LLMがビジネスで活用されるケースが増えており、大容量のデータの保管先が課題とされています。LLMなどのデータの保管先として注目されているのがPineconeです。
PineconeはLLMとの相性が良いとされています。Pineconeを取り入れることで、高速なデータ検索やスケーラビリティへの対応などを実現可能です。
本記事ではPineconeの仕組みや使い方、活用例について紹介します。
WEBライター歴12年です。IT系の記事執筆経験は豊富にあります。
Pineconeとは

Pineconeとはベクトルデータベースの一つであり、機械学習向けとして開発されました。
Pineconeは高いパフォーマンスとスケーラビリティが強みであり、数十億を超えるデータを高い処理精度で扱えるのが特徴です。また、PineconeにはシンプルなAPIが備わっており、使いやすさが評価されています。
Pineconeではキーワード検索とセマンティック検索、2つの検索を組み合わせたハイブリッド検索に対応できる機能があります。単にキーワードに一致するデータを検索するだけではなく、意味を解釈し類似度の高いデータの検索が可能です。
Pineconeを用いれば、大量のデータを扱い、目的のデータを高速かつ高い精度で見つけられます。Pineconeは、LLMを活用する際のデータの保管先に最適です。
Pineconeの「ベクトルデータベース」とは

ベクトルデータベースはベクトル形式でデータを格納するデータベースです。
従来のデータベースは行と列による表形式でデータを格納する構造を採用していました。一方、ベクトルデータベースは多次元空間における点としてデータを表現するのが特徴です。
ベクトルは数値の集合のため、画像や動画など複雑なデータを簡単に扱えます。また、ベクトル間の位置関係は直線距離や角度で表現できるため、数学的にベクトル同士の類似度を測定可能です。
ベクトルデータベースは複雑なデータを扱える点と、データ同士の類似度を数学的に求められる点がメリットであり、さまざまな場面に活用できます。
Pineconeの特徴や仕組み

Pineconeはさまざまな特徴が備わっており、LLMの開発に欠かせない存在です。
以下ではPineconeの特徴から仕組みまで詳しく解説します。
高速かつ正確な類似検索ができる
Pineconeは数値ベクトルとしてデータを扱っており、類似検索を正確で高度にできる仕組みを採用しています。
テキストや画像、動画などはすべて数値ベクトルで表現されており、ベクトル間の類似度の計算が可能です。
数値ベクトルで扱われているデータはすべて[0.12,0.23,0.89,-0.05,…]のような実数値の並んだ配列として格納されています。それぞれのデータはベクトル空間上の特定の場所にマッピングされており、ベクトル間の距離や角度、内積などを用いて類似度の比較ができる仕組みです。
Pineconeでは、TF-IDFやBM25などさまざまなアルゴリズムを用いて高速で精度の高い計算を実現しています。
メタデータによるフィルタリングができる
Pineconeにはメタデータによるフィルタリングができる機能が備わっています。メタデータとは、データの種類や属性を示すデータのことです。メタデータを用いてフィルタリングすることで検索の高速化やデータの整理などを行えます。
あらかじめデータに対してメタデータを付与しておけば、メタデータによるフィルタリングが可能です。
たとえば、製品のカテゴリをメタデータとして登録しておけば、「シャツ」や「靴下」など特定のカテゴリでフィルタリングをして検索を行えます。
画像のメタデータとして撮影日を登録しておくと、特定の撮影日の画像のみをフィルタリングで抽出することが可能です。
ハイブリッド検索に対応する
Pineconeにはハイブリッド検索という新しいタイプの検索機能が備わっています。従来の検索とベクトル検索を組み合わせたものであり、より精度の高い検索ができる機能です。
従来の検索は、キーワードと一致するものを見つけ出すシンプルなものでした。ベクトル検索は、検索キーワードを解釈して、類似するものを探します。この2つを組み合わせたハイブリッド検索は、それぞれの長所を取り込んだ手法です。
たとえば、チャットボットでは幅広い質問に対処する必要があり、ハイブリッド検索であれば適切に処理できます。多くのキーワードを網羅し、関連する情報にもアプローチできるからです。
大量のデータを扱える
Pineconeを用いれば大量のデータを格納し、高速で処理することが可能です。数十億ものベクトルデータであっても、一瞬で検索を完了できるスケーラビリティを提供しています。
Pineconeは格納されたデータをベクトルとして扱い、リアルタイムでインデックスを付与していくのが特徴です。画像や動画など複雑なデータであっても、素早くベクトルデータに変換できます。
Pineconeをデータベースとして採用すれば、大量のデータが格納されたとしても、すぐに検索できる状態になるため便利です。
さらに、メタデータによるフィルタリングや類似検索、ハイブリッド検索といった機能があるため、大量のデータの中から効率的に目当てのデータを見つけられます。
大量のデータを扱うのに適した機能が多数備わっているのがPineconeです。
セキュリティー性が備わっている
PineconeはSOC2認証を受けており、HIPAAやGDPRに準拠しているため、国際的なセキュリティー規則を遵守したサービスです。
Pineconeはデータを他から隔離し暗号化された状態で管理します。安全に利用できるAPIを提供しており、Pineconeが不正にデータを要求することはありません。
これまでに豊富な実績があり、有名企業にも多く利用されてきました。大きなトラブルが生じたことはなく、セキュリティー面で信頼できます。
Pineconeの使い方

実際にPineconeを利用するためには、アカウントの取得からセットアップ、インデックスの作成までさまざまな手順を踏む必要があります。
以下ではPineconeの使い方を詳しく紹介します。
アカウントを取得する
まずは公式サイトにアクセスして、アカウントの取得を行います。GoogleやGitHub、Microsoftのアカウントを持っている場合は、これらのアカウントからPineconeに登録可能です。
通常はメールアドレスを入力してアカウント取得の手続きを進めます。登録したメールアドレスに登録メールが届くため、記載されているコードをPineconeの登録画面に入力しましょう。
以上の手続きでPineconeのアカウント取得は完了します。
セットアップを行う
Pineconeのアカウントを取得してサインインできた後はインストールを行います。
Pineconeのコンソール画面から「API Keys」のボタンをクリックすると、APIキーを確認できます。Valueの項目に記載されている値がAPIキーです。
どのような環境で利用するかによってインストールの手順は異なります。
PythonでPineconeを利用する場合は、以下のシェルコマンドによってインストールが可能です。
また、PythonでPineconeを初期化するならば、以下のコマンドを実行しましょう。
from pinecone.grpc import PineconeGRPC as Pinecone
from pinecone import ServerlessSpec
pc = Pinecone(api_key=’YOUR_API_KEY’)
YOUR_API_KEYに自身のAPIキーを入力します。
インデックスを作成する
Pineconeをインストールした後はインデックスの作成をする必要があります。
インデックスとは、ベクトルデータをデータベース上で管理する際のアルゴリズムやデータ構造のことです。事前にインデックスを作成することで、Pineconeにアップロードするデータのデータ構造を指定できます。
たとえば、以下のようなコードによってインデックスの作成が可能です。
index_name = “docs-quickstart-index”
if index_name not in pc.list_indexes().names():
pc.create_index(
name=index_name,
dimension=2,
metric=”cosine”,
spec=ServerlessSpec(
cloud=’aws’,
region=’us-east-1′
)
)
上記は2次元ベクトルでコサインメトリックを用いて最近傍探索を行うためのインデックスです。
データをアップロードする
インデックスを作成した後は、実際にPineconeで管理するデータをアップロードします。
たとえば、以下の関数を実行するとデータの挿入を行えます。
index = pc.Index(index_name)
index.upsert(
vectors=[
{“id”: “vec1”, “values”: [1.0, 1.5]},
{“id”: “vec2”, “values”: [2.0, 1.0]},
{“id”: “vec3”, “values”: [0.1, 3.0]},
],
namespace=”ns1″
)
index.upsert(
vectors=[
{“id”: “vec1”, “values”: [1.0, -2.5]},
{“id”: “vec2”, “values”: [3.0, -2.0]},
{“id”: “vec3”, “values”: [0.5, -1.5]},
],
namespace=”ns2″
)
上記は、ns1とns2という2つのネームスペースに対して、それぞれ2次元ベクトルデータを挿入しています。
検索クエリを実行する
データをアップロードした後であれば、実際に検索クエリを実行して、類似したデータを見つけることができます。
前の見出しのデータをもとにして類似度検索を行うコードの例は以下の通りです。
query_results1 = index.query(
namespace=”ns1″,
vector=[1.0, 1.5],
top_k=3,
include_values=True
)
print(query_results1)
query_results2 = index.query(
namespace=”ns2″,
vector=[1.0,-2.5],
top_k=3,
include_values=True
)
print(query_results2)
# Returns:
# {‘matches’: [{‘id’: ‘vec1’, ‘score’: 1.0, ‘values’: [1.0, 1.5]},
# {‘id’: ‘vec2’, ‘score’: 0.868243158, ‘values’: [2.0, 1.0]},
# {‘id’: ‘vec3’, ‘score’: 0.850068152, ‘values’: [0.1, 3.0]}],
# ‘namespace’: ‘ns1’,
# ‘usage’: {‘read_units’: 6}}
# {‘matches’: [{‘id’: ‘vec1’, ‘score’: 1.0, ‘values’: [1.0, -2.5]},
# {‘id’: ‘vec3’, ‘score’: 0.998274386, ‘values’: [0.5, -1.5]},
# {‘id’: ‘vec2’, ‘score’: 0.824041963, ‘values’: [3.0, -2.0]}],
# ‘namespace’: ‘ns2’,
# ‘usage’: {‘read_units’: 6}}
上記は、ns1について、vector=[1.0, 1.5]と一致するデータを調べており、vec1の類似度(score)は1.0で完全に一致するデータを検出しています。
また、ns2については、vector=[1.0,-2.5]と一致するデータを検索しており、類似度(score)が1.0であるvec1は完全に一致したベクトルであることを示します。
Pineconeのプランと料金

Pineconeはスタータープランとスタンダードプラン、エンタープライズプランの3つが用意されています。無料で利用できるのがスタータープランであり、機能が限定的です。スタンダードプランとエンタープライズプランは有料となっています。
Pineconeの料金プランと機能の違いを以下にまとめました。
| スタータープラン | スタンダードプラン | エンタープライズプラン | |
| 料金 | 無料 | ストレージ:0.33ドルGB/月
書き込み:2ドル/1M Write Units 読み込み:8.25ドル/1M Read Units |
ストレージ:0.33ドルGB/月
書き込み:4ドル/1M Write Units 読み込み:16.50ドル/1M Read Units |
| プロジェクト数 | 1 | 20 | 100 |
| 1プロジェクトあたりのインデックス | 5 | 20 | 20 |
| 1インデックスあたりのネームスペース | 100 | 10,000 | 100,000 |
| サポート | コミュニティサポート | Pineconeサポート | Pineconeサポート(24時間365日) |
スタータープランでは1つのプロジェクトしか立ち上げられず、設定できるインデックスやネームスペースに制限があります。
有料プランでは複数のプロジェクトを立ち上げることができ、インデックスやネームスペースの上限が大幅に増えるのが特徴です。
エンタープライズプランでは24時間365日いつでも公式によるサポートを受けられます。
無料プランが向いているのは?
無料プランは機能が限定的であり、公式のサポートを受けることができません。本格的にビジネスで活用するには不向きなプランといえます。
無料プランが向いているのは、Pineconeが気になる方やベクトルデータベースを体験してみたい方です。無料プランだけでも、実際にベクトルデータベースとしてPineconeを活用できます。
無料プランに触れてみてから、有料プランを利用するかどうか決めることをおすすめします。
有料プランが向いているのは?
ビジネスで本格的にPineconeを活用したい方に向いているのが有料プランです。有料プランであれば、複数のプロジェクトを立ち上げることができます。並行していくつものベクトルデータベースを活用できるため、有料プランはビジネス向きです。
より大規模なデータを扱う場合は、エンタープライズプランをおすすめします。1つのインデックスで最大100,000のネームスペースを作成できるため、大きなデータを扱うのに最適です。
Pineconeの具体的な活用例

ベクトルデータベースであるPineconeは応用範囲が広く、さまざまな活用例があります。
以下では、Pineconeを活用する具体例を詳しく紹介します。
画像認識を用いたサービスやアプリの開発
画像認識を用いたサービスやアプリを開発する際には、ベクトルデータベースとしてPineconeを導入できます。
Pineconeは画像データをベクトルに変換して管理し、ベクトル同士の類似性の計算が可能です。類似性の高い画像を素早く抽出できるため、顔認証や商品画像の解析に利用できます。
たとえば、アプリに顔認証を導入する際にはPineconeを活用できます。あらかじめ登録しておいた顔写真と比較して類似度を計算し、本人であるかどうか識別が可能です。
本人かどうか判断するために類似度の閾値を設定しておき、一定以上の類似度であれば本人と判断するシステムを組めます。
類似検索を活かした適切なアプローチ
Pineconeの類似検索をビジネスに役立てることができます。
たとえば、顧客の行動履歴をデータベースに登録しておき、訴求性の高いアイテムを類似検索で抽出するシステムです。それぞれの顧客に対する訴求力の高いアイテムを自動的に提案することで、購買行動につなげることができます。
また、顧客が検索したキーワードを用いてデータベースから類似検索を行い、顧客の入力したキーワードに近い商品を提案するシステムの実現も可能です。
Pineconeは推薦システムや検索システムなどに最適な機能を有しており、顧客満足度の向上を期待できます。
自然言語に基づくテキスト分析
Pineconeの持つ自然言語の処理と類似検索の機能は、テキスト分析の際にも活躍します。ユーザーが入力したキーワードと近い意味のキーワードをベクトルデータベースから抽出し、分析することが可能です。
顧客からのレビューや問い合わせのテキストを分析するために使えます。Pineconeはフィルタリング機能があり、投稿されたレビューをテーマや評価などで分けることが可能です。
たとえば、高い評価をつけた顧客を抽出して、顧客IDと関連付けられたメールに対してキャンペーンを実施できます。
まとめ:ベクトルデータベース「Pinecone」の活用で開発の精度とスピードを向上

Pineconeを活用するとベクトルデータベースを用いてデータ管理できるようになり、高速で精度の高い検索を実現します。
メタデータによるフィルタリングやハイブリッド検索に対応し、大量のデータも高速で扱えるため、Pineconeは応用範囲の広いデータベースです。画像認識やマーケティング、レビュー分析など幅広い分野での活用を期待できます。
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