アンサンブル学習は、複数の異なる機械学習モデルを組み合わせて単一の強力な学習器を生成する手法の総称です。
アンサンブル学習は単一モデルを上回る高い予測性能が期待でき、また異種のモデルを組み合わせられる点で柔軟性と汎用性にも優れています。デメリットもありますが、目的と状況に応じて適切な手法を選択することで、機械学習の性能向上に大きく貢献することができるでしょう。
それでは、詳しく解説していきましょう。

プログラマー兼ネットワークエンジニア。 24歳でエンジニアの世界に飛び込むも、いきなり大手企業機器の検証担当に。 その後も検証をこなしていく中で、自動的にできないものかと試行錯誤しているといつの間にかプログラマーへとステップアップ。 現在はプログラミングの方が好き。
アンサンブル学習とは?

アンサンブル学習とは、複数の異なる機械学習モデルの出力を統合することで、単一モデルよりも高い予測精度を実現する手法です。
単一のモデルには、バイアスや過学習などの問題があり、モデルの構造や学習データによっては、性能に限界がありました。これに対し、異なるモデルは異なる誤りを生じるため、それらを組み合わせることで誤りを相殺し、より堅牢な予測が可能になります。
このように、アンサンブル学習は単一モデルの限界を打破し、堅牢で高性能な予測モデルを実現する有力な手段として、機械学習の発展に大きく貢献してきました。精度向上を目指すデータサイエンティストにとって、欠かせない概念の一つと言えるでしょう。
【並列アンサンブル法】アンサンブル学習の主な手法

並列アンサンブル法は、複数の機械学習モデルを並列に組み合わせて予測精度を高めるアンサンブル学習の手法です。
それぞれのモデルが独立して学習を行うため、特定のモデルに依存せず、誤差の分散を小さく抑えられるメリットがあります。
ここでは、並列アンサンブル法の代表的な手法について解説します。
- バギング (Bagging)
- ランダムサブスペース法
- 投票 (Voting)
これらの手法を理解することで、複数モデルを効果的に活用し、より高い精度で安定した予測結果を得ることができます。
バギング(Bagging)

バギングとは、ブートストラップ・アグリゲーティングの略称で、並列アンサンブル手法の一種です。学習データからランダムにサンプリングしたデータセットで複数のモデルを構築します。
それぞれのモデルは、元のデータセットの一部しか見ていないため、バイアスは大きくなる反面、バリアンスは小さくなります。
こうして構築された複数のモデルの出力を多数決で統合することで、個々のモデルのバイアスを打ち消し、バリアンスを抑えられるのがバギングの利点です。
ランダムサブスペース法
ランダムサブスペース法は、アンサンブル学習でモデルの多様性を高めるための手法の一つです。
この手法では、学習データから特徴(変数)をランダムにサンプリングし、異なる特徴の組み合わせを使用して複数のモデルを学習させます。
これにより、各モデルが異なる視点からデータを捉え、過学習を防ぎながら予測精度を向上させることができます。
このようにランダムサブスペース法を活用することで、予測の安定性と汎用性が高まります。
投票 (Voting)
投票(Voting)は、複数のモデルの予測結果を集約して最終的な予測を決定するアンサンブル学習の手法です。
各モデルが個別に学習を行い、それぞれの予測結果に基づいて多数決を取ったり、重み付けをして最終の予測結果を決定します。
このように投票を用いることで、モデル間の意見を組み合わせた精度の高い予測が実現します。
【逐次アンサンブル法】アンサンブル学習の主な手法

逐次アンサンブル法は、複数の機械学習モデルを順番に組み合わせて予測精度を高めるアンサンブル学習の手法です。
前のモデルの結果を次のモデルが引き継ぎながら学習を進めるため、各モデルが逐次的に誤差を補正し、精度を向上させることができます。
ここでは、逐次アンサンブル法の代表的な手法について解説します。
- ブースティング (Boosting)
- スタッキング (Stacking)
これらの手法を理解することで、データの特徴をより細かく捉え、連携することで高精度な予測モデルを構築できるようになります。
ブースティング (Boosting)

ブースティングは、弱い予測モデルを順次重ね合わせる逐次アンサンブル手法の総称であり、代表例が勾配ブースティングです。
初期の単純なモデルから始め、次のモデルでは前のモデルの誤差に着目して学習を行います。
このように徐々にモデルを補強していくことで、最終的に強力な予測モデルを構築できます。ただし計算コストが高く、過学習に陥りやすいというデメリットもあります。
スタッキング (Stacking)

スタッキングは、複数の異なる学習アルゴリズムで構築したモデルの出力を、別の学習器で統合するメタ手法です。つまり、アンサンブル学習のアンサンブルとも言えます。
各ベースモデルの出力と正解ラベルを新しい学習データとして、メタモデルを構築します。異種のモデルを組み合わせられるため、単一モデルの限界を打破できる可能性があります。
一方で、過学習リスクが高いというデメリットもあります。
【その他】アンサンブル学習の主な手法

その他のアンサンブル学習の手法としては、並列や逐次とは異なる手法があり、より柔軟で多様なモデルの組み合わせがあります。
ここでは、その他のアンサンブル手法をいくつかご紹介します。
- ブレンディング (Blending)
- カスケーディング
- ハイブリッド手法
これらの手法を理解することで、アンサンブル学習の多様な応用方法を見つけ出し、最適なモデル構築に役立てることができます。
ブレンディング (Blending)
ブレンディング(Blending)は、異なるモデルの予測結果を組み合わせて最終予測を行うアンサンブル手法です。
この手法では、異なるモデルをトレーニングし、それぞれの予測結果を新たな上位モデルに入力して最終予測を生成します。
ブレンディングは、モデルの多様性を確保しながら、それぞれのモデルが持つ強みを活かすことができるため、予測精度が向上するメリットがあります。
このようにブレンディングを活用することで、モデルの個別精度を高めつつ、総合的なパフォーマンス向上が期待できます。
カスケーディング
カスケーディングは、複数のモデルを連鎖的に組み合わせ、前のモデルの出力を次のモデルの入力として利用するアンサンブル学習の手法です。
これにより、各モデルが順次的にデータを精査し、予測精度を高めることができます。
このように、カスケーディングを活用することで、モデル間の協調効果を生み出し、より高精度な予測や分類を実現できます。
ハイブリッド手法
ハイブリッド手法は、異なるアンサンブル手法や機械学習アルゴリズムを組み合わせることで、各手法の強みを活かしながら、弱点を補完し合うアプローチです。
これにより、より柔軟で高精度な予測モデルを構築することが可能です。
このように、ハイブリッド手法を活用することで、多様なデータに対応した柔軟なモデルが実現します。
アンサンブル学習のアルゴリズム

アンサンブル学習に用いられる代表的な手法である「スタッキング」「投票」「エイダブースト」「ランダムフォレスト」「バギング」について、それぞれのアルゴリズムを紹介し解説します。
スタッキング
スタッキングは、異なる複数のベースモデルの出力を、別のメタモデルに入力し、統合する手法です。
具体的には、まずベースモデルを構築し、学習データに適用することで出力を得ます。この出力と正解ラベルの組を新しい学習データとして、メタモデルを学習させます。
つまり、メタモデルはベースモデルの出力から正解を予測するように訓練されます。異種アンサンブルであり、単一モデルの限界を打破できる可能性があります。
投票
投票法では、複数のモデルの出力を単純に集計し、多数決で最終予測を決めます。同じ重みを各モデルに割り当てる単純投票と、モデルの性能に応じて重みを変える加重投票があります。
前者は計算コストが低く実装が容易ですが、性能の悪いモデルの影響を受けやすいデメリットがあります。
後者は性能の良いモデルに高い重みを与えられますが、重みの決定が難しい面があります。
エイダブースト
エイダブースト(AdaBoost)は、ブースティングの代表手法です。最初に単純な予測器を構築し、その出力から重みを更新して次のモデルを作ります。
これを誤分類サンプルに高い重みを付けながら繰り返し行います。このように、徐々に性能を高めていき、最終的に強力なモデルへと変化させていきます。
ただし、ノイズに弱く、過学習に陥りやすい傾向があるため、注意が必要です。
ランダムフォレスト
ランダムフォレストはバギングの考え方を決定木アルゴリズムに応用したアンサンブル手法です。
ブートストラップサンプリングにより複数の異なる学習データを作成し、決定木をそれぞれで構築します。 さらに各決定木を構築する際、特徴量の一部をランダムに選択する「特徴量ランダム化」を行うことで、決定木間の多様性を高めています。
安定した高い予測性能が得られるのが大きな利点です。
バギング
バギング(Bagging)は、ブートストラップ・アグリゲーティングの略称で、並列アンサンブル手法の基本形です。
学習データからブートストラップサンプリングにより複数の異なるデータセットを作成します。そしてそれぞれのデータセットで独立にモデルを構築し、最終的にそれらの出力を統合することでアンサンブルモデルが完成します。
モデル間のバリアンスを減らす効果があり、単一モデルに比べ高い汎化性能が期待できます。
勾配ブースティング決定木
勾配ブースティング決定木は、アンサンブル学習の一手法で、複数の決定木モデルを逐次的に学習させ、精度を向上させるアルゴリズムです。
各決定木が前のモデルの誤差を学習し、次のモデルでその誤差を補正することで、段階的に予測の精度を高めていきます。
この手法は分類や回帰問題で高い精度を発揮し、データの複雑なパターンを効果的に捉えることができます。
このように、勾配ブースティング決定木は誤差の補正を重ねることで、精度の高い予測を実現します。
エクストリーム勾配ブースティング
エクストリーム勾配ブースティング(XGBoost)は、勾配ブースティングを高速で高精度に実装することを目的としたアンサンブル学習アルゴリズムです。
XGBoostは、並列処理やメモリ効率の改善、正則化項の追加により、一般的な勾配ブースティングよりも高い精度と計算効率を実現しています。
このため、大規模データセットや複雑なデータに対しても迅速に処理が行えます。
このように、XGBoostは効率と精度を両立したアルゴリズムとして、多くの実践的な用途で利用されています。
ライト勾配ブースティング
ライト勾配ブースティング(LightGBM)は、大規模データセットに対して効率的に学習を行うために設計された勾配ブースティングアルゴリズムです。
LightGBMはデータを効率的に分割し、必要な部分だけに集中して学習を行うことで、従来の勾配ブースティングと比べて高速で軽量なモデルを構築できます。
このため、リアルタイム性が重要なタスクや大量のデータを扱うプロジェクトに最適です。
LightGBMは速度と効率を重視したアルゴリズムとして、多様なデータ分析に利用されています。
アンサンブル学習のメリット

アンサンブル学習には、複数のモデルを組み合わせて使用することで得られる多くのメリットがあります。
ここでは、アンサンブル学習の主なメリットについて解説します。
- より正確な予測ができる
- 失敗しにくくなる
- 安定した結果が得られる
- 何が重要かわかりやすくなる
- 様々な方法を組み合わせられる
これらのメリットを理解することで、アンサンブル学習の効果を最大限に活かし、より優れたモデル構築に役立てることができます。
より正確な予測ができる
アンサンブル学習では、複数のモデルの予測結果を組み合わせることで、単一モデルよりも正確な予測が可能です。
異なるモデルが異なる特徴を補完し合い、それぞれの誤差を平均化することで、精度の高い予測を実現します。
特に、複雑なデータセットに対して効果的で、個別のモデルが見落とすパターンや傾向を捉えることができます。
このように、アンサンブル学習は複数モデルの強みを活かし、より精密で信頼性の高い予測を可能にします。
失敗しにくくなる
アンサンブル学習では、複数のモデルを組み合わせて使用するため、単一のモデルに依存する場合に比べて、全体として失敗しにくくなります。
異なるモデルが互いに補完し合うことで、特定のモデルがデータの一部で誤差を出しても、他のモデルがその誤差をカバーするため、安定した結果が得られます。
このように、アンサンブル学習は複数モデルの協調により、安定性と信頼性の高い予測を実現します。
安定した結果が得られる
アンサンブル学習は、複数のモデルを組み合わせることで予測結果に安定性をもたらします。
個別のモデルが異なる特徴やパターンに基づいて学習するため、各モデルの予測結果が相互に補完され、全体として安定した結果が得られやすくなります。
このように、アンサンブル学習は安定したパフォーマンスを求める場合に適した手法です。
何が重要かわかりやすくなる
アンサンブル学習では、複数のモデルを組み合わせることで、予測における各要素の重要性がわかりやすくなります。
さまざまな視点からデータを解析するため、どの変数や特徴が結果に強く影響するのかを特定しやすくなり、データ理解が深まります。
このように、アンサンブル学習は要素の重要性を明確にするため、予測精度の向上だけでなく、データの解釈やモデルの改善にも役立ちます。
様々な方法を組み合わせられる
アンサンブル学習では、異なるアルゴリズムや手法を柔軟に組み合わせることができ、データの特性に最も適したモデルを構築できます。
これにより、特定のモデルの弱点を補い、全体の予測精度や安定性を向上させることが可能です。
このように、アンサンブル学習は目的や状況に応じて最適な手法を組み合わせられる点で、他の学習方法に比べて柔軟性が高い特徴を持ちます。
アンサンブル学習のデメリット

アンサンブル学習には高い予測性能や汎用性など大きなメリットがある一方で、デメリットもいくつか存在します。
主なデメリットとしては、「構築に時間がかかる」「過学習の可能性」「解釈性の低下」があげられます。
これらのデメリットを理解した上で、目的に応じてアンサンブル学習を適切に活用することが重要です。
構築に時間がかかる
アンサンブル学習は、複数の異なるモデルを構築し、統合するため、単一モデルに比べて構築に時間がかかるというデメリットがあります。
特に逐次的なブースティング手法では、モデルを徐々に改良していく必要があり、計算コストが高くなる傾向にあります。
並列アンサンブル法でも、多数のモデルを構築する必要があり、計算リソースを多く要します。モデル構築時間の増加は、アンサンブル学習における大きな課題の一つと言えるでしょう。
過学習の可能性がある
アンサンブル学習は単一モデルよりも高い表現力を持つため、過学習のリスクが高まる可能性があります。特に強力すぎるモデルを組み合わせた場合、訓練データにきつく適合してしまい、未知のデータへの汎化性能が低下する恐れがあります。
この問題を回避するには、モデル間の多様性を確保し、バイアスとバリアンスのバランスを保つことが重要になってきます。
単に強力なモデルを組み合わせただけでは、過学習に陥りかねません。
解釈性が低下する恐れがある
解釈性とは、機械学習モデルの出力結果や内部の動作プロセスを人間が理解し説明できる度合いのことを指します。
単一の解釈可能なモデルであれば、ある入力に対してどのような計算プロセスを経て出力が導かれたのかを追跡し、予測根拠を明確に説明することができます。モデルの挙動を人間が理解しやすいほど、解釈性は高いと言えます。
アンサンブル学習では、複数のモデルの出力が複雑に統合されるため、最終的な予測結果への貢献度を個々のモデルごとに分離して説明することが困難になります。特に異種のモデルを組み合わせた場合、出力はブラックボックス化し、人間にはその内部プロセスを理解しにくくなってしまうのです。
つまり、高い予測性能は獲得できても、なぜその予測をしたのかという理由付けが難しくなり、モデルの透明性が損なわれてしまいます。
このように、アンサンブル学習では単一モデルに比べ解釈性が低下するというデメリットがあるのです。
アンサンブル学習が成功するポイント

アンサンブル学習が効果を最大限に発揮するためには、いくつかの重要なポイントに注目する必要があります。
ここでは、アンサンブル学習を成功に導くために特に重視すべきポイントを紹介します。
- 多様性を持たせる
- バイアスとバリアンスのバランスを取る
- データの質を良くする
- 適切に組み合わせる
これらの要素をしっかり考慮することで、精度と安定性が向上し、アンサンブル学習のメリットを最大限に活用できます。
多様性を持たせる
アンサンブル学習で成功するためには、モデルに多様性を持たせることが重要です。
多様なアルゴリズムや異なる特徴量を用いたモデルを組み合わせることで、1つのモデルでは捉えきれない部分を補完し合い、全体の精度を向上させられます。
このように、多様性を意識してアンサンブルを組むことで、偏りを減らし、強力でバランスの取れたモデルが構築できます。
バイアスとバリアンスのバランスを取る
アンサンブル学習では、バイアスとバリアンスのバランスを取ることが精度向上の鍵となります。
バイアスが高すぎるとモデルの単純化が進みすぎてしまい、逆にバリアンスが高いと過学習のリスクが増大します。
この2つの要素を適切に調整することで、モデルがより汎用的で高精度な予測を行えるようになります。
このようにバイアスとバリアンスを調整することで、アンサンブル学習の効果を最大限に引き出すことが可能です。
データの質を良くする
アンサンブル学習を成功させるためには、データの質を高めることが重要です。
データの欠損やノイズが多いと、複数のモデルを組み合わせても予測の精度が低下する可能性があります。
そのため、データの前処理を丁寧に行い、必要に応じてデータクリーニングや特徴量エンジニアリングを行うことが大切です。
このようにデータの質を整えることで、アンサンブル学習の効果を最大限に発揮し、予測の信頼性を高めることができます。
適切に組み合わせる
アンサンブル学習では、モデルを適切に組み合わせることが成功のポイントです。
異なるアルゴリズムや手法を適切に選び、バランスよく組み合わせることで、それぞれのモデルの強みを引き出し、弱点を補い合うことができます。
これにより、単一モデルでは難しい高精度かつ安定した予測が実現できます。
このように、組み合わせを工夫することでアンサンブル学習の効果を最大限に発揮し、強力なモデルを構築することが可能になります。
まとめ:アンサンブル学習は複数の機械学習モデルを組み合わせた予測手法

アンサンブル学習とは複数の機械学習モデルを組み合わせることで単一モデルの限界を超え、高い予測精度と汎化性能を実現する手法であることをここまで説明してきました。
アンサンブル学習には、単一モデルを上回る高い予測精度と柔軟性・汎用性が期待できるメリットがあります。
一方で、構築に時間がかかる、過学習リスク、解釈性の低下といったデメリットも存在します。目的に応じて適切な手法を選び、長所を最大限に活かすことが重要になってきます。
データサイエンティストにとって、アンサンブル学習はモデリングの精度と性能を左右する重要な概念であり、十分に理解しておく必要があるでしょう。
AIに関する質問やAIを使ったシステム開発に関する質問や案件のご相談などがある場合、ぜひ弊社Jiteraにお問い合わせください。

 
                         
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