最近では、クロスプラットフォーム開発を利用したマルチプラットフォームへの開発が活発に行われていますが、開発言語やフレームワークが多数あり、どれを選べばよいかわからない人もいるでしょう。

この記事では、開発の基本や、開発言語やフレームワークを選択するポイントなどを解説しているので、ここを参考にすれば、クロスプラットフォーム開発でネイティブアプリ開発を行うかどうかの判断材料になります。

クロスプラットフォーム開発の基本

クロスプラットフォーム開発とは、複数の異なるプラットフォームやデバイスで動作するソフトウェアを開発する手法です。ここでは、以下2つの項目に分けて、クロスプラットフォーム開発の基本を解説します。

それぞれみていきましょう。

クロスプラットフォーム開発とは

クロスプラットフォーム開発は、複数の異なるプラットフォームやデバイスで動作するアプリケーションを構築する手法です。
たとえば、Windows・macOS・Linux・iOS・Androidなど、これら環境で動くものを構築することを指します。

従来までは、各環境ごとに個別で構築していく必要がありました。しかしながら、クロスプラットフォーム開発では、一つのプログラムコードや環境を使用して、それぞれの環境に対応する構築が可能です。

クロスプラットフォームの種類　(ネイティブ型、ハイブリッド型、独自レンダラ型)

クロスプラットフォームには以下の種類があります。

種類	説明
ネイティブ型	iOSアプリならObjective-C/Swiftを、Androidアプリならは Java/Kotlinなど、各プラットフォームの公式言語を使って開発されます。この方式ではプラットフォームごとのネイティブUI/UXガイドラインに従うことができるため、ユーザーにとってネイティブ独自の操作感が得られるメリットがあります。 しかし、複数のプラットフォームに対応するには、プラットフォームごとに個別の開発が必要になるデメリットもあります。
ハイブリッド型	Web技術の HTML/CSS/JavaScript を使って開発され、作成したWebアプリケーションをネイティブアプリのコンテナに含める形をとります。Apache Cordova、Ionic、React Native などのフレームワークがこの方式で知られています。 1つのコードベースで複数のプラットフォームに対応できるメリットがありますが、ネイティブUIとの統合がスムーズでない場合があり、パフォーマンス面での制約もあります。
独自レンダラ型	Flutter、Xamarin、Qt などの専用の描画エンジンを使ってクロスプラットフォーム対応を実現します。独自レンダラにより、ネイティブUIとの親和性が高く、ネイティブに近いパフォーマンスが得られるメリットがあります。 一方で、開発者は独自レンダラごとに開発の学習コストがかかるデメリットもあります。

クロスプラットフォームとマルチプラトフォームの違い

異なる環境上で同じアプリケーション動くものがマルチプラットフォームであり、開発者が一つのコードベースで複数の環境を対象にするクロスプラットフォームと比べると、大きな違いがあります。

項目	クロスプラットフォーム	マルチプラットフォーム
アプローチ	1つのコードベースで複数のプラットフォームに対応	プラットフォームごとに個別のコードベースを持つ
開発プロセス	1つのコードベースを共有し、必要に応じてプラットフォーム固有の調整を行う	それぞれのプラットフォームに合わせて個別に開発する
コード共有	大部分のコードが共有される	コードが共有されない
学習コスト	1つの技術スタックを学習すれば良い	複数の技術スタックを学習する必要がある
保守性	1つのコードベースを保守すれば良い	複数のコードベースを保守する必要がある
ネイティブ体験	完全なネイティブ体験を実現するのが難しい場合がある	プラットフォーム固有のUIガイドラインに従うため、ネイティブ体験を提供しやすい
例	React Native、Flutter、Xamarin	iOSアプリ、Androidアプリを個別に開発する場合

クロスプラットフォーム開発のメリット

クロスプラットフォームには、さまざまな種類があることが分かりましたが、利用するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、以下2つのメリットを解説します。

• 効率的な開発プロセス
• 幅広いユーザーリーチ

それぞれみていきましょう。

効率的な開発プロセス

クロスプラットフォーム開発では、効率的な開発プロセスでの開発が可能です。

まず、一度のコードベースで複数プラットフォームに対応ができます。このため、同じ機能やアップデートを異なるプラットフォームに別々へ対応する手間が省けて、開発プロセスの合理化が図れるでしょう。

ほかにも、再利用可能なコンポーネントを作成できるため、同じ機能や処理が複数のプラットフォームで共有されてコードの再利用性が向上します。

クロスプラットフォームでは、総合開発環境（IDE）が提供されており、一つのIDE内で複数のプラットフォーム向けのコード管理が可能です。複数のプラットフォームに対して、デバッグ・テスト・デプロイを行うことができ、開発者が作業を迅速かつ効率的に行うのに適しています。

幅広いユーザーリーチ

クロスプラットフォーム開発により、幅広いユーザーリーチができることはメリットです。

複数のプラットフォームへ一斉に展開できるため、iOS・Android・Windowsなど異なるユーザーに同じアプリケーションを提供でき、広範囲なユーザーへアプローチができます。

複数のプラットフォームへの一斉展開は、新しいアプリケーションやアップデートを異なるプラットフォームで同時にリリースでき、広範囲なユーザーを確保できます。

クロスプラットフォーム開発では異なるデバイスや画面サイズに対応するための柔軟性があるため、さまざまなデバイス上での動作の保証ができ、異なるデバイスへのユーザーへアプローチができるでしょう。

クロスプラットフォーム開発言語の比較

ここまで、クロスプラットフォーム開発の基本をみてきました。

次は、クロスプラットフォーム開発言語の比較を、以下2つの項目にわけてみていきます。

• 主要な開発言語
• 開発言語の選び方

それぞれ解説します。

クロスプラットフォーム開発における主要な開発言語

クロスプラットフォーム開発では、どのような開発言語を使うのでしょうか。

ここでは、クロスプラットフォーム開発で使用する主要な開発言語の特徴などをまとめてみました。

	特徴	メリット	デメリット
C#	・イベント駆動型のアプリケーションを効果的に構築できる ・.NET技術を活用したクロスプラットフォーム開発	・ネイティブなパフォーマンスを期待できる ・.NETエコシステムが活用できる	・パフォーマンスの懸念がある ・クロスプラットフォーム部分が限定的 ・有償ライセンスが必要
Dart	・Google開発の新しいオープンソース言語である	・ホットリロード機能が優れている ・ネイティブに近いパフォーマンス ・Googleがサポートしている	・新しい言語なので人材が少ない ・ライブラリのエコシステムが未成熟 ・Googleによるサポートに依存
React	・JavaScriptベースのクロスプラットフォーム開発	・JavaScriptの知識が活かせる ・Web/モバイル開発を1つのコードベースで大規模なコミュニティとエコシステムが活用できる	・ネイティブUIとの親和性が低い ・メモリ管理が複雑 ・ネイティブコンポーネントとの連携が難しい

以下、それぞれの言語の特徴などを解説します。

C#

C#はMicrosoftによって開発されたプログラミング言語で、オブジェクト指向プログラミングの特徴を持っています。

ネイティブアプリケーションの性能を持ち、フレームワークであるXamarinを利用して、クロスプラットフォーム開発が可能です。

Dart

Dart は、非同期処理をサポートしている開発言語で、ほかにもホットリロード機能を活用して即座にコード変更を取り込めます。

学習コストが高く、また、普及度も低いため習得するのが容易ではない点がデメリットです。

React

Reactは、モバイルアプリケーションを開発クロスプラットフォームフレームワークである、React Native で使用される開発言語です。

Reactを習熟していれば、容易にReact Native を利用してクロスプラットフォーム開発ができるでしょう。

クロスプラットフォーム開発で使う開発言語の選び方

ここまで、クロスプラットフォーム開発で利用する開発言語をみてきました。

では、開発言語はどのようなポイントで選ぶとよいのでしょうか。

ここでは、おもな2つのポイントを解説します。

• プロジェクト要件と互換性
• 開発チームのスキルセット

それぞれみていきましょう。

プロジェクト要件と互換性

クロスプラットフォーム開発で利用する開発言語は、プロジェクト用件と互換性のあるものを選びましょう。

プロジェクトの性質や要件によって、どの開発言語が最適かどうかを検討する必要があります。一部のプロジェクトでは、クロスプラットフォーム開発よりも、ネイティブ開発の方が適している場合もあります。

開発チームのスキルセット

開発チームのスキルセットを考慮することは、クロスプラットフォーム開発で開発言語を選ぶ際の重要なポイントです。

既存のスキルを活かせる開発言語や、フレームワークを選択すれば、開発効率が向上するでしょう。

クロスプラットフォーム開発フレームワークの紹介

クロスプラットフォーム開発で使用する開発言語は、プロジェクト要件や開発チームのスキルセットと比較して選ぶことが良いことがわかりました。

クロスプラットフォーム開発で、フレームワークを利用して開発を行うことが多いですが、どのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、以下の項目にわけてフレームワークの紹介をします。

• 人気のフレームワーク比較
• フレームワーク選択のポイント

それぞれみていきましょう。

人気のフレームワーク比較

ここでは、クロスプラットフォーム開発で利用できるフレームワークを以下の表にまとめてみました。

	開発言語	特徴	メリット	デメリット
Flutter	Dart	・Google開発のオープンソース ・リアクティブフレームワーク ・ホットリロード機能	・ネイティブに近いパフォーマンス ・開発体験が良い ・Googleによるサポートがある	・新しい言語なので人材が少ない ・ライブラリのエコシステムが未成熟
React Native	React（JavaScript）	・Facebook開発のオープンソース ・JavaScriptベース ・Reactフレームワークを活用	・JavaScriptの知識が活かせる ・大規模なコミュニティとエコシステム ・Web/モバイル開発を1つのコードベースで	・ネイティブUIとの親和性が低い ・メモリ管理が複雑 ・ネイティブコンポーネントとの連携が難しい
Xamarin	C#	・Microsoft開発の商用フレームワーク ・.NETテクノロジーを活用 ・XAML/Codeビハインドスタイル	・.NETエコシステムが活用できる ・ネイティブUIへの親和性が高い ・C#の知識が活かせる	・パフォーマンスの懸念がある ・クロスプラットフォーム部分が限定的 ・有償ライセンスが必要

以下、それぞれのフレームワークの特徴を解説します。

Flutter

Flutterは、Googleが開発したオープンソースのUIフレームワークで、モバイル・Web・デスクトップなど複数のプラットフォームでクロスプラットフォーム開発をサポートしています。

ホットリロード機能で、変更を即座に反映できたりするメリットがある一方、アプリサイズが大きくなってしまうというデメリットもあります。

React Native

React Nativeは、Facebookが開発したオープンソースのクロスプラットフォームモバイルアプリケーションフレームワークで、Reactベースで開発ができます。

ネイティブに近いパフォーマンスを発揮でき、Reactを習得している人にとっては、容易に活用できるフレームワークです。

ただ、ネイティブアプリに比べてパフォーマンスの制約があったり、ライブラリやモジュールの品質の一貫性には差があるため注意が必要です。

Xamarin

Xamarinは、Microsoftが提供するクロスプラットフォームモバイルアプリケーション開発フレームワークです。

C#言語ベースのフレームワークであり、既存のC#開発者にとっては利用しやすいフレームワークでしょう。

一方で、C#に詳しくない人にとっては、学習コストが高く他のフレームワークを選んだ方が良い可能性があります。

クロスプラットフォーム開発フレームワークの選び方

ここまで、フレームワークの比較をおこなってきましたが、どのようなポイントで選択すればよいのでしょうか。

ここでは、おもな以下2つのポイントを解説します。

• パフォーマンスと柔軟性
• コミュニティとサポート

それぞれみていきましょう。

パフォーマンスと柔軟性

パフォーマンスと柔軟性を考慮することは、フレームワーク選択のポイントの一つです。

特に、ネイティブアプリケーションを構築する場合、選択したフレームワークが生成するアプリケーションがネイティブアプリと同等のパフォーマンスを発揮できるかが重要です。

アプリケーションの実行速度やレスポンス性が著しく低下する場合、別のフレームワークを選択するか、クロスプラットフォーム開発を行わずネイティブアプリ開発を選択した方がよい場合もあります。

コミュニティとサポート

フレームワークを選択する際は、コミュニティとサポートが充実しているかどうかを確認しましょう。

コミュニティとサポートが充実していないと、十分な情報を得られず、そのフレームワークの性能を使いきれない可能性があります。

 

 

クロスプラットフォーム開発環境の設定

ここまで、クロスプラットフォーム開発で利用する、開発言語とそのフレームワークを見てきました。クロスプラットフォーム開発では、プロジェクト要件に応じて適した開発言語やフレームワークを選択する必要があります。

開発言語やフレームワークには、それぞれ異なった開発環境の設定が必要です。

ここでは、以下の2つの項目にわけて、クロスプラットフォームの開発環境の設定を解説します。

• クロスプラットフォーム開発環境の要件と設定
• クロスプラットフォーム開発に役立つツール

それぞれみていきましょう。

クロスプラットフォーム開発環境の要件と設定

クロスプラットフォーム開発を設定するには、特定のフレームワークや言語に応じて、異なる手順が必要となります。

以下は、クロスプラットフォーム開発環境の用件と設定手順にて考慮する、おもなポイントです。

• 開発ツール
• SDKとプラグイン
• 言語とランタイム
• エミュレータまたは実機
• バージョン管理ツール
• 開発ツールのインストール

選択した開発フレームワークによって、開発ツールは異なるため、選択したフレームワークに適したツールを選ぶ必要があります。

ほかにも、開発工程の中でテストやデバッグを行う際、エミュレータや実機が必要となる場面もあるでしょう。

Androidエミュレータ・iOSエミュレータなど、使用するデバイスによって、エミュレータや実機が異なるため注意が必要です。

クロスプラットフォーム開発に役立つツール

クロスプラットフォーム開発には、役立つツールがいくつかあります。

以下はその一例です。

• Magic xpa Application Platform
• Unity
• Firebase
• VisualStudio

Magic xpa Application Platformは、マルチデバイスに対応しているアプリケーションを、コーディング不要で開発できるプラットフォームです。コーディングが不要なため、作成者の経験を問わず、クオリティの高いアプリケーションの開発ができます。

Unityは、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社が提供する開発環境で、ゲーム開発に特化したものとなっています。「プレイステーション」「Nintendo Switch」などのゲーム開発で利用されています。

このように、プロジェクト要件に特化したツールもあるため、利用するフレームワークに合わせたツールを選ぶとよいでしょう。

クロスプラットフォーム開発の課題と対策

クロスプラットフォーム開発では、プロジェクト要件に応じた開発言語や、フレームワークを活用して開発を行います。

1つのコードソースで、複数のプラットフォームに展開できる点はメリットですが、課題はあります。

ここでは、以下の2つの項目をみながら、クロスプラットフォーム開発の課題と対策を解説します。

• フロントエンド側の知識が必要
• パフォーマンスと互換性の問題

それぞれみていきましょう。

フロントエンド側の知識が必要

クロスプラットフォーム開発では、アプリケーションのフロントエンド部分を共通のコードベースで構築する必要があります。そのため、フロントエンド技術の高い理解が求められます。例えば、ReactNativeではJavaScriptとReactの知識、FlutterではDartの知識、XamarinではXAMLとC#の知識が不可欠です。

これらのフロントエンド技術は、ネイティブアプリ開発とは異なる概念や構文を持っています。開発者は、単にプログラミング言語を学ぶだけでなく、そのフレームワークの設計思想や開発ワークフローを理解する必要があります。適切な知識がないと、アプリケーションのパフォーマンスやユーザー体験に悪影響を及ぼす可能性があります。

対策としては、十分な研修やチームでの知識共有、サンプルコードの活用などが有効です。

パフォーマンスと互換性の問題

クロスプラットフォーム開発では、ネイティブアプリと比較して、パフォーマンスと互換性の面で課題が生じる可能性があります。

まず、クロスプラットフォームのランタイムやレンダリングエンジンがネイティブコードほど最適化されていないため、パフォーマンスの問題が発生しがちです。また、ネイティブAPIやデバイス固有の機能へのアクセスが制限されていたり、プラットフォームの更新に追従できないことで、機能の制約や互換性の問題が起きる場合があります。

対策としては、まずパフォーマンスの要求度合いを検討し、必要に応じてネイティブコードとの組み合わせを検討することが重要です。プラットフォームベンダーの提供する最新のツールやライブラリを活用し、アプリの最適化に努めることも大切なポイントとなります。

まとめ：クロスプラットフォームのトレンド

クロスプラットフォーム開発でアプリケーション開発を行えば、開発コードを一元化でき、開発効率が向上します。

最近では、フレームワークの改善やネイティブパフォーマンスの向上により、クロスプラットフォーム開発がより利用しやすい環境となっています。

扱いやすい環境となっているクロスプラットフォーム開発ですが、このようなクロスプラットフォーム開発を自社で全て行うのは容易ではありません。

このため、クロスプラットフォーム開発をアプリケーション開発会社へ開発委託するのは、一つの選択肢です。

ただ、アプリケーション開発会社には、さまざまな種類があり得意分野や開発手法もさまざまで、どの会社を選べばよいかわからないこともあるでしょう。

アプリケーション開発会社の選定に迷った場合は、実績豊富な株式会社Jiteraに一度ご相談ください。貴社の要件に対する的確なアドバイスが提供できます。

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