【入門】逆強化学習とは?模倣学習との違いやメリットをわかりやすく解説

皆さん、「逆強化学習」をご存知ですか?

人手不足が深刻化する可能性が高い状況にある現在、業務効率化などを目的に業務におけるAI(人工知能)の活用が様々な分野で行われています。

AIに欠かせない機械学習の一つに「逆強化学習」という手法があります。
本記事では、逆強化学習の基礎からメリットなどをわかりやすく解説していきます。

監修者 Kyama23_writer

本業でシステムエンジニアをしています。 分かりやすい記事を心がけています。

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    逆強化学習とは?

    逆強化学習は、設定された最適解を探索する強化学習に対し、熟練者の意思決定履歴を最適解だとしてその最適化指標を学習する技術です。

    つまり、「目標に対して、最適行動を導き出す」機械学習です。

    では、なぜ逆強化学習が誕生したのでしょうか、より詳しく見ていきましょう。

    また、逆強化学習を理解するうえで欠かせない知識である「強化学習」や「模倣学習」についても以下の通り解説をしていきます。

    まずは、逆強化学習の基本について理解を深めましょう。

    • 逆強化学習誕生の背景
    • 逆強化学習と強化学習の違い
    • 逆強化学習と模倣学習の違い

    逆強化学習の誕生背景

    逆強化学習の誕生背景

    これまでの強化学習でも十分に高度なシステムを作ることができましたが、強化学習でカバーできない困難なケースが出てきました。

    日本は人口減少により人手不足が深刻化する可能性が高い状況にあり、AIの活用が様々な分野で進んでいます。

    もし、人工知能が自律的な動きを行って、自らをコントロールすることができればどうでしょうか。

    このような社会現象を背景に逆強化学習が誕生しました。

    現在では、自動運転やWebサイトのアクセス解析、複雑な環境下でのロボットの動作制御、医療分野での治癒過程の最適化など業界を問わず、逆強化学習を活用したAIが利用されています。

    逆強化学習と強化学習の違い

    強化学習 逆強化学習
    目標に対しての最適解を導き出す学習 お手本から目標を推定し、最適解を導き出す学習

    逆強化学習を理解する際に欠かせない知識となるのが、「強化学習」です。
    強化学習とは最初に与えられる方向性とルールの中で最適解を目指す手法です。

    例えばオセロや将棋であれば、相手に勝つということが重要視されます。

    この場合は、ゲームのルールを守りつつ好成績を出すことが目的であり、手段は明確にはありません

    一方で、逆強化学習の場合は、このやり方であれば好成績が出せるというやり方を最初に決めておき、このやり方をベースにいかに好成績を出せるかを学習するという手法です。

    つまり、手段を選ばずに一定のルールの中で自由に学習させるのが逆強化学習です。

    逆強化学習と模倣学習の違い

    逆強化学習 模倣学習
    お手本から目標を推定し、最適解を導き出す学習 人間やエキスパートの振る舞いを学習

    逆強化学習を理解する際に欠かせないもう一つの知識が「模倣学習」です。

    模倣学習とは人間や他のエキスパートの振る舞いを学習する手法です。

    エキスパートが行う行動のデータや適切なパターンを与えることで学習をします。
    正しい行動が与えられ、モデルはこの行動を再現します。

    例えば、自動運転の場合、無事故無違反の安全運転を行う運転手の行動をデータとして与えることで、そのデータを学習し再現するのです。

    一方で、逆強化学習はエキスパートの行動からモデルを最適化しようとする手法です。

    逆強化学習の学習方法は2つ

    ここからは、逆強化学習の学習方法についての理解を深めていきます。

    逆強化学習の学習方法には、「模倣学習」と「行動学習」の2つがあります。

    それぞれの学習方法にはどのような特徴があるのか詳しく見ていきましょう。

    模倣学習

    模倣学習は、人間のエキスパートの行動をまねることによって報酬関数を学習する学習方法です。

    AIにおける報酬関数とはAIが出した予測値が実際の数値とどのくらいズレが生じいてるかを計算し、そのズレを目的に応じて学習中に最適化してくための計算式のことです。

    人間のエキスパートが望ましいと判断する行動を模倣することで報酬関数を推定し、再現することで学習します。

    行動解析

    行動解析は、人間の行動を解析して報酬関数を学習する学習方法です。

    この学習方法では人間の行動を記録し、その行動がどのような結果をもたらしたのかを分析し、報酬関数を推定します。

    模倣学習とは異なり、人間のエキスパートが介入することなく、自律的に行動を学習することができるというメリットがあります。

    また、AIが学習する過程で未知の報酬関数を発見することができるという特徴もあります。

    逆強化学習の4つのメリット

    ここからは逆強化学習のメリットについて次の通りご紹介します。

    • AIの学習の方向性をコントロールできる
    • 報酬設定がしにくい場合に対応できる
    • 学習の効率化ができる
    • 転移学習がしやすい

    これらのメリットを理解し、実際に逆強化学習を活用することで自社の業務にどのような効果があるのかをイメージしましょう。

    AI学習の方向性をコントロールできる

    強化学習の場合は、少しでも目標値に近づければどの手段でもよいというような学習方法のため、人間では想像がつかない手段やプログラムにより、人間では把握しきれないという問題が生じる可能性があります。

    一方で、逆強化学習の場合は、お手本となるものを最初に与えてから学習を重ねていくため、既にベースとなるものが明確になっています。

    目指すべきお手本がすでにある状態であれば、AI学習の方向性をコントロールできるのが逆強化学習のメリットです。

    報酬設定がしにくい場合に対応できる

    強化学習の場合、スコアのように目標値の設定がしやすい場合がある反面、自動運転などのように報酬の設定がしにくい場合もあります。

    この場合は、強化学習では対応することができません。

    そこで、有用なのが逆強化学習です。

    自動運転であれば、安全運転に関するデータを与え行動を覚えさせて学習を重ねていくことができます。

    このように、逆強化学習には報酬の設定がしにくい場合に対応できるというメリットがあります。

    学習の効率化ができる

    強化学習は学習過程で行動の評価方法も見直してさらに学習するため、AIのミスを減らすという面ではメリットがありますが、学習に膨大なデータを使って学習をするため、時間がかかるという問題点があります。

    一方で、逆強化学習はお手本となる行動が明確であり、そのデータを学習に利用するため、AIがゼロから試行錯誤するという必要がありません

    このよに、お手本となるエキスパートの行動を模倣することでAI効率的に学習を進めることができます。

    転移学習がしやすい

    逆強化学習のメリットの一つに転移学習がしやすいということが挙げられます。

    転移学習とは、あるタスクで学習したモデルの知識を別の類似したタスクに転移・適用する学習方法です。

    データが少ない場合や学習時間を短縮したい場合に有効な手法です。

    この転移学習を行う際に相性がいいのが逆強化学習で得られた知識です。

    お手本となる行動が明確であるため、学習済みのモデルを新しいタスクに適用する際に必要な調整が少なくなります。

    逆強化学習の3つの課題

    逆強化学習にもメリットだけではなく、もちろんいくつかの課題も存在します。

    活用を検討するうえで課題となる以下の3つの点について紹介します。

    • どれをお手本とするかが難しい
    • ベストの行動を理解できない場合がある
    • 逆強化学習だけでは不十分な場合がある

    それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。

    どれをお手本とするかが難しい

    逆強化学習では、最初にお手本となる行動を与えてそれをベースに学習するため、どれをお手本とするかが重要になってきます。

    しかし、スポーツの試合のように何を「お手本」として設定するのか、そのスポーツを代表する選手がどんな時にどんな行動をとるのか、研究を重ねたうえで設定しなければなりません。

    このように、お手本にするには計算量が膨大となり、逆強化学習だけでは対応しきれず、どれをお手本とするかが難しいという課題があります。

    ベストの行動を理解できない場合がある

    逆強化学習では、ベストとされる行動が明確にあり、それをベースにして学習を重ねていく必要があります。
    前提として、AI側がベストとなる行動を理解しなければなりません。

    しかし、ベストとされる行動に規則性がない、矛盾が見られるといった場合はどうでしょうか。
    この場合は、AIがベストの行動を理解することができず、混乱を招いてしまいます。
    こうした状況では逆強化学習は機能しません。

    逆強化学習だけでは不十分な場合がある

    逆強化学習はエキスパートの行動を模倣することで学習を行いますが、これだけでは不十分な場合があります。

    特に、タスクが複雑で多様な行動が必要とされる場合は、お手本となる行動だけでは対応しきれないことがあるため、逆強化学習と他の学習手法を組み合わせることが必要です。

    例えば、ChatGPTで注目された学習手法に「RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)」というものがあります。
    この学習手法は、人間から学ぶ「教師あり学習」と「強化学習」「逆強化学習」の3つを組み合わせた手法です。

    これにより、評価方針がはっきりしない複雑で難解なタスクをAIに学習させることができます。

    逆強化学習の活用事例

    ここまでで「逆強化学習」についてどのようなものかお判りいただけたかと思います。

    では、この学習手法を使用してどのような技術が提供されているのでしょうか。

    逆強化学習の活用事例として次の事例を見ていきましょう。

    • 交通事故を回避する危険予知運転
    • ホームページのアクセス解析
    • ロボットの動作制御
    • 医療分野における治癒過程の最適化

    交通事故を回避する危険予知運転

    自動車の予防安全技術の研究は活発に行われていますが、生活道路では事故の減少率が低いという課題があります。

    生活道路では、歩行者の飛び出しや安全不注意による事故が多く、従来の人検知後の衝突回避だけでは不十分な場合があります。

    この問題を解決するために、逆強化学習を活用し規範ドライバーの運転行動データに基づきモデルを最適化することで、より高度な危険予知運転の技術の研究が進められています。

    自動運転の開発を行う中で、危険予知の技術は重要になり逆強化学習の活用は今後さらに増えていくでしょう。

    ホームページのアクセス解析

    逆強化学習はホームページのアクセス解析にも活用されています。

    ホームページのアクセスログを利用して、ユーザーが何を求めているのか逆推定し、潜在ニーズを導き出すという研究が進められています。

    この技術がサービスとして提供されるようになれば、専門業者に解析を依頼せずとも自社で解析を行うことができるようになります。

    ロボットの動作制御

    ロボットの動作制御に逆強化学習を活用することで、人間が望む動作を実現することができます。

    複雑な環境下での動作や移動時の制御を学習することができます。

    三菱電機は、逆強化学習を活用して生産・物流現場での作業効率化を支援するAIの開発を行いました。

    人がいる作業現場において「道を譲る」など人が操作しているかのような動作を実現し、人と機械が混在する環境での作業効率が従来の制御方式と比べて30%向上しました。

    参照:三菱電機、逆強化学習を活用して人と機械が混在する生産・物流現場での作業効率化を支援する「人と協調するAI」を開発

    医療分野における治療過程の最適化

    医療分野においても、逆強化学習を用いて治療過程の最適化に取り組むという研究がなされています。

    医療現場での医師の判断や治療方針を逆推定し、最適な治療プランを作成するという取り組みです。

    具体的には、モデル化にあたってマルコフ決定過程を用いて状態遷移をベースとして、逆強化学習を用いてデータ上に存在しない、報酬関数の推定を行うというものです。

    参照:血糖管理における、最適な治療方針決定を支援するモデル提案!逆強化学習による報酬関数を推定する強化学習モデルを構築!

    まとめ:逆強化学習の特徴を理解しよう

    逆強化学習は、ベストとされるお手本があり、それをベースに学習していくという手法です。

    強化学習の一種である逆強化学習ですがアプローチは大きく異なる手法であることはお判りいただけたかと思います。

    逆強化学習では、転移学習との組み合わせなど複数の手法を活用することで幅広い分野で活用することができる技術です。

    本記事では逆強化学習の基礎から活用事例まで紹介をしました。

    実際に活用する場合、どの学習手法を使うのか適切な手法を見極めることが重要です。

    Jiteraでは、要件定義を書くだけでAIがアプリ・システムを開発できるプラットフォームがあります。

    自社の業務でAIを活用し業務の効率化や質の向上を検討されている方は、是非一度Jiteraへご相談ください。

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