現代社会は情報化社会と言われているように、情報の価値がより高まっています。ビジネスにおいてもそれは同様で、ヒト、モノ、カネと並び、情報はビジネスを発展、維持するために必要不可欠な要素の1つとなっているため、決してその存在を無視できません。
これらを如何にして効果的に管理、利用できるかは、現代社会のビジネスにおいて非常に重要な問題です。
本記事で紹介するERPとは、前述したヒト、モノ、カネ、情報を一元的に管理し、経営の効率を飛躍的に高めるシステムのことです。本記事ではERPを導入するとどのようなメリットがあるのか、そしてそもそもERPとはどのようなものなのかについて、それぞれ詳しく解説していきます。
ERP導入の基礎知識
ERPを導入する前に、そもそもERPとはどのようなものかを理解しなければなりません。ERPを導入した時のメリットなどは後述しますが、どんな状況でもそのメリットを享受できるとは限りません。また、そもそも導入時の予算や必要なリソースを確保できるかもわかりません。
ITに関する知識を豊富に持っている人物を連れてくれば良いというものではなく、それ以外にもビジネスや経営、人材の管理など、幅広い知識が必要になってくるため、トップたる者やマネージメントを担当する者が基本概念や導入の目的すら知らないようでは、失敗する可能性の方が高くなってしまいます。
従って、まずこの章ではERPの基礎知識や目的について解説していきます。
ERPとは
ERPとは前述したように、企業の資産であるヒト、モノ、カネ、情報の管理を一括化し、効率的な経営を行うのと同時に、情報をより有効に活用するためのシステムです。
例えばスーパーマーケットやコンビニなどの小売店のフランチャイズであれば、各店舗の売り上げや人気商品のデータを集め、仕入れる商品の種類や量、人員の配置をそれぞれの店舗で変えることにより、利益を伸ばしつつも経費を削減することが可能になります。
売り上げだけでなく、仕入れなどの費用と売り上げなどを専用のフォーマットに自動で入力するシステムを導入することにより、企業の財務状態を迅速に把握出来、尚且つ税務関連の書類などの作成に必要となる労力も削減できます。
このような形式であるためERPとは、何らかの単体の技術の呼称ではなく、ソフトウェアを始めとしたIT技術の複合体であると言えます。前述した小売店のフランチャイズの例で言えば、社内システムだけでなくAIやIoTなどの技術を組み合わせることで、その効果を最大限発揮することが可能になります。
ERP導入の目的
ERP導入の目的としては端的に言うと、保有している資産を有効に活用し、経営効率を高めることにあります。
前の章で例に出した小売店のフランチャイズの例で言えば、ERPを導入したことにより、売り上げの増加と廃棄数の圧縮による仕入れの費用の圧縮を同時に達成していますが、それ以外にも売り上げが多い、つまりは業務量の多い店舗に多くの人員を回すことで従業員の負担や残業代の圧縮も達成しております。
このように、ERPを導入する目的としては単純な財務状況の改善以外にも、生産性の向上という側面もあります。少子高齢化の影響でさまざまな業界で人手不足が露呈している日本において、労働力の確保や生産性の向上は、財務体質の改善と同等の価値があります。
むしろビジネスを存続、発展させるために育てた人材が長く働いてくれるかという観点で言えば、労働効率の改善による労働環境の改善は必須命題と言っても過言ではありません。
ERP導入のメリットとデメリット
ERPは前述した様な目標があるため、多くのメリットがあり、上手く嵌れば自社のビジネスを進化させることが可能になりますが、デメリットもあるため、不用意に導入を行うべきではありません。
ただ漠然とERPを導入してしまった場合、メリットを生かす暇もなく、失敗してデメリットが顕在化し、自社のビジネスの大きな足かせとなってしまう可能性も決して否定できません。ERPの導入はお金だけでなく時間や労力に関しても少なくない量を初期投資として投じなければなりません。
従って、特に各種の予算に制限がある中小企業の場合、労力やお金を無駄にしないためにもERPを導入するか否か、導入するとしたらどのような進め方が適切か、コンサルなども活用しながら事前にしっかりと計画しておく必要があります。
ERP導入のメリット
ERP導入のメリットとしては、以下のような点をあげることができます。
ビジネスの効率化
冒頭でもあったように、現代は情報化社会とも呼ばれており、ビジネスにおいても情報は非常に重要な役目を果たしていますが、その情報を効率的に収集して経営に活用できることはERPの大きなメリットの1つです。
ソフトウェアやIoTなどの技術を効果的に組み合わせることによって、迅速かつ大量にデータを集める事ができるようになるため、迅速に経営の方針に反映し、市場環境の変化への対応が従来に比べると容易になります。・
コスト削減
前述した小売店のフライチャンズの例のように、ERPによってコストを削減することが可能になります。仕入れのコストなどの変動費以外にも、作業の自動化による人件費の削減もERP導入によって可能になるため、固定費を圧縮することも可能になります。
コストを削減したことによって生まれたお金を、新商品の開発や社内設備の投資などに回すことも可能になるため、無駄なコストの削減はビジネスの発展のために非常に重要です。
導入のデメリットとリスク
ERP導入のデメリットやリスクとしては、以下のような点をあげることができます。これらを解消するために、外部からの支援も考慮に入れると良いです。
初期投資の必要性
ERP導入には専用のシステムや各種の技術を導入しなければならないため、導入の際は少なくない額の初期投資が必要となります。
更に、元々ITに縁があまりなかった企業の場合、IT人材やデータに関連したスキルを持つ人員を新たに雇わなければならなくなります。
これらの人員は近年需要が高騰しているため、見つけてくるだけでも大変ですが、人件費も高い場合が多いです。
社員への教育の必要性
ERPはシステムや各種のIT技術を使用するため、使い方や仕組みなどの専門的な知識を新しく学びなおさなければなりません。普段の業務に加えてこれらの学習も行うとなると、社員にとって大きな負担になります。
また、自社で研修などを行う場合、講師などを見つけたうえで報酬を支払う必要があるため、労力だけでなくお金も必要となってきます。
ERP導入の成功事例と失敗事例
前述した様に、ERPはメリットもあればデメリットもあるため、決して万能という訳ではありません。その証拠に、ERPを導入して成功した事例があるのと同時に、失敗した事例もあります。この章では、成功例と失敗例、それぞれを分析して解説していきます。
成功事例の分析
まずはERPの成功事例である、小田急電鉄の事例を紹介、解説していきます。小田急電鉄はワークスアプリケーションズが提供するパッケージシステムを導入し、経営効率を向上させることに成功しました。
参考:ERP導入成功事例|ワークスアプリケーションズ (worksap.co.jp)
成功事例の概要
小田急電鉄はワークスアプリケーションズが提供する大手企業向けのERPパッケージを導入し、経理業務の業務効率と費用対効果を大きく向上させました。
小田急電鉄は鉄道だけでなく、小売りから宿泊まで、様々な事業を展開しており、それらの管理の過程で大量の紙が使用されます。小田急電鉄は領収書などをスキャンして電子データ化することによって、紙媒体の情報のやり取りを減らしました。
それによって印刷などで消費される紙の費用が削減できただけでなく、電子データ化したことにより対面でのやり取りを減ったのでリモートワークでも対応可能となり、従業員の負担も減らすことに成功しました。
成功のポイント
成功のポイントとしては、経理業務のペーパーレス化、という目的をもってERP導入を行ったことがあげられます。ERP導入の前に確固たる目的があったので、どのようなシステムを作成すれば良いか、意識をより共有しやすくなります。
また、ペーパーレス化によって紙媒体の情報の管理やネットでの情報のやり取りが減ることはイメージしやすく、ERP導入のメリットであるコスト削減やビジネスの効率化に結び付けやすいことも成功のポイントになります。
失敗事例とその教訓
ERP導入の失敗事例には無数の例がありますが、いくつかのパターンに分けることが可能になります。
参考:ERP導入の失敗例 | 大塚商会のERPナビ (otsuka-shokai.co.jp)
失敗事例の概要
ERPの導入で失敗した事例としては、そもそもの目的が漠然としていることや、互いに遠慮しあって旗振り役がいなくなる、ITベンダーを信用しすぎたことにより、何をやりたいシステムなのかがわからなくなっていしまい、ユーザー側がその扱いに困ってしまう、というものです。
単刀直入に言ってITの知識が有るかどうか、ということよりもERP導入に対して他人事であったことが失敗事例に共通して言えます。
オラクルなど、世界的に有名なベンダーもERPのシステムを発表しており、少し調べれば大量の情報を仕入れられるため、その時点でのITの知識の有無は理由になりません。
失敗の原因と対策
失敗の原因としては前述した通り、ERPの導入に対して自分事として捉えていないことにあります。導入のスケジュールや予算以前に、ERP導入は何のためにやるのか、ERP導入によって得られるメリットは経営に対してどのくらい大きなインパクトを与えるのかということを事前によく話し合うことが重要です。
それが終わったらベンダーの選定を行うべきですが、ここでも情報収集を怠らず、ある程度の目星をつけたうえでどのような企業なのか、若しくは相場はどのくらいかなどの情報収集をしなければなりません。ERPを成功に導くためには、目的意識の共有と情報収集が欠かせません。
ERP導入の手順と流れ
何事にも手順通りに進めないと上手くいきませんが、それはERP導入に関しても同様で、踏むべき手順やステップがあります。この章ではERP導入の手順と流れについて、それぞれ解説していきます。
導入の流れ
ERPの導入については、以下のようなステップで進めるのが一般的です。
目的を明確にする
前の章でも述べた通り、ERP導入に当たってはまず導入の目的について明確にしてそれを社内で共有すべきです。
業務効率化、などの漠然とした言葉だけで終わらせずに、どこの課のどの業務を効率化させ、それによって企業や従業員にどのようなメリットがあるのか、まで整理する必要があります。
導入までのスケジュールを計画する
目的や導入のメリットが明確になった次は、スケジュールをたてるべきです。スケジュールを立てることによって、導入までに必要なコストや労力もイメージしやすくなるので、モチベーションを維持しやすくなります。
ベンダーの選定
スケジュールまで明確になった後は、どのベンダーに依頼するかを決めなければなりません。どんなに良いベンダーを見つけたとしても、予算がオーバーしてしまっては意味がないため、いくつかの企業に見積もりを取ったうえで、費用対効果が1番バランスが取れているベンダーに依頼するのが良いです。
要件定義
ベンダーの選定まで終わってようやく、どのようなシステムを作るのかを定義する要件定義のフェーズに進むことができます。
システムの見た目や機能は勿論、スマホなどもシステムへのアクセスを許可するのか、どのようなネットワークを構成するのかなどもこのフェーズで決めます。
運用
ERPは導入したら終わりではなく、改善を続けていく必要があります。市場環境は常に変化し続け、それに加えてIT技術の進化は近年著しいです。
どこをどのように改善したら更に業務効率が上がるか、などを経営陣が先陣を切って常に研究し続ける必要があります。従って、計画の段階では短期的な観点だけでなく、長期的な観点も必要になってきます。
導入のスケジュールと計画
ERPの導入のスケジュールや計画を立てる際、常に心掛けなくてはならないのがコストパフォーマンスという観点です。
これは経営陣だけでなく、IT技術者も持っていなければならない観点です。いくら素晴らしいシステムを作って業務を効率化したとしても、そもそも会社の利益から考えて全く身の丈に合わないコストをERPにかけてしまっては意味がありません。
従って、スケジュールを計画する段階からコストと予算、実際に得られるメリットを天秤にかけて、スケジュールを短縮したり、付与する機能を取捨選択したりする必要があります。
もしも予算の関係でスケジュールを短縮、若しくは機能をいくつか削減した場合は、それらの作成を後に回すなどの代替案も取る必要があります。
スケジュールにしてもコストにしてもそうですが、ERP導入の際は物事をどれだけ数値化できるのか、どのような優先順位をつけるのが最適かなど、数学的な発想や論理的な思考能力がとても重要になってきます。
ERP導入における注意点
ERPは導入する前と後に注意しなければならないことがあります。この章ではそれらを解説していきます。
導入前の準備
ERPを導入する前に注意すべき点として、まず簡単な事ですが、誰をベンダーとのやり取りの窓口にするかを決めなければなりません。
前述した様に、ERPは導入した後も絶えず改善をしなければなりませんが、改善の要望をベンダーに出したり、折衝をしたりするにはもともとのシステムについて深く理解していなければなりません。
これは一朝一夕でどうにかなるものではないので、導入前に人員を指名し、知識を前もって成熟させておかなければなりません。もしも社内の人間で対応出来そうにならなかった場合は、外部から招へいするなどの手段も選択肢に入れておく必要があります。
リソースについては、ベンダーからも提案があるのが一般的ですが、自社内で完結するのか、クラウドを使うのか、それとも両方使うのかは発注側でも決めておいた方が良いです。
特に顧客情報などの重要な情報を社外においても良いかどうかは、事前に社内で意識を合わせておく必要があります。
導入後の管理とサポート
ERPを導入後は、実際にそれを使用している従業員の意見を積極的に引き上げる必要があります。そしてそれらの意見の中から緊急性の高いものやコストパフォーマンスの高いものを優先的に取り上げ、ベンダーに改善の依頼を出していくことを心がけなければなりません。
また、システムの改善後に社内で使用方法に混乱が生じても上手く対処できるよう、ベンダー側とユーザー側、双方と定期的に意識合わせを行う必要があります。定期的に顔を合わせてシステムの変更内容について話しておくことで、不測の事態が起こっても情報を簡単に共有できるようになりますし、対処方法の共有も素早く出来るようになります。
そして、システムの情報については、記載されている情報が最新のものをみんなで共有する必要があります。このようにすることで、ノウハウの蓄積や情報共有がより簡単になるため、導入後の運用もより効率的に行えるようになります。
まとめ:ERP導入でビジネスを変革
このように、ERPは注意しなければならないことは沢山ありますが、同時に多くのメリットがあり、導入すれば自社のビジネスを大きく進化させられる可能性があります。
ERPを効果的に自社のビジネスに導入するためにも、自社のどのような問題をIT技術によって改善できるか、若しくはIT技術を使えば自社のビジネスをどのように伸ばせるかという問題は、常に考えておく必要があります。
ここまで読んで、ERPには興味を持ったものの、まずは知見を持った人に相談したいと思った人も多いかと思います。そんな人は、まず株式会社Jiteraに相談してみることをお勧めします。
株式会社JiteraはIT技術は勿論、コンサルに関する知見や経験も豊富にあります。従って、ERPをどのような形で導入するのがベストか、という質問に対してもそれぞれの会社の事業内容や状況に合った、有意義な回答を返事できる可能性が高いです。