システムインテグレーションとはITシステムの構築から運用保守までのプロセスを請け負うことです。
顧客が望むITシステムを実現することを目的としています。
需要は高まっていて、市場規模が拡大している分野です。
DX化やクラウド移行などを推進するために依頼するケースは増えています。
本記事では、システムインテグレーションの将来性やSlerとの違い、依頼をする際のポイントなどをまとめました。
DX化などの外注を検討している方は参考にしてください。
システムインテグレーションとは?
システムインテグレーションとはITシステムを実現するために設計から開発、運用保守に至るプロセスを請け負うことです。
専門企業に依頼すれば、自社の望んだ環境構築を実現できます。
ただし、依頼する際にはどのようなサービスなのか正確に意味を理解しておくことが大切です。
以下ではシステムインテグレーションの定義や目的、役割について詳しく解説します。
システムインテグレーションの定義
システムインテグレーションとは、顧客企業のITシステムの構築や運用、保守等に関する一連のプロセスを請け負うことです。
英語では「system integration」と表記し、SIと略され、英語で統合や融合という意味となります。
対象とする範囲は広く、企画から設計、開発、運用保守などさまざまな業務を包括的に行うことが多いです。
ただし、一部の業務のみを請け負うケースもあります。
システムの完成・導入だけではなく、運用保守など半永久的にサポートするのが一般的です。
企業の取り巻く環境が複雑化し、自社で対応できないケースが増えたことで、システム構築を丸ごと外注するケースが増えています。
システムインテグレーションの目的
システムインテグレーションをサービスとして提供する場合、最終目標は顧客が望むITシステムの完成・導入です。
業務効率化などを目的としてITシステムの導入を検討する企業はたくさん存在します。
ITシステムの導入のノウハウを有していない企業は多く、アウトソーシングの需要が高いです。
システムインテグレーションを請け負った企業は、企画立案から導入、運用保守までをサポートするのが一般的です。
最初にしっかりとヒアリングを行い、課題解決のための提案をします。
提案したシステムを構築して、導入をサポートし、運用保守まで担当します。
顧客の課題解決ができれば、目的を達成できたといえるでしょう。
システムインテグレーションの特徴
システムインテグレーションのためには、顧客とヒアリングを行い、課題解決のためのシステムを設計します。
提案するシステムは既存環境と連携し、最適化されなければいけません。
顧客のニーズが変化した場合は、迅速に対応することも求められます。
以下ではシステムインテグレーションの特徴について詳しく解説します。
顧客ニーズに合わせたシステム設計
システムインテグレーションでは顧客ニーズに合わせた設計が求められます。
業務効率化やコスト削減、生産性の向上など顧客の目的はさまざまです。
顧客ニーズを把握するためには、顧客との綿密なヒアリングが必要になります。
しっかりとヒアリングを行わないと、顧客のニーズを正確に把握できません。
顧客ニーズの把握に誤りがあると、見当外れな設計をすることになります。
結果を大きく左右するのが顧客ニーズの把握といえるでしょう。
正確に顧客ニーズを把握した上で設計を進めます。
顧客に提案する際には、具体的な数値を交えて必要性を理解させることが大切です。
たとえば、人件費や運用コスト、残業時間などについて「◯%増加させる」「3%削減する」といった目標を設定すると納得させやすいでしょう。
提案が顧客の了解を得られたならば、実際に開発の作業に進むことになります。
システム構築を依頼する際には、十分なヒアリングをしているかどうかに注目しましょう。
システム全体の最適化
新しくシステムを導入する際には、システム全体の最適化が必要になります。
既存のシステムと連携させて、問題なく運用できる状態にしなければいけません。
システム全体の最適化を図らないと効率性が落ちるでしょう。
システムを単純に追加していくとシステムの肥大化・老朽化が進み、将来的には改修そのものが困難になるリスクもあります。
新しいシステムを導入する際には、システム全体の最適化のプロセスが必要不可欠です。
システムインテグレーションでは、単に設計・開発するだけではなく、既存環境との連携や整理のプロセスも担当します。
企業には多くのITシステムが導入されているため、状況を正確に把握した上で最適化の方法を選ばなければいけません。
顧客の環境に合わせた工夫が求められます。
迅速な対応力
システムの導入後にもさまざまな対応をしなければいけません。
顧客企業の環境は常に変化するため、顧客ニーズが変わる可能性があるからです。
市場環境が変化し、新たな課題が生まれた場合は、迅速に対応することが求められます。
顧客ニーズが変化したときに迅速に対応できる体制を整えることが、システムインテグレーションにおいて重要です。
たとえば、顧客から追加機能の要望を受けるケースがあります。
機能を追加するにはシステムの改修を行わなければいけません。
また、開発途中の段階で仕様変更の依頼が発生するケースもあります。
仕様変更が起きるのは日常茶飯事であり、迅速に対応できるかどうかがプロジェクトの成否を左右するでしょう。
依頼先の選定の際には追加要望や仕様変更などへの対応力に注目することをおすすめします。
SIerとSESの違い
システムインテグレーションを提供する企業はSIerと呼ばれます。
一方、SESとはシステム開発の委託契約の一種です。
それぞれの業務領域や保有スキル、開発手法の違いを以下にまとめました。
業務領域 | 保有スキル | 開発手法 | |
SIer | 要件定義、設計、開発、テスト、運用保守 |
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SES | 主に開発や実装、テストなど |
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SIerとSESの違いについて紹介します。
業務領域の相違
SIerはシステムの構築から運用まで広い領域を請け負うケースが一般的です。
そのため、SIerは要件定義から設計、開発、テスト、運用保守までを担当します。
ただし、実際には複数のSIerで工程を分けて担当するケースが多いです。
一方、SESは技術者を提供するサービスであり、主にシステムエンジニアの領域で業務を行います。
SESが担当するのは主に下流工程であり、開発や実装、テストなどを担当するケースが多いです。
SIerが自社だけでは技術者のリソースが不足している場合にSESを利用するケースもあります。
SIerは上流工程から下流工程まであらゆる領域を担当し、SESは主に下流工程を担当するのが業務領域の相違といえるでしょう。
保有スキルの差異
システムインテグレーションに取り組むには高度なスキル・技術が要求されます。
上流工程から下流工程まであらゆる領域を担当するからです。
顧客からヒアリングを行い、最適な提案をするためにコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力などが求められます。
プロジェクトを統括する役割を担うため、プロジェクトマネジメントスキルも必要です。
顧客の課題解決のためにハードウェアからソフトウェア、ネットワークに関する知識やスキルも要求されます。
UI/UXに関するスキルや、AIやIoTなど最新技術に詳しいことも重要になるでしょう。
さらに、顧客の属する業界に関する知識やノウハウも求められます。
一方、SESの場合は基本的に下流工程を担当し、設計やプログラミングなどのスキルが求められるのが特徴です。
SIerと比較するとSESに要求されるスキルは限定的なものになります。
開発手法の違い
システムインテグレーションは顧客の課題解決や要望に応じて柔軟な開発手法を取り入れる必要があります。
ウォーターフォール開発やアジャイル開発、スクラム開発などさまざまな開発手法から最適な手法を取り入れること大事です。
一方、SESの場合は、アジャイル開発が主に採用される傾向にあります。
SESは成果物が必須ではなく、技術提供や業務実施を目的としているのが特徴です。
開発するシステムを小さな単位に分割するアジャイル開発とSESは相性が良いとされています。
SIerに依頼をすれば、さまざまな開発手法から最適なものを選んでくれるため、要望通りのシステムが実現する可能性は高くなるでしょう。
システムインテグレーションを依頼するポイント
業務効率化などのためにシステムインテグレーションを依頼するのは効果的です。
ただし、依頼先の候補となる企業はたくさんあります。
それぞれの企業によって、サービスの品質や技術力などの違いは大きいです。
満足できる結果を得るためには、依頼先の選定が重要になります。
以下では依頼する際の注意点やチェックポイントについて解説します。
多様な開発手法への対応力を確認
依頼先を選ぶ際には多様な開発手法へ対応できるかどうかを確認しましょう。
採用される開発手法はさまざまであり、中でも代表的な開発手法がウォーターフォール開発とアジャイル開発です。
ウォーターフォール開発は、上流から下流工程まで順番に進めていきます。
ウォーターフォール開発は伝統的な手法であり、大規模な開発で採用されることが多いです。
アジャイル開発は機能ごとに開発とリリースのサイクルを繰り返していく手法を指します。
他にも、プロトタイプ開発やスパイラル開発など開発手法の種類は多いです。
開発規模や期間によって適した開発手法は異なっています。
顧客の依頼に合わせて最適な開発手法に対応できる企業を選びましょう。
適切な開発手法を採用できれば、成果物の品質が高まります。
類似案件の実績とノウハウの蓄積
システムインテグレーションの依頼先を選ぶ際には、類似案件の実績を確認しましょう。
過去の実績を確認し、自社と同業種・同規模の実績が多いかどうかチェックします。
同業種・同規模の依頼をこなした実績が多ければ、知見やノウハウが蓄積されているでしょう。
特定の業種についてのノウハウを有している可能性が高いです。
類似案件の実績が豊富な企業に依頼することでリスクを低減できます。
通信業界やヘルスケア業界、銀行業界、小売業界など顧客の属する業界は幅広いです。
それぞれの業界ごとに特有の環境があり、特別なノウハウが必要になります。
たとえば、金融業界であれば、預金や為替、クレジットカード、保険などを扱うシステムへのノウハウが必要です。
自社が依頼したい要件に近い案件の実績があれば、要件を理解してもらいやすくなるでしょう。
ヒアリングから設計、開発までスムーズに進めてもらえます。
企業のホームページに実績が紹介されていることが多いためチェックしましょう。
システムインテグレーションの案件フロー
システムインテグレーションの案件を進める際の標準的なフローを以下にまとめました。
- 要件定義
- 設計
- 開発
- テスト
- 納品
- 保守・運用
案件を受注した後は顧客にヒアリングを行い要件定義をします。
次に設計を行い、顧客から承認を得られれば開発です。
開発したシステムはテストを行い、バグがあれば修正します。
最終的に納品を行い、安定して稼働できるように保守運用を行うまでが標準的なフローです。
以下では、各プロセスを詳しくみていきます。
要件定義~設計フェーズ
要件定義とは顧客からヒアリングを行い、課題解決のためのITシステムに要求される機能や性能などを決めることです。
特にウォーターフォール開発の場合は、要件定義に後から戻ることは難しいため、重要なプロセスになります。
顧客はITシステムの知識が少ないケースが多いため、ヒアリングの内容を実現可能な要件としてまとめることが重要です。
要件定義の際に作成した要件定義書をもとにして設計します。
設計フェーズでは、ユーザーインターフェースや機能など細かな点を決めていくのが特徴です。
設計にはネットワーク設計やプログラム設計、データベース設計などがあります。
各種設計書は開発から運用保守のフェーズにおいて重要な役割を果たすものです。
詳細な設計書を作成することで、後で機能追加を行いやすくなります。
開発・テストフェーズ
設計フェーズで作成した設計書をもとに実際にプログラミングを行うのが開発のプロセスです。
開発の段階で設計書の内容とズレが生じることがあります。
システムインテグレーションにおいては、開発の品質管理を行うことが重要です。
プログラミングを終えた後は、システムのテストを実施します。
ユーザーの要望を満たしているか、しっかりと動作するか確認する重要なプロセスです。
バグや不備などがないかを細かく確認していき、問題があれば修正します。
単体テストや結合テスト、システムテスト、運用テストなどさまざまなテストを実施するのが一般的です。
テストの結果に問題がなければ、実際にシステムの導入を行い、稼働させます。
システムの稼働後も運用保守を行い、必要に応じて修正しなければいけません。
システムインテグレーションの将来性
国がDXを推進しており、多くの企業が導入を検討しています。
ITシステムに対する投資に力を入れる企業は増えており、システムインテグレーションの需要は今後拡大するでしょう。
クラウド移行支援のニーズが特に高まっているため、これからのSIerにはクラウド移行のコンサルティング能力が求められます。
以下では、今後の市場の動向や将来性について詳しく解説します。
DX推進による需要拡大の見込み
現在、あらゆる企業が競争力を高めるためにDXに注目しています。
政府はDXに対するガイドラインを公開し、補助金も提供しており、DX推進の重要性が高まっている時代です。
多くの企業がDX推進のためにITシステムへの投資を拡大しています。
しかし、DXを実現するためのリソースが不足している企業が多いです。
そこで、SIerに依頼して、ITシステムの刷新を図る企業は増えています。
少子高齢化による労働人口の減少への対策として、DX推進による業務効率化や生産性の向上は、今後も注目されるでしょう。
その中でシステムインテグレーションへの需要がこれからも高まっていくと予想されます。
今後は市場規模が拡大していき、大きな成長が見込まれる分野です。
クラウド移行支援ニーズに対応
クラウドへの移行が進む中で、クラウド移行支援のニーズは高まっています。
業務効率化やコスト削減などを目的としてクラウドへの移行のニーズは高いです。
しかし、クラウドに移行する際には、既存システムとの連携やサービスの選定、セキュリティの問題など課題がたくさんあります。
今後のSIerには、複雑な既存システムを分析し、システム連携を実現する高い技術力が求められるでしょう。
また、クラウド移行のためのサービス選定からユーザー教育、セキュリティ対策までをサポートするコンサルティング能力も必要になります。
DXの推進により、今後は多くの企業がオンプレミスとクラウドが融合した環境を抱えることになるでしょう。
その中でSIerには、クラウドとオンプレミスを混在したシステムを構築するノウハウの獲得が求められます。
クラウド化を支援するノウハウを持つSIerは、顧客のDX支援力を高められ、これからの市場の変化に対応できるでしょう。
システムインテグレーションのまとめ
システムインテグレーションとは、設計から開発、運用保守までを請け負うサービスのことです。
高度なスキルで多様な開発手法を駆使しながら顧客の要望に応えます。
生産性の向上や業務効率化のためのDXが推進されており、外注する企業が増えていて、将来性の高い分野です。
今後はクラウド移行支援の分野の需要が特に高まると予想されます。
自社のITシステムのDX化やクラウド化を考えているならば、依頼を検討しましょう。
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