Webアプリケーション開発に携わる方なら、SSG(Static Site Generation)、SPA(Single Page Application)、**SSR(Server-Side Rendering)**といった用語を耳にしたことがあるでしょう。これらは、Webサイトのレンダリング方式を表す重要な概念です。しかし、開発者だけでなく、事業責任者の方々も、それぞれの違いについて深く理解している人は少ないかもしれません。
そこで、この記事では、SSGを中心に、その活用メリットや仕組みについて解説します。また、SPAやSSRとの違いについても触れ、それぞれの特徴を比較します。ですから、この記事では、SSG、SPA、SSRの基本概念を理解し、プロジェクトに適したレンダリング方式を選択することができるようになります。
東京在住、大手IT企業出身、Web業界10年以上のアラサーです。新規事業開発やシステム開発にプロジェクトベースで関与したりこれまでの経験をもとに執筆活動を行っています。
SSGの基本的な概念

ウェブサイトの開発や運用において、SSG(Static Site Generation)という概念が注目されています。SSGとは、ビルド時に静的なHTMLファイルを生成し、それを再利用する方式のことです。従来のWebサイト(MPA)では、ページ遷移の際に常に読み込みが発生していましたが、SSGではビルド時にページを生成しておくことで、ページ遷移時の読み込み時間を大幅に短縮できます。
SSG(Static Site Generation)とは
SSG(Static Site Generation)とは、ウェブサイトのビルド時に静的なHTMLファイルを生成し、それを再利用する方式のことです。
従来のWebサイト(MPA)では、ページ遷移の際に常にサーバーから新しいHTMLファイルを読み込む必要がありましたが、SSGではビルド時にあらかじめページを生成しておくことで、ページ遷移時の読み込み時間を大幅に短縮できます。
SSGは、ブログ記事や問い合わせページなど、更新頻度が低いページに適しています。ユーザーのリクエストに応じてその都度HTMLを生成するSSR(Server-Side Rendering)と比べて、SSGはファーストビューの表示が高速です。
また、生成済みのHTMLを再利用するため、サーバーの負荷を軽減し、スケーラビリティも向上させることができます。
SSGのメリットとデメリット

SSGの主な特徴としては、ビルド時にHTMLファイルを生成し、再利用する点が挙げられます。また、変更が少ないページに適しているという点も重要です。メリットとしては、ビルド済みの静的ファイルを使用するため、ページの表示速度が高速化されるということが挙げられます。
また、サーバーの負荷を軽減し、スケーラビリティを向上させることもできます。さらに、SEO対策としても優れており、クローラがスムーズにコンテンツをインデックスできるため、検索エンジンへの露出を向上させることができます。
SSGは静的なページを生成する方式であり、SSRやSPA(Single Page Application)とは異なる特徴を持っています。次のセクションでは、SSGと他のレンダリング方式との比較について詳しく解説します。
SSGのメリット
SSGのメリットは多岐にわたります。まず、ビルド済みの静的ファイルを使用するため、ページの表示速度が高速化されます。サーバーがリクエストを受けた際、動的にHTMLを生成する必要がないため、レスポンスタイムが短縮されます。また、静的ファイルを配信するだけなので、サーバーの負荷を大幅に軽減することができ、スケーラビリティが向上します。
SEO対策の面でもSSGは優れています。
クローラーは、JavaScriptを実行せずにHTMLを解析するため、SSGで生成された静的なHTMLファイルはクローラーにとって読み取りやすく、インデックスされやすくなります。その結果、検索エンジンでの露出が向上し、オーガニック流入の増加が期待できます。
セキュリティの観点からも、SSGはメリットがあります。動的な処理を含まないため、サーバーサイドの脆弱性を突かれるリスクが低くなります。静的ファイルのみを配信するため、攻撃対象となるエリアが小さくなり、セキュリティリスクが低減されます。
開発者にとっても、SSGはメリットがあります。フロントエンドとバックエンドを分離できるため、開発がシンプルになります。フロントエンド開発者はAPIから受け取ったデータを使って静的ファイルを生成することに専念でき、バックエンド開発者はAPIの開発に集中できます。これにより、開発チーム内の役割分担が明確になり、効率的な開発が可能になります。
SSGの問題点
SSGにはいくつかのデメリットもあります。
まず、ビルド時間が長くなる可能性があります。特に大規模なサイトやページ数が多いサイトの場合、すべてのページを静的に生成するためにビルドに時間がかかります。これは、開発やデプロイの速度に影響を与える可能性があります。
また、SSGは動的なコンテンツや頻繁に更新されるページには適していません。ビルド時に生成された静的ファイルは、リアルタイムのデータ変更を反映することができないためです。ニュースサイトや株価情報サイトなど、常に最新の情報が求められるようなサイトでは、SSGは適切ではないかもしれません。
ユーザー固有のデータを表示するようなパーソナライズ機能の実装も、SSGでは難しい場合があります。静的ファイルはすべてのユーザーに同じ内容を表示するため、ユーザーごとに異なるデータを表示することが困難です。ただし、JavaScriptを使用して一部のパーソナライズ機能を実装することは可能です。
フォームの送信やデータベースとのリアルタイム連携などの動的な処理が必要な場合は、別途サーバーサイド機能を用意する必要があります。SSGはあくまでも静的ファイルの生成に特化しているため、動的な処理を行うためには、APIやサーバーレス機能などを併用する必要があります。
最後に、コンテンツの更新にはビルド作業が必要であり、リアルタイム性に欠けるというデメリットがあります。コンテンツを更新するたびに、静的ファイルを再生成してデプロイする必要があるため、即時性が求められる場合には不向きです。ただし、ビルド時間が短ければ、この問題は軽減されます。
SSGと他のレンダリング方式の比較

SSG(Static Site Generation)は静的なHTMLファイルをビルド時に生成し、再利用する方式ですが、他にもSPA(Single Page Application)やSSR(Server-Side Rendering)といったレンダリング方式があります。それぞれの特徴と違いを理解することで、プロジェクトに適した方式を選択できます。
SPA(Single Page Application)の特徴
SPA(Single Page Application)は、初回のリクエスト時にサーバーが1つのページを生成してブラウザに返します。その後、ユーザーのインタラクションに応じてAPIから必要なデータを取得し、JavaScriptを使ってHTML要素を動的に更新します。SPAは以下のような特徴があります:
- 高速なページ遷移と優れたユーザーエクスペリエンスを提供
- 初回ロード時間が長くなる可能性がある
- 検索エンジン最適化(SEO)への対応が難しい場合がある
- 動的なコンテンツや頻繁に更新されるページに適している
SSR(Server-Side Rendering)の特徴
SSR(Server-Side Rendering)は、クライアントのリクエスト時にサーバー側でHTMLを生成し、ブラウザに返す方式です。SSRは以下のような特徴があります:
- ユーザーのリクエストに応じて表示内容が変わるページに適している
- 初回ロード時間が短く、SEOに優れている
- サーバーの負荷が高くなる可能性がある
- 動的なコンテンツや頻繁に更新されるページに適している
SSG、SPA、SSRの比較と組み合わせ
SSGは静的なコンテンツに適しており、ファーストビューの表示が高速で、SEOにも優れています。SPAは動的なコンテンツや複雑なユーザーインタラクションに適しており、高速なページ遷移とユーザーエクスペリエンスを提供します。SSRは動的なコンテンツに適しており、初回ロード時間が短く、SEOにも優れています。
これらのレンダリング方式は単独で使用するだけでなく、組み合わせて使用することもできます。例えば、SSGとSSRを組み合わせることで、静的なコンテンツと動的なコンテンツを適切に使い分けることができます。また、SPAとSSRを組み合わせることで、初回ロード時間を短縮しつつ、高速なページ遷移を実現できます。
プロジェクトの要件や特性に応じて、SSG、SPA、SSRを適切に選択・組み合わせることが重要です。
SSGの使いどころと活用例

SSGは、変更が少なく静的なコンテンツを持つWebページに適しています。以下では、SSGの主な使いどころと活用例について説明します。
ブログ記事や問い合わせページなどの静的コンテンツ
SSGは、ブログ記事や問い合わせページなど、頻繁に更新される必要がない静的なコンテンツに適しています。これらのページは一度作成してしまえば、そのまま使用することができます。SSGを使用することで、ビルド時に静的なHTMLファイルとして生成され、高速なページ表示を実現できます。
企業のウェブサイトにおける活用
企業のウェブサイトには、会社案内や製品情報、サービス内容などの変更があまりないページが多く存在します。これらのページにSSGを活用することで、ビルド時に静的なHTMLファイルとして生成され、高速なページ表示を実現できます。また、SSGを使用することで、サーバーの負荷を軽減し、スケーラビリティを向上させることもできます。
コンテンツのパーソナライズ化への活用
SSGはコンテンツのパーソナライズ化にも活用できます。特定のユーザーに対して異なるコンテンツを表示する必要がある場合でも、ビルド時にそれらの変数を組み込むことで、パーソナライズされた静的なページを生成することができます。これにより、ユーザーごとに最適化されたコンテンツを提供しつつ、高速なページ表示を実現できます。
SSGの使用により、ファーストビューが高速化され、ユーザーエクスペリエンスが向上します。また、パフォーマンスが重要なWebサイトでは、SSGの採用が推奨されています。ただし、SSGは変更があるたびにビルドしなければならないため、リアルタイムなデータ表示が必要な場合には適していません。そのような場合には、SSR(Server-Side Rendering)を選択するか、SSGとSSRを組み合わせて使用することで、柔軟なレンダリング方法を実現することができます。
JAMstack における SSG の役割

近年、JAMstack(JavaScript、API、Markup)と呼ばれる新しいWeb開発アーキテクチャが注目を集めています。JAMstackにおいて、SSGは重要な役割を果たしています。以下では、JAMstackにおけるSSGの役割について説明します。
マークアップとコンテンツの生成
JAMstackにおいて、SSGはマークアップ(HTML)とコンテンツの生成を担当します。開発者はSSGを使用して、マークダウンファイルや他のデータソースからHTMLファイルを生成します。これにより、コンテンツの管理とウェブサイトの構造が分離され、メンテナンス性が向上します。
高速なウェブサイトの構築
SSGは静的なHTMLファイルを生成するため、ウェブサイトのパフォーマンスが向上します。JAMstackにおいて、SSGを使用することで、高速なウェブサイトを構築することができます。静的ファイルはCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)で配信されるため、ユーザーに最も近いサーバーからコンテンツが提供され、レイテンシが低減されます。
開発の効率化とコラボレーションの促進
JAMstackにおいて、SSGは開発の効率化とコラボレーションの促進にも貢献します。SSGを使用することで、フロントエンド開発者はバックエンドの実装に依存せずに開発を進めることができます。また、コンテンツ管理をマークダウンファイルなどで行うため、非技術者とのコラボレーションが容易になります。これにより、開発チームとコンテンツ制作チームの連携が円滑になり、効率的な開発が可能になります。
JAMstackにおいて、SSGはウェブサイトのパフォーマンスを向上させ、開発の効率化とコラボレーションを促進する重要な役割を果たしています。SSGを活用することで、高速で保守性の高いウェブサイトを構築することができます。
まとめ

SSG(Static Site Generation)、SPA(Single Page Application)、SSR(Server-Side Rendering)は、Webサイトのレンダリング方式を表す重要な概念です。SSGはビルド時に静的なHTMLファイルを生成し、変更が少ないページに適しています。一方、SPAは初回リクエスト時に1つのページをサーバーが生成してブラウザに返し、ユーザーの操作性を向上させます。SSRはクライアントのリクエスト時にサーバーがHTMLを生成し、ユーザーのリクエストに応じて表示内容が変わるページに適しています。
プロジェクトの要件や目的に応じて、適切なレンダリング方式を選択することが重要です。SSGは変更が少ないページやSEO対策に有効であり、SPAやSSRはユーザーの操作性やパフォーマンスを重視する場合に適しています。また、SSGとSSRを組み合わせることで、ファーストビューの速さと動的なコンテンツの表示を両立することができます。
SSGの活用例としては、ブログ記事や問い合わせページなど、変更が少ないページが挙げられます。SSGを使用することで、ビルド時に静的なHTMLファイルが生成され、サーバーの負荷を軽減し、高速なパフォーマンスを実現できます。
SSG、SPA、SSRのそれぞれの特徴を理解し、プロジェクトに適したレンダリング方式を選択することが、効果的なWebアプリケーション開発につながります。
以上がSSGの基本的な概念や特徴、他のレンダリング方式との違い、そして活用例についての解説でした。
SSGは、静的なアプリケーションの作成やSEO対策において重要な要素となっており、理解して活用することが求められています。
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