近年、ビジネスへのAI活用が活発化しています。
AIモデルとそれを支える機械学習(ML)技術の発展は、世界中に新たな変革をもたらしたと言えるでしょう。
様々なAI活用方法が日々提案されており、人間とコンピュータの協業が新たなビジネスチャンスを生んでいます。
商業ビルの監視カメラには不審者を検知するAIが搭載され、スーパーのレジは日々顧客の消費行動を分析し続けています。
文章解析AIも発展し、今ではインターネット上に投稿された感想を読み込んだコンピュータが、今後の商品展開予測を自動で分析してくれます。
医療や金融の分野にも広くAI技術の波が波及し、テクノロジーの進化と応用範囲の広がりは日々加速しています。
そんな中で注目されるのが、自社のビジネスニーズに最適化した専用AIシステムとその設計を簡便化するAutoML技術です。
この記事では、初心者でも簡単にAIモデルを作成するためのAutoMLと、その代表的なツールの1つであるGoogle Cloud Vertex AIについて紹介したいと思います。
国立の情報系大学院で情報工学、主にUI/UXを学んだあと、NTT子会社に勤務。 退社後はフリーランスとして、中小規模事業者様のIT化、業務自動化を支援しています。 DX推進の提案やPythonなどを用いた専用RPAツール開発のほか、市営動物園の周年企画などにもITエンジニアとして参画させていただきました。
Vertex AI(旧Google Cloud AutoML)の基本

Vertex AI AutoML(旧Google Cloud AutoML)は、Googleが提供する「専門的な機械学習の知識がない初学者でも、自分の目的にチューニングした専用のAIを作成できるカスタムAIモデル作成ツール」です。
とはいえ、AutoMLやVertex AI自体に馴染みがない方も多いでしょう。
まずは、現在のビジネスにおけるAI事情にとって不可欠となった「AutoML」について少し噛み砕いて解説します。
AutoMLとは
AutoMLとは、Automated Machine Learningの略称で、日本語にすると「機械学習(ML)自動化」となります。
その名前の通り、機械学習(ML)に必要な様々なタスクを自動化し、平易にカスタムAIを作れるツールです。
ところで、近年多くのビジネス産業においてAIの活用が急速に進んでいることはご存知でしょうか。
様々な形でのAI活用方法が開拓されており、これまでにない変革が生まれています。
- ChatGPTなどの生成AIと業務チャットの連携
- 監視カメラと顔認証の連携
- 社内のビッグデータを活用したデータ駆動の経営予測
その活用幅と発展は、分野も場所も問わず目覚ましい進歩を遂げています。
例えば、
- センサーに映った製品の内、規格外品だけを取り除く
- 施設内で、ターゲットとなる顧客層の動線を確認する
- 商品に寄せられた感想やレビューから、有用なコメントを整理して集約する
- これまでに集積したビッグデータと市場動向の相関性から、意味のあるデータ群を見つけ出し、今後のビジネスリスクを予測する
など、見えないところで専用にチューニングされたAIがビジネスを支えています。
そして、やはり活用するならば自社の課題に最適化された専用のAIモデルがほしいところです。
この専用AIを作る際に必要となるのが、機械学習という工程です。
従来の一般的なアプリ開発では、人間が機械に一から解決方法(アルゴリズム)やパターンを教え込む必要がありました。
ですが、近年は与えられた膨大なデータや過去の解決パターンから、自動的(機械的)にAI自身が学習し、自ら解決方法を探し出してくれるようになりました。
この学習方法を、機械学習(ML:Machine Learning)と呼びます。
ネット上にビッグデータが飛び交い、コンピュータの発展が人力では追いつかなくなっている昨今、AIが自力で解決方法を学習してくれるML技術は非常に重要な技術となっています。
ですが、このMLを自社の課題に合わせて調整するのは非常に大変な作業です。
専用のMLモデルの設計には多くのプロセスが必要で、かなり大まかにいっても、
- 解決すべき問題やビジネスモデル仮説の定義
- データの収集と加工・平準化
- 特徴量エンジニアリング
- 分析と結果予測、またはデータセットのチューニング
- 機械学習モデルの生成
- 機械学習モデルに対する解釈性の検証とテスト
- 機械学習モデルの運用
を経てようやく、ビジネスへの活用が可能になります。
各フェーズそれぞれに専門知識と開発時間が必要で、たとえ小規模なAIアプリであってもそのコストは非常に重くなります。
特に「2.データの収集」から「6.AIモデルのテスト」にいたる工程に対してこれまでは、豊富な経験とデータサイエンスの専門的知識を持つ熟練のプロが、多くの労力をかけて設計する必要がありました。
この設計にかかる2~6の工程を肩代わりし、専用AIを初心者でも構築できるように自動化してくれるのがAutoMLツールです。
一般的にAutoMLと呼ばれるツール群は、
- 問題や仮説の定義
- データ収集
- データ加工
- 特徴量のエンジニアリング
- 機械学習モデルの生成
- モデルの運用
といったMLワークフローに関わるタスクを自動化してくれます。
AIモデルの生成を自動化してくれるAutoMLは、次世代のビジネスを支える基盤であり、様々な企業が独自のAutoML製品を開発しています。
例えば、以下のようなAutoMLサービスがあります。
| 運営会社 | ベースAIサービス | 主なAutoML機能 | |
| AutoML(Vertex AIモデル) | Google LLC | Gemini | AI モデルの設計 AutoML Image(画像認識) AutoML VideoAI (動画認識) AutoML Text(テキスト認識) AutoML Translation(翻訳) AutoML Tabula(構造化モデルの構築) |
| Azure Automated ML | Microsoft Corp. | Azure AI | データの分類予測 連続値の回帰予測 時系列データの予測 物体検出などの画像分類 自然言語処理 |
| Watson Studio AutoAI | IBM | IBM Watson | 特徴量エンジニアリング アルゴリズムタイプ選択 分析モデルの構築 ハイパーパラメーター モデルのトレーニング モデルのテストと実行 |
| MatrixFlow | 株式会社MatrixFlow | MatrixFlow | AutoFlow(アルゴリズムとパラメータの自動化) TrendFlow(時系列データ解析) 要因説明(予測値に対する要因の可視化) AIテキストマイニング(日本語文章の解析) |
この中でも、Vertex AI AutoML(旧Google Cloud AutoML)は
- チュートリアル、マニュアル、Tipsが充実している
- 直感的なインタフェース
- Google Cloudを用いた安定したクラウド開発環境
- 各種Googleサービスとの連携
などにより、AI初学者にもとっつきやすい非常に人気の高いAutoMLです。
Vertex AI(旧Google Cloud AutoML)の役割
Vertex AIは、これまでGoogle Cloud Platform(GCP)で提供されていた様々なGoogleのAI技術やITインフラを統合して管理するクラウド型プラットフォームであり、Vertex AI AutoML(旧Google Cloud AutoML)を使えば、Googleの技術力を活用しながら、自分専用に調整したAIを初心者でも簡単に作ることができます。
※GCPで提供されていたGoogle Cloud AutoMLは、2024年3月末で完全にVertex AIへ移行しました。
定番のTensorFlowやpyTorch、生成AIツールなどもサポートしており、もちろんAutoML機能も有しています。
Vertex AIのAutoMLツールを利用すると、複雑な設計やコードの記述を行わず、様々なデータを自社のビジネスに合わせてトレーニングできます。
AI技術の複雑な工程はGoogleが持つテクノロジーに任せ、複雑なインフラやリソースの運用管理はGoogle Cloudに任せることで、低コストで
- AIの運用と活用
- ビッグデータの分析と活用
- データインフラ基盤の構築
- Webサービスやシステムの開発
などのAI活用を実現できます。
つまり、Vertex AIを導入することで初心者でも自社ビジネスへのAIソリューション導入やAIによるDX推進支援を実現できるのです。
Vertex AI AutoMLの主な機能

Vertex AIは、
- 機械学習モデルのトレーニング
- AIアプリの開発
- AIシステムのデプロイ
- AIアプリで使用する大規模言語モデル(LLM)のカスタマイズ
などが行える、総合機械学習(ML)プラットフォームです。
MLのための様々なAI技術を簡単に利用できるプラットフォームで、初心者から熟練者まで、ニーズに合わせて様々な深度のMLやAIアプリ活用を簡単に実現できるツールが用意されています。
Vertex AIは、Google Cloudでこれまで提供されていた既存のMLサービスを1つの環境に統合し、効率的にMLモデルやカスタムAIの構築・設計を管理できます。
この記事では、Vertex AI内のAutoMLツールで活用できる代表的機能
- 画像認識(AutoML Image)と動画認識(AutoML VideoAI )
- ドキュメント、テキスト認識(AutoML Text)
- データの処理や構造モデルの構築(AutoML Tabula)
- テキスト認識・翻訳(AutoML Translation)
を簡単に紹介します。
※もし、AIアプリのスピード開発自体についてご興味がある方は、別の記事で取り扱っていますのでぜひご参照ください。
AutoML Image&AutoML VideoAI
AutoML Imageは画像認識用、AutoML VideoAIは動画認識用のAIモデルを作成するツールです。
以前はGoogle Cloud AutoML Visionとして提供されていたサービスの後継機能です。
自身のニーズに合わせて独自に定義したラベルを使い、画像を分類するようAIモデルに学習させ、性能をテストすることができます。
また、ラベルが定義されていない画像データに対しても、簡単にラベリングできる機能もあるので、初心者でも好きな画像をAIに覚えさせることが可能です。
また、既存のトレーニング済みカスタムモデルを利用することも可能です。
AIモデルのカスタマイズというと、この「画像認識」や「動画認識」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
AutoML imageやAutoML VideoAIで専用にカスタマイズされたAIを使えば、写真やカメラ映像などから目的となるターゲットを見つけ出したり、そのターゲットの行動予測などを的確に分析することができるようになります。
いたるところにカメラが存在する現代日本において、この画像・動画認識は様々なAIによるビジネスチャンスが広がっている注目技術と言えるでしょう。
AutoML Tabula
AutoML Tabula(旧Google Cloud AutoML Tables)は、表などの構造化データから独自のAIモデルを作成するツールです。
- データの処理
- データの判別
- データの整形
- エラーの抽出
なども自動で行ってくれます。
おそらく、AIのビジネス活用という点では最も知名度が高く、様々な分野のビジネスに応用できるツールです。
様々なデータ形式を自動的に判別し処理・整形してくれるため、ひとまず自社の持つビッグデータを経営予測や新サービスの開発に活用したい際はこのツールを使うことになります。
例えば、自社の持つ製品情報と売上データ、社内データをつなげ、モデルに機械学習させることで、今後の市場動向を予測させることができます。
AutoML Text
AutoML Text(旧Google Cloud AutoML Natural Language)は、文章やドキュメントをAIに学習させ、分析するツールです。
カスタムAIモデルで文章などのドキュメントデータを分析し、文章から
- ドキュメントの種類や傾向の分類
- 意味や関連性の分類
- エンティティの識別
- 感情分析
などを分類、評価します。
例えば、X(旧Twitter)やInstagramなどには、日々製品への感想やレビューが投稿されています。
ですが、当然ネット上の感想は雑多な情報ばかりで、ネガティブな感想やポジティブな感想、なんの意味も持たないニュートラルなコメントまで様々な意味が含まれているため、そのままでは使い物になりません。
AutoML Textを使えば、それらのレビューを
- 肯定/否定
- 怒鳴り散らしている/建設的に意見を出している
- 気に入っている/気に入らない
などに自動的に分類し、SNS上のコメントから市場の温度感や反応を分析することができます。
AutoML Translation
AutoML Translation(旧Google Cloud AutoML Translation)は、独自のカスタム翻訳AIのモデルを作成するためのサービスです。
例えば、これまで進出していなかった諸外国にビジネスを展開することを考えてみてください。
こういった外国の市場で活動する際には、しばしば専門用語やビジネスの慣用句に特別な意味合いが付加され、一般的な翻訳ソフトでは使い物にならないケースが頻発します。
当然、人力でリアルタイムに文章を翻訳していく手間が生じ、時間もコストも圧迫されることになるでしょう。
そこで便利なのが、AutoML Translationです。
業務内容に合わせた用語を覚えたAIに翻訳業務を任せられるならば、迅速に市場展開が可能になります。
AutoML Translationで作成したカスタム翻訳モデルは、入力されたクエリ(ビジネス文章やメール内容、マニュアルなど)の結果を、利用者のニーズに特化した文体や用語、形式、言葉遣いで返してくれます。
Vertex AI AutoMLの使い方
Vertex AIのAutoMLは、基本的には
- 集めたデータを登録
- 目的に合わせて学習する
- エンドポイントを作成する
の3ステップで簡単にMLモデルを作ることができます。
とはいえ、細かなやり方は目的によって異なるので、ぜひ一度公式のチュートリアルを参照ください。
Vertex AIのセットアップ
Vertex AIはGoogle Cloud Platform(GCP)上で利用できるサービスのため、Googleにアカウントを登録するだけで基本的なセットアップは完了します。
Googleアカウントを自身のビジネススタイルに合わせて作成し、自身のニーズに合わせたVertexのプラン(または「無料トライアル」)を選び、Googleアカウントでログインしましょう。
ただし、プロジェクトやサービスの要件によっては、標準のセットアップ設定に加えて追加の設定や構成が必要なケースもあります。
例えば、
- クラウドストレージやBigQueryをプロジェクト用に用意する
- 要件に合わせたネットワーク構成の構築
- 活用する外部のサービスやデータベースに合わせた接続情報の設定
- 要件に合わせたSSL設定、暗号化、APIキーの発行などのセキュリティ設定
- アプリケーションの動作監視やログのローテーション設定
など、開発環境は各々のプロジェクト要件に合わせて行いましょう。
プロジェクトの開始からデプロイまで
AutoMLでは、多くの活用方法やニーズに合わせたプロジェクトテンプレートが用意されており、それらに詳しいチュートリアルが付属しています。
ぜひ一度公式のチュートリアル集をご確認ください。
基本的な作業としては、プロジェクトを作成した後、チュートリアルに従って以下の手順でエンドポイントを作成します。
- 事前にデータを収集する
- 解決する課題に向けて、学習用のデータとテスト用のデータを用意します。
- データはGCPのストレージやBigQueryなどに保存しておきます。
- データをデータセットに登録する
- AutoMLで利用するデータをVertex AIのデータセットに登録します。
- 基本的には、はじめに用意したデータを紐づけます。
- トレーニングを実行する
- 必要に応じて、テスト用モデルを使ってテストを行い調整します。
- エンドポイントの作成を行う
- REST APIでリクエストが可能なインスタンスを作成できます。
- バッチ予測を取得する場合もあります。
Vertex AIの価格設定

著作者:macrovector/出典:Freepik
Vertex AIの料金プランは、Google Cloud Platform(GCP)の各サービスと同じく様々な要因でコストが計算される複雑な従量課金制を取っています。
この記事では、Googleが提示している従量課金の一例のみを取り上げますので、あくまでも参考目安と考えてください。
またカスタムトレーニング済みモデルを利用する場合は、マシン構成に応じた課金額になります。
各プランの詳細やカスタムトレーニングのマシン利用料金は、公式の価格表をご参照ください。
また、旧Google Cloud AutoMLを利用されていた場合でも、いくつかの料金形式が変更になっていることに気をつけましょう。
- いくつかの低コストマシンタイプの廃止
- 上記に伴い、0への自動スケーリング(autoScaling.minNodes = 0)を廃止
- トレーニング及び予測の最低利用時間は設定されておらず、30秒ごとに課金額が加算される
- 画像生成などで生成AIを利用する際の料金加算
Vertex AIの料金形態
Vertex AIのAutoMLモデルを利用する際、基本的には以下の3つの処理に対して課金されます。
- モデルのトレーニング
- エンドポイントへのモデルのデプロイ
- モデルを使用した予測
Vertex AutoMLの認識モデルに事前定義されたマシン構成を元にした課金額であり、インスタンスやノードの稼働時間に対する課金になります。
各認識モデルの基本的な料金は以下になります。
※2024年4月現在の価格です。
画像認識
| 処理 | 1 ノード時間あたりの料金(分類) | 1 ノード時間あたりの料金(オブジェクト検出) |
| トレーニング | $3.465 | $3.465 |
| トレーニング(Edge オンデバイス モデル) | $18.00 | $18.00 |
| デプロイとオンライン予測 | $1.375 | $2.002 |
| バッチ予測 | $2.222 | $2.222 |
動画認識
| オペレーション | 1 ノード時間あたりの料金(分類、オブジェクト トラッキング) | 1 ノード時間あたりの料金(動作認識) |
| トレーニング | $3.234 | $3.300 |
| トレーニング(Edge オンデバイス モデル) | $10.78 | $11.00 |
| 予測 | $0.462 | $0.550 |
表データ分析
| オペレーション | 分岐と回帰の1ノード時間あたりの料金 |
| トレーニング | $21.252 |
| 予測 | $0.54 ※40n1-highmem-8でのカスタムトレーニングと同額 |
テキスト(文章)認識
※テキストレコードは最大 1,000 文字までの Unicode 文字のブロック
| オペレーション | 料金 |
| 従来式のデータ アップロード(PDF のみ) | 毎月 1,000 ページまで無料 1,000 ページあたり $1.50 5,000,000 ページを超える場合、1,000 ページあたり $0.60 |
| トレーニング | 1時間あたり$3.30 |
| 予測 | 1時間あたり$0.05 |
| デプロイ | テキスト レコード 1,000 件あたり $5.00 PDF ファイルなどのドキュメント 1,000 ページあたり $25.00(従来式のみ) |
コスト管理のポイント
基本的にトレーニング中も予測中もずっとインスタンスが動き続けるため、管理を怠ると巨額の利用料金が発生します。
個人で利用する場合、こまめに確認しないと払いきれない課金額に積み上がるリスクが有ることには気を付けてください。
- 時間あたりの従量課金で定額ではない
- 低価格なマシン構成が廃止された
- インスタンスの拡張に関するコスト負担がかなり重い
などを考えると、計算すべてを任せるにはあまり個人利用向きとは言えません。
あえて言えば、モニタリングなどのテスト環境が必要で、かつ一回あたりにあまり時間をかけない場合はコスト負担も軽いため、個人でも利用しやすいかなと思います。
逆に企業が利用する場合は、
- 最新のモデルやフレームワークが利用可能
- 大量のデータに対するハイパーパラメータを自動でチューニングしてくれる
- コーディングの手間が削減できる
- MLやAIの管理がクラウドで運用可能
- 社内のエンジニアのレベルに合わせて、どこまで任せるかツールを選択可能
など、労力や管理費を大きく抑えた上で最新AI技術を扱えることが大きな魅力と言えます。
削減できる管理費に釣り合うかどうかを検討したうえで、導入しましょう。
Vertex AI AutoMLの成功事例と応用

著作者:macrovector/出典:Freepik
Vertex AI AutoML(旧Google Cloud AutoML)を使うことで、様々な課題にAIを活用できる可能性があります。
AutoMLは、高い費用対効果と短期間の開発で分野を問わない専用AIを構築できるため、応用幅が非常に広く、まだまだ活用方法の模索が続いています。
自社の課題を洗い出すことで、意外なビジネスソリューションを発見できる可能性が高いです。
例えば、事前に買い物袋の画像をAIに学習させ、商業施設の監視カメラ映像をAIに認識させれば、特定の店の購入客がその後別の店に流れるのかといった動線を可視化できます。
商品感想文をあらかじめ大量に学習させることで、自社の商品について購入客がSNSに投稿したフィードバックから、苦情や建設的な意見、好評な特徴を分類して整理することができます。
AIの活用はまだまだ道半ばです。
今後も発想次第で様々なソリューションが開発されていくことでしょう。
この記事では、いくつかの成功事例について紹介したいと思います。
実際の業界での応用事例
株式会社LIFULL の導入事例

不動産業へ積極的に先端IT技術を掛け合わせて新たなサービスを生み出す不動産テック(リーテック)を推進する株式会社LIFULLは、Vertex AIに物件画像のカテゴリー分類を任せることで大きなコスト削減を実現しました。
同社の不動産サイト「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」には、全国の不動産会社やデベロッパーから物件の画像が一括でアップロードされています。
ですがユーザーに見て貰うためには、その画像が外観なのか、内装なのか、水回りなのかといった「物件の何を映した写真なのか」を整理しなければなりません。
これまでは画像のカテゴリー分類を手作業で行うしかなく、多くの時間と労力がかかるため、すべての物件を整理するのが現実的には厳しい状況でした。
そこで、LIFULLはGoogle Cloud AutoML(現Vertex AI)の導入プロジェクトを開始します。
プロジェクトは、TensorFlowも併用した上で、2週間というごく短期間で検証用の独自モデルを開発し、物件画像の整理業務を自動化しました。
プログラミングの知識がなくとも、高精細な画像分類が行えるAutoMLのメリットが短期間導入の決め手となりました。
これにより写真登録作業のコストが大幅に削減され、物件を探すユーザーは自身のこだわりに応じた物件を写真から検索することができるようになりました。
LIFULLのGoogle Cloud AutoML導入事例記事
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社の導入事例

コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社(CCBJ)では、Googleの優れたML技術との連携を強化しており、Vertex AIとBigQueryを利用して約70万台の自動販売機から送られてくる数十億件のデータレコードの分析をVertex AIで処理しています。
多くの自動販売機がそこかしこに設置されている日本では、同業他社との熾烈な顧客獲得競争が日々行われています。
この競争に打ち勝つためには、「どこに置いた自販機に、どんな商品が、いくらで並んでいるか」が極めて重要となります。
そこで、CCBJではVertex AIとBigQueryを用いて販売予測モデルを作成し、最適な分布と商品展開予測をAIが地図上で分析できる仕組みを開発しました。
日々ダイナミックに変動するKPIを短期間でチューニングできるAIモデルで予測するには、臨機応変に対応できる分析プラットフォームが必要です。
その点で、短期間で何度も試行錯誤を重ねることができるAutoMLは最適なツールでした。
いつ、どこに商品を配置するかという難しい経営戦略の決定を、AutoMLによって実現した予測プラットフォームが支えています。
株式会社SUBARUの導入事例

SUBARUは、同社のカメラシステム「EyeSight」の画像解析にVertex AIを利用しています。
2020年12月にAI開発拠点「SUBARU Lab(スバルラボ)」を開設し、「EyeSight」の安全性をさらに向上させるため、日々AI分析の活用を加速させています。
SUBARU Labでは現在も、EyeSightのカメラで撮影した膨大な映像の解析にVertex AIを活用しており、継続的な交通事故削減の取組みを行っています。
Vertex AIは様々なAI用マネージドサービスが用意されており、クラウドの開発環境によって、1つのモデルに対してハードウェアのリソースを気にせずに多角的かつ自由に実験とトレーニングを行えるのが大きな利点だった。
とエンジニアの大久保氏はVertex AIの利便性を語っています。
AutoMLによるAIの将来性について
AutoMLの誕生によって、ハードルが高かった専用MLモデルを簡単に構築できるようになり、初心者でも専用のカスタムAIアプリを実装できるようになりました。
- AIの普及と利便性の向上による、ビジネスの発展
- AutoMLによって機械学習のハードルが下がり、AIの普及と利便性の向上が期待できます。
- AIの広がりは、より高度な価値を生み出す可能性があります。
- これまで人手不足や規模が大きすぎて人力では達成できなかった課題にも挑戦できるようになります。
- 例えばドローンを使った地域規模のデータ調査や、商業施設内にいる顧客ごとに合わせたカスタムホスピタリティなど。
- AIによる自動化の発展
- AutoML技術は、その後の自己学習の拡張や進化アルゴリズムとの併用も期待されています。
- より高度なモデルや、分野の垣根を超えたデータの流用が発展すれば、MLモデルの品質と精度も向上し、思いもかけなかった応用範囲や新規分野へ手を伸ばすことが期待されています。
- 時系列予測モデルの発展
- AutoMLの発展で、エンジニア以外の人々でも手軽にカスタムAIを利用して、ビッグデータを活用できるようになりました。
- Google自身も、AutoMLによる時系列の詳細予測に期待を募らせています。(外部リンクに飛びます)
- AutoMLは様々なデータをAIに学習させ、様々な人がそれを利用できる契機となりました。
- 経験則からくる判断基準や意思決定ではなく、確固たるデータを基にした追跡可能な将来予測が今後のビジネスの発展を支えていくかもしれません。
- 応用範囲の拡大
- 現状だけでも、医療診断、金融、自然言語解析、リアルタイム動画解析など、多くの分野にAI活用の波が波及しています。
- より多くの範囲にAIのデータ活用が広がれば、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性も大いに期待できます。
AutoMLの発展は、AI活用の裾野を大きく広げたと言えるでしょう。
今後も、発想次第でAIの活用幅は更に広がり、大きく世の中を変えていくことが期待されています。
Vertex AI AutoMLのまとめ

AIのビジネス活用が日々活発化する中、自社のニーズに合わせた専用のカスタムAIを簡単に構築できるAutoMLの存在はこれからも重要になっていきます。
そんな中、Google Cloudが提供するVertex AIのAutoMLツールも、その手軽さや多機能性から多くの企業から支持されています。
ぜひこの機会に、AutoMLによる自社専用AIの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
株式会社Jiteraでは、要件定義を書くだけでAIがビジネスツールを生成するサービスで、よりお客様の事情に沿った専用アプリをスピード開発しています。
柔軟なビジネスツール開発やAIの活用にご興味をお持ちの企業様。
ぜひ一度株式会社Jiteraにご相談ください。
国内実績豊富なエンジニアが、お客様のご事情に合わせた開発提案をさせていただきます。


