードの機能を1つにまとめられる | カードの種類が豊富 |
| デメリット | 種類が少ない | カードの管理が面倒 |
それぞれのカードについて、特徴や選び方を解説します。
クレジット一体型ETCカード
クレジットカード一体型のETCカードは、クレジットカードそのものにETCカードの機能が備わっているカードです。
管理が楽などのメリットはありますが、実は現在どのクレジットカード会社でも、ETCとの一体型のクレジットカード発行はしていません。
2018年6月1日に「割賦販売法の一部を改正する法律」(「改正割賦販売法」)が施行され、セキュリティ対策の一環として、一体型のカードを持っている方は、分離型カードへの切り替えが必要となりました。
それに伴い、ETC一体型のクレジットカードの新規での発行は受付していない状況です。そのため、これからETCカードの発行を検討している方は、ETC専用の分離型カードを発行することになります。
ETC専用カード
ETC専用のカードの特徴は以下の通りです。
- ETC専用のカードなので、ショッピングなどのクレジット機能はない。
- 自分の車なら抜き差しせずに済む。
- 万が一落としても悪用のリスクは少ない。
ETC専用カードを使う場面は、あくまでもETCでの支払いのみです。そのため、日常生活において、通常のクレジットカードのようにショッピングやキャッシング機能はついていません。
しかし、使う場面は高速道路のみなので、都度抜き差しせずに、ずっと車載器に挿入しておけます。また、万が一落とした場合でも、クレジットやキャッシングの機能はついていないので、悪用の心配はありません。ETC機能を悪用されるリスクはあるので、すぐに利用停止手続きはしましょう。
そんなETC専用カードは以下の基準で選びましょう。
- 高速道路の利用頻度に合わせて選ぶ。
- 月間の利用料金やETCポイント還元率を比較。
- カード発行手数料や維持管理費、ETCカードの発行手数料などの費用を比較。
- 提携ガソリンスタンドやショッピング施設での割引やポイント還元サービスを比較。
ETC専用カードは、利用頻度や利用先、ポイント還元率などの条件に合わせて選ぶことが重要です。
ETCシステムの導入と管理

ここまでETCにおける、さまざまなメリットを解説してきました。
ETCを利用すれば、通過するだけで支払いが完了するので、一旦停車して料金を支払うのと比べると、渋滞を緩和しスムーズな走行が可能です。
ここからは、中小企業でのETCシステム導入とその管理方法について、具体的なガイドラインを提供します。
ETCシステムの導入プロセス
中小企業において、ETCシステムの導入プロセスは以下の流れです。
- ETCシステムの必要性の確認:ETCシステムの導入によって得られる利益やコスト削減効果を検討し、導入のメリットとデメリットを比較。
- ETCシステムの導入:ETCシステムを導入。システムの設置や設定を行い、従業員がスムーズにシステムを利用できるようにする。
- 体制を整える:ETCカードの発行や利用状況の管理も行い、適切な管理体制を整える。
- 導入後の確認:ETCシステムの運用状況を確認し、問題が発生した場合には迅速に対処します。また、導入後の効果を定量的・定性的に評価し、システムの改善や最適化。
上記の手順で、スムーズにETCシステムの導入が可能です。
ETCシステム管理のベストプラクティス
ETCシステムの導入にあたり、管理も重要です。ETCシステムは、以下のポイントで行いましょう。
- 定期的なメンテナンス:ETCシステムの定期的なメンテナンスを行う。これによりシステムの安定性を確保し、トラブルを最小限に抑えられる。
- セキュリティ対策:ETCシステムには個人情報や取引データなどのプライバシーに関係する情報が含まれている。適切なセキュリティ対策を導入し、不正アクセスやデータ漏洩を防止する。
- 従業員の教育:従業員に対してETCシステムの正しい使い方やセキュリティに関する教育を行う。ユーザーがシステムを適切に利用し、セキュリティポリシーを遵守することが重要。
これらを実践すると、中小企業でもETCを効率的に管理し、安定して使えます。
ETCカードとシステム開発

ETCカードは、電子料金収受システムと密接に関連しています。このシステムは、車両が有料道路を通過する際に料金を自動的に収受するための仕組みです。
システムの開発には、ETCカードの読み取り、車両の識別、料金の計算など、複雑な技術とプロセスが必要です。
ETCシステム開発の基本
ETCシステムの開発には、いくつかの基本的な要素が含まれています。まず、車両の自動識別と料金計算のためのハードウェアとソフトウェアが必要です。ETCカードの読み取り装置や車両を識別するための技術、料金を計算するための仕組みなどが含まれます。
次に、セキュリティ対策が重要です。システムは24時間365日稼働し、データの保護ができるようにします。
また、複数の支払い手段や車両タイプをサポートする柔軟性も必要です。開発プロセスでは、要件定義、設計、実装、テスト、導入といった一連の段階が含まれます。
最後に、ユーザビリティや顧客サポートなど、利用者の利便性と満足度を高める取り組みも重要です。
システム開発のリソースと体制の構築
ETCシステムの開発には、適切なリソースと体制の構築が不可欠です。まず、プロジェクトマネージャーやチームリーダーを含む適切な人員を確保する必要があります。また、システム開発に必要な専門知識や技術を持つエンジニアや開発者の採用も必要です。
プロジェクトの進行管理やコミュニケーションを円滑に行うためのプロジェクト管理ツールなどもあった方が、効率の良い開発ができます。
さらに、外部の専門家やコンサルタントとの体制を築くことも効率の良い開発ができます。
これらのリソースと体制の構築によって、プロジェクトの品質や効率性を向上させ、スムーズな開発プロセスの実現が可能です。
ETCカードの活用事例

ETCカードは、様々な場面で便利に活用されています。
例えば、高速道路料金の支払いに利用されるほか、ガソリンスタンドや駐車場などでの支払いにも利用可能です。
ETCカードの普及により、支払い手続きが簡素化され、時間の節約や効率の向上が図られています。最後に、ETCカードの活用事例を3つ紹介します。
NEXCO東日本/中日本/西日本

「NEXCO(日本高速道路機構)」は、日本国内の高速道路網の整備、運営、管理を行っている会社です。
NEXCOでは、主にETCカードを活用した高速道路の料金支払いサービスを運営しています。ETCカードを車載器に挿入することで、料金所を通過する際の料金が自動的に支払われるため、通行手続きがスムーズに可能です。また、NEXCOでは、ETCカードの利用によって割引料金や特典サービスも実施しています。
そんなNEXCOでは、独自のETCカード「E-NEXCO pass」を発行しています。
E-NEXCO passのETCカードの仕様で、高速料金の支払いに使えるE-NEXCOポイントが貯まるのが特長です。ETCマイレージと併せて使えば、ダブルでポイントが貯まります。
タイムズ24

「タイムズ24」は、株式会社タイムズが運営する、24時間営業の駐車場です。
タイムズ24では、駐車場料金支払いにETCカードを利用できます。
通常のETCカードをタイムズ24で登録すると、駐車場に入庫時にETCカードをかざすだけで料金支払いが完了し、出庫時にはさらにスムーズに駐車場を利用できます。
駐車場での支払い手続きが簡単になり、利用者は高速道路と同じように、スムーズな支払いができ、時間の節約が可能です。
ENEOSサービスステーション

ENEOSサービスステーションは、ENEOSが運営するガソリンスタンドおよびカーケアが受けられるサービスです。
ENEOSサービスステーションでは、ETCカードを利用してガソリン料金の支払いができます。
TCカードを車載器に挿入するだけで、給油時の支払いが自動的に行われるため、キャッシュレスでのスムーズな給油が可能です。
また、ENEOSサービスステーションでは、ETCカードにポイントサービスが連携されており、給油の際にポイントが付与されるなど、利用者にとって便利でお得な特典が付きます。
ETCシステムの将来性と可能性

本記事では、ETCの概要やメリット、導入方法などを解説しました。
ETCは、従来の待ち時間を削減できたり、割引を受けられたりとメリットは多いです。
さらに今後は、高速道路の料金を支払う以外に、さまざまなサービスが受けられる「ETC2.0」の導入が進んでいくと予想されています。すでにETC2.0のみの割引サービスが実施されている高速道路もあります。
将来的にも発展していくと予想されるETCですが、もしもETCシステムの導入を検討しているなら、実績豊富な株式会社Jiteraに一度ご相談ください。
貴社の要件に対する的確なアドバイスが提供されると期待できます。
