プライム案件とは、受注元となる企業から直接に受注した開発案件で元請けのことです。
直接開発案件を受けられるため、高い単価となる傾向にあります。
しかし、具体的にプライム案件はどのような業務内容になるのか、理解していないエンジニアは多いのではないでしょうか。
この記事では、プライム案件を請け負うメリットやデメリットについて詳しく解説していきます。
![Nao Yanagisawa](https://xs691486.xsrv.jp/wp-content/themes/JITERA/images/director-nao-1.png)
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
プライム案件とは?
プライム案件とは、大手企業が自社のシステム開発や事業拡大のために発注する、大規模かつ高収益のITプロジェクトのことを指します。
プライム案件を受注する企業を、プライムベンダーと呼びます。プライムベンダーは、大手企業から直接発注を受け、下請け企業と協力しながらプロジェクトを推進していきます。
プライム案件の金額規模は、おおよそ1,000万円〜と大規模です。期間も1年から5年程度の長期にわたることがほとんどです。
大手企業にとって、プライム案件は自社の事業戦略上、最重要課題の一つです。そのため、通常のIT案件よりも予算・リソースを集中投入して推進する傾向があります。
一方でプライムベンダーには、高度な技術力や豊富な人材が要求されます。信頼性や生産性を確保しつつ、大規模プロジェクトを忠実に進行できなければ、大手企業の期待に応えることは難しいです。
プライム案件におけるエンジニアの仕事内容
プライム案件において、エンジニアは次のようにさまざまな仕事内容に携わる必要があります。
- システム設計
- スケジュール・進捗管理
- システムの最終チェック
システム設計
プライム案件では、クライアントとの綿密なコミュニケーションをとることでシステムの要件を明確化することが特徴です。
打合せを何度も繰り返すことでクライアントが求めていることを理解して、システムに必要な機能や性能を定義します。
また、要件定義に基づいて多様なシステム設計への対応が必要です。Webアプリやハイブリッドアプリ、基盤システムやネイティブアプリなどが含まれます。
専門知識や経験などを活かしてそれぞれのシステムに必要な要件を満たす設計の立案を行うことが一般的です。
システム設計が完了したあとも、開発現場担当者が設計意図を性格に理解できるように伝達を行うことが求められます。
スケジュール・進捗管理
プライム・コントラクタは、発注先のシステム会社と頻繁に連絡をとることでプロジェクトを円滑に進めることが必要です。進捗状況を常に把握することで、システム会社がミスをした場合でも対応しなければいけません。
発注先のシステム会社との間で遅延が発生した場合も、プライム・コントラクタの責任となります。
そのため、発注先のシステム会社が作業をしている進捗状況をリアルタイムで把握することで、問題が発生した場合でもスピーディーに対応可能です。
このように、プライム案件においてエンジニアはマネジメント能力が求められます。
システムの最終チェック
プライム・コントラクタは、システムの要件定義やスケジュール管理に加えて最終的なシステムチェックまで必要です。
開発現場の担当者からの報告を鵜呑みにするのではなく、最終的にプライム・コントラクタがチェックしなければいけません。
システム全体をくまなくチェックする必要があることから、高度な専門知識や経験が求められます。
マネジメント業務が重視されがちですが、最終的にシステムチェックが必要になるため日頃からスキル向上を怠らないようにしましょう。
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プライム案件のメリット・デメリット
プライム案件のメリット・デメリットについて解説していきます。
メリット
メリット | 内容 |
大規模案件への対応 | 大規模なプロジェクトを請け負える |
技術力・信頼性向上 | 技術力と信頼性をアピールできる |
高収益の案件獲得 | 高収益の案件を獲得できる |
企業ブランド力の向上 | 企業のブランド力が向上する |
大手企業との取引 | 大手企業と直接取引できる |
大規模プロジェクトを請け負える
プライム案件は、通常100万円以上の規模で、長期間にわたる大規模プロジェクトです。こうした大型案件を請け負うことができるため、取引高や売上高の大幅な向上が期待できます。さらに、大規模案件を忠実に納品できる実績が蓄積されていくことで、今後の事業拡大につながっていきます。
プライム案件の開発規模は、最大で数百億円に及ぶケースも少なくありません。自社だけで対応しきれない部分は、パートナー企業と連携することで補完しますが、それでも多額の資金と技術者を大量投入する必要があります。
しかし、大規模プロジェクトを成功させて実績を積み重ねていけば、自社の信用力や社会的注目度が高まります。取引金融機関からの融資力の強化や、株式上場、有能な人材の獲得といったメリットにつながる可能性が広がります。
プライム案件は、事業拡大や企業成長に欠かせないチャンスであると同時に、その規模ゆえに大きなリスクもあります。十分な体制を構築し、慎重に判断していくことが重要です。
技術力・信頼性のアピールになる
プライム案件では、高度な技術力が必要とされます。こうした大規模プロジェクトを成功させることができれば、自社の技術力や信頼性の高さを広くアピールすることが可能です。優れた人材の獲得にも有利に働くでしょう。
プライム案件の開発技術は、AI、IoT、ビッグデータなど最新・最先端分野が多くを占めます。これらの分野で実績を積むことができれば、独自技術の獲得や特許取得にもつながる可能性があります。
さらに、プライム案件は高い生産性と品質が要求される一方、自社技術者向けの学習機会にもなります。最新技術を学び実践できる環境が整うため、技術者個人のスキルアップやモチベーション向上にも寄与します。
自社の技術力向上や豊富な人材は、今後の事業拡大に不可欠な経営資源です。プライム案件こそが、成長の原動力となる大きなチャンスなのです。
高収益の案件を獲得できる
プライム案件は大規模プロジェクトのため、案件単価や総取引規模が大きく設定されています。納品することができれば、相応の高収益が得られるため、自社の業績や資金力を大きく拡大する絶好のチャンスです。ただし、場合によっては利益率が想定を下回るリスクも含まれている点にも注意が必要です。
プライム案件の利益率は、5~15%程度が一般的ですが、自社が果たす役割や業務内容によって異なります。例えば、SESなど上流工程を中心とする場合、人件費主体の構造上利益率は比較的高い傾向にあります。
一方で設計・開発・テストといった下流工程を受注するケースでは、多額の初期コスト負担が発生することが多いため利益率は下がりやすいです。ただし、プロジェクト完了時に支払われる大型の委託料収入は期待できます。
企業ブランド力の向上が期待できる
プライム案件で実績を積み重ねることで、業界や社会的に自社の存在感や信頼感が高まっていきます。大手顧客を確保することで知名度と信用力が向上し、会社のブランドイメージが大きく刷新される効果が期待できます。
プライム案件を手掛けることで。メディアへの登場機会が増え、自社のPR効果も期待できます。実績企業としてテレビや新聞、ネットメディアなどで取り上げられれば、企業やサービスの認知度アップにつながります。
さらに、仕事を探している求職者からの注目度も高まり、優秀な人材の獲得に有利な環境を得ることができます。会社の知名度と信頼感が向上すれば、応募者数や採用成約率を高める効果があります。
大手企業と直接取引ができる
プライム案件は、大手企業から直接発注を受ける大規模プロジェクトですから、大手企業との直接的な取引が実現します。
これは、自社にとって非常に有利なポジションを手に入れることができるという点で、大きなメリットがあります。なぜなら、大手企業は優良な顧客である一方、普段はなかなか取引きを開始することが難しい立場にあるためです。
しかし、一度プライム案件で実績を積めば、大手企業のパートナー企業としての地位を得ることができます。その企業グループとの取引が継続、あるいは拡大する可能性も出てきます。
加えて、大手企業での実績や人脈は、新規顧客獲得においても有効に機能します。自社のPR材料となると同時に、口コミを通じて他の大手企業からの商談の機会を得られるケースも少なくありません。
デメリット
デメリット | 内容 |
案件獲得競争の激化 | 案件を獲得する競争が激しい |
大企業の要求水準 | 大企業の要求に応える必要がある |
プロジェクトのリスク | プロジェクトのリスクが高い |
多額の資金と人材投入 | 多額の資金と人材を投入しないといけない |
利益率の低下 | 利益率が低下する可能性がある |
案件獲得競争が激しい
プライム案件は収益性の高さから、受注を目指すIT企業の関心がとても高いです。必然的に獲得競争が激化しており、単純な提案書の提出だけでは難しいのが現実です。戦略的な営業展開や人脈構築が欠かせません。
プライム案件の公募は、一般的に大手企業のホームページや各種業界メディアで公表されます。しかし、実際には人脈や営業力で事前に内定を取り付けているケースが多数を占めます。公募期間中は、提案書やプレゼンテーション対応といった形だけの流れになることも少なくありません。
したがってプライム案件獲得には、平時からの戦略的マーケティングと営業活動が欠かせません。単発的な営業では難しく、継続的な信頼の構築をしていくことこそが大切です。
大手企業の要求に応える品質・納期を確保しなければならない
大手企業の要求水準は高く、納期の遅れや品質の低下も許容度が低いです。プロジェクトを遂行するためには、高い技術力はもちろん、リスク管理能力が問われます。予期せぬ要件変更などへの対応力が求められます。
プライム案件では、開発生産性と品質の数値目標が設定されており、これを達成できなければペナルティが科されることも少なくありません。開発スピードの遅れはもちろんのこと、セキュリティ事故や大規模障害を起こした場合の補償条項も契約時に盛り込まれるのが通常です。
したがって、プライム案件推進にあたっては、過度なコスト削減や納期短縮よりも、品質と安定稼働の確保を優先させる考え方が重要です。大手企業との契約は利益を生み出す一方で、契約違反のリスクも併せ持つことを肝に銘じておく必要があるでしょう。
大規模プロジェクトのためリスクも大きい
プライム案件は、多額の初期投資と長期間のプロジェクト期間が特有です。予算オーバーや工程遅延といったリスクが現実化すると、計画どおりの収益を達成できなくなります。万が一中断や契約解除に至れば、投資の回収も危うくなる大きなリスクがあるといえます。
加えて近年は、開発生産性よりも品質と安定稼働が重視される傾向があります。期限に遅れ気味だったとしても、機能面での品質低下やセキュリティ事故を起こすリスクの方が大きくなっています。
プライム案件では、予期せぬ要件変更や作業量の増大が多く、リスク発生時のコントロールが難しい側面があります。予期せぬ要件変更や作業量増加への対応力不足が、逆に新たなリスクを生むことのないよう細心の注意が必要不可欠です。
人材や資金を大量に投入しなければならない
プライム案件を請け負うためには、大量の人材と資金を準備する必要があります。特に、ベテランの管理職や高スキル技術者を多数配置できなければ、要求仕様を確実に実現することは難しいでしょう。余力のない経営体制ではリスクも高くなります。
プライム案件の規模感から、導入が求められる最新技術への対応力が問われます。自社に保有しない技術やノウハウを補うため、優秀な人材採用や外部リソースの活用が欠かせません。そのためのコストは決して少なくありません。
加えて、万が一のリスク発生時に立て直しができるだけの体力が必要です。プロジェクトを完了するための、十分な人員と資金、さらに余裕をもった計画を立てる必要があるでしょう。
利益率が低くなる可能性がある
プライム案件では、大型の取引規模を得られる反面、利益率が低く抑えられるケースが少なくありません。特に入札形式で価格競争が激しい案件ほど、受注単価を抑えざるを得ません。
また、大手顧客への対応力強化や高スキル人材の大量投入といった初期コスト負担も利益の圧迫要因となりえます。要件変更に伴う追加開発の発生時はさらに利益率が低下するリスクもあります。
ただし、プライム案件のメリットである取引拡大や技術力向上を踏まえれば、今回の利益率はある程度我慢する価値があると捉えることもできます。むしろ将来の成長戦略を優先し、初期投資としてとらえる視点も重要でしょう。
利益率が大きく下がった場合、プロジェクト自体が継続困難に陥る可能性もあります。しかしその一方で、利益率をある程度割り引いて獲得した実績と人材が、次なる案件獲得の要素となる側面も大いにあることを認識する必要があります。
プライム案件を獲得するためのコツ
プライム案件を受け取るためには、依頼元の企業と交渉や取引が必要です。さらに、プロジェクトの最終チェックが求められることから高いスキルが求められます。
上流工程でのマネジメントスキルを上げる
プライム案件を請け負うと、営業から設計などの上流工程をする機会が多くなります。そのため、上流工程でのマネジメントスキルが高ければ案件を受注する可能性が高くなるでしょう。
要件定義や計画立案、定義などの能力を磨くことでシステム開発の初期段階から対応できるようになります。
直接クライアントとのやりとりが多くなるため開発のスキルだけが高くても、受注できる機会は限られてしまいます。
そのため、上流工程でのマネジメントスキルを高めるようにしましょう。
業界での信頼と実績を築く
プライム案件は営業や企画、設計、開発など一貫して対応が求められるため、業界での信頼と実績が求められます。
業界全体的な課題やニーズを深く理解したうえで、業界に特化したソリューションを提供することで、よりクライアントが求めているシステムの提案をしやすくなるでしょう。
業界における課題を把握することで、解決型営業が可能となりプライム案件を受注できる可能性が高まります。
直接アプローチ
プライム案件はクライアントから直接アプローチされることが特徴であるため、営業力が求められます。
営業では相手のニーズをつかむことが重要です。クライアントの問題点を把握することで、解決できる方法を提案できるようにしましょう。
提案内容として、課題解決に必要な能力や実績があることを示すことが重要です。
プライム案件を獲得するためには、高い営業力や提案力をもって直接アプローチすることが求められます。
認証や資格の取得
プライム案件を受注するためには、即戦力となる能力が求められます。
実務経験以外に、実用的な認証や資格を取得することで、十分な能力があることをクライアントに伝えられるでしょう。
例えば、応用情報技術者をはじめとする技術面に特化した資格のほかに、プロジェクトマネージャー試験やデータベーススペシャリスト試験などのマネジメント、企画、設計などに関連した資格も有効です。
プライム案件を受注する上で気をつけること
プライム案件を獲得できる企業に共通する特徴は、大規模プロジェクトを支える高度な技術力と信頼性です。さらに大手企業の要求変化に対応可能な人材と体制が不可欠です。
高い技術力を持っているか
プライム案件では最新・先端分野をはじめ、高度な専門スキルが求められます。自社単独で培った技術とノウハウが強みとなります。
例えばAI、ロボティクス、ビッグデータ、ブロックチェーンといった新技術への対応力が重要視されます。単なる業務知識の習得だけでなく、先進的な開発実績があって始めて大手企業の信頼を獲得できます。
また、汎用性の高い基盤技術を有効活用し、開発生産性と品質の向上を両立させることもプラス材料です。自社ならではの効率的な開発手法やノウハウを武器に、コストパフォーマンスとスピード感をアピールしましょう。
プライム案件獲得には「自社技術の磨き上げ」が欠かせません。長期的な人材育成こそ、持続的な競争力の確立につながります。
大規模プロジェクトを管理できる体制があるか
プライム案件を運営していくためには、数百人規模の人員と技術管理能力が求められます。的確なリスク管理のもと、品質とスケジュールを両立させる総合力が問われます。
大規模プロジェクトの管理には、高度なスキルをもつ管理職の存在が欠かせません。技術者視点だけでなく、ビジネス側面からの業務管理能力が求められるため、豊富な業務経験を積んだ人材の配置が望まれます。
体制面では、プロジェクト関連情報をリアルタイムに共有・活用できる場を整備することも重要です。オンラインツールの活用やキックオフミーティングの実施などを通じて、体制内での密な連携を推進しましょう。
顧客ニーズに対応可能な人材を多く抱えているか
プライム案件では要件変更が頻発する一方、納期の遅れは許容されません。多様な案件に柔軟に対応できる豊富な人材と、案件に応じた最適な体制を構築する力が必要です。
プライム案件に対応できる人材には、高度な技術力に加えて柔軟な発想力が求められます。顧客との密なコミュニケーションを通じた要件定義や、独自の問題解決力が不可欠です。
体制構築では、保有人材だけでなく必要な人材を補完できる教育プログラムや、外部リソース活用の仕組みづくりが大切です。要件変更に対してスピーディーに対応できる強固な体制を整えることが重要です。
プライム案件のまとめ
今回この記事では、プライム案件の基本的な定義からメリット・デメリット、プライムベンダーの役割、受注するための企業の要件など、初心者向けに「プライム案件」について詳しく解説してきました。
プライム案件は大手企業のITプロジェクトを一次請けで受注する大規模案件です。企業にとっては技術力・信頼性を高める絶好のチャンスである反面、案件獲得競争や運営リスクも大きく、慎重な判断が必要です。
プライムベンダーであるためには高度な人材スキル、技術力、運営ノウハウが必須です。最大の武器は大手顧客との人脈や営業力。下請けと連携しながら要件変更にも柔軟に対応できる体制が求められます。
プライム案件は厳しい面もありますが、企業成長に欠かせない大きなチャンスでもあります。今一度自社に求められる要件と課題を確認し、強みを生かしていくことが重要です。
ご不明点や具体的なご相談がある方は、株式会社Jiteraにお問い合わせください。実績豊富なカスタマーサクセス部がプライム案件に特化したアドバイスをいたします。