アバター生成AIは単なる技術的好奇心の対象を超え、ビジネスや日常生活に実質的な価値をもたらす重要なツールとなっています。本記事では、この革新的な技術を支える6つの主要なAIツールを紹介し、それらの活用事例を探ることで、アバター生成AIの現在と未来の可能性を探ります。
アバター生成AIといっても色んな種類があり、それぞれが独自の特徴と応用分野を持っています。今回は、特に注目度の高い、①リップシンク生成AI、②画像生成AI、③ディープフェイク生成AIの3つの種類に焦点を当てて紹介していきます。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
リップシンク生成AIサービス
リップシンク生成AIとは、自分の画像、または動画を学習させて文字を入力すると、アバターが喋ってくれるサービスになります。まるでその人物が実際に話しているかのような、自然で滑らかな映像が作り出されます。
今回は4つのサービスを紹介します。
① HeyGen
HeyGenは、アバター生成AIサービスの中でも特に活用されているサービスの一つです。
このサービスの特徴は、わずか2〜5分間の自身の動画を提供するだけで、驚くほど品質の良いAIアバターを作成できる点にあります。
一度学習が完了すると、テキストを入力するだけで、AIアバターが自然な口の動きと表情で話す動画を生成します。
このリップシンク技術の精度は非常に高く、まるで本人が実際に話しているかのような錯覚を覚えるほどです。アバターの身振りや仕草も学習してくれるので、生き生きとしたプレゼンテーションが可能になります。
HeyGenは40か国語に対応しており、インバウンドや海外展開する際に使用されるケースも増えています。
項目 | 内容 |
運営会社 | 株式会社Walkers |
料金 | Creator:月額$29~ Business:月額$80~ Enterprise:お問い合わせ |
特徴 |
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② Digen.AI
Digen.AIもHeyGenと同じく、自身の動画を学習させることで、AIアバターを作成することができます。
HeyGenとの違いとしては、比較的安価に使うことができる点です。
ただし、学習時間がHeyGenよりも掛かってしまうデメリットがあります。
項目 | 内容 |
運営会社 | AIBridge Lab |
料金 | Free:月額$0 Creator:月額$9.9 Pro:月額$9.919.9 |
特徴 |
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③ D-iD
D-iDは、画像の人物を喋らせることができるリップシンク生成AIです。
画像のため、あらかじめ自分の喋っている動画を用意しなくてよく、手軽にできる点がメリットになります。
価格も良心的です。ただし、声のデータを学習させることはできないので、声はD-iDのテンプレートボイスを使用するか、ElevenLabsなどの音声生成AIを使用する必要があります。
また、HeyGenとDigen.AIはリアルな人物しかできませんが、D-iDはイラスト・アニメタッチのキャラクターも喋らせることができます。
項目 | 内容 |
運営会社 | D-iD |
料金 | トライアル:月額0円 Lite:月額700円~ Pro:月額2,400円~ Advanced:月額16,200円~ Enterprise:お問い合わせ |
特徴 |
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④ kn1ght
kn1ghtは、日本発の革新的なアバター生成AIサービスです。このプラットフォームの最大の特徴は、キャラクターの画像を入力テキストに合わせてリップシンクさせる点です。
kn1ghtの技術は、Live2Dに似た動きを実現しており、音声に合わせてキャラクターが自然に動作します。これにより、静止画のキャラクターに生命を吹き込み、より魅力的でインタラクティブなプレゼンテーションや動画コンテンツの作成が可能となります。
さらに注目すべきは、kn1ghtが開発中の”Kn1ght Meet”というオンラインミーティングサービスです。この新サービスは、AIアバター技術をビジネスコミュニケーションに直接統合することを目指しています。
今後が非常に楽しみなサービスです。
項目 | 内容 |
運営会社 | Qrow Pte. Ltd. |
料金 | フリー:月額0円 ライト:月額1,200円 スタンダード:月額 2,900円 プレミアム:月額 4,900円 |
特徴 |
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画像生成AIサービス
次に紹介するのは、画像生成AI「Midjourney」です。
Midjourneyの機能の一つである、「character reference」(キャラクターリファレンス)を使用することで、アバターの顔や服などの特徴を固定し、複数の同キャラクターの画像を作成することができます。
Midjourneyの兄弟分であるNijijourneyを使用すればイラスト・アニメタッチのキャラクターを作成することも可能です。
リップシンク生成AIのように喋らせることはできませんが、SNSで自分のアバターを運用させたい場合は役に立ちます。
※Nijijourneyのcrefを使ってキャラクターの特徴を固定して生成したものをまとめたもの
従来はキャラクターの特徴を学習させるには、StableDiffusionのLoRAのように大量の画像を学習させる必要があり大変手間だったのですが、Midjourneyは学習を必要とせず誰でも簡単に使うことができます。
さらにMidjourneyで作った画像を動画生成AIで動かすことで、キャラクターが現実にいるかのような動画を作成することができます。
Nijijourneyで作成したイラスト
動画生成AIのLuma Draem Machineで生成した動画
ディープフェイク生成AIサービス
次に紹介するのが、ディープフェイク生成AIの「Akool」です。
Akoolは画像、または動画の人物の顔を他の顔に入れ替えることができるサービスです。
かなり驚異的な性能で、交換した顔が見分けのつかないくらい違和感のない動画を作成することができます。
ただし、簡単に誰でも使用できるようになった反面、悪用されるリスクもあり、使用には注意が必要です。
実際に使用した例
AIアバターを活用するメリット
最近では、これらのサービスを使って個人や企業がAIアバターを活用している事例が多くでてきています。AIアバターを使うメリットとデメリットを紹介します。
メリット
コスト削減: 実際の俳優やモデルを起用するよりも、制作・運用コストを大幅に削減できます。
時間効率: コンテンツの制作や更新が迅速に行えるため、時間の節約になります。
柔軟性: 24時間365日稼働可能で、多言語対応や様々なシチュエーションに適応できます。
スケーラビリティ: 同時に多数の顧客や視聴者と対話することが可能です。
デメリット
人間味の欠如: 現時点では、完全に人間らしい温かみや感情を表現するのが難しい場合があります。
技術的制限: 特定の状況や複雑な対話において、AIの対応が不自然になる可能性があります。
倫理的懸念: 個人のアイデンティティや肖像権に関する問題が生じる可能性があります。
受容性の問題: 一部のユーザーや顧客が、AIアバターとの対話に抵抗を感じる可能性があります。
これらのメリットとデメリットを考慮しながら、各企業や組織は自身のニーズや目的に合わせてAIアバターの活用を検討する必要があります。
アバター生成AIの活用事例
ここまで、リップシンク生成、画像生成、ディープフェイク生成の3種類のサービスを紹介してきました。この章では、それらのアバター生成AIサービスが実際にどんな場面で活用されているのか紹介していきます。
SNS運用
SNS上でディープフェイク生成AIを活用しているユーザーが増加しています。
SNSでは、より魅力的な外見を持つアカウントがフォロワーを獲得しやすい傾向があることから、この技術はアカウント育成の戦略として注目されています。
一方、Xやインスタグラムでは、MidjourneyやStable Diffusion、ディープフェイクで作成されたAIアバターが、実在する人物のように活動しているアカウントがあります。
これらのAIアバターの中には、大きな影響力を持つものも現れており、人間とAIの境界が曖昧になりつつあることを示しています。
この現象は、AI技術の急速な進歩により、生成されるコンテンツの質が飛躍的に向上したことから生まれた新しいSNS運用の仕方だと考えられます。
AIアバターへの注目度の高まりは、最近開催された世界規模のミスAIコンテストからも明らかです。
※世界中のAIインフルエンサーから世界一の美女を決めるコンテスト
こうした動向は、デジタルアイデンティティの概念を根本から変える可能性を秘めており、オンラインコミュニケーションの未来に大きな影響を与えると考えられます。
自社サービスの海外展開、インバウンド
HeyGenは、言語の壁を超えるAIアバター技術として注目を集めています。
このサービスを活用することで、ユーザーは自身のAIアバターを通じて、英語をはじめとする外国語で流暢に話すことが可能になります。
特筆すべきは、この技術が企業のグローバルコミュニケーションに革新をもたらしている点です。
例えば、英語に不慣れな経営者であっても、HeyGenを利用することで、国際的なプレゼンテーションや投資家向け説明会を自信を持って行うことができます。
具体的な活用事例として、スターティアホールディングス株式会社が挙げられます。同社は、HeyGenの技術を採用し、海外投資家向けのIRサービスを展開しています。
これにより、言語の障壁を克服し、より効果的な国際的なコミュニケーションを実現しています。
このようなニーズの高さから、HeyGenの技術を活用した受託サービスを提供する企業が急増しています。
これらの企業は、クライアントのニーズに合わせてカスタマイズされたAIアバターソリューションを提供し、グローバルビジネスの効率化と質の向上に貢献しています。
まとめ
アバター生成AIのツールの紹介と活用方法について紹介してきました。いかがだったでしょうか?
この技術の進歩は目覚ましく、ビジネスや日常生活に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。リップシンク生成、画像から動画生成、ディープフェイク生成など、様々な種類のアバター生成AIが登場し、それぞれが独自の強みを持っています。
これらのツールを活用することで、企業は顧客とのコミュニケーションを革新し、マーケティングやブランディングの新たな地平を開いています。
しかし、この技術の普及には課題も存在します。倫理的な懸念や、人間らしさの表現、技術的な制限など、克服すべき問題も少なくありません。また、AIアバターの使用に対する社会の受容性も、今後の発展に大きく影響するでしょう。
今後、アバター生成AIはさらに進化し、より自然で多機能なアバターが生み出されていくことでしょう。同時に、この技術を適切に活用し、人間とAIの共存を図っていくことが重要になります。
今後も、この分野の発展に注目し、新たな可能性を探求していきましょう。