近年、IT技術は様々な業界で利用されていますが、それは教育業界についても同様です。IT技術の教育業界への進出について、日本は比較的遅れていますが、それでも徐々にタブレット機器などを利用した授業が増えています。この記事では、IT技術の中でもVRを教育現場で活用した時の効果などについて解説します。
VRはゲームや動画鑑賞の際にも利用され、ユーザーに従来では味わえなかった経験を与えることができますが、それは教育現場で活用した時も同様です。

文系大学出身で、25歳の時にIT業界に足を踏み入れました。ヘルプデスクから要件定義まで、下流から上流まで文字通り叩き上げでキャリアを築き上げました。取得した資格もいつの間にかもう2桁に。趣味も資格取得。あと、映画鑑賞と飲み会。
VR教育の基本

まず、この章ではVR教育とはそもそもどのようなものなのか、どのような機器が必要なのか、ということについて解説していきます。これらの事柄についても理解することで、VR教育の影響や効果について、各々でイメージしやすくなります。
VR教育とは何か?
VR教育とは、仮想現実技術を教育や勉学に用いて、学習プロセスをより効率的にする手法のことを意味します。
VR教育では、仮想空間に学習したい事柄に関連するイメージを作成するだけでなく、例えば水が入ったコップを強く押すなどの行動を取ることで、仮想空間上の物体に影響を与えることもできます。
単に本で読んだり動画を見たりして学ぶよりも、視覚的に情報を集め、尚且つ自分で手を動かして体験することで記憶に定着しやすくなりますし、理解もしやすくなります。
VR教育の主な要素
VR教育を行うには、必要な機器やデータ、手続きがありますが、それは以下に記載したものになります。
VRコンテンツ
VR教育を行うには、まずVRコンテンツが必要になります。ビデオゲームで例えるとゲームソフトの部分になり、仮想空間内でどのような空間を再現するか、ということをVRコンテンツで定義します。
例えば、日本史の授業ならば江戸時代の日本を再現した空間、理科の授業であれば様々な薬品の調合を行える実験室、といった形です。これらは前述したビデオゲームのゲームソフトと同様、授業や学びたい内容によって適宜変えていく必要があります。
ヘッドセット
VRコンテンツで定義した内容を仮想空間に構築するには、ビデオゲームで言うところのハードが必要になりますが、それがVRヘッドセットになります。文字通り頭に付ける機器になっており、VRコンテンツで定義した内容を映し出すスクリーンがサングラスのように目の前にある形になっています。
ヘッドセットを装着すると、首の動きに合わせて映し出す映像が変わるため、まるで仮想空間上の世界に自分がいるかのような錯覚に陥ります。
コンテンツ制作者
VRコンテンツを入手するためには、それを作る企業や教育機関が必要不可欠です。これらの企業で、何の科目の、どんな内容のVRコンテンツが作成されるかが決まります。
もし市販の製品で満足できない場合は、莫大なお金と時間が必要になりますが、会社や機関に直接連絡してオーダーメイドのVRコンテンツを作成してもらうことも可能になります。VR教育が注目を浴びている現代において、これらVRコンテンツを作成する企業や機関に対してのニーズや関心も急激に高まっています。
VR教育のメリット

VR教育が近年急速に注目を集め、教育の現場での使用が広まっていっているのは、多大なメリットがあるからに他なりません。具体的に言うと、従来の方式での授業に比べて、授業で得ることのできる学習体験の豊かさや生徒が維持できる集中力、授業の安全性が大きく高まっています。
従って、VR教育を効果的に行うことで一昔前の同世代の学生よりも、理解している知識の幅も質も、大きく底上げすることが可能になります。
学習体験の豊かさ
前述したように、VR教育は単に仮想空間上に学習したい事柄を再現するだけでなく、再現した物体に能動的に影響を及ぼすことができます。従って、今までは頭の中で想像するか教科書の挿絵でしか再現することができなかった事象を視覚的に再現することで、現実的な結果をその場で視覚的に知ることができます。
このように現実的なシミュレーションを提供することで、学習者が効率良く、深い理解を得ることができるようになります。
集中力向上
VR空間では仮想空間上に再現した空間の中で勉強をすることができるため、外部からの刺激を影響を排除し、集中力を向上させることができます。
1人で本を読んでいたり、集団で講義を受けていたりすると、部屋の中にある遊び道具の誘惑や、友人からのちょっかいによって勉強を邪魔されることが良くあります。しかし、VRを利用することで、それらの影響から自分自身の視覚や聴覚を切り離し、目の前の勉学だけに目を向けることが可能になります。
安全な練習
VR空間上で再現できるのは視覚的な情報だけですが、安全性を考慮するとそれが吉と出ています。例えば理科の実験や地学の実地訓練においては、危険性のある薬品を使用したり、危険性のある場所に行かなければならない場合もあります。
これがVRでの授業の場合ですと、万が一、危険な薬品の扱いを誤ったり足を踏み外したりしても、その薬品の効能までも再現したり、現実の地形までも変えたわけではないため、怪我をするリスクはありません。
VR教育のデメリット
VR教育には多くのメリットがありますが、同時にデメリットもいくつか存在します。
VRを長時間利用することによって目を悪くしたり、重いヘッドセットを長時間頭に装着したままにすることで首を痛めたりするなど、健康への悪影響がまず思い浮かびがちですが、それ以外の点でもデメリットはあります。具体的に言うと、高コストであることや体験の質にばらつきが生じることです。
この章ではこの2点のデメリットについて解説します。
高コスト
VR教育のデメリットとしてあげられる点が、コストが高くなりがちであることです。前述したように、VRコンテンツをオーダーメイドで製作しようとすると高い費用が掛かりますが、市場に出回っている量産型のコンテンツも決して安価ではありません。また、VRコンテンツは学びたいものによって変えなければならないことから、1人につき複数購入する必要がある場合が多いです。
ヘッドセットについては、1人につき1台あれば十分ですが、決して安価とは言えないことはVRコンテンツと同様です。
従って、全ての教育機関や学習者に対して、平等にVRでの体験を供給することはとても困難になりますし、1人辺りが体験できる量についても限界が出てきてしまいます。
体験の質のばらつき
VRコンテンツは食品や医薬品のように、確固たる何らかの基準があるだけではありません。また、どのような商品を作るべき、というような内容に関するガイドラインもありません。従って、VRコンテンツの品質や使用した時の学習効果は製作者や制作会社のスキルや発想に左右されます。
同じだけの額を投資したのに、同じだけのリターンが見込めないため、学習者やVRコンテンツを導入しようとしている機関は、どのようなVRコンテンツを選べば良いか目利きする必要があります。
従って普段からVRコンテンツに関する体験に触れて情報を集めたり、事前に無料体験版などを体験してVRコンテンツの質を見極めておく、などのことが求められます。
VR教育の事例

VR教育はもう既に導入されて効果を発揮している事例もあります。具体的に言うと医療の現場や言語学習でVR教育が導入されています。
この記事ではこの2つの事例を紹介しますが、他にもVR教育の導入によって生産性が飛躍的に向上することが期待されている業界は多くあります。
特にVRはデジタルツインとの相性が良いことから、建築業などの製造現場において、技術の継承にVR教育が導入されることにより、職人の育成効率が上がることが期待されています。
医療教育
医療の現場においても実務経験を積むことが非常に大切ですが、その実務は生きている人間に対して行わなければならないため、慎重に実施しなければなりません。一歩間違えれば命を危険にさらしたり後遺症を残すことにもなりかねない、医療行為であれば猶更です。
従って、これらの手術のシミレーションにVRが活用されている事例もあります。本物の人間ではとても医大を卒業したばかりの若手には任せられなかった大手術を仮想空間で再現し、経験を積ませることも可能になります。
また、仮想空間上に再現されたものとはいえ内臓や骨の構造を視覚的に尚且つ自分の手で触れながら学習することができるため、解剖学の学習もより効率的に行うことが可能になります。
言語学習
言語学習は市販の書籍や教育用のWebアプリケーションでもある程度の効果がありますが、それらだけではアウトプット、つまり自分で英語の文章を考えて話す現場の経験が圧倒的に不足してしまいます。
しかしVR教育を言語学習に導入することで、言語学習プラットフォームを仮想空間上に作成し、Webで繋がった世界中の人と交流し、自分が学んだ言語が通じるかを試すことができます。
また、会話だけでなく仮想空間上とはいえ実際の外国人と対話することにより、その国のマナーや価値観、社会規範なども学ぶことができます。いくらグローバル化が進んだ現代社会の日本においても、外国人と話す現場はそこまで多くありませんが、仮想空間上であれば比較的簡単に作ることができます。
VR教育の未来展望:メタバース教育
VR教育の今後の展望として、これからはVRを活用したメタバース上の学校や教育コミュニティが増加すると予想されます。このようにすることで、通学が難しい場所に居住する人でも教育を受けることが可能になりますし、従来のように校舎を建設する必要もなくなることから、教育費を下げることも可能になります。
それこそ、VR教育の事例の言語学習の章でも取り上げたように、世界中のあらゆる人間が集まる学習コミュニティを作ることもできるようになるため、自宅のリビングや自室から留学をすることも可能になります。
このように、従来の学校教育とは全く異なる、今までは考えられなかった学習の形をVR教育は提供することも夢ではありません。
VR教育のまとめ
VR教育は前述したように良いことばかりではなく、高コストであるなどのデメリットもいくつか存在しています。しかし、そのデメリットを補って余りあるメリットがあることも忘れてはいけません。
その証拠に、既に医療などの現場では導入されていますし、土木業や建築業など、これから導入が期待される業界も沢山あります。また、前述したように自宅からの留学も夢ではなくなるなど、そのポテンシャルは非常に大きいです。
このような話を聞いて、自社でもVR教育を導入、若しくはVR教育のビジネスに参集しようと考えた方もいるかもしれません。
そのような方でもし質問や疑問点がある方は株式会社Jiteraに問い合わせをすることをお勧めします。株式会社JiteraはITとコンサルタントに関する知見が豊富です。従って、どのようにVR教育を活用すれば良いのか、どのようにVR教育のビジネスに参入すれば良いかなどをアドバイスすることが可能です。