【入門】AIOpsとは?プラットフォームや事例、おすすめのツールを解説!

近年ビッグデータ解析や機械学習を行ったAIによるサービスが急速に普及していますが、その中でもAIOpsが注目を集めています。AIOpsは人工知能(AI)を用いたITインフラの運用や管理の自動化・効率化を目的としており、システムのダウンタイムや運用コストの削減が可能です。

本記事では、AIOpsの定義からメリット、特徴や機能を中心にAIOpsの入門的な内容をわかりやすく解説していきます。

さらに、実際のプラットフォームや事例なども紹介していますので、現在行っている業務に対するソリューションの一つとしてAIOpsの導入を検討されている場合はぜひご一読ください。

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監修者 ITエンジニア Hirose Takaya

新卒でITエンジニアとして3年ほど勤務した後、現在はフリーエンジニアの傍、IT分野を中心にライターとしても活動中です。歴代のクライアント様からは癖が無く読みやすい文章であると評価をいただいております。

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    AIOpsとは

    AIOpsとは

    人的ミスを防いでテストからデプロイまでの作業を自動化したり高速化をする考え方は「DevOps」という形で以前から提唱されていて、すでに現場での開発手法の一つとなっています。

    AIOpsはDevOpsから派生した言葉で、AIを用いた業務効率の手法です。まずはAIOpsがどういった技術を指すかを理解しておくことで、AIを活用した業務改善を検討する際に役立つでしょう。

    本セクションでは、AIOpsの定義や考え方、名前の由来に関して紹介していきます。

    AIOpsの定義と概要

    AIOpsは、人工知能の技術を使ってIT運用やIT業務を自動化および最適化する仕組みを指します。

    世の中で運営されているシステムやアプリケーションの多くは24時間稼働が前提のサービスですが、急なトラブル対応やインフラの整備など、いまだに人の手で運用している部分が少なくありません。

    しかし、AIOpsによりビッグデータと機械学習を組み合わせると、システムログやパフォーマンスの解析が可能になるので、システム障害をいつでも自動的に対処できるようになります。

    また、常にデータを収集して分析できるリアルタイム性も兼ね備えており、システムのダウンタイムのリスクを減少させ、継続的な業務改善も可能です。

    AIOpsは人間よりも高速で正確な作業ができるため、業務効率化の目的で導入され始めています。

    AIOpsの読み方と由来

    AIOpsの読み方は「エーアイオプス」であり、Artificial Inteligence for IT Operationsの頭文字を取っています。これは当時のIT業界で普及しつつあった人工知能(AI)とIT Operations(情報技術の運用)を組み合わせた造語になっています。

    AIOpsはIT分野の調査会社であるアメリカのガートナー社によって2017年ごろに初めて提唱されました。AIOpsと命名される以前にもAIを社内業務の改善するツールの一つとして導入する動きはあったので、AIOpsと同様の考え方は存在していたと考えられています。

    AIOpsの機能

    AIOpsにはさまざまな機能が存在しますが、大量のデータの学習や分析を行うのが中心となります。

    与えられたデータのパターンを見つけ出して、未知のデータに対してそのパターンを適用して何らかの問題解決を図るのは、人間が苦手でAIが最も得意としている作業です。

    本セクションでは、マシンラーニングとデータ分析に加えて、処理の自動化と効率化、インシデント管理と予測分析といったAIOpsの主な機能について詳しく解説していきます。

    マシンラーニングとデータ分析

    AIOpsではマシンラーニングとデータ分析を行えるのが最大の特徴の一つです。

    ITインフラを運用する中で得られる膨大な量のシステムログデータやパフォーマンスなどを学習・分析することで、現在起こっている問題には原因と解決策、未知の問題には予防策を提供してくれます。

    ビッグデータ分析を通じて、システムのパフォーマンス向上やセキュリティ強化、コスト削減といったIT運用のあらゆる側面において、人間が行う業務の一部をサポートできます。

    自動化と効率化

    AIOpsはIT運用におけるタスクを自動化して、個人の作業の負担を大幅に軽減します

    たとえば、システムメンテナンス、セキュリティパッチの適用、ネットワーク設定の変更など、定期的に行う作業を自動化すると、プロジェクトチームのメンバーはより価値の高い業務へ集中する時間を増やせます。

    また、AIOpsは異常検出時に自動的にトラブルシューティングを開始し、問題を解決するためのスクリプトの実行も可能です。

    上記のように、AIOpsはITインフラの監視と管理を効率化して、迅速かつ正確な業務を実現する機能を持っています。

    インシデント管理と予測分析

    マシンラーニングと分析のセクションでも少し触れましたが、AIOpsは与えられたデータを基に未知の現象に対する予測を行う機能も持っています

    問題が発生した際にはAIOpsによって原因を素早く特定し、事前に学習済みの過去の事例データに基いた改善策の提案が可能です。

    結果的に、障害が発生しても過去の障害解決のパターンを当てはめてすぐに対処できるので、システムが復旧するまでの時間を大幅に短縮できます。

    また、過去に発生したインシデントの詳細な分析を行い、類似の問題が将来発生する可能性が高くなる状況を予測して予防策をユーザーに提示して障害を未然に防ぎます。

    AIOpsの特徴

    AIは人間と違って24時間いつでも即座に問題に対処できますし、利用すればするほど学習を行いながら自ら成長を続けて、性能を向上させることが可能です。

    AIOpsには学習を行うAIを利用しているため、AIが持つ特徴を多く受け継いでいます。

    本セクションではAIOpsのさまざまな特徴の中でも、リアルタイム性と自己学習、複雑な環境への適応力、ユーザーエクスペリエンスの向上をについてわかりやすく解説していきます。

    リアルタイム性と自己学習

    IT技術の進歩に伴って、企業は一つのサービスを開発するために膨大な量のデータを扱うようになりましたが、人の手で管理や分析を行うのは容易ではありません。

    しかし、AIOpsはビッグデータをリアルタイムで分析し、システムの異常やパフォーマンスの低下を即座に検知する能力を持ちます。また、分析したデータで自ら学習を行って、将来発生する可能性のある問題を予測して未然に防ぐこともできます。

    人の手による監視や分析では困難であったリアルタイムの高い分析と自己学習能力はAIOps最大の特徴の一つです。

    複雑な環境への適応力

    近年多くの企業が取り組むデジタルトランスフォーメーション(DX)には、サーバーや仮想マシン、クラウドなど多種多様な機器やサービスの統合が不可欠です。しかし、従来の手法では異なる環境の管理が複雑で困難でした。

    AIOpsを用いると、複数のプラットフォームやアプリケーション間で発生したデータやイベントを一つにまとめて分析可能な形に整形することができます

    そのため、AIOpsは複雑な環境下での適応能力が高いと言えるでしょう。

    ユーザーエクスペリエンスの向上

    AIOpsを導入してIT運用の自動化と最適化が実現できると、開発者だけでなく結果的にユーザーエクスペリエンスも大幅に改善します。

    先述したようにAIOpsはビッグデータをリアルタイムで分析し、自己学習を繰り返すことで開発者に解決策や予防策を速やかに提示できるので、システム障害が発生してもシステム停止時間を最小限に抑えられます

    そのため、サービス自体の品質が向上して、顧客満足度の向上にも繋がるでしょう。

    AIOpsプラットフォーム・ツール

    文書作成ソフト、会計ソフト、アプリ開発プラットフォームなど業務効率化を図るツールやサービスが無数に存在しています。

    AIOpsも同様に、パフォーマンスやログを監視するソフトウェアやプラットフォームがいくつか登場しているのをご存知でしょうか?

    本セクションでは、AIOpsの代表的なプラットフォーム・ツールの中でもDynatrace、Splunk、Moogsoftについて詳しく解説していきますので、特にAIOpsの製品をご比較される場合にお役立てください。

    Dynatrace

    (https://www.dynatrace.com/ja/)

    DynatraceはIT運用のパフォーマンス管理を行うプラットフォームで、ITシステム全体を一元的に可視化して監視できます。

    Dynatraceの特長として、専用ソフト「OneAgent」による導入の容易さと監視対象の自動認識を行う機能が主に挙げられるでしょう。

    監視対象のサーバーにOneAgentをインストールするだけで、自動的にシステム内で検出作業が開始されます。そのため、複雑な設定作業や個別の監視ツールの導入に伴う手間が省かれて、すぐに監視体制を整えることが可能です。

    また、OneAgentでは監視対象のサーバーを自動的に探索して、利用しているフレームワークやインフラ構成といった情報を収集と解析を行うことで、システムの全体像と各コンポーネントの健全性がリアルタイムで可視化されます。

    その結果、新しいサービスのデプロイやシステムの変更があっても追加の設定変更を行うことなく、継続的にシステムの状態を監視し続けられます。

    Splunk

    (https://www.splunk.com/ja_jp)

    Splunkはデータ駆動型の意思決定をサポートする強力なプラットフォームで、異なるソースからのデータをリアルタイムでの収集・監視・分析を可能にします。

    Splunkの強みは、小規模な環境から大規模な企業環境に至るまでさまざまな規模で運用できる柔軟性です。複数の形式のログデータを同じ場所に同じ形式で集めて、リアルタイムでの監視や長期的な傾向の分析を実現しています。

    また、Splunkには収集したログの検索機能も存在していて、膨大な量のデータの中から必要な情報を素早く見つけ出せるので、インシデント対応の時間を大幅に短縮します。

    Moogsoft

    (https://www.moogsoft.com)

    Moogsoftは、特に大規模なITインフラを持つ企業やクラウドサービスとオンプレミス環境の両方を管理するハイブリッド環境での使用に適しているAIOpsのプラットフォームです。

    ビッグデータの収集・分析からインシデントの早期発見と対処までの一連のIT業務の自動化をサポートしています。

    また、複数の監視ツールからの情報を統合して関連するアラートを一つにまとめることで、情報過多による混乱を避け、運用チームが本当に対処すべき問題に集中できるようにする機能も備えています。

     

    AIOpsの事例

    AIOpsではすべてのIT業務を任せられるわけではありません。業務の自動化や大量の学習データを基にした定型的な作業はAIに任せられますが、デザインやマーケティングなど創造性を要する業務は現在も人間の方が得意です。

    そのため、AIOpsを導入する前に、実際にどのような場面でAIOpsを導入すると効果があるのかを知っておく必要あります。

    本セクションでは、ITシステム監視と障害予測、インシデント管理と自動対応、クラウドネイティブ環境での運用最適化という3つの導入事例について解説していきます。

    事例1: ITシステム監視と障害予測

    クラウドサービスを提供する企業であるニフクラでは、物理サーバーの故障データを蓄積・分析し、自動で故障の予兆を検知するシステムを導入しています

    特に、故障が予想される物理サーバー上で動作している仮想マシンを予め別の物理サーバーに退避させて、障害発生を未然に防ぐ取り組みが行われています。

    結果として、エンドユーザーからの仮想マシンのパフォーマンスに関する問い合わせがあった場合にも迅速でスムーズな回答を提供できるようになり、サービスの品質向上と運用効率が大幅に向上しました。

    事例2: インシデント管理と自動対応

    PagerDutyは、アラートのノイズを減らしてアラート疲れを軽減する機能を提供しているAIOpsの製品です。そのため、関係者は重要なインシデントに迅速に対応できるうえ、不要なエスカレーションを抑制しながら効率的なインシデント解決を実現できます。

    インドネシア大手テクノロジー企業のTokopediaでは、PagerDutyを導入した結果、インシデント対応のプロセスを自動化して平均修復時間(MTTR)の短縮に成功しました。

    これにより同社はソフトウェアの更新が1日あたり10件から300件以上に増加し、開発チームの生産性が大幅に向上したと報告しています。

    事例3: クラウドネイティブ環境での運用最適化

    AIOpsを活用したクラウド環境の運用最適化における具体的な事例として、クラウドリソースの動的な最適化が挙げられるでしょう。

    AIOpsのプラットフォームがクラウド上で稼働するアプリケーションのパフォーマンス監視とリソース使用状況の分析をリアルタイムで行い、負荷に応じて自動的にリソースを調整します。

    たとえば、eコマースプラットフォームを運営する企業が販売キャンペーン期間中の急激なアクセス増加に対応するためにAIOpsを導入した場合、ステムは自動で負荷の変動を検知し、必要に応じてリソースの追加や削除を行います

    その結果、運営するプラットフォームのパフォーマンスを維持しつつコスト効率を最適化することが可能です。

    AIOpsの導入メリット

    先ほどのセクションでは、AIOpsの導入に成功した事例を紹介しました。AIが担える業務についてある程度お分かりいただけたでしょうか。

    本セクションで紹介するAIOpsの導入メリットも合わせて知っておくと、AIの持つ能力を最大限に引き出しながら実際の業務に活用することが可能です。

    それでは、インシデントへの迅速な対応、エラーの事前防止と予測、IT運用の効率化とコスト削減の3つのメリットについて詳しく見ていきます。

    インシデントへの迅速な対応

    AIOpsのプラットフォームでは、クラウド環境から生成される膨大なログやパフォーマンスデータをリアルタイムで分析し、異常パターンの自動検出を行います。

    そしてインシデントの発生時に関連する情報を自動的に集約し、影響範囲と原因を即座に特定します。そのため、運用チームは問題解決のための適切なアクションが迅速に実行可能です。

    さらに、AIOpsはインシデント対応プロセスを自動化すると、システムが復旧するまでの時間が短縮するので、サービスの可用性と信頼性が向上するでしょう。

    一定の条件下で発生するインシデントに対しては、事前に学習させた対応マニュアルを自動で実行して、人の手を介することなく瞬時に問題を解決することができます。

    エラーの事前防止と予測

    AIOpsを導入することで、エラーの事前防止と未来の問題を予測する能力が格段に向上します。システムから発せられるさまざまなサインを分析し、問題が起きる前に手を打つことが可能です。

    たとえば、通常と異なる負荷がサーバーにかかった際、AIOpsはそれを即座に検知して過去の事例から最適な対応策を提示します。そしてその状況をAIが学習して、今後同様の負荷がかかりそうな兆候を察知すると、負荷が実際にかかる前に予防策を講じるように提案してくれます。

    結果としてシステムのダウンタイムが減るので、自社サービスの運営の安定性を保てるでしょう。

    IT運用の効率化とコスト削減

    AIOpsの導入で毎日行っていたインフラなどの運用業務の自動化が進むので、手作業のタスクが削減されます。

    そのため人件費の削減の他にも、チームのメンバーをより戦略的で創造性が高い業務や活動に割り当てて、企業全体の生産性が向上するでしょう。

    さらに、AIOpsはリソースの使用状況を調査して必要以上に割り当てられているリソースを削減できます。クラウドサービス料金は使用したリソースに基づいて計算されるため、不要なリソースの削除は直接的なコスト削減に繋がります。

    AIOpsの課題

    今までの内容を踏まえると、AIOpsを導入するとさまざまな業務が改善されて、良い効果のみをもたらすと思われがちです。

    しかし、AIはまだまだ発展途上の技術なので、AIを実際のIT業務で運用していく中で解決すべき課題を多く抱えています。

    本セクションでは、AIOpsに関してよく議論される課題である、データの品質と信頼性、人工知能の限界と誤解釈、組織文化やスキルの不足について詳しく解説していきます。

    データの品質と信頼性

    AIOpsの課題の一つとしてよく挙げられるのが、データの品質と信頼性です。AIOpsの根幹をなすのは機械学習やデータ分析なので、AIOpsの性能は与えるデータの品質に大きく依存します

    特に大規模なIT環境下では、複数のプラットフォームから膨大な量のデータが生成されます。しかし、そのすべてのデータを高品質に保つのは容易ではありません。

    データの不整合、欠損、時系列のズレなどが問題となることがあり、学習データを前もって綺麗な形に処理する手法に関する知識が必要とされるでしょう。

    人工知能の限界と誤解釈

    先ほどの課題と似ている部分もありますが、AIOpsが自動化された意思決定を行う際にはデータの信頼性と正確性が極めて重要です。

    誤ったデータに基づいて判断すると、システムのパフォーマンス低下や過剰なリソースの利用、またはセキュリティリスクの増大につながる可能性が少なくありません。

    さらに、AIの誤解釈によって本来は無害であるはずのシステムの挙動が問題と認識され、不必要なアラートや対処が行われる場合もあります。

    上記の問題を防ぐためには、学習データの丁寧なチェック体制を設けたり、場合によってAIが判断を行う際に人間が介入できるようなシステムを作ることが挙げられます。

    組織文化やスキルの不足

    通常、新しいツールの導入は現場ではなく上層部が判断するので、AIOpsを導入する際には上司や経営陣の理解が必要となる場合が少なくありません。

    しかし、既存のシステムでの運用に慣れていて、挑戦的な投資をする機会が少ない組織では説得に困難を極めるでしょう。

    また、AIOpsを運用していくためにはAI技術や機械学習に関する深い知識が必要ですが、多くの組織ではAIに関するスキルを持った人材が不足しています。そのため、AIのスキルに強い人材の育成や採用のための投資も不可欠です。

    AIOpsのまとめ

    AIOpsはIT運用を自動化し最適化するためのAIの技術の一つであり、システムログやパフォーマンスデータの解析を通じて障害対応や業務改善を実現しています。

    リアルタイムでのデータ分析と自己学習能力を備え、システム障害の自動対処やダウンタイムリスクの減少に貢献します。

    AIOpsの導入によってITインフラの監視と管理が効率化され、インシデント管理や予測分析も効果的です。

    しかし、学習データの品質によってAIの性能が左右されたり、AIへの理解が進んでいない組織が多く、AIを扱える人材が不足しているといった課題があります。

    そのため、AIOpsの導入の際には上記の点に注意しながら進めていきましょう。

    AIOpsの導入やご利用に関してご不明点やお困りのこと、ご依頼等がございましたら実績豊富な株式会社Jiteraに一度以下のリンクからご相談ください。

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