Webサイトやアプリケーションのユーザー体験を向上させ、コンバージョン率を高めるために、A/Bテストはとても効果的な手段です。
このテストを通して、デザインや機能の異なる複数のバージョンがユーザーの行動やコンバージョンにどのような影響を及ぼすかを検証し、最も効果的な要素を見極められます。
しかし、A/Bテストは適当に実施しても正確なデータを取得できません。
そこで本記事では、A/Bテストを成功に導くための重要なステップや注意点などを解説します。
A/Bテストは意味がないといった声もネット上に散見されますが、実際にどうなのか?という点も踏まえて確認しましょう。
この記事を最後まで読めば、より精度高く効果的なテストを実施し、Webサイトやアプリケーションのパフォーマンスを最大限に引き出せるようになります。

大学卒業後、インフラ系エンジニアを3年経験。その後、営業会社に転職し通信系の商材をメインに取り扱う。副業でアフィリエイトやWebライターを始め、2021年11月に独立。光回線や格安SIM、BtoBマーケティング、取材案件の執筆が得意。
A/Bテストとは?どういう意味?
A/Bテストは、Webマーケティングの領域において、主にコンバージョン率(CVR)を向上させるために用いられる実験的な手法です。2つの異なる文章やデザインを用意して、どれが最も結果が出るかを試します。
例えば、ランディングページ(LP)に訪れるユーザーにバリエーションAとバリエーションBを表示し、どちらが多くのユーザーを顧客やリードに変換できるかを測定します。
正確な結果を出すには、比較する2つのバリエーション以外の要素を一定に保つことがとても重要です。正確にテストできれば、より精度の高いデータを入手できるようになります。
A/Bテストの目的
A/Bテストの目的は、2つの異なるバリエーション(AとB)を比較し、ユーザーの反応やパフォーマンスがより優れている方を明らかにすることです。
この手法を用いると、Webページのデザイン変更やキャンペーン文言、製品の提示方法などに対するユーザーの反応を直接測定できます。
その結果として、どちらがより効果的かを客観的に判断することが可能です。直感や単なる推測ではなく、実際のデータを基に意思決定ができるため、リスクを最低限に抑えつつ、効果的な施策を打てるようになります。
A/Bテストは意味ない?
A/Bテストは、Webマーケティングや製品開発の分野で広く利用される強力な手法ですが「意味がない」との意見が一部存在します。
その主な理由は、テストの設計や実施方法に関する問題があるからです。
複数の変更を同時にテストしてしまうと、どの変更が結果に影響を与えたのかを特定できず、テストの目的を見失ってしまいます。
正確なデータを収集するためには、テストの目的を明確にし、変更する要素を1つに絞らなければなりません。
一例として、LPの申し込みボタンの色を1週間後に、変更してテストします。
しかし、それぞれのテスト期間は全く同じ1週間とは言えません。
市場環境やユーザー行動の変化、例えば季節性や特定のイベントの影響など、テストの外部条件が異なる場合があるためです。
このような課題があるにも関わらず、A/Bテストは非常に価値があります。
テストの設計と実施においてこれらの要因を考慮し、可能な限り制御することで、A/Bテストは依然として有効なツールです。
実際に、多くのビジネスがA/Bテストを用いて意味ある改善を達成しています。
A/Bテストの4つのメリット
A/Bテストには、以下のメリットがあります。
- 客観的な結果をもとに改善できる
- 少ないリソースで実行できる
- 効果が出なくてもすぐに戻せる
- 意思決定のスピードが速い
それぞれ見ていきましょう。
客観的な結果をもとに改善できる
A/Bテストの最大のメリットは、意見や直感ではなく、実際のユーザー行動に基づいた客観的なデータを提供できる点です。
Webサイトのデザイン変更や新しい機能の導入が、実際にユーザー体験やコンバージョン率にどのような影響を与えるかを正確に評価できます。
信ぴょう性が高い意思決定ができるため、会社の上司や先輩の意見に惑わされる心配がありません。
客観的なデータに基づいた改善ができれば、より効果的な製品やサービスを提供できるようになります。
少ないリソースで実行できる
A/Bテストは、既存のWebページの一部を修正して実施できます。
そのため、大規模なマーケティングキャンペーンや広範な製品改善プロジェクトに比べて、手軽に取り組むことが可能です。
低コストかつ迅速にできるため、A/Bテストは特にスタートアップやリソースに制約のある企業にとって非常に使いやすくなります。
少ない投資で具体的なデータに基づいた改善を行えるため、効率的に製品やサービスの質を向上させられるのがメリットです。
効果が出なくてもすぐに戻せる
A/Bテストは、テスト結果が期待に沿わなかった場合でも、元の状態へと容易に戻せます。
事前にバックアップを取っておけば、もし結果が期待外れであっても迅速に以前のバージョンに復帰できます。
特に、Webサイトやランディングページ(LP)の改善を目指してA/Bテストを行う場合、テストの成否にかかわらず得られるデータは企業にとって貴重です。
このデータを活用することで、今後の戦略立案や改善点の特定に役立てられます。
また、この柔軟性は、失敗のリスクを恐れずに新しいアイデアへのチャレンジにつながります。
失敗しても簡単に戻せる安心感があれば、より大胆な実験や革新的な施策を打てるようになるのではないでしょうか。
意思決定のスピードが速い
A/Bテストは手軽に試せるため、結果も迅速に手に入ります。そのため、意思決定のスピードを速めることが可能です。
LPのCTA(行動喚起)周りの文言を改善するとします。2週間ごとにテストする場合、半年で12回も試せるため、最適解を見つけられると言っても過言ではありません。
特に市場の変化が早い業界では、素早く情報に基づいた決定を下すことが競争上の優位性につながります。
A/Bテストから得られる具体的な指標は、どの変更が最も効果的であるかを示し、ビジネスの機敏性が高まるのです。
A/Bテストのやり方
A/Bテストは、下記5つのステップに沿って進めましょう。
- A/Bの目的を定める
- 改善箇所を決定する
- 仮説を立てる
- 実行する
- PDCAサイクルを回す
詳細は下記の通りです。
1.A/Bの目的を定める
A/Bテストを始める前に、明確な目的を定めることが大切です。
例えば、ランディングページ(LP)のコンバージョン率(CVR)を改善したい場合、目的は「LPのCVRを現在の2%から3%に向上させること」など、具体的かつ測定可能な目標を設定します。
2.改善箇所を決定する
A/Bテストの目的に基づき、効果的な改善を行う箇所の選定は重要です。
特に、ランディングページ(LP)のコンバージョン率(CVR)向上を目指す場合、ユーザーの最終的な行動に直結する「出口」の部分から改善する必要があります。
出口から見直すことにより、ユーザーが最終的なアクションを取る際の障壁を低減させることが可能です。
具体的な改善箇所としては、以下の順番で考慮します。
- 申し込みフォーム
- 購入ボタンの色
- 商品の説明文
CVRを向上させるためには、ユーザーが最終的に行動を起こすポイントから順に改善を行うことが合理的です。
穴の空いたバケツに水を入れ続けるような非効率な改善ではなく、まずは「穴」を塞ぐことから始める必要があります。
つまり、申し込みフォームの最適化や購入ボタンの色彩の調整、魅力的な商品説明文の作成です。
その結果として、最終的に成約に至るプロセスをスムーズにし、漏れを防げるようになります。
3.仮説を立てる
改善箇所を決定したら、どのような変更が目標達成に寄与するか仮説を立てます。
例えば、下記のような具体的な仮説です。
- 「申し込みフォームの入力必須項目は、少なくした方が申し込み率が高まるのでは?」
- 「購入ボタンを緑色の方が、より多くのユーザーが認知されてCVRが向上するのでは?」
- 「商品の説明文は、キャンペーンの内容を加味した方が刺さるのでは?」
仮説を立てる際には、目的とペルソナ(ターゲットユーザー)を念頭に置くことが重要です。
この2点を意識すると、より目的に沿った、精度の高い仮説を立てられます。
逆に考慮しない場合、テストの結果が良かったとしても、その成功の理由を正確に理解しにくいです。その上で、多くの仮説を出してテストすれば、最適解が見つかるようになります。
4.実行する
仮説を立てたら、次は検証するためにA/Bテストを実行します。
具体的なステップは、次の通りです。
まず、既存のランディングページAと、仮説に基づいて変更を加えたランディングページBを準備します。
ランディングページBは、仮説で立てた改善点(例えば、申し込みフォームの入力項目の減少、購入ボタンの色の変更、商品説明文の改善など)が反映されたものです。
次に、これらのバージョンを訪問者に表示させます。ABテストツールを活用して、ランダムにユーザーへ振り分けるのが一般的です。
ランダムに表示すると、訪問者は知らず知らずのうちにテストに参加し自然な行動パターンを示します。
結果として、より正確なデータを入手することが可能です。
そして、バージョンAとBの結果を比較し、より高いCVRを達成したバージョンを正式なランディングページとして採用します
このプロセスを通じて、仮説が正しければバージョンBの方が高いCVRを達成しているはずです。
もし結果が仮説と異なる場合でも、そのデータから新たな気づきがあり、さらなる改善の方向性を見出せるようになります。
5.PDCAサイクルを回す
A/Bテストの結果分析は、単に一回限りの活動で終わりません。
分析した結果に基づき、成功した変更はLPに継続的に適用し、目標に達しなかった場合は新たな仮説を立てて、改善のサイクルを再度実行します。
俗に言う、PDCAサイクルを回し続けることが重要です。
コツコツ改善していけば、ランディングページのコンバージョン率(CVR)を段階的に改善し、最終的にはビジネスの成果を最大化させられます。
A/Bテストを実行する際の4つの注意点
A/Bテストを実行するには、下記の注意点に考慮することが推奨されます。
- テスト項目は1つに絞る
- テストは最低でも1週間は実施する
- テスト期間中に内容を変更しない
- 母数がないとテストできない
順番に確認しましょう。
テスト項目は1つに絞る
A/Bテストを行う際には、項目を1つに絞ることが非常に重要です。
複数の要素を同時にテストしてしまうと、どれが結果に影響を与えたのかを特定しにくくなってしまいます。
この考えは、理科の実験で変数を1つに絞る理由と同じです。
一例として「日光の量は植物の成長に影響を与える」と仮説を立てたとします。
実験の設定は以下の通りです。
実験グループ | 内容 |
グループA | 植物が日光に毎日6時間当たるように環境に置く |
グループ B | 植物が日光に毎日12時間当たるように環境に置く |
この実験では、テスト項目(変数)を「日光の量」と1つに絞っています。
水や土の種類、温度などほかの可能性のある成長因子は全て同一です。
このように設定することで、植物の成長に対する日光の量の影響を明確に測定できます。
もし、この実験において、グループBの植物がグループAよりも大きく成長した場合、その差は日光の量の違いによると結論が出せます。つまり、日光を浴びれば浴びるほど、植物は成長するのです。
テストは最低でも1週間は実施する
A/Bテストを行う際には、期間を適切に設定する必要があります。
テスト期間が短すぎると、収集されるデータのブレが大きくなり、信頼性のある結果を得ることが困難です。
例えば、平日と週末ではユーザーの行動パターンが異なる場合が多く、平日のみや週末のみのデータでは全体を正確に把握できません。
このような理由から、A/Bテストは最低でも1週間は実施することが推奨されます。
平日と週末の両方をカバーし、多くのユーザー行動のバリエーションをデータに含めることが可能です。
さらに、できれば2週間程度のスパンでテストを実施すると、特定のイベントやキャンペーンなどの一時的な影響を受けにくく、より安定したデータを収集できます。
テスト期間中に内容を変更しない
A/Bテストを開始したら、期間が終了するまで何も変更してはいけません。
期間中に条件や内容を変更してしまうと、その作業がテスト結果に影響を与え、信頼性を損なう恐れがあります。
例えば、テスト途中で文言や画像を変更すると、その変更がコンバージョン率に影響を与えるかもしれませんが、その結果がどの要素に起因するのかを特定できなくなってしまいます。
途中で変更したくなっても、テスト完了を待ってデータを分析することが重要です。
母数がないとテストできない
A/Bテストを実施するには、ある程度データ数を用意しなければなりません。
その理由は、データ数が少ないとたまたまその結果が出たと判断される場合があるからです。
この考えを「有意差がある」と統計学では言います。
統計学的には、誤差を1%以下に抑えたい場合、約1万件のデータが必要です。
しかし、実際には誤差を5%以下に抑えることができれば、十分なケースもあります。
つまり、約400名分のデータがあれば良いということです。
このように統計学の観点から、A/Bテストを行うには、期間中に最低でも400件以上のデータを集めることを目安にしてください。
A/Bテストの際に必要なおすすめツール3選
A/Bテストを成功させるためには、適切なツールの選択が不可欠です。
ここでは、A/Bテストの際に役立つおすすめツールを3選紹介します。
SiTest(サイテスト)
SiTestは、ヒートマップ分析やA/Bテスト、フォーム分析など、Webサイトの改善に必要な機能を総合的に提供するツールです。
ユーザビリティの向上やコンバージョン率の改善に役立ち、特に日本市場向けに最適化されています。
直感的な操作性と詳細な分析機能により、具体的な改善策を導き出すことが可能です。
SiTestでA/Bテストを実施する際に、HTMLやCSSなどの知識は必要ありません。
管理画面上で操作できるため、Webに関する技術的な経験がないユーザーでも容易にA/Bテストを実施できます。
サポート体制も充実しているため、安心して取り組めるのは大きなメリットです。
この手軽さにより、迅速なWebサイトの最適化が可能となり、効率的な改善プロセスを支援ができます。
ミエルカヒートマップ
ミエルカヒートマップは、Webサイト上のユーザー行動を可視化するヒートマップツールです。
A/Bテスト機能も搭載しており、結果を直感的に理解できるUIです。
Webサイトのどの部分がユーザーにとって特に魅力的で、どの部分が見落とされがちかを明らかにします。
この洞察により、Webサイトの改善点を具体的に特定し、効率的に最適化することが可能です。
ただし、A/Bテストを利用するには上位プランに限定されます。
- ファースト:49,800円/月
- エキスパート:99,800円/月
- スーパー:149,800円/月
これらのプランは、ツールの利用だけでなく、専門的なサポートも含まれており、Webサイトの分析と改善をさらに深く進めたい企業に最適です。
利用可能なプランにはさまざまなオプションがあり、Webサイトの規模やニーズに応じて選択できます。
Juicer(ジューサー)
Juicerは、ユーザー解析に特化したデータ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)です。
このプラットフォームは、ユーザーの属性や行動履歴など、貴重なデータを収集し分析し、マーケティング戦略の策定や製品開発の指針として活用できます。
Juicerの大きな特徴は、基本機能は無料で提供されている点です。
ユーザーはメールアドレスと基本情報の入力だけでサービスを開始でき、クレジットカードの登録も必要ありません。
無料プランから始めて、Juicerが提供する機能の全範囲を探索し、ビジネスに最適な解析ツールとして活用してください。
まとめ:A/Bテストの成功には事前準備が不可欠
A/Bテストは、Webサイトやアプリケーションのユーザー体験を向上させるための非常に強力な施策です。
このテストを通じて、異なるバージョンのページや機能がユーザー行動にどのような影響を与えるかを理解し、最終的にはコンバージョン率を改善できます。
しかし、A/Bテストは失敗するケースが多いため、ただ闇雲にテストしてはいけません。
成功を収めるためには、下記の5つのステップに沿って進めましょう。
1.A/Bの目的を定める
2.改善箇所を決定する
3.仮説を立てる
4.実行する
5.PDCAサイクルを回す
意味のあるテストができるように、注意点も踏まえながら実行することが重要です。
このような準備は、A/Bテストを成功させるために欠かせないと言えます。
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