オブジェクトストレージとは、データを「オブジェクト」という単位を用いて記憶する装置です。
従来のファイルストレージと比較すると、以下のような点でオブジェクトストレージの方が勝っています。
- 大量のデータを保管できること
- 拡張性が高いこと
- 非構造化データである画像、音声ファイル、メールなども保存できること
つまり「膨大なデータがあり、日々増えていくけどどうすればいいか」という問題を解決できるのがオブジェクトストレージだということです。
本稿では、オブジェクトストレージの概要やブロックストレージ、ファイルストレージとの違い、メリットや活用事例についてみていきます。ビッグデータの取り扱いに悩む方に最適な内容をお届けしますので、ぜひ参考にしてください。
東京都在住のライターです。わかりづらい内容を簡略化し、読みやすい記事を提供できればと思っています。
オブジェクトストレージとは

オブジェクトストレージとは「オブジェクト」と呼ばれる非構造化データを用いて情報を管理、格納、検索するシステムです。ここでは、オブジェクトストレージの定義と概要について詳しくみていきます。
オブジェクトストレージの定義
オブジェクトストレージは、ビジネスで用いられるデータ格納方式の1つです。データを非構造化された「オブジェクト」という単位で保存します。
よく知られているファイルストレージでは、ファイルを階層構造で保管しますが、それとは全く異なる保存方法です。オブジェクトストレージは、データとメタデータを1組として格納し、メタデータの情報を入力することで非構造化データであるオブジェクトを発見します。
オブジェクトストレージの概要
オブジェクトストレージは、大量の非構造化データを管理する際にとても効率的な方法です。なぜなら、データの保存、取得、保護をシームレスに行うことができるからです。
この説明をするためには、パソコンをイメージしていただく必要があります。パソコンで任意のファイルを発見するためには、ファイルアイコンを何度もクリックし、保管している位置に到達しなければなりません。何階層にもわかれているファイルだと、時間がかかってしまいます。
しかし、ファイルの名前、拡張子、作成日などの情報が記録されていて、その情報を覚えていたならどうでしょうか。この場合、ファイルアプリで「Command+F」で検索をかけ、任意のデータに一発でアクセスできます。
ここでいう、パソコンで「Command+F」するのが、オブジェクトストレージの仕組みととても似ています。ファイルに関するIDやメタデータを覚えておけば、一度で情報にアクセスできるので、情報を素早く検索できます。また、ファイルのように階層構造はなく、すべてが並列的に並べられているのがオブジェクトストレージの特徴です。
ブロックストレージ、ファイルストレージとの違い

オブジェクトストレージはブロックストレージやファイルストレージとは異なるアプローチを採用しています。ここでは、ブロックストレージやファイルストレージとの違いについて、より詳しく深掘りしていきます。
オブジェクトストレージとブロックストレージの比較
| オブジェクトストレージ | ブロックストレージ |
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ブロックストレージはデータを均一なサイズのブロックに分割し、それぞれにアドレスを割り当てる方式です。そして、元データを取り出す際は、切り分けられたデータを全てとりだし、くっつけることになります。
そして、情報をブロックごとに保管しているため、データの修正が必要になった際、修正されたデータのブロックのみを取り出してそこだけを書き換えることもできます。頻繁に書き換える大きなデータを持っている場合は、ブロックストレージが良いでしょう。
ただし、オブジェクトストレージと比較して拡張性が低いことは懸念材料となります。
オブジェクトストレージとファイルストレージの比較
| オブジェクトストレージ | ファイルストレージ |
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ファイルストレージはデータをファイルとして、ディレクトリとサブディレクトリの階層構造に保存します。親しみ深い保存方式で、ある程度パソコンが使える方なら誰でもこの構造を理解していると思われます。
ただし、小~中規模のデータに適していますが、大量の非構造化データを扱うとパフォーマンスが低下することは懸念材料です。
オブジェクトストレージの特徴

ここでは、オブジェクトストレージの特徴を詳しく見ていきます。
スケーラビリティと柔軟性
スケーラビリティと柔軟性の高さが、オブジェクトストレージの最も強い部分です。階層や位置が指定されておらず、分散して保管されているため、容量を追加することが可能です。また、新たなプロジェクトがはじまり、データ量が大きく増えたとしても、サーバーを拡張するだけです。
つまり、データの総量で容量が設定されているため、ほぼ無制限でスケールを拡張できます。
メタデータの管理
メタデータ管理ができることもオブジェクトストレージの特徴です。メタデータ管理により、各データに関する詳細な情報を追加できます。たとえば、データの種類や複製回数、保存した期間などの情報を追加可能であり、この性質によってデータの検索と分析がしやすくなっています。
低コストと効率性
オブジェクトストレージは低コストで利用でき、効率的に活用できることが魅力です。データが増加し続け、それに対応するためのコストが企業にとって大きな負担となっている中、オブジェクトストレージを利用することで、ストレージコストを大幅に削減できます。
オブジェクトストレージのメリット

オブジェクトストレージのメリットは多く、その中でも特に注目すべきなのは以下の3つです。
- 大容量データの保存と管理が可能
- 信頼性と耐久性が高い
- クラウドストレージとの親和性が高い
各項目について、詳しく解説します。
大容量データの保存と管理
オブジェクトストレージは、ビッグデータ時代の企業にとって重要なツールとなっています。たとえば、企業がユーザーのSNS投稿から毎日数百万の画像や動画を収集し、分析したい場合に、オブジェクトストレージを採用することで、これらのデータを効率的に保存し、必要に応じて迅速に取り出すことが可能となります。
また、データを分散して保管しやすく、サーバーを分けて保存しておけば、災害などでデータの消失が懸念されるシーンでも安心して保管が可能です。オブジェクトストレージは、企業がビッグデータを扱う上で必要不可欠な管理方法なのです。
高い信頼性と耐久性
オブジェクトストレージなら、企業はデータを長期間保存できます。なぜなら、データを複数のノードに分散して書き込みを行うため、障害に耐えられます。その結果、データの破損リスクが軽減されるのです。
たとえば、重要な財務データや顧客情報など、企業が長期間保存しなければならないデータについて考えてみましょう。
これらの情報が破損した場合、企業には経済的・信頼性の損失が発生してしまいます。しかし、オブジェクトストレージを使用すると、前述したようにデータを分散して保管できるため、これらのリスクが大幅に減少します。したがって、データの信頼性と耐久性が高まると言えます。
クラウドストレージとの親和性
クラウドストレージとの親和性が非常に高いことも、オブジェクトストレージの特徴です。オブジェクトストレージは、サーバーを使用してではなく、REST APIなどを介してデータを活用することになります。つまり、マウントされたサーバーにアクセスする必要がないため、クラウドストレージとの相性が高いのです。
また、一般的に、クラウドストレージを活用することでデータへのアクセスがより簡単になります。データの保存や取り出しが容易になるため、導入によって、データ管理の効率化とアクセシビリティを向上させることが可能です。
オブジェクトストレージの利用事例

ここまで、オブジェクトストレージの特徴やメリットについてみてきましたが、現場ではどのように利用することになるのでしょうか。ここでは、オブジェクトストレージの利用事例についてみていきます。
クラウドストレージサービス
たとえば、Amazon S3やGoogle Cloud Storageなどの大手クラウドサービスプロバイダーは、オブジェクトストレージを基盤にして巨大なデータセンターを構築しています。これらのサービスを活用することで、オブジェクトストレージのメリットを享受できます。
大量のデータを安価に保存できるだけでなく、データへのアクセスも簡単で、いつでもどこでもデータを取り出すことが可能です。また、これらのサービスは高い耐久性と信頼性を誇っており、データの喪失リスクを大幅に減らすことができます。ビジネスにおいて、とても身近なクラウドストレージサービスですが、この仕組みを構築しているのも、今回ご紹介しているオブジェクトストレージなのです。
データバックアップとアーカイブ
オブジェクトストレージは、データのバックアップとアーカイブにも適しています。重要なデータを失うリスクを減らすには、定期的なバックアップが必要です。オブジェクトストレージは大量のデータを安全に保存でき、データの冗長性を確保するためにデータを複数の場所に分散して保存することが可能です。
また、定期的にアクセスする必要はないが、長期間にわたって保存する必要があるアーカイブについても、同様に安全に保管することが可能です。オブジェクトストレージなら、データを一元的に管理し、必要に応じて容易にアクセスできます。
大規模なメディアファイルの配信
オブジェクトストレージは、大規模なメディアファイルの配信にも適しています。映画製作会社や音楽配信サービスなど、大量の映像や音声ファイルを扱う企業が、オブジェクトストレージを採用する事例が増えています。
これらの企業は「高解像度の動画」や「高音質の音楽」といった大容量のファイルを安全に保存し、ユーザーにストリーミング配信する必要があります。オブジェクトストレージは、そのような大量の非構造化データを効率的に管理し、必要なファイルを素早く取り出すことが可能です。したがって、ユーザーはスムーズにコンテンツを楽しむことができます。
また、メタデータを活用してコンテンツの管理が行える機能を用いることで、検索性が向上します。たとえば、映画のタイトルやリリース日、ジャンルなどの情報をメタデータとして保存することで、ユーザーが求めているコンテンツを瞬時に検索・配信できます。この性質により、ユーザー体験の向上にも寄与しています。
オブジェクトストレージの導入と運用

最後に、オブジェクトストレージの導入と運用方法について詳しく解説します。
オブジェクトストレージの導入手順
オブジェクトストレージの導入は以下の手順で進められます。
- 現在のデータ管理の要件と目標を明確にし、オブジェクトストレージがこれらを満たすかを評価する。
- オブジェクトストレージのプロバイダーを選択する。価格、性能、セキュリティ、サポートなどの観点から比較検討する。
- 導入計画を作成する。(データの移行方法、タイムライン、予算などの計画)
- データの移行を開始する。データの損失やダウンタイムを防ぐための施策についても考える。
- データの保護とセキュリティを確保する。(アクセス管理や暗号化などを考える)
- モニタリングと管理のシステムを設計する。パフォーマンスの問題やセキュリティの脅威を早期に察知することが可能となる。
また、以下で、オブジェクトストレージの導入の中でも重要な部分「セキュリティとデータ保護」「モニタリングと管理」について、詳しくみていきます。
セキュリティとデータ保護
データは、企業の戦略的な意思決定や日々の業務運営の根幹をなす重要な資産です。たとえば、顧客情報や財務データ、製品情報など、これらのデータが適切に保護されていないと、データ漏洩や不正アクセスによるビジネス上のリスクが高まります。
そのため、オブジェクトストレージを運用する際には、データ保護が最優先事項となります。具体的には、アクセス制御やデータ暗号化、バックアップの定期実施など、適切なセキュリティ対策を講じることが必要です。
基本的には、オブジェクトストレージの機能を提供しているサービスの設定画面で行うことができますので、導入前に代理店などに相談し、セキュリティ対策とデータ保護について聞いてみるとわかりやすいでしょう。
モニタリングと管理
モニタリングと管理は、パフォーマンスと効率性を維持するために必要不可欠です。具体的には、システムのパフォーマンスチェックを定期的に行い、データの読み書き速度やアクセスパターンを分析する作業があります。
また、ストレージの使用率も監視し、容量が逼迫してきたらリアルタイムで拡張しなければ、システムダウンにつながるため、注意が必要です。モニタリングはサービスが自動的に行ってくれるものから、わかりやすくグラフに表示して逐一報告してくれるものまで、多数存在します。自社の運用方法にマッチするものを選択することが大切です。
オブジェクトストレージのまとめ

本稿では、オブジェクトストレージの概要やブロックストレージ、ファイルストレージとの違い、メリットや活用事例についてみてきました。
オブジェクトストレージは、ビッグデータ時代のデータ管理に適したシステムです。非構造化データの大量保存・管理と、それらへの高速アクセスが可能です。また、メタデータ管理により、データ分析や検索性の向上が期待できます。
オブジェクトストレージへの移行を検討している方は、ぜひ今回ご紹介した内容も参考にしてみてください。
また、オブジェクトストレージに関して不明な点や困ったこと、質問や相談、案件、依頼などがあれば経験豊富な株式会社Jiteraにお問い合わせください。
