「システム開発や構築を検討しているけれど、どのように予算を考えればよいか分からない」「どの基準でシステム開発会社を選べばいいか分からない」など、システム開発や構築を外注する際に頭を抱えることは多いでしょう。
そこで本記事ではシステム開発費用の考え方や内訳、成功するための会社の選定方法までわかりやすく紹介していきます。
小中規模プロジェクトを中心にSEやコンサルとして活動。クラウド導入やスタートアップ、新規事業開拓の支援も経験しました。
Webサービス開発における考慮すべき要素

インターネットを通じて提供される各種サービスの開発では、サービスの種類や規模、機能によって必要な工数や専門性が大きく異なります。各サービスタイプで考慮すべきポイントを見ていきましょう。
SNSサービス
SNSサービスの開発では、想定ユーザー数やフォロー・投稿などの基本機能の複雑さによって開発規模が決まります。
小規模なSNSではプロフィールやつながり機能を中心としたシンプルな設計が可能ですが、ユーザー数が増えるとインフラ構成やパフォーマンス対策など、追加で考慮すべき要素が増えていきます。特に海外展開も視野に入れる場合は、多言語対応や地域ごとの法規制対応など、さらに複雑な要件が加わります。
口コミ投稿サイト
口コミ投稿サイトの開発では、対象エリアや業種の範囲、機能の充実度によって開発規模が変わります。地域限定の小規模なものであれば、店舗情報と基本的な口コミ投稿機能のみの実装で比較的シンプルな設計が可能です。例えば、ある市内の飲食店に特化した口コミサイトでは、データベース設計も単純になり、開発工数を抑えられます。
一方、全国規模のサービスでは要件が格段に複雑になります。レストランやホテルなど複数業種を網羅し、口コミ投稿だけでなく評価の投票機能や写真共有、検索機能の高度化など、実装すべき機能が増えるためです。また、大量データ処理やアクセス集中時の安定性確保など、インフラ面での考慮も重要になります。
さらに、口コミサイトでは不適切な投稿のモデレーション機能や、ユーザー間のトラブル対応なども考慮すべき要素です。これらの運用面も含めた総合的な設計が、長期的に成功するサービスには欠かせません。
ECサイト
ECサイトの開発では、取扱商品数、在庫管理の複雑さ、決済方法の多様性などが開発規模に大きく影響します。小規模なECサイトでは、数百〜数千点程度の商品管理と基本的なクレジットカード決済機能といったシンプルな構成が可能です。この場合、既存のECプラットフォームをベースにカスタマイズする方法も選択肢となるでしょう。
一方、大規模なECサイトでは要件が格段に複雑になります。商品数が数万点を超える場合、商品データベースの設計や検索機能の最適化が重要な課題となります。
決済機能においても、クレジットカード、電子マネー、後払い、ポイント決済など複数の決済方法に対応する場合、それぞれの決済代行サービスとの連携開発が必要となります。これらはセキュリティ対策も含めて工数が増加する要因となります。
グローバル展開を視野に入れる場合は、多言語・多通貨対応、各国の税制対応なども考慮する必要があります。このような複雑な要件を持つECサイト開発では、初期リリース時の必須機能と将来的に追加する機能を明確に区分し、段階的に開発することも重要なアプローチです。
Q&Aサービス
Q&Aサービスの開発では、対象とする専門分野の範囲や、質問・回答のマッチング精度、コミュニティ管理機能などが開発規模を左右します。特定ジャンルに特化した小規模なQ&Aサイトであれば、基本的な質問投稿と回答機能、シンプルなユーザー管理機能程度で構成できます。専門性が高いことで、コアなユーザーを集めやすいというメリットもあります。
一方、総合的なジャンルを扱う大規模なQ&Aサービスでは、質問の適切なカテゴリ分類や検索機能の充実、回答の評価システムなど、より高度な機能実装が求められます。特に質問に対して素早く質の高い回答を得られることがサービスの価値となるため、質問の通知機能や専門家へのルーティングシステムなど、マッチングの仕組みが重要になります。
また、Q&Aサービスの運営面では、不適切な質問・回答の監視やモデレーション、コミュニティのルール管理、アクティブユーザーの育成施策なども成功の鍵となります。さらに、サービスが成長した場合のデータベース最適化やAPI提供、外部サービスとの連携なども検討すべき要素です。
スマホアプリ開発で考慮すべき要素

スマホアプリの開発では、アプリの種類や内容、機能の数、対応プラットフォーム(iOS/Android)によって工数や必要な専門性が大きく異なります。アプリの種類別に重要な考慮点を見ていきましょう。
ゲームアプリ
ゲームアプリの開発では、ゲームジャンルやグラフィックの複雑さ、ゲーム性の深さによって開発規模が大きく変わります。シンプルなパズルゲームであれば基本的なゲームロジックとUI設計が中心となりますが、RPGなどの大規模ゲームではキャラクターデザイン、ストーリー制作、3Dモデリング、サウンド制作などの多岐にわたる専門分野の知識が必要です。
また、マルチプレイヤー機能やリアルタイム対戦などのオンライン要素を実装する場合は、サーバー設計やネットワーク通信の最適化も重要になります。収益モデルとしてアプリ内課金や広告を導入する場合は、決済システムとの連携やユーザー心理を考慮した設計も必要です。ゲーム開発では技術面だけでなく、ユーザー体験設計や継続的なコンテンツ更新計画も成功の鍵となります。
eコマースアプリ
eコマースアプリの開発では、商品管理の規模、決済方法の多様性、ユーザー体験の洗練度が重要な考慮点です。小規模アプリでは基本的な商品表示と検索機能、シンプルな決済フローで構成できますが、大規模なショッピングアプリになると商品データベースの設計、高速な検索機能、パーソナライズされたレコメンデーション機能など、より複雑な要素が必要になります。
また、複数の決済方法(クレジットカード、電子マネー、後払いなど)に対応する場合、それぞれの決済代行サービスとの連携開発とセキュリティ対策が必要です。さらに、在庫管理システムや顧客管理システムとの連携、プッシュ通知によるマーケティング機能なども検討すべき要素です。アプリとウェブの両方で一貫したユーザー体験を提供するためのデータ同期設計も重要なポイントになります。
学習アプリ
学習アプリの開発では、教育コンテンツの専門性、学習進捗管理の仕組み、インタラクティブな要素が開発規模を左右します。特定分野のドリル型アプリであれば問題データベースと採点機能のシンプルな構成で実現可能ですが、総合的な学習アプリでは教科ごとのコンテンツ制作や、学習者のレベルに応じた問題出題アルゴリズムなど、より高度な機能が求められます。
また、動画教材の提供、音声認識による発音チェック、AI技術を活用した個別学習プラン提案など、学習効果を高める機能を実装すると開発の複雑さが増します。
学習データの分析・可視化機能や、教師・保護者向けの進捗管理機能なども重要な要素です。教育アプリでは技術面だけでなく、教育効果を高めるUI/UXデザインや教育専門家との連携も成功の鍵となります。
ストリーミングアプリ
ストリーミングアプリの開発では、コンテンツ量、配信品質、再生環境への対応範囲が開発規模を決定づけます。
小規模なアプリでは限定されたコンテンツと基本的な再生機能だけでも実現可能ですが、大規模なサービスではコンテンツ管理システム、権利管理、多様なデバイスでの最適な再生品質確保など、複雑な要素が増えていきます。
特に高画質・高音質のストリーミングでは、ネットワーク帯域に応じた適応的なビットレート制御や、バッファリング最適化などの技術的課題があります。
また、オフライン視聴機能、視聴履歴に基づくレコメンデーション、ソーシャル共有機能なども考慮すべきポイントです。サブスクリプション型の課金モデルを採用する場合は、会員管理システムや決済連携も必要になります。コンテンツの拡充計画や継続的な技術アップデートも長期的な成功には欠かせません。
ARアプリ
ARアプリの開発では、3D表現の精度、現実空間の認識精度、インタラクション設計の複雑さが開発規模に大きく影響します。シンプルなフィルター効果や平面認識によるAR表示であれば比較的容易ですが、高精度な空間認識や複雑なオブジェクト追跡、リアルタイムでのインタラクションを実現するには高度な技術力が必要です。
特に3Dモデリングの品質や物理演算の精度が高いほど、開発工数とハードウェア要件も増加します。また、様々な環境条件(照明、天候など)や多様なデバイスでの安定動作の確保も技術的課題となります。
ユーザー体験面では、AR特有の直感的な操作設計や、現実世界との自然な融合を実現するためのUI/UXデザインも重要です。企業向けARソリューションでは業務プロセスとの統合や、セキュリティ対策も考慮すべき要素となります。
システム開発費用の主な内訳と考慮すべき要素

それぞれの役割の重要性や、高品質な開発のために必要な経験・スキルについての説明に変更します。
人件費
プロジェクトマネージャー(PM)
プロジェクトマネージャー(PM)は、開発プロジェクト全体の進捗管理や調整を行う非常に重要な役割です。PMの経験や能力によってプロジェクト全体の成功が大きく左右されることも少なくありません。 開発規模が大きい場合は専任のPMが必要となりますが、小規模案件では兼任の場合もあります。PMの経験やスキル、専任/兼任の体制など、プロジェクトに応じた適正な人員配置を検討することが開発成功の鍵となります。
プロジェクトリーダー(PL)
プロジェクトリーダー(PL)は、エンジニアチームの取りまとめと技術面的な進捗管理を担当します。 PLはエンジニアリング分野の専門知識が必要なため、経験豊富な人材が求められます。規模が小さい場合は兼任で対応できる場合もありますが、品質管理の観点から専任のPLが望ましいでしょう。
下請け・フリーランスプログラマー(PG)
下請け・フリーランスプログラマー(PG)は、機能の実装を担当します。 外注は人員体制を柔軟に調整できるメリットがありますが、デメリットとして品質管理が難しい点が挙げられます。適切な工数配分と明確な品質基準の設定が開発成功の要となります。
大手企業プログラマー(PG)
大手企業のプログラマー(PG)は開発プロセスが整備されているため、品質面でのメリットが大きいのが強みです。一方、人材が固定されるため、工数の調整が難しいのがデメリットです。
初級システムエンジニア(SE)
システムエンジニア(SE)はシステムの設計と構築を担当します。
SEの初級者のメリットはコストが安い点ですが、段取りに手間取ることが多いのがデメリットです。適切な指導が必要となります。
中級システムエンジニア(SE)
SEの中級者のメリットは、開発スピードが速い点です。一方で、設計力に多少力量を欠く場合があるのがデメリットです。適材適所の配置が大切です。
上級システムエンジニア(SE)
SEの上級者のメリットは、高い設計力と開発力にあります。一方で、単価が高額なためコストが嵩むのがデメリットです。過剰スペックにならないよう配慮が必要です。
その他の人件費
その他の人件費として、テストやドキュメント作成を担当するメンバーの費用も大きな比率を占めます。
どちらの業務も専門性が求められるため外注する場合はある程度の単価水準が必要ですが、社内資源を活用することでコスト削減が可能です。
サーバ費用
サーバー費用は、自社導入の場合は初期投資、クラウドの場合は月額費用が主となります。
クラウドのメリットは固定費用が少ない点ですが、長期的には自社構築の方がコストメリットが出る場合もあるため、サービス内容と規模を考慮し、総合的に判断する必要があります。
外部サービスやシステム利用のライセンス費用
顧客管理システムやブロードバンド、クラウドストレージなどの外部サービスを利用する場合、月額のライセンス料が発生します。
クラウドストレージは利用容量に応じた課金なので、必要最小限の容量でスタートし、サービス拡大に合わせて増量することがコスト最適化のポイントとなります。
諸経費
諸経費としては、開発環境のオフィス賃借料や光熱費、社内交通費のほか、消耗品費、通信費、ソフトウェアライセンス料などが主な費用項目となります。
人数や機器増加に伴いオフィスを拡大したり高機能なソフトを導入する必要が出てくるため、諸経費は開発規模に沿って増加していく傾向があります。
公開後の運用費や保守費用
サービス公開後の運用・保守では、ユーザーからの問合せ対応、不具合への対応、セキュリティアップデートの適用、サービス改善に向けたアップデートなど、多くの業務が発生します。
サービスの拡大に伴い問合せが増加したり、機能強化のニーズが高まることで、保守コストは傾向として増加していきます。適切な体制構築が課題となります。
システム開発費用の見積もり方法・手法

システム開発費用の見積もりをする際に、主に用いられる積算手法は次の6つです。
- 類推見積もり(トップダウンモデル)
- 工数積み上げ見積もり(ボトムアップモデル)
- 係数モデル見積もり(パラメトリックモデル)
- プライスツーウィン法
- 三点見積もり法
- ファンクションポイント法
見積もり手法にはそれぞれ適しているものと適さないものがあります。見積もりを依頼する際に、各社がどのような積算手法で見積もりを行うのか知っておくだけでも発注後の齟齬を少なくすることが可能です。各積算手法の詳細については以下で解説します。
1. 類推見積もり(トップダウンモデル)

過去に類似したシステムの開発事例がある場合に、その事例を参考にして作業工数や各コストを算出し、見積金額を積算する手法です。
実際の事例を参考にするため、短い期間で見積もりを提示することができる上に、高い精度の見積もりが提示されます。
しかし、ベンダーに類似事例の開発経験が少ない場合、積算根拠が乏しくなってしまうため、見積もりの精度が落ちてしまう可能性もあります。
2. 工数積み上げ見積もり(ボトムアップモデル)

開発を行うシステムの構成要素などを想定し、発生する作業にかかる工数を1つずつ積み上げて積算する手法です。
各工程で発生する作業を見通し、それぞれについて費用を積算しているため、緻密な見積金額が提示されます。
そのため、小規模なシステム開発の際には役立ちますが、大規模なシステム開発の場合には、見積もりに期間を要する上に、作業の全体感を見通すことが難しくなるので、精度が落ちてしまいます。
3. 係数モデル見積もり(パラメトリックモデル)

特定の数式モデルを利用して、システム開発で発生する各作業を数値に置き換えて積算する手法です。
過去の事例を基に係数を乗じて作業コストを計算し、積み上げていきます。
機械的に積算を行うため、見積もり担当者によって結果が異なるといったことが起こりにくいのがメリットである一方、計算根拠となる事例に乏しいと、正確な見積もりが出せない可能性があります。
4.プライスツーウィン法

ユーザーが希望するシステム開発予算に合わせて積算を行う手法です。
予算をベースにして見積もりを行うため、予算を大幅に超過する見積もりが提示されるのを防ぐことができます。予算上限が厳格に定められているプロジェクトなどに有効です。
しかし、予算ベースでの見積もりとなるため、細かな機能面での利便性が不足している場合やちょっとした仕様変更でも追加コストが発生する場合があります。
5. 三点見積もり法

最良の場合と最悪の場合、一般的な場合の3つのパターンを想定し、それらに対応する係数を掛け合わせて積算を行う手法です。
最良の場合は楽観値、最悪の場合は悲観値、通常の場合は最頻値とそれぞれ名称があります。
プロジェクトが孕むリスクを想定して積算されているため、大規模なプロジェクトでも実際に係るコストとの誤差が生じにくいのがメリットです。反面、規模が小さいプロジェクトではそもそも誤差が大きくならないため、かえって精度が落ちてしまうデメリットもあります。
6. ファンクションポイント法

ファンクションポイント法は機能的な大きさから規模を測定し、過去データから工数を見積もる方法です。
データ処理の入出力、論理ファイル、データ操作の複雑さなどから機能規模を算出するため、主観によるばらつきが少ないことが特徴です。
開発方法を選ばないため、汎用性が高くさまざまなシステム開発の見積もりに利用されています。
要件定義の段階で機能点数が算出できる一方、非機能要件は測定対象外となるため別の手法との組み合わせが大切です。
システム開発費用が変動する要因

システム開発費用の変動はどんな開発でも起こりえます。では、システム開発の見積額が変動するのはどのようなポイントがあるのでしょうか。
ここでは、システム開発各種における開発費用の変動ポイントを解説します。
変更をきちんと把握・対応することで開発費の変動を最小限に抑えられるので、しっかりと理解していきましょう。
多言語対応やBI機能の実装が必要だから
業務系システムの場合、高額になりやすい機能として多言語対応や業務分析機能、セキュリティ強化等が挙げられます。多言語対応では、単なる翻訳だけでなく各国の業務プロセスの違いに対応したローカライズも重要です。
例えば、日本と欧米では住所表記が異なるため、入力フォーマットを国別に変更する必要があります。またBI機能ではデータ分析に加え、分析結果の解釈と活用を支援するコンサルティングが欠かせません。単純なデータの見えるようにするだけでなく、業務改善に資する示唆を提供できる質の高い人材が必要となります。
このため、多言語対応・BI機能を入れる際は、システム開発の範囲を超えた業務知識が求められるため費用が大幅に跳ね上がる要因となっています。
性能の強化や多様な決済対応が必要だから
Webサービスの場合は、大量アクセス対応や決済オプション拡充等がコスト高の要因となります。サーバー増強では単にスペックを上げるだけでなく、横に大きく展開するための構成が必要です。アクセスが集中した場合でもサービスが継続する信頼性が求められます。
また決済オプションを拡充する場合、単に決済機能を追加するだけでなく、システム全体のセキュリティも再検討する必要があります。個人情報流出などのリスクがあるため、開発プロセスやコードレビュー体制の強化にもコストがかかります。
このようにWebサービスでは、性能の強化や多様な決済対応を実現するために、単純な機能追加を超えたインフラ投資やセキュリティ対策が欠かせず、コストが急増する要因となっています。
高度なセキュリティやコンテンツが必要だから
スマホアプリの場合は、高度なセキュリティやAI機能の追加、デザインや音楽制作等の豪華なコンテンツ制作がコスト高の要因として挙げられます。生体認証などの高セキュリティ対応では、処理の正確性と速度に加え、認証データの管理・運用面でのリスク低減が不可欠です。
認証率を上げるために、ユーザーデータを継続的に収集・学習させる機能が必要不可欠ですし、開発後の追加コストも発生します。またAI機能では単なるアルゴリズムの構築だけでなく、ユーザーの行動分析に基づき提供する提案を洗練させるための継続的な改良が欠かせないため、長期的なコスト負担となります。
このように高度な技術を活用した場合、単発の開発費用に留まらず、運用段階での継続的なコスト負担が必要となります。
システム開発の見積もりで意識しておくべき5つのポイント

システム開発における費用の考え方を最後まで読むことで、ベンダーに見積もり依頼をする際の齟齬を小さくし、発注後のトラブルを回避することができるようになります。
システム開発を依頼する際に押さえておくべきポイントは次の5つです。
- 開発の対象範囲を明確にしているか
- 管理工数や開発手法・技術を明確にしているか
- 仕様変更やトラブルに対応する見積もりが含まれているか
- 責任範囲や検収条件を明確にしているか
- 各見積もり項目の金額や工数などの数値に妥当性はあるか
これらを押さえた見積もり依頼をすることで、数社に相見積もりを取る場合であっても各社の前提条件が揃えられるため、見積金額に大きな乖離が生じにくくなります。見積もりは前提条件が明確でないと、開発途中で生じるユーザーとベンダーの認識違いによる条件変更などをあらかじめ見込んで高めに見積もるベンダーと、そうでないベンダーとで見積金額に乖離が生じます。
事前にリスクを織り込んでいないベンダーの方が見積金額は安く算出されますが、開発過程で条件変更が生じる度に追加費用が発生するなど、結果的に他のベンダーと開発費用が変わらなかったということは珍しくありません。見積もり段階から前提条件を揃えるための各ポイントについて、詳しく解説します。
1. 開発の対象範囲を明確にしているか
システムの開発には、いくつものタスクが含まれています。見積もり依頼をする際は、どこからどこまでの作業を担ってもらいたいと考えているのかを明確にすることが大切です。要件定義からリリースまでといったこともあれば、運用テストだけを依頼したいといった場合もあります。ベンダーに見積もり依頼をする際は開発の対象範囲と対象外となる範囲を明確にして依頼すると、精度の高い見積もりが得られます。
2. 管理工数や開発手法・技術を明確にしているか
システム開発では開発スケジュールの作成などの進捗管理や、仕様変更があった際のスケジュール調整と開発メンバー内での情報共有といった変更管理、運用テストでエラーが出た場合の改修に係る障害管理などといった管理コストが発生します。このような管理に係る工数が見積もりに正しく反映されていないと、プロジェクトが適切に進行しません。
また、見積もり段階で開発手法や使用言語などの開発技術が明確にされていないと、ベンダー側が推量して見積もりを提出することとなるため、相見積もりを取ってもこの部分の前提条件がそろっておらず、金額に乖離が生じる原因となってしまいます。
3. 仕様変更やトラブルに対応する見積もりが含まれているか
プロジェクトによっては開発期間が長期にわたるものもあります。そのような場合、開発期間中に状況が変化して当初の仕様から機能を追加・変更しなければならないこともあるでしょう。
しかし、見積もりにある程度のバッファが積まれていなければ、追加で発生する作業に対して新たに見積もりと支払いを行わなければなりません。
4. 責任範囲や検収条件を明確にしているか
ベンダーは契約形態によって契約不適合責任や瑕疵担保責任を負いますが、それらを契約書に盛り込んでいても、トラブルは発生します。事前に想定されるものについては責任範囲をしっかり示して依頼をすることで、トラブルの少ない見積もりが提示されるでしょう。
また、納品されたシステムの検収条件が明確でないと、何をもって報酬が発生するか定まっていない状態になるため、ユーザー・ベンダー間でのトラブルが起きやすいです。そのため、検収条件についても予め明確にしておく方がよいでしょう。
5. 各見積もり項目の金額や工数などの数値に妥当性はあるか
見積もりが提示された際、各項目の金額や工数に妥当性があるか可能であれば確認をするようにしましょう。
例えば、過去に発注したシステムの金額と比較して大きな乖離がないか、不必要な費用が上乗せされていないか、といった視点で確認するとよいです。妥当性が感じられない場合、見積もりを提示したベンダーに説明を求めてみるのも有効です。
システム開発における重要な選定ポイント

システム開発を成功させるためには、適切な開発会社を選定することが非常に重要です。コスト面だけでなく、以下のポイントを総合的に評価することで、自社のニーズに最適なパートナーを見つけることができます。
開発会社の実績と専門性
類似プロジェクトの実績
開発会社を選定する際、最も重視すべき点の一つが類似プロジェクトの実績です。同じ業界や同規模のシステム開発経験があれば、業界特有の課題や要件を理解している可能性が高く、効率的な開発が期待できます。
例えば、製造業の在庫管理システムを導入したい場合、製造業向けのシステム開発経験がある会社は、業界特有のワークフローやデータ構造に精通しているため、スムーズな開発が期待できます。実績を確認する際には、具体的な事例の詳細や、実際に導入された企業の規模感なども確認するとよいでしょう。
業界知識の深さ
システム開発では技術力だけでなく、対象となる業界の知識深さも成功の鍵となります。業界特有の用語、業務フロー、法規制などを理解している開発会社は、要件定義から実装までスムーズに進めることができます。
例えば、医療分野のシステム開発では、個人情報保護法や医療情報システムのガイドラインなど、特有の規制に対応する必要があります。
開発会社の業界知識を評価するには、過去の実績だけでなく、初回打ち合わせでの会話の内容や質問の的確さから判断することも有効です。業界固有の課題に対して具体的な解決策を提示できる会社は、業界知識が豊富である証拠と言えるでしょう。
技術力の評価方法
開発会社の技術力を評価するためには、複数の観点からのアプローチが必要です。まず、保有する認定資格や専門技術者の数を確認することで、基本的な技術レベルが把握できます。
次に、過去の開発実績における技術的な課題解決能力を評価します。例えば、大量データの処理速度改善や、複雑な業務ロジックの実装など、技術的に難しい課題にどう対応したかを具体的に聞くことが重要です。
また、最新技術への対応状況も重要な指標です。クラウド技術やAI、セキュリティ対策など、技術トレンドへの理解と対応力は、将来的なシステム拡張や維持において大きなアドバンテージとなります。実際に開発されたシステムのデモを見せてもらったり、技術担当者との直接対話の機会を設けることで、より正確な技術力の評価が可能になります。
開発プロセスの透明性
進捗報告の頻度と方法
システム開発プロジェクトの透明性を確保するために、進捗報告の頻度と方法は非常に重要です。週次や隔週でのレポート提出、定例ミーティングの開催、プロジェクト管理ツールの共有など、具体的にどのような形で進捗を可視化してくれるかを事前に確認しましょう。特に重要なのは、報告の質です。
単に「予定通り進んでいます」という表面的な報告ではなく、完了したタスク、進行中のタスク、発生した課題とその対策などが詳細に報告されることが望ましいです。また、技術的な内容を非技術者にも理解しやすく説明できる能力も、良い開発パートナーの条件です。
進捗状況を常に把握できることで、問題の早期発見や方向性の微調整が可能になり、プロジェクト全体の成功確率が高まります。
問題発生時の対応体制
開発プロジェクトでは予期せぬ問題が発生することは避けられません。そのため、問題発生時の対応体制が整っているかどうかは、開発会社選定の重要な判断基準となります。
具体的には、問題の発見から報告、対応策の検討、実施までの一連のプロセスがどのように確立されているか、エスカレーションルートは明確か、緊急時の対応窓口は設けられているかなどを確認しましょう。
また、過去のプロジェクトで実際に発生した問題とその解決方法について具体的な事例を聞くことも効果的です。問題を隠さず、迅速かつ適切に対応できる体制が整っている開発会社は、長期的な信頼関係を構築できるパートナーとなります。
特に重大な問題が発生した場合、その原因分析と再発防止策の提案まで行える会社であれば、単なる開発業者ではなく、ビジネスパートナーとして高く評価できます。
コミュニケーション手段
システム開発の成功には、発注側と開発会社間の円滑なコミュニケーションが不可欠です。メール、電話、Web会議システム、チャットツール、プロジェクト管理ツールなど、どのようなコミュニケーション手段を用いるのか、また、それらをどのように使い分けるのかを事前に確認しておくことが重要です。
例えば、緊急の質問には電話、日常的な確認事項にはチャット、定期報告にはWeb会議といった具合に、状況に応じた適切なコミュニケーションチャネルが設定されているかを確認しましょう。
また、担当者の対応時間帯や休日対応の可否なども、プロジェクトの円滑な進行に影響します。特に注目すべきは、専門的な内容を非技術者にも理解しやすく説明する能力です。技術用語を多用せず、発注側の理解レベルに合わせた説明ができる開発会社は、プロジェクト全体の認識齟齬を防ぎ、スムーズな進行を実現できます。
長期的なパートナーシップの視点
保守・運用体制
システム開発はリリースして終わりではなく、その後の保守・運用フェーズが長期間続きます。そのため、開発会社の保守・運用体制は非常に重要な選定ポイントとなります。具体的には、保守担当者の体制と専門性、対応可能時間帯、障害発生時の対応フロー、定期メンテナンスの実施方法などを確認しましょう。
特に重要なのは、24時間365日のシステム監視体制があるか、障害発生時の初動対応時間がどれくらいかといった点です。
また、保守契約の内容も詳細に確認すべきポイントです。単なるバグ修正だけでなく、OSやミドルウェアのバージョンアップ対応、セキュリティパッチの適用なども含まれているかを確認しましょう。過去の保守案件での対応実績や、顧客満足度なども可能な限り調査することで、より信頼性の高い判断が可能になります。
技術サポートの範囲
開発後の技術サポートの範囲は、長期的なシステム運用の安定性に直結する重要な要素です。基本的なバグ修正やエラー対応だけでなく、ユーザーからの操作問い合わせ対応、定期的な機能改善の提案、最新技術への対応など、どこまでのサポートが含まれるのかを明確にしておくことが重要です。
また、技術サポートの窓口や対応時間、対応方法(電話、メール、リモートアクセスなど)についても確認しておきましょう。特に注目すべきは、単に問題対応だけでなく、システムの活用方法や業務効率化のアドバイスまで提供してくれるかどうかです。
技術的な問題解決能力だけでなく、業務改善の視点からのサポートができる開発会社であれば、システムの価値を最大化することができます。サポート体制の充実度は、利用開始後の満足度に大きく影響するため、契約前に詳細な確認が必要です。
将来的な拡張性
ビジネス環境が急速に変化する現代において、システムの将来的な拡張性は非常に重要な要素です。開発会社が提案するシステムアーキテクチャやフレームワークが、将来的な機能追加や規模拡大、他システムとの連携などに柔軟に対応できるかを評価しましょう。
具体的には、モジュール化された設計になっているか、標準的なAPIを提供しているか、データ構造が将来の変更に対応できるかなどのポイントがあります。
また、開発会社が最新技術動向を把握し、将来を見据えた提案ができるかも重要です。例えば、クラウドネイティブな設計や、マイクロサービスアーキテクチャの採用、コンテナ技術の活用など、拡張性を高める技術的アプローチを理解しているかを確認しましょう。
将来のビジネス成長に合わせてシステムも成長できるよう、長期的な視点での拡張性を重視した開発会社選定が重要です。
システム開発の見積もり費用を最適化するコツ

では、システム開発の見積もりを最適化するにはどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
ここでは、システム開発の外注とその見積もりに関する注意点やコツを解説します。
システムの利用目的を明確にする
システム開発を始める前に、まず自社がそのシステムを使って何をしたいのか、利用目的を明確にすることが重要です。
例えば在庫管理を効率化したいのであれば、POSと連動したリアルタイムな在庫管理機能が必要です。一方商品の出庫トレースをしたい目的であれば、そこまでの高機能は不要かもしれません。利用目的に応じて必要な機能を絞り込むことが大切です。
不要な機能を盛り込むことでコストがかさんでしまうため、必要最小限の目的に応じたシステム設計を心がけましょう。
必要な規模・機能をしっかりと詰める
利用目的を達成するのに必要な機能とデータの規模を検討し、要件を絞り込むことも大切です。例えば在庫データが1万点程度であれば、100万点対応のシステムは必要性が低いでしょう。実際に取り扱う規模に見合った機能を選択することが重要です。
必要以上の機能を求めるとコストが高騰してしまうため、自社の業務内容と現状のデータ量を分析し実際に必要なレベルを見極めることが重要です。
見積もりの高い安いだけで開発会社を判断しない
見積もりが安いからといって必ずしも良い会社とは限りません。安すぎる見積もりの場合、品質が十分ではない可能性もあるでしょう。逆に高ければ品質が高いとも限りません。重要なのは、要件定義書の内容をしっかり理解し、適切な開発内容を提案できているかを確認することです。
見積金額だけでなく、要件定義への理解度や提案内容を確認するのが開発会社選定のポイントとなります。
希望通りの開発内容を提示してくれているか吟味する
開発中も定期的に進捗を確認し、自社の要件から外れていないか確認することをお勧めします。例えば要件にない機能が追加されていたり、逆に必須機能が省かれていないか、細部に注意を払うことが大切です。
追加工数が発生しないよう、開発内容と要件定義のズレがないかを入念にチェックする必要があります。不明点があればすぐに確認し、修正を依頼しましょう。
開発遅延が起こらないようにしっかりと工程を練る
詳細な工程表を策定し、開発スケジュールが遅れないよう管理することも大切なポイントです。各工程には十分な余裕を持たせ、例えば設計2週間だとして実際には3週間取る等のゆとりを設けることをおすすめします。
開発進捗を定期的に確認し遅れが発生しそうなタスクがないか、リスク管理も怠りなく行うことが重要です。余裕を持ったスケジュール管理が遅延防止の鍵となります。
Jiteraの特徴と強み

開発AIエージェント「Jitera」は、システム開発・システム改修を自動化するプラットフォームです。既存のシステムのコードを読み込み、システム構造を分析。高精度な設計書を自動生成し、システム開発・改修を効率化、コスト削減に繋げます。
機能1.コード生成
機能2.設計ドキュメントの自動生成
機能3. テストの自動化
| 料金プラン | HPを参照 |
| サポート体制 | オンラインで可 |
| 無料トライアル | なし |
| 初期費用 | あり(オンボーディング、導入コンサルティング) |
| 会社名 | 株式会社Jitera |
| 住所 | 〒105-0003 東京都港区西新橋1丁目2-9 日比谷セントラルビル 14階 |
まとめ:システム開発の特性を理解して最適な外注先を選定しましょう

以上、システム開発の種類別の特徴や変動要因、費用の内訳、開発を最適化するコツについて解説してきました。
要点をまとめると、システム開発は利用目的と規模に応じて必要な工数や専門性が大きく変動し、特に業務分析機能やセキュリティ対策などの高度な機能を入れると複雑性が増します。開発の成功には、機能要件の明確化と優先順位付け、適切な開発パートナーの選定が重要です。
開発費用を最適化するには、利用目的に合った必要最小限の機能選択と、適切な工程管理がとても大切です。システム開発にあたっては、要件定義の段階から開発会社と十分に検討を重ねることをおすすめします。
株式会社Jiteraにはシステム開発の専門エンジニアが多数在籍しています。要件定義段階からご相談いただければ、適切なアドバイスを行います。システム開発でお悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。

