VPNサーバーとは、企業が自社のシステムへのリモートアクセスや、機密データの保護を目的として設置するサーバーのことです。
VPNサーバーを利用すると、社員は自宅や外出先からでも企業ネットワークに安全に接続できるため、テレワークVPN構築を実現したり社外の開発者との連携を円滑に行えます。
この記事では、VPNサーバーのしくみや特徴、VPNサーバー構築方法、選択のポイントについて、具体例を交えて解説します。
2014年 大学在学中にソフトウェア開発企業を設立
2016年 新卒でリクルートに入社 SUUMOの開発担当
2017年 開発会社Jiteraを設立
開発AIエージェント「JITERA」を開発
2024年 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出
アプリ・システム開発は生成AIを活用することで、従来の開発ではあり得なかった、低コスト・高品質開発・スピード開発が同時に実現できます。
▼従来の開発とAIを使った開発の違い
システムソリューションを得意とし、新規事業からDX推進まで幅広いジャンルの開発実績があります。
VPNサーバーとは?
VPNサーバーとは、企業が自社のシステムへの遠隔操作やデータの保護を目的として設置する専用のサーバーコンピュータのことです。
インターネットに接続されており、社員は自宅や外出先からでもVPNサーバーに接続することで会社のシステムやデータに安全にアクセスすることが可能です。
以下、VPNサーバーについて詳しく解説していきます。
VPNサーバーの主要な機能
VPNサーバーには以下のような主要な機能があります。
リモートアクセス
社員は外出先からでもVPNサーバーに接続することで、会社のシステムやデータにアクセスできます。
例えば営業担当者は出張先のホテルからVPNサーバーに接続し、社内システムにログインして顧客データを参照したり、在宅勤務の社員は自宅からVPN接続で社内ネットワークに入り連絡を確認したりできます。
VPNサーバーがなければ、社内システムやデータにアクセスできるのは会社のネットワーク内にいる時だけです。VPNサーバーを利用することで、場所を選ばずに業務を行うことが可能になります。
テレワークが浸透する現代において、リモートアクセスのためのVPNは必要不可欠なツールです。
暗号化通信
VPNサーバーは通信を暗号化するため、データを盗み見られるリスクが低減されます。VPNサーバーでは通信経路上のデータを暗号化して送受信するため、第三者に通信内容を見られてもデータの意味がわかりません。
例えば公衆Wi-Fiを利用している場合、ネットワーク管理者が通信内容を覗き見ることが可能ですが、VPNを利用していればその内容は暗号化されており、データが露出するリスクは最小限に抑えられます。
機密性の高い企業データや個人情報を取り扱う場合は、特にこのVPNの暗号化機能は欠かせません。
認証
VPNサーバーはユーザーを認証するため、許可された社員だけがアクセスできます。
VPNサーバーでは、ユーザー名とパスワードによる認証が必須なので、不正なユーザーから内部ネットワークを保護できます。認証にはパスワード認証のほか、セキュリティトークンや生体認証など、より高度な方法を導入することも可能です。
認証を通過した社員のみがVPNサーバーを利用できるため、VPN内の資産にアクセスできるユーザーを厳選できます。個人情報や機密文書などのデータを扱う場合に有効な機能です。
VPNサーバーの仕組み
VPNサーバーの基本的な仕組みは以下のようになっています。
1.社員が外出先からVPNサーバーに接続要求を送信する
まず、社員が外出先からスマートフォンやPCを使ってVPNサーバーに接続を要求します。
2.VPNサーバーが社員の認証を行う
認証には事前にVPNサーバーに登録されたユーザー名とパスワードが必要です。認証できない場合は接続が拒否されます。
3.認証されると暗号化された通信路が確立される
VPNサーバーとクライアントの間で安全性の高い通信路(トンネル)が作成されます。このトンネル内の通信は暗号化されており、内容を第三者に覗かれることはありません。
4.社員はその通信路を通じて、会社のシステムやデータに安全にアクセスできる
社員はVPN内の通信を行うことで、外出先からでも社内システムやファイルサーバー等の資産を利用できます。通信内容は暗号化されているので安全性が確保されます。
VPNサーバーの種類
近年、テレワークやリモートアクセスが普及し、VPNサーバーの需要が高まっています。
しかし、VPNサーバーには、インターネット用とIP-VPN用の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。
ここでは、インターネットVPN用サーバーとIP-VPN用サーバーの特徴とメリット・デメリットを紹介します。
自身の利用目的や環境に合わせて、最適なVPNサーバーを選択しましょう。
インターネットVPN用サーバーの特徴
インターネットVPNは、インターネット回線を利用して社員がVPNサーバーに接続します。
メリット | 内容 |
導入コストが低い | 新たな通信回線の敷設が不要で初期コストが抑えられる |
既存回線の利用 | すでに使用しているインターネット回線をそのまま活用できる |
メリットは導入コストが低く、既存のインターネット回線を利用できる点です。新しい通信回線を作成する必要がないため、初期コストを抑えられます。
デメリット | 内容 |
通信速度不安定 | インターネット回線の品質に依存するため通信速度が不安定 |
セキュリティリスク | 外部の通信経路の脆弱性を突かれる可能性がある |
一方で通信速度がインターネット回線の品質に依存してしまうので、回線品質が悪いとVPNの応答性能が低下します。テレワーク利用時などにストレスを感じることがあります。
また通信経路上にあるルーター等の脆弱性を突かれると、セキュリティが損なわれる可能性があるのがデメリットです。VPNは暗号化されていても、その外側の通信路の安全性が確保できないリスクがあります。
IP-VPN用サーバーの特徴
IP-VPNは専用線を使用してVPNサーバーに接続します。
メリット | 内容 |
高速安定な通信 | 専用回線を使用するため通信品質が非常に高い |
高いセキュリティ | 専用回線内での通信は安全性が担保される |
IP-VPNの大きなメリットは、専用の閉域網を利用することで通信速度が極めて高速で回線品質も安定していることです。テレワーク利用時のストレスが少ないのが魅力です。
デメリット | 内容 |
導入コストが高額 | 専用回線の設置には高額な初期コストがかかる |
回線設置の手間 | 拠点間接続の場合、回線工事の手間がかかる |
一方で専用線を設置するために初期の導入コストがかかります。特に拠点間を接続する場合、設置費用が高額になるデメリットがあります。
しかしセキュリティ面では、専用線内の通信は高い安全性が担保されます。機密データを扱う企業にとってIP-VPNは安心な選択肢といえます。
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VPNサーバーを使うメリット
VPNサーバーを利用することで、さまざまなメリットを得られます。
ここではVPNサーバーを使うメリットについて、詳しく解説していきます。
機密情報の保護と漏洩防止
VPNでは通信経路を暗号化するため、重要な情報を第三者に見られるリスクが低減できます。例えば外出先からのメール送受信やファイルアクセス時にも通信は暗号化されるので、機密データが盗み見られる心配がありません。
特に公衆にある無料Wi-Fiを使う場合、通信内容を他人に覗き見られる可能性がありますが、VPNを使えば通信内容は安全に保護されます。個人情報や金融情報、新製品の図面等の機密文書も漏れる心配はありません。
加えて社内の機密情報が外部に漏洩した場合、企業イメージの失墜や著作権侵害の問題が発生するリスクがあります。情報漏洩に起因する損害賠償請求により、企業は多大な経済的損失を被る可能性も否定できません。
これらの情報漏洩による信用失墜や損害賠償リスクを回避するために、VPNによる通信内容の保護は欠かせません。
コストの削減
VPNを利用することで社員は自宅から会社のシステムに安全にアクセスできるようになり、リモートワークを実現できます。
これにより社員の不要な移動を減らすことが可能です。例えば遠方の拠点への定期的な訪問だけでなく、近場の営業先への日中の出張でも、オンライン会議に代替することで移動時間と交通費を削減できます。
また関連会社との会議でも実際に移動する代わりにテレビ会議システムを使えば、移動コストと時間を大幅に節約できます。
加えて海外出張の際も、現地とのオンライン会議を活用することで、航空賃・宿泊費・日当などの諸経費を削減できる可能性が広がります。
さらに拠点間の専用回線も不要になるので、多額の通信回線使用料の削減が実現できます。
例えば拠点Aと拠点BをVPN接続すれば従来の専用回線は不要となり、その分の通信料金を節約できます。その上テレワークの拡大に伴い、会社のオフィススペースをスリム化できるので、事務所の賃料や光熱費等の固定費削減効果も期待できます。
このようにVPNは、出張交通費、回線使用料、事務所維持費など、多岐にわたるコスト削減効果がある非常にメリットの大きいソリューションです。
複数の拠点で接続が可能
VPNを利用すれば、社員は複数拠点からサーバーに接続できます。
例えば本社と工場、営業所の間をVPNで接続すれば、社員はどの拠点からでも業務アクセスが可能です。移動せずとも必要な情報にアクセスできます。
東京と大阪に拠点がある場合、東京の社員は大阪のファイルサーバーやアプリケーションにVPN経由で接続できます。重要な資料をメール添付などではなく、安全にVPN上で直接送付できるのが利点です。
新規に支店や工場を開設する場合にも、その拠点をVPNに接続するだけですぐに社内システムを利用できるようになります。このため、新拠点でのシステム導入準備も最小限で済みます。
拠点の追加や統合があってもVPNなら柔軟に対応でき、拠点間の移動コストも削減できる優れたソリューションです。また、異動の際の引継ぎ作業もスムーズにできます。
このようにVPNは拠点数の変更に対応しやすく、セキュリティも確保した拠点間連携を実現します。
モバイル端末でも社内ネットワークへのアクセスが可能
VPNサーバーを使えば、外出先やテレワークでもモバイル端末から社内ネットワークにアクセス可能です。
場所に縛られずに業務を行えるため、営業社員が顧客先を訪問したり、出張先で業務を行ったりする場合でも、VPNサーバーを介して社内システムを利用できます。
これにより、顧客先や出張先でも最新の情報を確認したり、社内システムを利用した業務を行ったりすることが可能になり、業務の効率化や顧客満足度の向上といった効果が得られます。
また、暗号化された安全な通信路を確保できるため、情報漏えいリスクも最小限に抑えられます。
このように、VPNサーバーは、企業の働き方改革を推進し、業務の効率化や生産性向上、セキュリティ強化を実現する上で、重要な役割を果たしているといえるでしょう。
VPNサーバーを使うデメリット
VPNサーバーにも以下のようなデメリットがありますが、対策を取ることで影響を最小限に抑えられます。
以下、VPNサーバーのデメリットについて詳しく解説していきます。
インターネットが遅くなることがある
VPNを使うと、インターネットの速度が低下する場合があります。
これはVPNの暗号化処理により通信に遅延が発生するためです。しかし高速な回線を使用し、CPU性能の高いVPNサーバーを選択すれば、速度の低下は最小限に抑えられます。
例えば光ファイバーなどの高速回線を利用し、期待される同時接続ユーザー数に見合った規模のVPNサーバーを構築することで、快適な通信環境を実現できます。
VPNの速度低下で業務に支障が出ないよう、回線の選定とサーバーのスペックの検討は導入前に十分に行う必要があります。また通信量の多いコンテンツはVPN内ではなくインターネット経由で配信する等の運用で、VPNへの負荷集中を避けることも重要です。
接続台数に限りがある
多くのVPNサーバーでは、同時に接続できるクライアント数に上限が設けられています。
多くのユーザーが同時にアクセスすると、接続が遅くなったり、接続できなくなったりすることがあるのです。
一般的に、数十台から数百台程度の接続台数に対応しており、それ以上の台数を接続すると、パフォーマンスが低下したり、接続できなくなったりする可能性があります。
このため、ユーザー数に合わせて適切なVPNサーバーを選択する必要があります。
設定が難しい
VPNの設定には、サーバーやネットワークに関する専門的な知識が必要です。VPNサーバーを自社構築する場合、セットアップから運用設定までが複雑になります。
しかし設定作業を外部のVPNベンダーにアウトソーシングすることで、手間を大幅に省けます。
ベンダーならセキュリティ要件に応じた適切な設定を施し、使いやすい管理画面を用意してくれます。設定変更もニーズに合わせて迅速に対応してくれるので、運用の手間を最小限に抑えられます。
例えば新しい拠点を追加する場合、ベンダーに依頼すればサーバー設定やクライアント設定をスムーズに行えるため、自社で設定するよりも手間とリスクを大幅に軽減できます。
設定の難易度が敷居を高くしている場合は、VPNの専門ベンダーに任せるのが簡単な対処法です。
複数の拠点で接続できる為に管理が複雑になる
拠点数が増えるとVPNの管理が大変になります。拠点ごとにサーバーやクライアントの設定変更が発生するため、管理作業が煩雑になるためです。
しかし、Webベースの全拠点一括管理システムなどを活用すれば、1か所から複数拠点のVPNを一括管理できます。
例えば本社の管理者はWEB画面から遠隔拠点のVPNサーバー設定を一括変更できたり、クライアントの認証設定も一括で行えます。ログの一元管理も可能で、複数拠点のログを1画面で確認できます。
さらにアラート通知機能を設定しておけば、トラブルも素早く検知できます。
このように適切な管理ツールを使えば、拠点数増加に伴う運用面の負担は大きく軽減できます。
情報漏洩のリスクがある
VPNサーバーを使うと、インターネット上を暗号化された通信路で接続できるため、情報漏洩のリスクは低減できます。ただし、VPNサーバーのID/パスワードが漏洩すると、不正アクセスされる可能性があります。
また、VPNクライアントソフトの脆弱性を狙ったマルウェア感染や、ユーザーの不備による設定ミスなどが原因で機密情報が流出するリスクもあります。
ID/パスワードの管理には十分注意する、VPNクライアントソフトを常に最新の状態するといった、適切なセキュリティ対策をすることが重要です。
有料と無料のVPNサーバーの違い
有料のVPNサービスと無料のVPNサービスにはそれぞれ違いがあります。
ニーズに合ったVPNを選ぶために、この違いを知ることが大切です。
以下、有料のVPNサービスと無料のVPNサービスの違いについて詳しく解説していきます。
セキュリティとプライバシーの保護レベル
無料VPN | 有料VPN | |
セキュリティレベル | 低い | 高い |
暗号化強度 | 弱い | 強い |
脆弱性 | 高い | 低い |
おすすめ度 | 低 | 高 |
有料のVPNサービスは、セキュリティとプライバシー保護の面で一定の品質が担保されています。厳選されたサーバー機器、通信の高度な暗号化、厳格なログ保持方針等が採用されていることが多いです。
一方無料のVPNサービスは、コスト削減のためセキュリティ面での品質が十分でない場合があります。サーバーは低スペックで暗号化レベルも低いものが採用されている可能性があり、通信内容を保護できないリスクがあります。
安全な通信を実現したい場合、有料のVPNサービスを選択することをおすすめします。料金を払う分、セキュリティ面での信頼性がより高いサービスを利用できます。
特に機密性の高い通信や個人情報のやり取りをVPNで行う場合は、有料サービスの利用が不可欠でしょう。
広告の有無とユーザーエクスペリエンス
項目 | 無料VPN | 有料VPN |
広告の有無 | 多数の広告が表示される | 広告がない |
UX | 不快な広告によりストレスが高い | ストレスなく快適に利用可 |
おすすめ度 | 低 | 高 |
無料のVPNサービスでは収益を広告に頼る場合が多く、アプリやサイト表示時に広告が頻繁に表示されます。動画視聴時に動画冒頭で広告が頻繁に表示されます。
一方有料のVPNはサービス利用料収入で成り立っているため、ウェブサイトやアプリの使用中に邪魔な広告が表示されることはありません。
したがって、快適なユーザーエクスペリエンス(UX)を重視するのであれば、有料のVPNサービスを選択することをおすすめします。
ストレスなくサービスを利用するためにも広告のない環境は重要です。特に動画ストリーミングや音楽再生などを頻繁に行うのであれば、広告の挿入による邪魔がない有料VPNを使うとよいでしょう。
データ使用制限
無料VPN | 有料VPN | |
データ使用制限 | あり | なし |
特徴 | 月間で使用できるデータ量に上限がある | データ量制限がないのが一般的 |
備考 | 上限を超えると速度制限あり | 制限なく高速に使用可能 |
無料のVPNサービスでは、月間で使用できるデータ転送量に上限が設けられている場合があります。例えば、月10GBまでの制限があるサービスも多く見受けられます。
一方有料のVPNサービスはデータ量の制限がないのが一般的です。月額料金を支払う分、データ使用量には制限はありません。
したがって通信量の多い動画視聴や大容量ファイルの送受信を頻繁に行う場合は、データ制限のない有料VPNサービスの利用を強くおすすめします。
無料VPNの場合、上限に達すると速度が制限されることがあるため、有料VPNを使うことでストレスなくサービスを利用できます。
サーバーの数
無料VPN | 有料VPN | |
---|---|---|
サーバー数 | 少ない | 多数あり |
サーバー地域 | 限定的 | 世界主要国全て |
サーバー選択 | 不可 | 自由に選択可 |
有料のVPNサービスでは、世界各地に多数のサーバーを配置しているのが一般的です。アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど主要な拠点を全てをカバーしているケースが多く見られます。
これに対し無料のVPNサービスはサーバー数が限られています。国や地域を選択できることはあまりありません。サーバー数が豊富な有料VPNを利用すれば、自分の接続状況や利用目的に応じて最適なサーバーを自由に選択できます。
例えば動画サイトの視聴はアメリカサーバー、海外のサイト閲覧は現地のサーバーなど、用途に応じて切り替えすることが可能です。
また複数のサーバーを使い分けることで、混雑による速度低下を防ぐ効果も期待できます。サーバーが集中するリスクが下がります。
カスタマーサポート体制
無料VPN | 有料VPN | |
対応時間 | 限定的 | 24時間365日 |
対応品質 | 不十分 | 高品質 |
対応方法 | 限定的 | 多様なチャネル |
有料のVPNサービスでは、24時間年中無休のカスタマーサポートを提供していることが多いです。
お客様からの問い合わせに即応できる体制が整っており、メール、チャット、電話等を通じて問い合わせをすることが可能なため、問題が迅速に解決できます。
一方無料のVPNサービスのサポートは十分とは言えません。問い合わせに対するレスポンスが遅かったり、サポート窓口が限定的などの課題があります。
VPNのセットアップ方法が分からない、接続できない等の問題が発生した際に有料VPNなら安心して相談できるのが強みです。
インターネットVPNサーバーの構築手順
自社でインターネットVPNサーバーを構築する場合の具体的な手順を、初心者にもわかりやすく解説します。
STEP1 : VPNルーターの準備
VPNサーバー構築には、専用のVPNルーターが必要です。
VPNルーター選びでは、同時接続ユーザーの見込み数が重要なポイントになります。例えば同時接続100ユーザーを想定する場合は、それに見合った処理能力を持つルーターを選択する必要があります。接続ユーザー数に応じて適切なルーターを選択しましょう。
低スペックのルーターを選ぶと、ユーザー数が増えるにつれて通信速度が低下していきます。業務に支障が出ないよう、将来のニーズも見越した上でのルーター選定が不可欠です。
また拠点数の増加やセキュリティ要件の変更にも対応できる柔軟性も大切なポイントです。拡張性の高いルーターを選ぶことをおすすめします。
特に最近はテレワーク需要も高まっているため、VPNルーター選びでは拡張性と将来の同時接続数増加への対応力が重要視されます。処理能力に余裕を持たせることで、ビジネス拡大に合わせてVPNユーザーが増えても柔軟に対応できます。
STEP2 : VPNルーターの設置
VPNルータの設定手順について説明します。
1. VPNルーターを、オフィスのインターネット回線に接続します。
2. ルーターの設定画面から、ネットワークの基本設定を行います。
3. VPNルーターをオフィスのインターネット回線に有線LANケーブルで接続します。
4.ルーターの電源を入れてルーターのIPアドレスをPCやスマートフォンのブラウザに入力し、ルーターの設定画面を開きます。
5. ルーターの設定画面から、LAN側のIPアドレス設定、WAN側のインターネット接続設定、DNSサーバーやゲートウェイの設定を行います。これらのネットワーク設定を正しく行うことで、インターネットへの接続を確立できます。
6. 最後にVPNの通信プロトコルや暗号化方式、利用ポートの選択など、セキュリティ関連の設定を行います。ファイアウォールの設定も忘れずに行いましょう。
ルーターの設定方法はメーカーによって異なるため、設定マニュアルをよく読み、設定内容を確認しながら作業を進めることが大切です。
特にセキュリティ関連の設定は慎重に行い、セキュリティ要件に合致するよう設定値を選択しましょう。
※ファイヤーウォール・・・ファイアウォールとは、外部からの不正アクセスを防ぐためのセキュリティシステムです。VPNルーターのファイアウォール設定で、通信の監視や制限を設定します。
※ゲートウェイ・・・ゲートウェイとは、異なるネットワーク間でデータを受け渡すための中継装置です。インターネットに接続するための経路情報をVPNルーターに設定します。
※WAN側とLAN側について・・・WANはインターネット側のネットワーク、LANはローカル側のネットワークを指します。VPNルーターはその両方の設定が必要です。
STEP3 : VPNソフトをインストール
VPNルーターにVPNソフトをインストールする手順を説明します。
1. VPNルーターに、VPN接続のためのソフトウェアをインストールします。2. 管理画面での設定により、VPNサーバーを構築します。VPNルーターには、IPsecやSSL-VPN等のプロトコルを実現するソフトウェアをインストールする必要があります。有名なのがSoftEther VPN Serverです。
3. SoftEther VPN ServerをVPNルーターにインストール後、ソフトの設定画面からVPNの通信プロトコルを選択し設定します(データの暗号化方式や共有キー、証明書の設定も行います)。
4. クライアントからの接続を許可するVPNアカウントを作成します。個別のユーザー名とパスワードを発行することで、VPNへのアクセスを管理できます。
5. 最後にVPNの通信経路を指定する静的ルーティングの設定を行うことで、VPNサーバー構築は完了です。
クライアントは設定したアカウントで接続できるようになります。
IP-VPNサーバーの構築手順
IP-VPNは企業向けの専用線サービスであり、構築手順が比較的複雑になります。
インターネットVPNに比べると費用や手間がかかりますが、高いセキュリティと安定した通信を実現できます。
ここではIP-VPNサーバーの作り方を、順を追って説明します。
STEP1 : 通信会社と契約
IP-VPN用サーバーを利用するには、まず通信会社と専用線契約を結ぶ必要があります。専用線は、インターネット回線とは異なり、通信事業者が提供する専用の回線です。
通信会社との契約時に、必要な通信速度や帯域幅、拠点数などを決定します。また、セキュリティ対策として、ファイアウォールやVPNゲートウェイなどの設備が必要となる場合もあります。
利用目的に合わせて適切なプランを選択しましょう。
STEP2 : CEルータの設置・設定
専用線が引き込まれたら、CEルータと呼ばれるルーターを設置し、設定を行います。CEルータは、社内ネットワークと専用線を接続する役割を果たします。
CEルーターの設定では、IPアドレスの割り当てやVPNトンネルの設定などを行うため、専門的な知識や技術が必要となります。
設定を誤ると、通信ができないなどの問題が発生する可能性があるため、自社で設定するのは難しい場合は、専門業者に依頼することをおすすめします。
STEP3 : VPNクライアントソフトをインストールする
社員が利用するパソコンやスマートフォンに、VPNクライアントソフトをインストールします。VPNクライアントソフトは、VPNサーバーに接続するためのソフトウェアです。
クライアントソフトの設定では、接続先のIPアドレスやユーザー認証情報の入力が必要です。設定が正しくないと、VPN接続ができない可能性があるため、注意が必要です。
VPNクライアントソフトは、通信会社から提供される場合と、市販のソフトを利用する場合があります。社内ネットワークの環境や利用目的に合わせて、適切なVPNクライアントソフトを選択しましょう。
VPNサーバーを選ぶ際のポイント
VPNサーバーを選ぶ上で、セキュリティ、コスト、操作性などの点に注意が必要です。
正しくVPNを選べば、ビジネスの効率UPにつながります。
以下、VPNサーバーを選ぶポイントを詳しく解説していきます。
セキュリティプロトコルの種類と強度
プロトコル・暗号化 | 特徴 | セキュリティ度 |
IPsec | 標準的なVPNプロトコル | 普通 |
SSL-VPN | IPsecに比べ設定が簡単 | 普通 |
OpenVPN | オープンソースのVPN | 高 |
AES 128bit | 128bitの鍵で暗号化 | 普通 |
AES 256bit | 256bitの鍵で暗号化 | 高 |
RSA | 公開鍵暗号方式 | 高 |
安全性の高いVPNプロトコルと暗号化を採用したサーバーを選びましょう。VPNサーバーを選ぶ際は、採用しているセキュリティプロトコルを確認することが非常に大切です。
IPsec、SSL-VPN、OpenVPNなどの主要なプロトコルがありますが、いずれも通信内容の暗号化方式の違いがあります。
例えばAESや3DESなどの共通鍵暗号化方式と、RSA暗号化方式が代表的です。鍵長が128ビット、256ビットなど強度も異なります。安全性の高いVPNサービスを実現するには、TLS1.3、AES256など、最新で強固な暗号化プロトコル・方式を採用したサーバーを選択することが欠かせません。
情報セキュリティの観点からは、高強度の暗号化を行うVPNサーバーを利用することを強くおすすめします。特にPersonalVPNや仮想プライベートネットワークには、高度なセキュリティが不可欠です。
接続速度と安定性
快適なVPN利用のため、通信速度と安定性を確認することが大切です。VPNサーバー選定の際は、実際の通信速度を確認するテストが欠かせません。速度測定ツールを使用して、VPN ON時の速度低下の程度をチェックしましょう。
また通信の安定性も大切なポイントです。VPNに接続できないトラブルが発生しないか、PING値を確認する等して、安定稼働しているかを見極める必要があります。VPNの品質はユーザーの業務効率に大きく影響します。通信遅延でストレスが溜まったり、接続が頻繁に切断されるようではVPNのメリットを受け取れません。
高速・大容量の回線に対応した高性能なVPNサーバーや適切なネットワーク設計は、快適なVPN環境を実現するために非常に重要です。十分な通信速度と常時安定稼働が期待できるVPNサービスを選択することを強くおすすめします。
特に動画編集や大容量ファイル転送といった大量のデータ通信を行う場合には、通信品質が業務効率に大きな影響を与えます。サービス選定の重要な判断材料となります。
※PING値・・・PING値とは、ネットワークの応答速度を表す指標です。値が小さいほど応答が早く、通信状況が良好であることを示します。VPNの品質判断において、PING値を確認することで、そのVPNサービスの通信安定性や遅延状況が分かります。
サーバーの数と場所
サーバーは主要国に多く配置されていたほうが利便性が高くなります。VPNサービス選びでは、提供しているVPNサーバーの数と設置場所を確認することが大切です。
サーバーが豊富に用意されているVPNサービスの方が、混雑時の速度低下リスクが軽減される利点があります。また主要国にサーバーが存在していれば、現地の通信事情や法規制に対応しやすくなります。例えば海外での動画視聴利用を考える場合、現地のVPNサーバーを選択することで、快適な再生が可能になります。
サーバー数が十分で全世界的に拠点が存在している有名VPNサービスを選ぶことで、用途に応じた最適なVPNサーバーを自由に選択できるメリットがあります。
使いやすさ
操作が簡単なインターフェースのVPNサービスを選ぶとストレスが少ないです。VPNサービスを選ぶ際には、その操作性やUIも重要なポイントです。
VPNアプリや管理画面が直感的で分かりやすくデザインされていれば、ユーザーはストレスなく使いこなせます。逆に使いにくいUIだと、プライベートネットワークへのアクセスに手間取ってしまいます。例えばVPNのオン/オフ、サーバー選択、設定変更がスムーズに行えるかを検証する必要があります。
また分かりやすいチュートリアルや操作マニュアルが用意されていれば、利便性が向上します。
日常的にVPNを利用するうえでは、操作性とUIは非常に重要な要素です。使いやすさを考慮してVPNサービスを選択することをおすすめします。
VPNサーバーのまとめ
この記事では、VPNサーバーの仕組みからメリット、デメリット、構築方法等について解説しました。
VPNサーバーは、リモートアクセスや拠点間ネットワークの構築に不可欠なツールです。インターネットVPNとIP-VPNの2種類があり、用途や環境に合わせて適切な選択が重要になります。
VPNサーバーを導入することで、機密情報の保護、コスト削減、モビリティの向上など、様々なメリットが得られます。一方で接続速度の低下や設定の複雑さ、情報漏洩リスクといったデメリットにも留意する必要があります。
VPNサーバーは構築手順も種類によって異なるため、専門知識が求められます。自社にリソースが不足している場合は、外部の専門家に相談するのがおすすめです。
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