画像処理やウイルス検知などで用いられる手法の1つがパターンマッチング法です。
上手く活用することで、多くの問題の解決に役立てることができます。
本記事ではパターンマッチング法による画像処理の仕組みやテンプレートマッチングとの違い、実装例などについて紹介します。
画像処理に取り組む際にパターンマッチング法を活用したい方は是非参考にしてください。
WEBライター歴12年です。IT系の記事執筆経験は豊富にあります。
パターンマッチング法の基礎

パターンマッチング法とは与えられたデータから特定のパターンを導き出す手法です。
幅広い分野で活用されており、特に画像処理の分野では重要な手法とされています。
以下ではパターンマッチング法の基礎的な概念から応用分野まで詳しく解説します。
パターンマッチング法とは
パターンマッチング法とはデータの中から特定のパターンの出現を特定するための手法を指します。
文字列や画像、動画に対しての実装例が多く、注目度の高い手法です。
事前にパターンを登録しておけば、パターンと一致するものがあるかどうか検出できます。
2つの対象物について、どの程度似ているのか数値化して評価することでマッチングが行われるのが特徴です。
2つの対象物がどの程度似ているのかを数値化したものは類似度と呼ばれます。
類似度の数値が大きいほど、2つの対象物が似ていることがわかるという仕組みです。
コンピュータが対象物について比較を行い、類似度の数値が大きい対象物を検出します。
画像処理におけるパターンマッチング法の重要性
画像処理を行う際に採用されることが多いのがパターンマッチング法です。
画像から特定のパターンを検出するのに用いられます。
従来の画像処理で採用されていたのはブロブ解析です。
しかし、ブロブ解析では細かなパターンや複雑な形状を識別するのは困難でした。
一方、パターンマッチング法の場合はあらかじめパターンを登録しておき、対象物と比較することで合否判定を行います。
特定のパターンと比較させることで、細かいパターンの識別まで可能になるため、高度な正誤判断が可能です。
製品のロゴ印字や部品の付け忘れなど細かな違いまで認識させられます。
パターンマッチング法の応用分野とは
パターンマッチング法は多くの分野に応用されています。
たとえば、工場で製品のキズや汚れ、異物などの識別が可能です。
人の目では識別が困難なレベルで製品の合否判定を出すことができます。
チャットボットに取り入れた事例もあります。
利用者と会話をする際に、会話の内容から特定のパターンを識別して、それぞれのパターンごとに決められたフレーズを返すことが可能です。
自動車の自動運転の技術にも応用されています。
車載カメラの映像を解析することで歩行者の検出が可能です。
今後はより幅広い分野に導入され、多くの問題を解決していくでしょう。
パターンマッチング法の仕組み

パターンマッチング法を実際に応用できるのは、機械学習やAIの技術が発展したからです。
機械学習・AIの技術と組み合わせることで、多くの分野に利用できるようになりました。
以下ではパターンマッチング法の仕組みについて、機械学習・AIとの関係から主なアルゴリズムについてまで解説します。
機械学習とAIにおける役割
機械学習の技術が生まれたことで、AIが進歩しました。
そして、機械学習の進化が進んだのは、パターンマッチング法を取り入れたからです。
コンピュータの性能が上がったことで、機械学習にパターンマッチング法を採用できるようになりました。
AIに対して特定の対象物に関する学習データを渡します。
機械学習によって、AIは特定の対象物に関するパターンを学習できます。
最終的に、パターン認識ができるAIモデルが完成するため、現場に導入してさまざまな仕事をさせられるでしょう。
AIモデルに画像や動画を渡せば、事前に登録したパターンと一致するものがあるか判定させることが可能です。
機械学習の技術でAIに特定のパターンを学習させることで、幅広い分野に応用できます。
パターンマッチングの主なアルゴリズム
与えられたデータから特定のパターンを検出するためのアルゴリズムには、多くの種類があります。
たとえば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は画像認識で採用されることが多いアルゴリズムです。
「畳み込み」と「プーリング」、「全結合層」という3つの層を通過させて画像の判別ができます。
回帰型ニューラルネットワーク(RNN)もよく使われるアルゴリズムです。
RNNは人間の神経回路を模したもので、入力層と中間層、出力層によって構成されています。
中間層で計算された結果が再び中間層に入力され処理されるという流れを繰り返すのが特徴です。
RNNを用いれば、画像に何が表示されているか、どんな文字が書かれているか読み取ることができます。
最適なアルゴリズムを活用してパターンマッチング法の応用が可能になります。
テンプレートマッチングとの違い
パターンマッチング法という言葉の他にテンプレートマッチングという言葉もよく目にします。
それではこの2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
以下ではパターンマッチング法とテンプレートマッチングの違いや使用シナリオについて詳しく紹介します。
パターンマッチング法とテンプレートマッチングの基本的な違い
パターンマッチング法に取り組むための手法の1つにテンプレートマッチングがあります。
テンプレートマッチングとは、あらかじめテンプレートを用意して、対象物と比較する手法です。
対象が既存の画像とどれだけ類似しているかを検出します。
事前に用意した画像と類似度が高ければ、同じものとして扱えるという仕組みです。
たとえば、製品の正常な状態の画像を用意して学習させれば、類似度が低い場合に不良品であると判定できます。
ただし、まったく同じ形でなければ検出できないため、精度を上げるには、大きさや角度を変えて複数の画像を用意するのが一般的です。
また、対象物をいくつかのパターンに分割して、それぞれのパターンごとにテンプレートを用意するという対処法もあります。
使用シナリオにおける違い
パターンマッチング法は多くの分野で使用される手法です。
その中でもテンプレートマッチングがよく用いられるのは画像処理の分野で、工場での製品検査や病院での画像診断などで使われます。
たとえば、印刷物のロゴ印字について正誤判定するのに最適です。
正しいロゴと比較することで類似度を測ることができ、ロゴのミスがあれば検出できます。
所定の場所にネジや部品が正しく取り付けられているか確認するのにも効果的です。
正しくネジや部品を取り付けた画像と比較させることで、取り付け忘れを検査できます。
ただし、テンプレートマッチングは複雑なパターンや光の変化、角度の変化などを検査するのには向いていません。
この場合は、高度なアルゴリズムを使用して、複雑なパターンを検知できるAIモデルを用意します。
パターンマッチング法のメリット

パターンマッチング法のメリットを以下にまとめました。
- 特定のパターンを正確に識別
- 大量のデータからパターンを自動で識別可能
- 様々な分野での応用が可能
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
特定のパターンを正確に識別
パターンマッチング法は、あらかじめ与えられたパターンと照らし合わせて識別する方法です。
前もって特定のパターンに関するデータを与えているため、正確に識別できる点はメリットといえます。
比較する対象をデータとして登録できるため、誤検知が起きる可能性は低いです。
たとえば、製品の外観に異物や汚れなどがある場合は、人の目では判断が難しいケースでも正確に識別できます。
精度の高い識別をすることで、多くの問題の解決が可能です。
大量のデータからパターンを自動で識別可能
パターンマッチング法は膨大な数のデータからパターンを自動的に識別することが可能です。
現在のコンピュータの技術であれば、いわゆるビッグデータと呼ばれるデータであっても、短時間で処理ができます。
学習データとして数千万枚という膨大な画像を用意してAIに学習させることも可能です。
大量のデータからパターンを次々と自動的に学習させて、特定の特徴を識別させられます。
様々な分野での応用が可能
パターンマッチング法は大量のデータに含まれるパターンを学習し、識別する仕組みです。
画像だけではなく、動画や音声、文章なども扱えます。
そのため、医療業界では画像による病気の診断が実際に用いられています。
工場では、製品の目視確認の作業をAIに代替させることが可能です。
施設への入退館の認証で、顔や指紋、虹彩、音声などを用いた生体認証を取り入れる際にも活用できます。
パターンマッチング法のデメリット

パターンマッチング法のデメリットを以下にまとめました。
- 処理に時間がかかる場合がある
- 複雑なパターンの識別には高度なアルゴリズムが必要
与えられたデータからパターンを識別するのに時間がかかるケースがあります。
また、複雑なパターンの識別をさせるには、高度なアルゴリズムを用意しなければいけません。
パターンマッチング法のデメリットについて詳しく解説します。
処理に時間がかかる場合がある
パターンマッチング法は学習したパターンと照らし合わせながら、類似したものがないか検出します。
膨大なパターンと比較するため、処理に時間がかかるケースがあるのがデメリットです。
ただし、アルゴリズムを工夫することで処理速度の高速化を図れるケースがあります。
また、高スペックなコンピュータを用いて処理させることも、処理時間の短縮に効果的です。
今後は技術が発展することで、処理時間が短縮させていくでしょう。
複雑なパターンの識別には高度なアルゴリズムが必要
複雑なパターンの識別をさせるには、高度なアルゴリズムを用意しなければいけません。
対象となるデータの情報量が増えるほど、パターンの識別は困難になるからです。
アルゴリズムはデータを分析してパターンを識別するための道筋を示します。
複雑なパターンの識別にも対応できるアルゴリズムを準備しないと、パターンマッチングが上手く実行されないでしょう。
パターンの識別をさせたい対象物の性質に合わせて最適なアルゴリズムを用意するには、高度な知識や技術が必要になります。
パターンマッチング法の実装例

パターンマッチング法は多くの分野で実装されている手法です。
画像処理ではパターンマッチング法を活用した事例がたくさんあります。
機械学習モデルを構築する際にもパターンマッチング法は役立つものです。
以下ではパターンマッチング法の実装例を具体的に紹介します。
画像処理における実装例
画像処理でパターンマッチングが実装された事例の1つが、工場の検査での実装例です。
工場で製品に問題がないか検査する際に活用できます。
撮影した製品の画像と、欠陥のない製品の画像を重ね合わせて、類似度が規定の数値を下回れば欠陥とみなすのが検査選別法です。
人の目では識別できないレベルの欠陥を見つけ出すこともできます。
人が検査をする手間を省くことができ、検査の精度を高めることもできるため、メリットは大きいです。
医療の画像診断で応用された事例もあります。
正常な状態の臓器の画像と比較し、類似しない部分にあるしこりを見つけ出すことが可能です。
パターンマッチング法を利用し、ガンが疑われるパターンが検出されれば、精密検査を促し、ガンの早期発見を実現できます。
機械学習モデルにおける実装例
機械学習モデルを学習させるための手法としてパターンマッチング法はよく用いられます。
たとえば、スニーカーについて学習させるためには、何百万枚という膨大なスニーカーの写真を見せなければいけません。
学習させたい対象物について、膨大なデータを渡すことで、機械学習モデルは自然とパターンを認識します。
スニーカーの例でいえば、靴紐があり、靴底があり、ロゴがついているといったスニーカーの特徴を理解して見分けることが可能です。。
モデルに対して「黄色のスニーカーの画像を生成」と命令すれば、過去の学習内容をもとにして画像を生成します。
現在の機械学習モデルにおいて、パターンマッチングは欠かすことができない手法です。
パターンマッチング法のまとめ

パターンマッチング法は、大量のデータから特定のパターンを判定する手法です。
機械学習モデルにおいて特に活用され、幅広い分野で応用されています。
特に画像処理においての実装例が多く、工場における製品検査の自動化などが可能です。
ただし、パターンマッチング法を実装する際には、処理に時間がかかる点や、高度なアルゴリズムが必要になるケースなどに注意しなければいけません。
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