基幹システムとは?ERP・業務システムとの違いや種類・目的をわかりやすく解説、おすすめサービスも一覧で紹介!

老朽化した基幹システムの刷新が活発に行われています。何十年もの間稼働した、企業の根幹を支えてきた基幹システムが、いよいよ保守の限界を迎え、クラウドの活用など、新しいテクノロジーに基づいた基幹システムの再構築が盛んです。

しかし、古い基幹システムは何度も継ぎはぎを重ね、肥大化しています。また、古い技術や言語で構築された基幹システムを理解するエンジニアの数も絶対的に不足し、刷新プロジェクトは難航を極めています。しかし、企業活動の中で、基幹システムは欠かせない存在であることは変わっていません。

本記事では、基幹システムとは何かを説明します。また、基幹システムと、そのほかの一般的な業務システムとの違いや、基幹業務を汎用化した製品であるERPについてもご紹介します。

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監修者 sakakibara_writer

コンサルティング業界に20年以上在籍。IT戦略・構想策定など上流系が得意。

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    基幹システムの基本概念

    まずはじめに、基幹システムの定義や重要性、目的を解説していきます。

    基幹システムとは何か?

    基幹システムとは、企業における業務の中核を支える情報システムのことです。具体的には、生産管理や購買管理、販売管理、在庫管理、会計管理などの基本的な業務を処理するシステムの総称です。

    例えば、自動車メーカーであれば、新車の設計から部品の調達、生産、販売に至る業務フロー全体をつないでいるシステムが基幹システムです。このシステムがうまく機能しなければ、新車の開発から販売までの一連のビジネスが成り立ちません。

    つまり基幹システムは、企業の命脈ともいえる極めて重要なシステムなのです。

    基幹システムに含まれる主なシステムを挙げると以下の通りです。

    • 生産管理システム:製造業での工場生産ラインの稼働管理に使用
    • 購買管理システム:調達業務の効率化に使用
    • 販売管理システム:受注業務と売上管理に使用
    • 在庫管理システム:商品の入出庫を管理
    • 会計管理システム:決算業務と経理処理に使用
    • 人事給与システム:人事データと給与計算を管理

    このように、基幹システムは企業内部の多岐にわたる重要な業務を支えているのです。ゆえにシステム障害が起きると業務に多大な影響が出ます。高い信頼性が要求されるシステムといえます。

    基幹システムの目的

    では、なぜ基幹システムはこのように重要視されるのでしょうか。その大きな目的と意義を見ていきましょう。

    業務の効率化

    基幹システムによって、人手で行っていた業務が自動化されます。情報がデジタル化されることで、入力・計算・解析などが高速で正確に実行できるようになります。

    意思決定の支援

    基幹システム上のデータを分析することで、セールスの予測や原価管理、資産運用などの経営判断を支援します。例えば、売上分析から在庫過多かどうか判断できます。

    部門間の連携強化

    基幹システムが部署の領域を超えた業務のつながりを実現します。発注情報や受注情報、販売情報といったデータをリアルタイムに共有できるため、社内のコミュニケーションが円滑になるのです。

    以上の目的を果たすことで、基幹システムは企業に様々なメリットをもたらします。

    業務品質の向上による収益改善、コスト削減による利益率の拡大、迅速な意思決定での先行企業化、社内コミュニケーション効率化による生産性の向上などが、主なメリットです。

    中でも、クラウド型の基幹システムなら導入期間が短く、リスクも少ないため、中小企業を中心に注目されています。クラウド基幹システムを上手く活用することが、企業成長の近道であると言えるでしょう。

    基幹システムとERP、業務システムそれぞれとの違い

    ここでは、基幹システムとERPの違いや、ERPを導入する際のメリットについて、詳しく解説していきます。それぞれの関係は、業務システム>基幹システム>ERPであり、業務システムの一部が基幹システム、基幹システムの一部がERPです。

    項目 業務システム 基幹システム ERP
    概要 業務を効率化したシステム 企業の中核業務を扱うシステム 中核業務を汎用化したシステム
    特徴 特定の業務を効率化 中核業務のプロセスを効率化 中核業務のシステム化における業界ベストプラクティス
    メリット 個別最適化 機能面でのカスタマイズ性 業務効率化と全体最適の両立
    デメリット 関連業務との連結性が弱い 全体最適化しづらい 導入コストと運用コストが高い
    導入事例 さまざま 中小企業、または歴史の古い企業が多い 大企業が多い

    基幹システムとERPの違い

    ERPとは、Enterprise Resource Planningの略で、全社的な経営資源の最適な配分と計画立案を支援するシステムです。

    ERPは元々、特定の企業の基幹システムとして開発されたシステムを、外販できるように汎用化したところから始まった製品が多いです。そのため、ERPに合わせて業務プロセス全体を見直しながら導入することで、業界のベストプラクティスに合わせた業務運用を実現します。特に、ERPは周辺業務とのシームレスな連携に強い傾向があります。

    例えば、受注情報と生産指示、原材料発注がつながりよく連携されるため、全社的な意思決定を素早く正確に行えるのが大きな特徴です。

    具体的には以下のような特徴があります。

    • 部門間でデータをリアルタイムに共有できる
    • 業務プロセスを標準化しやすい
    • 意思決定のスピードが向上する
    • 計画と実績の差異分析がしやすい
    • 規模の拡大にも柔軟に対応可能

    このような特長から、大企業を中心にERPの導入が進んできました。

    一方で、中小企業への浸透が進まなかった理由が2つあります。

    1つは導入コストと運用コストが高いことです。もう1つは、カスタマイズに多大な労力がかかることです。

    しかし、最近ではクラウド型のERPパッケージが登場し、中小企業でも導入しやすくなってきました。クラウド型のERPは、導入・運用のコストを高める「インフラ基盤の導入・運用・保守」「カスタマイズ」が不要、あるいはできないことがほとんどです。コストと運用の両面でハードルが下がったと言えます。

    基幹システムと業務システムの違い(比較表)

    基幹システムと、その他一般的な業務システムとの違いを説明します。

    項目 基幹システム 業務システム
    対象業務 経営を支える中核業務 基幹システムの周辺業務など
    規模 かなり大きい 小規模が多い
    改修難易度 一般的に難易度が高い 比較的容易だが、改修での利用を前提としていない場合も
    費用 導入・運用共に高 さまざまだが、一般的には低め

    前述の通り、基幹システムとは、業務システムの一種です。業務効率化などを目的に開発される業務システムのうち、経営を支える中核となる業務をカバーするのが基幹システムです。

    基幹システムは中核業務同士を連携させることから、規模も大きくなりがちです。一方、その他の業務システムは、基幹システムの存在を前提に、痒いところに手を届かせるために作ることが多く、システム規模自体は基幹システムの方が大きくなります。

    企業の歴史によっては、基幹システムは約50年もの昔に構築され、継ぎはぎされてきた場合もあります。こうしたシステムはメインフレームなどの古い基盤や、COBOLなどの古いシステム言語で構築されていることも多く、技術者が圧倒的に不足しています。現代の最新テクノロジーと比べると改修難易度や保守性も大きく劣るため、大きな改修が行えず、もはやブラックボックスとなってしまっている場合も多くみられます。

    つまり、基幹システムは一般的に巨大で、対象とする業務範囲が広い代わりに、改修性が悪く、現代の経営環境の変化に追随していくことが困難になりつつあるシステムだともいえます。

    基幹システムの種類一覧

    ここでは、基幹システムの種類と選び方について詳しく解説していきます。

    企業の資源管理に関する基幹システム

    企業の中では、ヒト・モノ・カネといったさまざまな資源が管理されています。これらの正しい状況を把握し、入金・出金、入荷・出荷などといった変動を随時把握することは企業活動で必須です。まずは、これら企業の資源管理に関する基幹システムを紹介します。

    種類 特徴
    販売管理 需要変化への迅速な対応
    購買管理 データ連携による調達最適化
    会計管理 入力作業軽減と分析力向上
    人事給与 人事データと賃金の一体管理

    販売管理システム

    受注情報管理から入金管理、売上分析まで、販売業務全般を包括的に支えるシステムです。以下が主要な機能概要です。

    • 顧客管理、受注管理
    • 納期と在庫照合、出荷手配
    • 代金請求と入金管理
    • 販売データ分析、売上予測

    このように、発注段階から売上実現までの一連のプロセスを円滑化するとともに、販売戦略立案の資料提供も行います。

    販売管理システムの大きなメリットは、市場変化や顧客ニーズをタイムリーに捉えた販売施策が立案できる点です。受注動向や入金状況、顧客属性を踏まえたきめ細かい売上予測が可能になるため、投資対効果の高い販促活動を実現できます。

    加えてクラウド型システムであれば、セルフサービスの商材比較やデータ分析機能を追加できるなど、継続的な機能拡張が容易な点も大きな魅力といえます。

    購買管理システム

    調達業務を効率的に進めることを支援するシステムです。以下が代表的な機能概要となります。

    • 仕入先(ベンダー)管理
    • 発注と納期管理
    • 購入資料の管理(見積依頼・比較・発注書・納品書等)
    • 入荷検収と代金支払
    • 仕入データ分析、コスト管理

    このように、仕入れから支払いまでの一連の業務プロセスを管理・可視化する機能を備えています。

    購買システムの大きなメリットは、調達データと市場動向をもとに原価管理を高度化できる点です。複数ベンダーとの見積合わせとコスト比較、発注動向と納期精度の管理など、データに基づいた合理的な調達管理が実現できます。

    さらに、外部市場データとの連携で価格変動リスクも回避できるなど、戦略性が向上します。

    会計管理システム

    財務会計の領域全般を支援するシステムです。以下が代表的な機能概要です。

    • 取引データの入力と帳簿記録
    • 決算処理と月次報告作成支援
    • 原価計算と管理会計の機能
    • 会計データの多角的分析機能

    このように、日常の経理処理から月次決算、そして管理会計に至るまで、財務領域を包括的に支える機能を備えています。

    会計システムの大きなメリットは、入力ミスの防止や自動仕訳による処理スピードが向上する点です。決算業務の負担軽減だけでなく、リアルタイムな原価管理や資金繰りの見える化など、経営判断に資する財務データをタイムリーに生成できるのが強みといえます。

    さらに、クラウド会計ならAPI連携した業務データの自動取込みが可能で、決算業務をさらに自動化できます。

    経理業務の生産性を抜本的に高められる点も、大きなメリットの1つとして挙げられます。

    人事給与システム

    人事部門における要員計画から給与計算、労務管理に至る一連の業務を支援します。以下が代表的な機能概要です。

    • 要員計画と人事評価管理
    • 勤怠と賃金計算処理
    • 諸手当と社会保険手続き
    • 人事データと給与データの分析

    このように、人材獲得から配置、評価と報酬までを一体的に管理いたします。

    人事給与システムの大きなメリットは、複雑な賃金計算を自動化でき、法改正などへの対応コストが下がる点です。また、人事データの一括管理で効率的な要員計画が立てられます。

    さらに最近では、クラウド型の人事給与システムを活用する動きが広がっています。差し替えが容易な定型プログラムを利用することで、法改正対応なども低コストで実現できるようになったためです。

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    供給チェーン全体を管理する基幹システム

    モノを販売する企業の場合、その在庫状況を把握したり、モノの生産を管理する活動が必要になります。また、モノを販売する相手方とのやり取りの情報なども、進捗を含めてERPで管理することが一般的になりました。これらのサプライチェーン全体を管理する基幹システムをご紹介します。

    種類 特徴
    生産管理 製造現場を支えるデータ処理
    在庫管理 リアルタイム管理で適正化
    顧客管理 顧客との取引状況、営業情報を見える化

    生産管理システム

    製造業では新製品開発から生産、物流・配送まで、一貫した管理が欠かせません。生産管理システムは、その中核的な役割を果たすシステムです。以下では代表的な機能を紹介します。

    • 原材料
    • 部品在庫の管理
    • 生産計画立案と工程管理
    • 製造指示と進捗管理
    • 製品出荷と配送管理
    • 品質管理とトレーサビリティ

    このように、ラインごとの稼働状況管理から手直し、原因分析まで、ものづくりの現場を総合的に支援します。

    生産管理システムの大きなメリットは、ものづくりの現場データをリアルタイムで把握でき、PDCAサイクルの迅速化につながることです。

    設計から資材、工程、物流と一気通貫のデータ管理を実現します。IoT技術との親和性も高く、稼働機器からのデータ収集や外部連携など、DX時代に対応した拡張性も備えています。

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    在庫管理システム

    商品や製品、部品などの在庫データを、一元管理するシステムです。以下が主要な機能概要です。

    • 在庫品の数量、金額、属性、保管場所等の管理
    • 入出庫実績の記録と在庫数の更新
    • 適正在庫量の算定、発注計画立案
    • 在庫情報の他システム連携

    このように、物量データと金額データの一体管理、他システムとの連携など、在庫管理の業務全般を支援します。

    在庫管理システムの大きなメリットは、複数拠点の在庫データを一括管理でき、物流コストも削減できる点です。リアルタイムな在庫変動管理で、過剰在庫や欠品リスクも回避できます。

    さらに、POSデータや受発注データと連携することで、需要予測や発注計画の精度が向上するなど、データ一体運用の恩恵が大きいです。

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    顧客管理システム

    顧客の情報を一元的に管理するとともに、過去からの取引の状況、現在の商談の進捗などを管理します。

    顧客管理システムのメリットの1つとして、見込み情報を早期に調達や生産部門と共有し、生産や仕入の計画に反映させることが出来る点などがあります。また、営業同士の情報連携が活発になり、売れ筋の把握や、メンバーのフォローなどを可能にするコミュニケーション活性化の効果もあります。

    しかし、一番の大きなメリットは、ベストプラクティスを横展開できることです。もっとも成果を出している社員の行動や、売れている顧客での活動を見える化し、他の社員や顧客での営業活動でマネができるようになることで、全社としての営業成績向上が狙えます。

    人事業務を管理するシステム

    人事部が行うさまざまな活動を支援する基幹システムも存在します。人事管理・給与計算だけでなく、その周辺のヒトにまつわる活動も管理します。

    種類 特徴
    労務管理 法制度変更への対応力UP
    人材採用 募集から面接、入社までの一連業務を管理
    人材管理 社内のスキル・経験を一元管理し、適材適所を実現

    労務管理システム

    勤怠管理を軸に、労働時間や有給休暇データを管理するシステムです。以下が主要な機能概要です。

    • 勤怠データの入力と在社時間の集計
    • 有給休暇データの一元管理
    • 労働関連法規への準拠支援
    • 労働時間と賃金計算結果の連携

    このように、勤怠と有給休暇データを適正に管理することで、法令順守も含めた労務リスクの回避を実現します。

    労務管理システムの大きなメリットは、複雑化する労働法制への対応力が向上する点です。協定管理や有休消化率の検証といった機能を標準装備することで、法規制順守の確度が高まります。

    加えて、就業時間中の業務処理データを連携させることで、労働生産性の分析も可能となります。限られた人件費で、最大の業務効率を得る労務管理ができるようになるため、コストメリットも大きいです。

    人材採用システム

    採用活動から、内定者が入社するまでの一連の活動を支援するシステムです。

    人材採用システムは、面接官となる社員と、採用業務を管理する人事部との間のコミュニケーションが円滑に回ることが重要です。また、外部エージェントと採用担当とのコミュニケーションも重要で、最近の人材採用システムは、SaaS型の製品が増加し、外部エージェントも同じシステムを利用できるようになっています。

    募集から面接の調整、実施後の評価など、内定までの一連業務を管理するだけでなく、内定が出た後のオファー、オファー後の手続きや入社前のフォロー活動など、入社までの丁寧なコミュニケーションを進めるため、エージェントや候補者本人、社内の関係者らと円滑なやり取りができる人材採用システムの活用が拡がっています。

    人材管理システム

    一般的には「タレントマネジメントシステム」と呼ばれます。社員の持つスキルや、これまでの業務経験を管理します。これらの情報を「タレント情報」と呼ぶこともあります。タレント情報は、社員本人に申告させる仕組みも用意されています。

    適材適所の人事異動を実現したり、プロジェクトへのアサインにおいて特定の経験を持つ社員を探すなどの活用方法があります。

    また、社員本人が自分のキャリアプランを深く考え、今後どのような経験を積みたいか、成長をしていきたいかを具体化することにもつながります。

    従来は人事管理システムで管理していましたが、社員のタレント情報を活用するのは人事部だけではなく、上長や同僚、さらには本人自身にも拡がり、基本的に人事部内で利用が閉じる人事管理システムでの管理には適さなくなってきました。タレントマネジメントシステムは、社員間でインタラクティブにタレント情報をシェアすることで、組織の活性化を実現します。

    企業に合ったERP基幹システムの選び方

    基幹システム選定の主要なポイントとして、次の3つが挙げられます。

    業務機能面の対応力

    業種・業態に対応した業務機能が搭載されているかを確認する必要があります。製造業なら生産管理、小売業ならPOS連携といった具合に、対象業界の標準的な業務フローをサポートできなければ導入効果は限定的でしょう。

    例えば、小売・サービス業の場合、商品管理や顧客管理に加え、店舗運営機能が充実している必要があります。

    具体的には、POSレジとの連動、仕入・在庫・発注管理、売上データ蓄積と分析、会員管理とキャンペーン実施といった小売業務の基幹機能が搭載されているかを確認することが重要です。

    これらの機能が揃っていれば、eコマースを含めた多様な販売チャネル展開の流れにも柔軟に対応可能となります。一方、特定業務機能の不足は、業務拡大の制約要因ともなりかねないことに注意が必要です。

    データ処理能力

    取り扱うデータ容量と同時アクセスユーザー数を推定し、十分な処理能力が確保されているERPか評価することも大切です。業務拡大に対応可能な容量や、拡張性を見極める必要があります。

    具体的には、商品数や取引件数といったデータ規模のほか、ユーザーの同時アクセス数やアクセスパターンを予測した上で、それに見合うデータ容量とCPU性能が必要となります。

    特に、クラウド型ERPでは、MTTR(平均復旧時間) 2時間以内を謳っていることが望ましく、耐障害性と運用保証水準の高さがシステム基盤の信頼性を左右します。

    加えて、幅広い業種業態に対応可能な汎用性や、アップデートによる機能拡充の頻度といった拡張性を確認することも欠かせません。変化への対応力こそが、長期運用を確実なものとするからです。

    運用コストの評価

    月額利用料以外にも、カスタマイズ改修や追加機能のコスト、運用・保守コストが後年度にのしかかる可能性を評価することも重要なポイントといえます。

    基幹システムは、長期運用を前提に導入されることが多い一方、法改正への対応や業務変更に対応する改修の必要性も高いです。

    例えば、消費税改定時の税率仕様変更や、決算期変更に伴う会計処理の修正といった法制度変更への対応は避けられず、そのたびに改修コストが必要となります。

    このため、月額利用料率と合わせ、カスタマイズ単価や保守・サポート料金体系などを確認し、トータルでかかるコストの比較検討が欠かせません。

    おすすめのERP 5選

    SAP、Oracle、Microsoft Dynamics 365等の大手ベンダーから、最近のミドルベンダーまで、対象規模別に以下のERPパッケージがおすすめです。

    • 大企業向け:SAP S4 HANA(グローバル展開力が高い)
    • 中堅企業向け:Oracle ERP Cloud(階層別アクセス制御が充実)
    • 中小企業向け:弥生シリーズ(中小向け機能が揃っている)
    • 小規模店舗向け:マネーフォワードクラウド(手軽な店舗運営機能を備える)
    • 創業期スタートアップ向け:freee(クラウド会計の先駆者)

    ERPは、システム階層の違いや対応機能の有無などで最適な製品が異なります。自社の規模と業種、今後のスケールアップ計画を考慮して選定することをおすすめします。

    社内で基幹システムを構築する方法

    基幹システムを社内で構築する場合、要件定義からカスタマイズ、段階的な移行、社員教育まで慎重に進める必要があります。特に、教育計画は正確な効果予測と直結します。

    要件定義する

    要件定義では、自社の業務分析を通じ、機能面・データ面で何を実現したいのかを明確化します。業務フローや入力・出力情報、データ項目とアクセス権限まで詳細に洗い出しを進めます。要件定義漏れが、後工程で大きな影響を与えるため、網羅性が重要となります。

    具体的には、業務プロセスの可視化、データフローの明示化などを進めます。Excel やWordに業務マトリクスや帳票イメージを示した、要件定義書を作成するケースが多いでしょう。

    加えて、将来的な変化や拡張ニーズについても先読みし、柔軟に対応できる要件設計を心がける必要があります。クラウド化時代の要件定義には、拡張性やデータ連携性を見据える発想転換が求められます。

    カスタマイズ方針を決める

    カスタマイズ方針を決め、ERPに不足する機能をどう実装していくか計画します。外部連携のAPI設計や帳票テンプレートの改修、特殊ロジックの追加など、工数とコストを精緻に見積もる必要があります。

    標準機能からの機能逸脱を極力避けるのが望ましく、APIやスクリプト言語を駆使して実装するケースが多いでしょう。例えば、特殊な税計算ロジックや複写機能はAPIで実現し、帳票レイアウトの調整はスクリプトやテンプレートで対応する、といった分割方針が考えられます。

    カスタマイズ範囲が必要以上に膨らまないよう、要件整理から機能設計まで注意深く進める必要があります。保守性を考慮したシンプルな構成を目指すことが大切です。

    現行システムからの移行計画を立てる

    現行システムからの移行計画を立案します。先行の導入部門でのパイロット運用を経て、全社展開していく流れが一般的です。業務への影響を最小化するためのスケジュール感が大切です。

    例えば製造業の場合、試験的なラインや工程から移行を進め、全ラインへの展開まで1年程度の期間を想定するケースが多いです。

    段階的移行のメリットは、トラブルが発生しても局所化できること、移行ノウハウを蓄積できることなどがあげられます。一方で、段階移行に伴うインターフェース構築などの複雑性は、コスト増要因にもなりえます。

    旧システム残存を可能な限り避けることが望ましく、定型業務からの移行テクニックも重要視されます。

    社内教育をする

    全社員に対する基本操作研修から、キーマン層の応用的教育まで、段階的に教育計画を決定します。育成計画と移行スケジュールを連動させる視点が欠かせません。

    基本操作研修では、各業務メニューや入力方法を網羅的に実習します。役割別必須機能を集中的に習得するカリキュラムが効果的です。

    続いてキーマン層には、業務別の応用習得研修を段階的に実施します。実際の業務シーンを想定した演習形式がおすすめです。

    加えて、OJT(On-the-Job Training)による実務教育も後工程で大切です。レベル別支援体制を社内に構築し、円滑な定着を促進する視点が欠かせません。

    アウトソーシングを利用する

    ERPを導入する場合、外部のアウトソーシングベンダーが既に運用のノウハウを持っている場合があります。自社要員の運用負荷を下げるため、アウトソーシングベンダーを活用するのも選択肢です。

    アウトソーシングを利用する場合は、どの業務をアウトソースするかを定義し、業務マニュアルを作りこんでいきます。できる限り社員に伺いを立てなくても運用できるように、個別の判断が必要ないような運用ルールを作っていくことが大切です。

    マニュアルなど、アウトソースに必要な一連の準備が整えば、プレ運用によって作業に習熟させ、段階的に業務を引き継いでいきます。

    基幹システムの運用・管理方法


    導入後の運用と管理で、業務変化に合わせた最適化とコスト削減が重要視されます。保守運用とセキュリティ管理を定期的に見直すPDCAサイクルが重要でしょう。

    効果的な運用方法

    定期的に業務状況を確認し、必要に応じた業務改善を図ります。改修コストと業務効果を比較検討する必要があります。

    具体的には、業務実績とシステム運用状況を定期的にモニタリングし、ボトルネックとなっている箇所を洗い出します。

    生産性低下の原因や、在庫過多の要因など、業務課題の特定と要因分析を行います。そこからシステム改修や業務改善につなげる項目を検討します。

    改修対応の優先順位付けにあたっては、改修の作業工数とコストを見積もった上で、業務効果のインパクトも予測する必要があります。コスト対効果を比較しながら、実施時期と対象を判断するPDCAサイクルが重要です。

    こうした、定期的な見直しと適切な改善を続けることで、業務変化に対応した効果的なシステム運用を実現できます。

    管理方法

    保守体制と運用ルールを明確化し、セキュリティ対策も万全な体制で進めます。定期的に管理レベルを確認し、必要に応じて見直しや教育を実施します。

    保守体制については、ベンダーとのサポート体制を含めて明確にします。基幹システムの性質上、高度な専門性が求められます。

    加えて社内体制として、システム管理チームを置き、保守要員を確保します。運用状況をモニタリングできる体制を常設します。

    運用面では管理ルールを策定し、アクセス権限、情報管理、変更管理などを明確な基準に基づいて行います。

    特に、情報セキュリティ対策は極めて重要で、アクセス制御や外部ネットワークからの侵入防止など、組織的な管理体制構築が欠かせません。

    こうした管理レベルについて定期的に確認し、業務変化や技術革新に応じて適時、見直しや再教育を実施する好循環を回していく必要があるでしょう。

    まとめ:基幹システムを導入するならJiteraに相談


    これまで見てきた通り、基幹システムを業務に導入することで様々なメリットが得られます。

    業務効率化とコストダウンに加え、データ分析力が向上し意思決定のスピードがアップします。さらに、全社データを活用することで、部門を超えたコミュニケーションが活性化するといった効果も生まれます。

    その一方で、導入から定着まではハードルが高く、十分な準備とともに社員育成が欠かせません。特にクラウド化の波に対応するには、セキュリティ面も含め継続的な体制整備が課題となるでしょう。

    こうした課題解決の参考に、Webシステム開発のプロフェッショナルである株式会社Jiteraに一度相談いただけると、的確なアドバイスが得られるかもしれません。お気軽にお問い合わせください。

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