ウォード法は階層的クラスタリングの手法、ツールの紹介や利用例も紹介!

ウォード法は、データ分析における階層的クラスタリング手法の1つであり、データを理解し、グループ化するための重要なツールとして知られています。

しかし「単語自体は聞き馴染みがあるものの、どんな仕組みなのかいまいちわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、ウォード法についての理論から実際の適用方法まで、そ詳しく解説します。また、Pythonのライブラリである「SciPy」や「scikit-learn」を用いたウォード法の実装方法についても説明します。

そして、ウォード法がどのような分野で利用され、どのようなメリットとデメリットがあるのかについても詳しく解説するので、ウォード法について学びたい方、データ分析に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

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監修者 武宮 太雅

東京都在住のライターです。わかりづらい内容を簡略化し、読みやすい記事を提供できればと思っています。

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    ウォード法とは?

    ウォード法は、データ分析におけるクラスター分析の1つの手法です。 この方法は、最も近接したクラスター同士を結合し、新たなクラスターを形成することで階層的なクラスタ構造を導き出します。

    ウォード法は、データをクラスター(グループ)に分けることを目的としており、教師なし学習の一種です。 そのため、事前にクラスターの数を指定する必要はなく、データの特徴に基づいて自然にクラスターが形成されます。

    たとえば、顧客データをウォード法で分析すると、購買パターンに基づいて異なる顧客グループが明確になります。これにより、マーケティング戦略をグループごとに最適化することが可能です。

    この方法は、階層ありクラスタリングと呼ばれる手法に属します。 具体的には、データセット全体が1つのクラスターから始まり、徐々に細分化されていく過程でクラスター間の関係が明らかになります。

    結果として、データの全体像を視覚的に理解する手助けとなるのがウォード法の魅力です。

    階層ありクラスタリングとは

    クラスタリングとは、データを似た特徴を持つグループに分類する手法です。 この方法は、データの構造やパターンを理解するために使われます。

    階層ありクラスタリングとは、データを階層的に分類する手法です。 最初にすべてのデータを個別のクラスターとして扱い、段階的に統合していくことでクラスター構造を明らかにします。

    そのため、データの詳細な階層構造を視覚化するのに適している技術です。

    代表的な階層ありクラスタリングの種類には、ウォード法完全連結法単連結法があります。

    ここでは、改装ありクラスタリングの代表的な階層6つを紹介します。

    ①ウォード法

    ①ウォード法

    ウォード法は、階層ありクラスタリングの一種で、クラスター分析に用いられる手法です。 データの中から最も近接したクラスターを統合し、新たなクラスターを形成することで階層構造を作り出します。

    この方法の特徴は、クラスター間の分散を最小化することです。統合する際に、データ全体の分散ができるだけ小さくなるようにクラスターを選びます。

    たとえば、顧客データをウォード法でクラスタリングすると、類似した購買パターンを持つ顧客グループが見つかります。これにより、各グループに対するマーケティング戦略を立てやすくなります。

    ②最短距離法(最近隣法)

    ②最短距離法(最近隣法)

    最短距離法(最近隣法)は、最も近いデータポイント同士を優先してクラスター化していくことで、全体のクラスタ構造を形成します。

    この方法の特徴は、個々のデータポイント間の距離を重視することです。各ステップで、最も近いデータポイント同士を結合し、新たなクラスターを形成します。

    たとえば、生物学的データを最短距離法で分析すると、似た遺伝子を持つ個体がクラスター化され、進化前・後の関係が明らかになります。これにより、進化の過程を詳細に理解することが可能です。

    最短距離法は、データ間の微細な関係を明確にするために役立つ手法です。

    ③最長距離法(最遠隣法)

    最長距離法(最遠隣法)は、最も遠いデータポイント間の距離を基準にクラスターを形成します。

    最長距離法の特徴は、クラスター内の最大距離を最小化することです。各ステップで、最も遠いデータポイント同士が統合されるため、大きなクラスターが形成されやすくなります。

    たとえば、地理データを最長距離法で分析すると、異なる地域の気候パターンがクラスター化され、地理的な関係が明確になります。これにより、地域ごとの気候特性を詳細に把握することができます。

    最長距離法は、広範なデータを包括的に分析するために有効な手法です。

    ④重心法

    ④重心法

    重心法は、階層ありクラスタリングの手法で、クラスターの重心(平均値)を基にクラスターを統合します。この方法は、クラスター間の重心の距離を最小化することを目的としています。

    重心法の特徴は、クラスター全体の平均的な位置を考慮することです。各ステップで、クラスターの重心間の距離を計算し、最も近いクラスター同士を統合します。

    たとえば、企業の売上データを重心法で分析すると、売上の傾向が似ている部門や支店がクラスター化され、業績の改善点が明確になります。これにより、経営戦略の立案に役立つ具体的なデータが得られます。

    重心法は、データの中心的傾向を明らかにする際に有効な手法です。

    ⑤群平均法

    ⑤群平均法

    群平均法は、クラスター間の平均距離を基にクラスターを統合します。クラスター内のデータポイント同士の平均距離を計算し、全体のクラスタ構造を形成します。

    群平均法の特徴は、各クラスター間の平均的な距離を考慮することです。クラスターを統合する際に、クラスター内のデータポイント同士の平均距離を最小化するようにします。

    たとえば、学生の成績データを群平均法で分析すると、似た成績傾向を持つ学生グループが見つかり、学習支援のための効果的な指導法を検討可能です。

    つまり、群平均法はデータ間の総合的な関係性を把握するのに適した手法だといえます。

    ⑥メディアン法

    ⑥メディアン法

    メディアン法は、クラスターのメディアン(中央値)を基にクラスターを統合します。データポイントの中央値を考慮してクラスターを形成します。

    メディアン法の特徴は、外れ値の影響を受けにくいことです。クラスターを統合する際に、データの中央値を計算し、最も近いクラスター同士を結合します。

    たとえば、病院の患者データをメディアン法で分析すると、似た症状や治療経過を持つ患者グループが特定され、より効果的な治療法の提案が可能になります。

    メディアン法は、データの中心傾向を保ちながら、安定したクラスターを形成するために役立つ手法です。

    ウォード法

    ウォード法は、最も近いクラスター同士を統合する手法です。 この方法では、データ間の距離が最も接近している2つのクラスター(またはデータ点)を組み合わせて新たなクラスターを作ります。

    ウォード法の特徴は、クラスター間の分散を最小化することです。これにより、全体のクラスタ構造がより均一になります。

    たとえば、顧客の購買データをウォード法で分析すると、似た購買行動を示す顧客グループが見つかり、ターゲットマーケティングに役立ちます。これにより、効果的なマーケティング戦略を立てることができます。

    ウォード法は、データ分析において、精度の高いクラスタリング結果を得るための強力なツールです。

    ウォード法で階層的クラスタリングを実装するためのツール

    ウォード法で階層的クラスタリングを実装するためのツールとして、Pythonのライブラリ「SciPy」や「scikit-learn」が広く利用されています。 これらのライブラリは、データ分析と機械学習のための豊富な機能を提供し、ウォード法の実装を簡単に行うことが可能です。

    ここでは、「SciPy」と「scikit-learn」の活用方法を紹介します。

    ※ちなみに、Rのhclustでウォード法の実装を行うこともできますが、本記事では割愛します。

    SciPy

    SciPyは、科学計算のためのPythonライブラリで、階層的クラスタリングを含む多くの分析機能を提供します。 このライブラリは、高度な数学関数やアルゴリズムを使って、データの処理と解析を効率的に行うことができます。

    中でもscipy.cluster.hierarchyモジュールを使うことで、ウォード法による階層的クラスタリングを簡単に実装できます。たとえば、データセットをクラスタリングし、その結果をデンドログラムとして視覚化することが可能です。

    一例として、コードのサンプルを用意しましたので、参考にしてみてください。

    # pythonコードをコピーする

    from scipy.cluster.hierarchy import ward, dendrogram
    import matplotlib.pyplot as plt
    
    # データのクラスタリング
    Z = ward(data)
    
    # デンドログラムのプロット
    dendrogram(Z)
    plt.show()

    SciPy

    scikit-learn

    Screenshot

    scikit-learnは、Pythonの機械学習ライブラリで、ウォード法による階層的クラスタリングを簡単に実装できます。 このライブラリは、多様な機械学習アルゴリズムを提供し、データの前処理、モデルの構築、評価を一貫して行うことができます。

    特にAgglomerativeClusteringクラスを使うことで、ウォード法を用いたクラスタリングが容易に行えます。 たとえば、次のように実装します。

    from sklearn.cluster import AgglomerativeClustering

    # モデルの構築 model = AgglomerativeClustering(n_clusters=3, linkage=’ward’)

    # クラスタリングの実行 labels = model.fit_predict(data)

    scikit-learnは、その使いやすさと豊富な機能により、データサイエンティストやエンジニアにとって不可欠なツールとなっています。

    scikit-learn

    ちなみに、こちらの記事では、在庫管理システムの構築方法について詳しく解説しているので、興味がある方はこちらも参照してください。

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    ウォード法の適用分野

    ウォード法は、さまざまな分野で広く利用されているクラスタリング手法です。 その精度の高さと柔軟性から、多くの実践的な応用が見られます。

    ここでは、以下3つの適用分野について詳しく解説します。

    • マーケティング
    • 生物学・医学
    • 金融やリスク管理

    マーケティング

    ウォード法は、マーケティング分野で顧客のセグメンテーションに広く利用されています。 この手法を用いることで、顧客データを分析し、購買行動や嗜好が似ているグループを特定できます。

    たとえば、小売業者が顧客の購買履歴をウォード法で分析すると、特定の商品を頻繁に購入する顧客グループが見つかります。 この情報を基に、グループごとに異なるプロモーションやマーケティング戦略を展開することが可能です。

    また、ターゲットマーケティングがより精密に行えるため、広告費の削減や売上の向上に繋がります。 これにより、マーケティング効果を最大化し、顧客満足度を向上させることができます。

    生物学・医学

    ウォード法は、生物学や医学の分野でも重要な役割を果たしています。 この手法を用いることで、大量のデータから意味のあるパターンやグループを抽出可能です。

    たとえば、遺伝子発現データをウォード法でクラスタリングすると、似た発現パターンを持つ遺伝子群が特定されます。 これにより、遺伝子の機能や病気との関連性を明らかにできます。

    また、患者データの分析にもウォード法は効果的です。 同様の症状や治療反応を示す患者グループを見つけることで、個別化医療の推進や新薬開発の支援に役立ちます。

    このように、ウォード法は、生物学・医学研究の精度を高め、効果的な治療法の開発に役立てられています。

    金融やリスク管理

    ウォード法は、金融やリスク管理の分野でも広く利用されています。 この手法を用いることで、複雑なデータからリスクプロファイルや顧客セグメントを抽出し、適切な対策を講じることができます。

    たとえば、顧客の取引データをウォード法で分析すると、似たリスク特性を持つグループが特定されます。 これにより、詐欺の早期発見やリスクの高い顧客に対する対策を強化することが可能です。

    また、信用スコアリングにもウォード法が活用されています。 クラスター分析により、信用リスクの高い顧客群を見つけ出し、貸付条件の最適化やリスク管理の効率化に寄与します。

    ウォード法のメリット・デメリット

    ウォード法には以下のようなメリット・デメリットがあるため、特徴を理解し活用することが求められます。

    デメリット
    メリット分類感度が高くデータ解析に向いている 計算量が多くなりやすい

    以下で、ウォード法のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

    ウォード法のメリット

    まず、ウォード法は分類感度が高いというメリットがあります。クラスター間の分散を最小化するため、非常に精密なクラスタリングが可能です。

    その結果、データの微細な違いを検出しやすくなり、特定のパターンやトレンドを明確に把握することができます。たとえば、顧客の購買行動や遺伝子の発現パターンを詳細に分析する場合に役立ちます。

    ウォード法のデメリット

    一方で、計算量が多くなりやすいというデメリットを持っています。クラスター間の分散を最小化するためには、膨大な計算が必要となり、データセットが大きくなると処理時間も増加します。

    これは特に、リアルタイムでのデータ解析や大規模データセットを扱う際に問題になるでしょう。たとえば、数百万の顧客データを分析する場合、計算リソースが大幅に消費されるため、効率的なデータ処理が求められます。

    精度の高いクラスタリングを実現する一方で、計算リソースの消費が大きい点には注意が必要です。

    ウォード法まとめ

    この記事では、ウォード法についての理論から実際の適用方法、実装方法、メリット・デメリットについて詳しく解説しました。

    ウォード法は、データを階層的にクラスタリングするための手法で、クラスター間の分散を最小化することで高精度な分析が可能です。

    分類感度が高く、データの細かな違いを検出しやすいというメリットがあり、 マーケティングや生物学、医学、金融など、多くの分野で活用されています。

    たとえば、マーケティングでは顧客の購買行動を分析し、ターゲットマーケティングに役立てられています。

    また、生物学や医学の分野では、遺伝子発現データや患者データを詳細に分析し、病気のメカニズムや効果的な治療法を明らかにすることが可能です。金融やリスク管理の分野では、リスクプロファイルを特定し、詐欺の早期発見や信用スコアリングに利用されています。

    しかし、ウォード法には計算量が多いというデメリットもあります。大規模なデータセットを扱う際には、処理時間やリソースの消費が問題となることがあります。 これに対しては、効率的なアルゴリズムや計算資源の最適化が求められるでしょう。

    今回ご紹介した内容も参考に、ウォード方についての理解を深めて見てください。

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